117 / 132
【第十章】再び交わる世界
ひとりぼっちのクリスマス?
しおりを挟む
システム開発部に移ってから、毎日があっという間に過ぎていった。
仕事量はかなり多くて大変だけれど、その分やりがいもある。何より、ハチのことを考える暇がないほど仕事に忙殺されるのは、今の私にとっては、むしろありがたかった。
久しぶりに外へ出ると、街はすっかりクリスマスモードだ。
吐く息は白く、イルミネーションがキラキラと輝いている。
あちらこちらのお店から、軽やかなクリスマスソングが聴こえてくる。
空を見上げると、ちらちらと雪が舞っていた。
ようやく、少しだけ仕事が落ち着いた。
心も、日常を感じることができるくらいの余裕が戻ってきた気がする。
毎年、クリスマスは礼美ちゃんの家で、礼美ちゃんと佐奈ちゃんと私で、持ち寄りの簡単なパーティを開く。この時期になると、いつも礼美ちゃんからクリスマスの予定を訊かれるのだけれど、今年はまだ連絡がない。
自分から誘うことが苦手で、いつも受け身でいたから、自分から「今年のクリスマス、どうする?」なんて訊く勇気もない。
情けない……。
実は二人とも、いつの間にか彼氏ができていて、今年は恋人と過ごすのかもしれない。
そんな可能性が頭をよぎったとき、不意に――ハチと佐奈ちゃんが付き合っているんじゃないか、という妄想が頭に浮かんだ。
……充分にあり得る話だ。
心がざわつく。
買い物を終えて、家に帰ってきた。
今日は冷え込んで、暖房を入れていても肌寒い。ひざ掛けをかけてキッチンに行き、暖かい紅茶を淹れて部屋に戻った。
たまには自分から行動してみよう。
そう思い、私は礼美ちゃんにメッセージを送る。
『ご無沙汰です。今年のクリスマスはどうする? また持ち寄りで、パーティーする?』
しばらくして、通知音が鳴った。
返ってきたメッセージを読んだ瞬間、心臓がぎゅっと締め付けられた。
『ごめんね……今年はちょっと仕事が入ってて、クリスマスは会えそうにないんだ。あ! それからね、なんと! お姉ちゃんに彼氏ができたんだよ! お姉ちゃん、今年は彼と一緒にクリスマスを過ごすみたい。あとで二人でいじってやろうね』
佐奈ちゃんに、彼氏……。
ハチと佐奈ちゃんの幸せそうな顔が、鮮明に浮かんだ。
震える指で、なんとか返信を打つ。
『そうなんだ、佐奈ちゃんよかったね! よろしく伝えといて』
送信ボタンを押した瞬間、喉の奥が苦しくなった。
ひざ掛けをかけたはずなのに、暖かい紅茶を飲んでいるはずなのに――。
寒い。
体の芯から冷え切って、指先まで凍りついたように震える。
ハチと佐奈ちゃんの笑顔が浮かぶ。
私が望んだ通りの未来になったはずなのに。
胸の奥が凍りついたように冷たくて、悲しくて、仕方がなかった。
これまで、誰が離れていっても、私には礼美ちゃんと佐奈ちゃんがいた。
二人はずっと私のそばにいてくれる。
だから、寂しくなかった……。
でも――
そうだよね。
二人にだって、二人の人生がある。
いつまでも一緒にいられるとは限らないんだ……。
結局みんな、私から離れていってしまう。
大切な人は、みんな――
スマホを握りしめたまま、ゆっくりと前にかがみ込む。
胸が張り裂けそうに苦しくなって、どうしようもなく、涙が溢れた。
結局、私は、誰からも愛されない。
私が愛した人は、みんな私から離れていく。
こんなことなら――
ずっとハチの世界にいたかった。
眠ったままのハチと一緒に、あの世界で、二人きりで、ずっと笑っていたかった。
「ハチに……会いたい。会いたいよぉ……」
震える声が、かすかに部屋に溢れ落ちる。
その時――
握りしめていたスマホが震えた。
画面を見つめる。
一通のメッセージが届いていた。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
メッセージの送り主は……
――ハチだった。
仕事量はかなり多くて大変だけれど、その分やりがいもある。何より、ハチのことを考える暇がないほど仕事に忙殺されるのは、今の私にとっては、むしろありがたかった。
久しぶりに外へ出ると、街はすっかりクリスマスモードだ。
吐く息は白く、イルミネーションがキラキラと輝いている。
あちらこちらのお店から、軽やかなクリスマスソングが聴こえてくる。
空を見上げると、ちらちらと雪が舞っていた。
ようやく、少しだけ仕事が落ち着いた。
心も、日常を感じることができるくらいの余裕が戻ってきた気がする。
