【完結】君と創る世界

くみた柑

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【第十一章】僕が創る世界

君の想いに触れた日

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 週末、僕は会社の近くの喫茶店で鈴木さんたちを待っていた。
 古い作りの喫茶店で、控えめな音量でジャズが流れ、マスターがカウンターでカップを丁寧に拭いている。お客の入りは少なく、都会の、いつ行っても行列ができているカフェとは違い、とても落ち着く空間だった。
 ほどなくして、鈴木佐奈さんと、妹さんが現れた。

「ごめんなさい、待たせちゃったかしら」
「いえ、僕が早く着きすぎちゃったので」

 二人が、僕の目の前の席に座る。お水を運んできたマスターに注文を済ませてから、僕は意を決して口を開いた。

「今日はお時間を作っていただいてありがとうございます」

 佐奈さんはにっこり微笑んだ。

「この子が、私の妹の礼美れみ。可琳とは途中まで小学校が一緒だったの。私より妹の方が、可琳のことをよく知っているわ」

 すると、佐奈さんの隣でほっこりとした笑顔を作っていた礼美さんが、楽しそうに口を開く。

「はじめまして。お噂はかねがね」

 お噂? なんだ?
 可琳が僕のことを、礼美さんに話していたってこと?
 何をどんなふうに話していたのか気になって、心が落ち着かない。

 綺麗系の佐奈さんとは対象的に、礼美さんはどこか柔らかい雰囲気だ。背は低めで少しふっくらとした体型も相まって、親しみやすい印象だった。
 彼女は嬉しそうに目を細め、僕を見て微笑む。

「えっと……その……、可琳は僕のこと、何て言ってたんですか?」

 思い切って訊くと、礼美さんは小さく「うーん」と考えてから、穏やかな口調で答えた。

「そんなに詳しく訊いてたわけじゃないけど……眠ったままの八幡さんのお見舞いに、しょっちゅう行っていたことは知ってるよ。可琳にとって、とても大切な人なんだろうなって思ってた」

――え?
 いきなり飛び出した、とんでもない情報に、僕の胸は熱くなる。
 可琳が、僕のもとに……? 眠っている僕に会いに? 何度も?
 喉がカラカラに乾く。

 可琳がいなくなってからの、空白の十数年。僕は可琳のことを、名前すら忘れかけていて……けれど、可琳はその間も、僕のことを忘れずにいてくれたんだ。

「本当に……ですか?」

 自分でも驚くほど、声が震えていた。
 礼美さんは優しく頷く。
 僕は拳を握る。
 だったら、どうして……?

「やっぱり可琳は、僕のこと知ってたんですね」

 呟くように言うと、礼美さんと佐奈さんが、同時に不思議そうに首を傾げた。

「あ、えっと……どこから話したらいいかな……」

 言葉を探しながら、僕はゆっくりと、β世界での可琳の話を始めた。
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