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君がいない六年間
疎遠
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その日から龍臣は駐車場脇の道を通らなくなった。拓海に会うのが気まずい気持ちもあったが、何よりも彼女に笑いかけるあの顔をもう見たくなかった。
帰ってすぐ拓海から、あの場を走り去った龍臣を心配するメールが来たが、龍臣は「大丈夫、ちょっと用事思い出しただけ」と詮索されないよう何もなかったように返信をした。
それからは、拓海から遊びの誘いを受ける度に何かと都合をつけて断っていった。
「拓海君、東京の大学に行くから来週には一人暮らしするんですって」
中学二年生になろうとする冬のこと、辰子からそれを聞いた龍臣は思ってもみなかったことに愕然とした。そうだ、自分はいつまで拓海が近くにいると思っていられたんだろうか。この辺りに住む子供たちは大学へ行くなら大体東京へ出ていく。
拓海もそれと同じだと考えながら、自分から距離を置いておいて拓海から報告が無かったことに少し怒っていることに気付いた。本当に自分勝手で未練がましくて情けない。
「拓海君が東京に行く前に挨拶しに行こう」
辰子の声で二人して片瀬家へと向かった。辰子と晴美は子供の頃のあの一件でさらに仲を深めたらしく、自分たちが疎遠になった後もカフェに行く姿などをよく見ていた。
晴美が拓海と龍臣が疎遠になったことを悲しんでいるのもなんとなくわかっている。少し前を歩く辰子の横顔を見て、晴美と共に龍臣たちに気をまわしているのかと考えそれを即座に打ち消した。
辰子は晴美と単純に世間話がしたいだけだろう。自分は単なる口実に過ぎない、この自意識過剰め。
そんなことをあれこれ考えているうちに片瀬家に着いた。
「よお、久しぶり」
約二年ぶりに会った拓海は自分と随分目線が近くなっていて驚いた。最近背が伸びてきて、以前の自分から変わりつつある。まだ声変わりはしていない。していなくて良かった。自分から高い声がなくなってしまったら「可愛い」からまた遠ざかってしまう気がしたから。
「久しぶりだね、拓兄」
精一杯語尾を柔らかく話す。可愛げのなかった過去の自分の反省を生かしたつもりでいる。
「なんだよ、拓兄って」
拓海が笑う。彼女に見せた顔じゃないことにわかっていても落胆する。
「拓海ももう大学生だから、俺なりに敬おうと思って」
「はいはい。やっと兄貴としての俺を認めてくれたか」
軽口の後に落ちるわずかな沈黙の時間。それは二年半の重さを龍臣に自覚させるには十分だった。
「……元気でな」
「お前もな」
別れは思っていたよりもあっさりとしたものだった。意外にも泣かなかった自分に拍子抜けしながらも、二年半も会っていなかった割には普通に話せたことのほうが嬉しかったからかもと理由づけた。
高校も大学も拓海と同じ学校には行かなかった。正直自分の方が勉強はできたし、同じ学校に通っていたらいつまでも拓海を忘れられない未練がましい男のようで癇に障るからだ。
ただ、他に好きな人ができるかと言われるとそんな感情は誰にも抱かないまま、誰にも心を乱されないままに人生が終わるのだろうと妙に達観した気分でいた。
帰ってすぐ拓海から、あの場を走り去った龍臣を心配するメールが来たが、龍臣は「大丈夫、ちょっと用事思い出しただけ」と詮索されないよう何もなかったように返信をした。
それからは、拓海から遊びの誘いを受ける度に何かと都合をつけて断っていった。
「拓海君、東京の大学に行くから来週には一人暮らしするんですって」
中学二年生になろうとする冬のこと、辰子からそれを聞いた龍臣は思ってもみなかったことに愕然とした。そうだ、自分はいつまで拓海が近くにいると思っていられたんだろうか。この辺りに住む子供たちは大学へ行くなら大体東京へ出ていく。
拓海もそれと同じだと考えながら、自分から距離を置いておいて拓海から報告が無かったことに少し怒っていることに気付いた。本当に自分勝手で未練がましくて情けない。
「拓海君が東京に行く前に挨拶しに行こう」
辰子の声で二人して片瀬家へと向かった。辰子と晴美は子供の頃のあの一件でさらに仲を深めたらしく、自分たちが疎遠になった後もカフェに行く姿などをよく見ていた。
晴美が拓海と龍臣が疎遠になったことを悲しんでいるのもなんとなくわかっている。少し前を歩く辰子の横顔を見て、晴美と共に龍臣たちに気をまわしているのかと考えそれを即座に打ち消した。
辰子は晴美と単純に世間話がしたいだけだろう。自分は単なる口実に過ぎない、この自意識過剰め。
そんなことをあれこれ考えているうちに片瀬家に着いた。
「よお、久しぶり」
約二年ぶりに会った拓海は自分と随分目線が近くなっていて驚いた。最近背が伸びてきて、以前の自分から変わりつつある。まだ声変わりはしていない。していなくて良かった。自分から高い声がなくなってしまったら「可愛い」からまた遠ざかってしまう気がしたから。
「久しぶりだね、拓兄」
精一杯語尾を柔らかく話す。可愛げのなかった過去の自分の反省を生かしたつもりでいる。
「なんだよ、拓兄って」
拓海が笑う。彼女に見せた顔じゃないことにわかっていても落胆する。
「拓海ももう大学生だから、俺なりに敬おうと思って」
「はいはい。やっと兄貴としての俺を認めてくれたか」
軽口の後に落ちるわずかな沈黙の時間。それは二年半の重さを龍臣に自覚させるには十分だった。
「……元気でな」
「お前もな」
別れは思っていたよりもあっさりとしたものだった。意外にも泣かなかった自分に拍子抜けしながらも、二年半も会っていなかった割には普通に話せたことのほうが嬉しかったからかもと理由づけた。
高校も大学も拓海と同じ学校には行かなかった。正直自分の方が勉強はできたし、同じ学校に通っていたらいつまでも拓海を忘れられない未練がましい男のようで癇に障るからだ。
ただ、他に好きな人ができるかと言われるとそんな感情は誰にも抱かないまま、誰にも心を乱されないままに人生が終わるのだろうと妙に達観した気分でいた。
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