毎年、クリスマスは礼美ちゃんの家で、礼美ちゃんと佐奈ちゃんと私で、持ち寄りの簡単なパーティを開く。この時期になると、いつも礼美ちゃんからクリスマスの予定を訊かれるのだけれど、今年はまだ連絡がない。
自分から誘うことが苦手で、いつも受け身でいたから、自分から「今年のクリスマス、どうする?」なんて訊く勇気もない。
情けない……。
実は二人とも、いつの間にか彼氏ができていて、今年は恋人と過ごすのかもしれない。
そんな可能性が頭をよぎったとき、不意に――ハチと佐奈ちゃんが付き合っているんじゃないか、という妄想が頭に浮かんだ。
……充分にあり得る話だ。
心がざわつく。
買い物を終えて、家に帰ってきた。
今日は冷え込んで、暖房を入れていても肌寒い。ひざ掛けをかけてキッチンに行き、暖かい紅茶を淹れて部屋に戻った。
たまには自分から行動してみよう。
そう思い、私は礼美ちゃんにメッセージを送る。
『ご無沙汰です。今年のクリスマスはどうする? また持ち寄りで、パーティーする?』
しばらくして、通知音が鳴った。
返ってきたメッセージを読んだ瞬間、心臓がぎゅっと締め付けられた。
『ごめんね……今年はちょっと仕事が入ってて、クリスマスは会えそうにないんだ。あ! それからね、なんと! お姉ちゃんに彼氏ができたんだよ! お姉ちゃん、今年は彼と一緒にクリスマスを過ごすみたい。あとで二人でいじってやろうね』
佐奈ちゃんに、彼氏……。
ハチと佐奈ちゃんの幸せそうな顔が、鮮明に浮かんだ。
震える指で、なんとか返信を打つ。
『そうなんだ、佐奈ちゃんよかったね! よろしく伝えといて』
送信ボタンを押した瞬間、喉の奥が苦しくなった。
ひざ掛けをかけたはずなのに、暖かい紅茶を飲んでいるはずなのに――。
寒い。
体の芯から冷え切って、指先まで凍りついたように震える。
ハチと佐奈ちゃんの笑顔が浮かぶ。
私が望んだ通りの未来になったはずなのに。
胸の奥が凍りついたように冷たくて、悲しくて、仕方がなかった。
これまで、誰が離れていっても、私には礼美ちゃんと佐奈ちゃんがいた。
二人はずっと私のそばにいてくれる。
だから、寂しくなかった……。
でも――
そうだよね。
二人にだって、二人の人生がある。
いつまでも一緒にいられるとは限らないんだ……。
結局みんな、私から離れていってしまう。
大切な人は、みんな――
スマホを握りしめたまま、ゆっくりと前にかがみ込む。
胸が張り裂けそうに苦しくなって、どうしようもなく、涙が溢れた。
結局、私は、誰からも愛されない。
私が愛した人は、みんな私から離れていく。
こんなことなら――
ずっとハチの世界にいたかった。
眠ったままのハチと一緒に、あの世界で、二人きりで、ずっと笑っていたかった。
「ハチに……会いたい。会いたいよぉ……」
震える声が、かすかに部屋に溢れ落ちる。
その時――
握りしめていたスマホが震えた。
画面を見つめる。
一通のメッセージが届いていた。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
メッセージの送り主は……
――ハチだった。
2
あなたにおすすめの小説
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
見上げた空は、今日もアオハルなり
木立 花音
青春
──私の想いは届かない。私には、気持ちを伝えるための”声”がないから。
幼馴染だった三人の少年少女。広瀬慎吾(ひろせしんご)。渡辺美也(わたなべみや)。阿久津斗哉(あくつとおや)。そして、重度の聴覚障害を抱え他人と上手くうち解けられない少女、桐原悠里(きりはらゆうり)。
四人の恋心が激しく交錯するなか、文化祭の出し物として決まったのは、演劇ロミオとジュリエット。
ところが、文化祭の準備が滞りなく進んでいたある日。突然、ジュリエット役の桐原悠里が学校を休んでしまう。それは、言葉を発しない彼女が出した、初めてのSOSだった。閉ざされた悠里の心の扉をひらくため、今、三人が立ち上がる!
これは──時にはぶつかり時には涙しながらも、卒業までを駆け抜けた四人の青春群像劇。
※バレンタイン・デイ(ズ)の姉妹作品です。相互にネタバレ要素を含むので、了承願います。
※表紙画像は、ミカスケ様にリクエストして描いて頂いたフリーイラスト。イメージは、主人公の一人悠里です。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる