再会した年下幼馴染が豹変してしまっていた

三郷かづき

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君がいない六年間

変わってしまった

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 大学一年生も終わろうという頃、サークルの仲間たちとの二次会の帰りだった。東京で一人暮らしをして良かったことは、こうして仲間と終電を気にせず夜遅くまで遊べることだ。

別の居酒屋に移動するか、カラオケに行くかと相談している友人たちからふっと目をそらして道路を挟んだ向こう側、拓海が女性を連れて歩いているのが見えた。
 小学校のあの時とはさすがに違う女性だった。

 ―まあ、もうしょうがないか…。

 自分ももう十九歳になったが、拓海は六歳上でもう二十五歳だ。結婚も考え始める年齢だろう。もしかしたらあの女性と結婚するのかもしれない。

 久しぶりに地元に帰ってきた拓海が隣に結婚相手を連れていて自分に紹介する。そんなシーンを想像するだけで、少し前に芽生えていた諦念の気持ちはなんともいえない悲しさに変わった。

 拓海が連れていた女性は中学生の時と同じようにどこかふわふわとした優しそうな雰囲気を纏っていた。
 居酒屋のドアガラスに映る十九歳の自分は、周りよりも頭一つ分高く体格もいい。顔の丸みは削げ落ち、目元の丸さもなくしていた。忌々しいほどに男らしい男、それが今の龍臣だった。

 その後の飲み会は終始上の空だった。

「あ“ーー、頭いてぇ」

 一夜明けても、大量に酒を飲んでも記憶は鮮明なままだった。ベッドの上で頭を抱えながら頭痛を言い訳にして龍臣は泣いた。

 どこかでまだ希望があると思っていた。自分は今もなお拓海の“何か”になれるはずと、そう思っていた。

 もうその可能性は一ミリもなくなった。

 日が沈み、あたりが暗くなると龍臣は街へと繰り出した。ゲイバーに入り拓海と同じように色素が薄めの茶髪の男に声をかけた。その男はいわゆるネコだったためその日はできなかったが、ヤリ目が集まるマッチングアプリを教えてもらい、効率良く拓海似のタチを探すことができるようになった。

 龍臣は拓海に挿れてもらいたかった。拓海に求められながら「可愛い」といって頭を撫でてほしかった。

 片手で数えられるくらいの文章のやり取りで相手と会って即セックスをした。
 最中、龍臣はずっと目をつぶっていた。拓海は今どんな体をしているのか、最後に見た小学生時のプールでの姿を瞼の裏に描いた。動き、匂い、言葉、自分を貫く相手を通して拓海を見ていた。

 初めて後ろを使っても何の感情も湧かなかった。拓海だと思ってヤると勃つし、そこそこは感じられる。ただたまに正気に返る瞬間その行為がひどく気持ちが悪く、むなしいことを自覚させられた。加えて相手が自分に囁く声や吐息、全てがノイズに聞こえた。

「これからどうしよっかな」

 あてどもなく呟いて道を歩く龍臣は、刹那的な危うさを全身にまとっていた。だからだろうか、目的もなく歩いた先の人気のない路地裏でぶつかった集団に喧嘩を売られた。
いままでそのような集団に絡まれても謝って退散するだけだった。自分は背も高いし下手に出ていればそれほど長引くこともない。

 ただ以前とは違い、龍臣は見下ろすように目の前で何かを喚いている男たちに目をやった。

 予備動作なしに右の拳を振りかぶる。試みはあっけなく成功し、正面にいた男が左に吹っ飛んだ。

「はは」

 龍臣は呆然と右手をぐっぱと動かしながら息を吐きだし、驚きで動けていない別の男たちに向かってもう一度拳を振り下ろした。

 夢中で暴れて、気が付いたときには相手は全員地に伏していた。そんな光景を尻目に、当の本人は何事もなかったように地面に落ちていたバッグを拾い上げ、中からコンドームを取り出した。

 それは争いから生まれた衝動的な性欲と長い失恋の果ての自傷的な感情が起こした思い付きだった。

 龍臣は近くで意識を失う男を手で無理矢理勃起させ、それにコンドームを付けると自ら跨った。真夜中に一人龍臣は黙って腰を上下させる。見えるのは建物の隙間から狭い夜空、聞こえるのは自分の呼吸だけ。

 図らずもこれは龍臣が求めていた拓海を想える最高の状況だった。龍臣は夢中で腰を振った。脳裏に拓海を思い浮かべてひたすらに動いた。
 そうして射精した後の気分は最悪だった。

 絶対に手に入らない人を追いかけていることの虚しさ、浅ましさ、そして周りを見渡すと自分の単純な性欲の為に暴力を振るわれた被害者たちが転がっている。

 歪んでしまった恋心に失望するとともに、龍臣はおそらく再び自分は同じことをするだろうという予感めいたものを感じた。

『お前もいつか俺と同じようになるよ』

 いつかの男の声が聞こえた気がした。
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