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3,絵本作家の夢
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今日も魔法使いはナイフとフォークを使ってごはんを食べます。
ところが大変、魔法使いはナイフとフォークを落としてしまいます。
ナイフとフォークは、それぞれに雲の下へと落ちてしまったのです。
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「ねえ、別れない? 私たち」
クリスマスから二ヶ月後、個室のカフェでその言葉を聞いた。
コーヒー豆の匂いが店中に漂っている。
隣に座る心音は、フォークでガトーショコラを突いていた。
「どうして!」
想像していたよりも大きな声が出た。
俺は咳払いをして、コーヒーを一口飲む。
「お互い、仕事決まったでしょ?」
「それがどうしたんだよ」
「でも私さ、小さい頃から絵本作家になりたくて」
心音は、フォークで刺したガトーショコラを口に運んで咀嚼する。
「龍樹にはない? そういう夢」
「俺にはない」
「ワイン好きでしょ? ソムリエとか、興味ないの?」
そういう職業があるのは知っているが、興味はなかった。
「仕事して、空いた時間に絵本を書いて、ってやるとね、きっと龍樹との時間を取れないなって」
「それでもいいだろ。たまに二人で一緒に食事をすればいい」
心音は首を振った。
「一人にならないと、きっと自分を甘やかしちゃう。だから、今日で終わり」
返す言葉が見つからなかった。
俺はカップに残ったコーヒーを飲み干す。砂糖もミルクも入ってないコーヒーは、カップの底に茶色い跡を残した。
「ありがとう。ごめんね、龍樹」
心音は俺の頭を胸に抱きよせ、耳元で囁く。彼女の鼓動は穏やかだった。
ラベンダーとミルクを混ぜたような、優しい香りがした。
今日も魔法使いはナイフとフォークを使ってごはんを食べます。
ところが大変、魔法使いはナイフとフォークを落としてしまいます。
ナイフとフォークは、それぞれに雲の下へと落ちてしまったのです。
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「ねえ、別れない? 私たち」
クリスマスから二ヶ月後、個室のカフェでその言葉を聞いた。
コーヒー豆の匂いが店中に漂っている。
隣に座る心音は、フォークでガトーショコラを突いていた。
「どうして!」
想像していたよりも大きな声が出た。
俺は咳払いをして、コーヒーを一口飲む。
「お互い、仕事決まったでしょ?」
「それがどうしたんだよ」
「でも私さ、小さい頃から絵本作家になりたくて」
心音は、フォークで刺したガトーショコラを口に運んで咀嚼する。
「龍樹にはない? そういう夢」
「俺にはない」
「ワイン好きでしょ? ソムリエとか、興味ないの?」
そういう職業があるのは知っているが、興味はなかった。
「仕事して、空いた時間に絵本を書いて、ってやるとね、きっと龍樹との時間を取れないなって」
「それでもいいだろ。たまに二人で一緒に食事をすればいい」
心音は首を振った。
「一人にならないと、きっと自分を甘やかしちゃう。だから、今日で終わり」
返す言葉が見つからなかった。
俺はカップに残ったコーヒーを飲み干す。砂糖もミルクも入ってないコーヒーは、カップの底に茶色い跡を残した。
「ありがとう。ごめんね、龍樹」
心音は俺の頭を胸に抱きよせ、耳元で囁く。彼女の鼓動は穏やかだった。
ラベンダーとミルクを混ぜたような、優しい香りがした。
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