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壱話、「青春は人それぞれである。」
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冬はやはり冷えるとはいえ、こんな天気のいい平日の午後に、小洒落たカフェでまったりと出来るのは大学生の特権だ。
しかし、こうしていられる時間も残り少ない。
もうこの場所来ることもなくなるのかと感傷に浸りつつふと窓から空を見上げると、あの時のように雲ひとつなく快晴だ。
俺の名前は小林カイリ。
これから話すのは俺が大学生だった頃の話。
好きな言葉...「孤高」。
当時、大学2回生だった俺はサークルにも入らず授業を受けたら即帰宅、土日は、自宅から一歩も出ずアニメを見たり、ひたすら勉強しているような生活をしていた。
当然、友達などできるはずもなく典型的なボッチ大学生活を送っていた。
きっと充実している生活を送っている人からしたら、「なんて惨めな奴なんだ」と思うかもしれないが、小中と「いじめ」を受けていた俺にとっては、大学では今までとは違い、誰も自分に構う奴が居ないこんな学園生活を送っている自分がむしろ好だった、それに俺は生活にアクセントなど求めていなく、そうした面でもこうした単調な生活を満喫していた。
まぁ、こんな生活もある日を境に終わってしまうんだけど...ある意味でね..
こんな生活をしているある日、一限で取っていた経済の授業で二人組を作り、
ある事柄について考えをまとめ、次回の授業でプレゼンをすると言う課題が出た。
俺は1人無言で課題に取り組んで、1段落ついたところで一息付いた。
ふと窓から空を眺めると雲ひとつなく冴え渡り、抜けるように澄み渡っていた。
「濃い藍色に煙りあがったこの季節の空ってか?」と少し格好を付けて呟いた。
暫く休憩した後、課題の続きをしていると、ある人に話しかけられた。
「あの、余っているのなら一緒にやるのはどう??」と。
「は......」あまりにも自然に話しかけて来られたので、危うく善処を取ってしまうところだった。
俺にも俺なりの学園生活がある、人に俺のカーストを変えられることによって充実した学園生活を壊されるのは御免だ、なんて思っていた。
「あ、いや、大丈夫、1人でやるからいい」と言い、手を動かしながら適当に流した。
彼女は俺に冷ややかな視線を向け、彼女は「そう、」とだけ言い行ってしまった。
暫くすると、
俺は大事なことを忘れていたことに気づいた。
「次回二人でプレゼンじゃねぇかよ。」
そう、次回は2人でプレゼン。
1人でなんかやったら笑い者になって赤っ恥をかくことになる。
それだけは避けなければならない。
咄嗟に先程話しかけてきた彼女の方に視線を向けると幸い1人で課題をしていた。
「(どうするか...超絶都合がいいけどさっきの人に頼るか...)」
俺はあんな断り方をしたにも関わらず彼女のところへ行き、人にお願いするなんて事を長い間してこなかった俺は、俗にウェイ系と呼ばれるキャラを装い、
「さ、さっきのは無しで、や、やっぱり組もうぜ!」と笑顔と呼べるには程遠い顔を彼女に向けて言った。やはり慣れていないせいか我ながら普段より5割増しでキモかった。
たが、彼女は俺に見向きもせず、課題をしているので「あの....聞こえてます?」と俺が聞くと、彼女は深いため息を吐き、気怠そうにしながら
「貴方、馬鹿なんじゃないかしら?
私がそんな頼まれ方をしてはい、そうですか、なんて言うとでも思っているの?」と言った。
「あ、いや...」
今考えればもっともだろう。
「まず、貴方あんな雑な断り方をした上にそんな態度なんてお願いする態度じゃないわよね?」
「......さ、先程はすみませんでした。今回だけ俺と組んでください。組んでくれないと2度と学校来れなくなるんで」と言って俺が頭を深々とを下げ言うと彼女は少し俺の方に体を向け、口を開いた。「全く....仕方ないから組んであげるわでも、1つ条件がある」
「な、なんですか?」
「私に対しては常に敬語で話す事」と足を組みながら言った。どんだけ高飛車な女なんだよと思いながらも、
「わ、分かりましたよ。」と言った。
てな感じで俺はこの女と組むことになった。
それから俺たちは図書館に向かい資料採集をした。
特に話を交わすこともなく2時間ほど作業をしたところで女は唐突に口を開いた。
「お腹すいた。」
「なら学食行って食べて来てもいいですよ」
「私は行かない。貴方が買ってきてよ」
「え、なんで俺?」
「なんて?」
「あ、なんで俺なんですか?」と聞くと彼女はなんでこんなことを説明しなきゃいけないんだ、と言わんばかりの顔をし、
「何か貴方、勘違いしてないかしら?私は貴方と組んであげているのよ。それに現時点で7:3くらいで私の方が仕事している」と言われ、頭にきたので、
「そんな言い方しなくてもいいんじゃないですか」と返すと、
「貴方、比較優位理論って言葉知ってるかしら??貴方が少しくらい、居なくなったところでそんなに差し支えないわ、だから行って買ってきて、助手の成り損ないさん、それとも7の仕事ができるっていうのかしら」 この発言で流石の俺も完全に戦意喪失し、パンを買いに行かされることになった。
「私チョココロネ2つね」
「はい、はい...」
それから俺は学食に行く途中、冷静になって考えてみると、なんでこんなに話せるんだ、と思った。普段なら異性に話しかけられると動揺し、的外れな返答しかできないのに何故か彼女とはうまく話せる....なぜ話せるのか....答えを出すのにそう時間はかからなかった。彼女には何処か親近感いや、既視感がある、雰囲気というか、話し方というか、なんというか何処か懐かしい感じがする。
「買ってきましたよ.....」
と俺は頼まれたコロネをレジ袋から取り出し彼女の前に出すと
「遅い。それじゃあいつまで経っても助手に昇格できないわよ、あと早く袋開けて。」
「色々注文が多い人だ事....流石に袋は自分でやってくださいよ。」そう言うと、女はムッとして俺からコロネを奪い取り袋を開け、食べ始めた。最初こそはムスッとしながら食べていたが暫くすると、「もぐもぐ」と幸せそうな顔をしながら食べていた。
やはり見れば見るほど既視感を感じる俺は意を決し、直接聞いてみることにした。
「........あの....」
「なに?」
「....なんて言うか、こんな聞き方おかしいかもしれないけど、俺、貴方に会ったことありますか?」
「......はぁ?なに言っているのかしら?貴方みたいな根暗で他人とのコミュニティが皆無な人と会ったことあるわけないじゃない、それに、%*~}*\[*+$%+>~」
パンを口に頬張りながら話していたので最後の方が聞き取れなかった。
「え、最後なんて言ったんですか?」
「同じことは2度言わない」
「そ、そうですか。」
取り敢えずはこの件は保留にした。
それから暫くして、
「....なら、名前は?名前はなんて言うんですか?」
「みこと。「美しい」に「琴」」
俺は吹き出しそうになった。
彼女の名前を馬鹿にするつもりは全く無いけど、彼女の口を開けばの、じゃじゃ馬っぷりは名前と正反対だったからだ。
「美琴さんですか、これから暫くの間だけですけど、よろしくお願いします、俺のことは....」
と言い終える前に、
「誰も貴方のことなんか聞いてないわよ。」遮られてしまった。
「.........」
それから俺たちは1時間ほど作業をして上がる事にした。
図書館の外に出るとすっかり日は陰り、空は綺麗な藍色になっていた。
美琴が「綺麗....」と言っていたので俺が
「ですね」と返すと美琴は少し怪訝そうな顔をし、カバンを俺に軽くぶつけ「貴方に言ってないのよ」と言った。
それから俺たちは暫く空を眺めた後、夕影に照らされながら学校を後にした。
次の日。
俺は1、3限が授業だったので2限にパンを2つ買い、キャンパス内で唯一俺が1人になれる場所である「庭園」昼食を取ろうと思い、向かうと既に誰かがいた。
「普段なら誰もいないのに、誰なんだよ俺の至福の時間を邪魔するのは」
と思い、目を凝らしてみると昨日の女が本を読んで座っていた。
俺は近くに行き、
「あの、何してるんすか?」と言うと、
「遅い。」と本を読みながら手招きし言った。
「何か用ですか?」
庭園には2人座れるくらいのベンチが設置されていたが。
美琴の荷物が置かれていた。
「恋の賞味期限は3年らしいわよ」と本から目を離し言った。
正直、「はいはいそうですかそんなしょうもないことを言いにきたんですか」なんて思っていたが一応建前でこう返した。
「そ、そうなんですか、意外にも短いもんですね。」求めていた答えと違ったのか美琴は暫く黙り込んだ。すると、不意に美琴は口を開いた。
「カイ...貴方はよくここに来るの?」
この時確かに俺のことを名前で呼びかけた。
「来ますね、というか昼飯は毎回ここです、あの、何で俺の...」
と言い終える前に美琴に話を遮られた。
「なんで学食に行かないの?」
「察してくださいよ。」
「そうか、君はボッチ君だ」
「別に誰にも迷惑かけてないしいいじゃないですか。それに好きでなってるんです。」
美琴が次に返してくるであろう言葉は容易に想像できた、どうせまた辛口な評価をしてくるだろうと思っていた。
たが、実際には返ってきた言葉は違った。
「...本当に貴方捻くれてるわね。こんな事言いたくないけど、私とおんなじね。」
「え?」
そう言えば美琴が人と一緒にいるのを見たことがなく、何処か今いる「ここ」に愛着がないようにも見えた。
「1人は周りに気を使わなくて済むから楽で良いのだけどね、時々、喪失感に苛まれることがあるのよね」と言い終わると彼女は話しすぎてしまった、とでも思ったのか急に黙り下を向いた。
「そんなのどうってことないですよ。」
「なんでよ。」
「………収斂進化(しゅうれんしんか)って言葉知ってますか?」
「知ってるわよ。」
「美琴さんも、俺みたいに教室で空気のような存在になればそんな事どうでも良くなれますよ。」
「それって、ちょっと意味が...」
「ん....」
「まぁ、貴方はそういう人だったわよね。
「....(なぜそんな俺をさも知っているような口ぶりなのか)」
「それで、結局なんの用ですか?」
「別に、暇だから来ただけ。」と言い俺の買ってきたパンに手を伸ばす。
「それ俺のです。」
「じゃあ一つで我慢する」
この人は本気で何を言っているのかと、思った。
「まぁ、一つだけですよ。」と言い美琴にメロンパンをあげると、美琴は「アームッ」と目を瞑りメロンパンを口に頬張りモグモグしていた。
「なんであの時俺に声をかけてくれたんですか?」
「....特別な理由はないわよ、ただクラスで孤立してるのは私と貴方だけだったからってだけよ。」
「そうですか。」少しの間俺たち2人の間に沈黙が流れた。
「あのさ、良かったら俺と......友達」言い終える前に美琴の言葉にぶった斬られた。
美琴は「全く軽薄な人...」
とボソッと言った後に
「それは絶対にないわ、貴方とそんな関係になるのはもう御免よ。」と言った。
「で、ですよね....」
「じゃあ私はもう行くわ、パン美味しかった。ご馳走様。」
と言って行ってしまった。
彼女に拒否られてしまったが、俺は彼女のことが放って置けなかった。目を見ればわかる今日の彼女は何か隠し事をしていると。
しかし、こうしていられる時間も残り少ない。
もうこの場所来ることもなくなるのかと感傷に浸りつつふと窓から空を見上げると、あの時のように雲ひとつなく快晴だ。
俺の名前は小林カイリ。
これから話すのは俺が大学生だった頃の話。
好きな言葉...「孤高」。
当時、大学2回生だった俺はサークルにも入らず授業を受けたら即帰宅、土日は、自宅から一歩も出ずアニメを見たり、ひたすら勉強しているような生活をしていた。
当然、友達などできるはずもなく典型的なボッチ大学生活を送っていた。
きっと充実している生活を送っている人からしたら、「なんて惨めな奴なんだ」と思うかもしれないが、小中と「いじめ」を受けていた俺にとっては、大学では今までとは違い、誰も自分に構う奴が居ないこんな学園生活を送っている自分がむしろ好だった、それに俺は生活にアクセントなど求めていなく、そうした面でもこうした単調な生活を満喫していた。
まぁ、こんな生活もある日を境に終わってしまうんだけど...ある意味でね..
こんな生活をしているある日、一限で取っていた経済の授業で二人組を作り、
ある事柄について考えをまとめ、次回の授業でプレゼンをすると言う課題が出た。
俺は1人無言で課題に取り組んで、1段落ついたところで一息付いた。
ふと窓から空を眺めると雲ひとつなく冴え渡り、抜けるように澄み渡っていた。
「濃い藍色に煙りあがったこの季節の空ってか?」と少し格好を付けて呟いた。
暫く休憩した後、課題の続きをしていると、ある人に話しかけられた。
「あの、余っているのなら一緒にやるのはどう??」と。
「は......」あまりにも自然に話しかけて来られたので、危うく善処を取ってしまうところだった。
俺にも俺なりの学園生活がある、人に俺のカーストを変えられることによって充実した学園生活を壊されるのは御免だ、なんて思っていた。
「あ、いや、大丈夫、1人でやるからいい」と言い、手を動かしながら適当に流した。
彼女は俺に冷ややかな視線を向け、彼女は「そう、」とだけ言い行ってしまった。
暫くすると、
俺は大事なことを忘れていたことに気づいた。
「次回二人でプレゼンじゃねぇかよ。」
そう、次回は2人でプレゼン。
1人でなんかやったら笑い者になって赤っ恥をかくことになる。
それだけは避けなければならない。
咄嗟に先程話しかけてきた彼女の方に視線を向けると幸い1人で課題をしていた。
「(どうするか...超絶都合がいいけどさっきの人に頼るか...)」
俺はあんな断り方をしたにも関わらず彼女のところへ行き、人にお願いするなんて事を長い間してこなかった俺は、俗にウェイ系と呼ばれるキャラを装い、
「さ、さっきのは無しで、や、やっぱり組もうぜ!」と笑顔と呼べるには程遠い顔を彼女に向けて言った。やはり慣れていないせいか我ながら普段より5割増しでキモかった。
たが、彼女は俺に見向きもせず、課題をしているので「あの....聞こえてます?」と俺が聞くと、彼女は深いため息を吐き、気怠そうにしながら
「貴方、馬鹿なんじゃないかしら?
私がそんな頼まれ方をしてはい、そうですか、なんて言うとでも思っているの?」と言った。
「あ、いや...」
今考えればもっともだろう。
「まず、貴方あんな雑な断り方をした上にそんな態度なんてお願いする態度じゃないわよね?」
「......さ、先程はすみませんでした。今回だけ俺と組んでください。組んでくれないと2度と学校来れなくなるんで」と言って俺が頭を深々とを下げ言うと彼女は少し俺の方に体を向け、口を開いた。「全く....仕方ないから組んであげるわでも、1つ条件がある」
「な、なんですか?」
「私に対しては常に敬語で話す事」と足を組みながら言った。どんだけ高飛車な女なんだよと思いながらも、
「わ、分かりましたよ。」と言った。
てな感じで俺はこの女と組むことになった。
それから俺たちは図書館に向かい資料採集をした。
特に話を交わすこともなく2時間ほど作業をしたところで女は唐突に口を開いた。
「お腹すいた。」
「なら学食行って食べて来てもいいですよ」
「私は行かない。貴方が買ってきてよ」
「え、なんで俺?」
「なんて?」
「あ、なんで俺なんですか?」と聞くと彼女はなんでこんなことを説明しなきゃいけないんだ、と言わんばかりの顔をし、
「何か貴方、勘違いしてないかしら?私は貴方と組んであげているのよ。それに現時点で7:3くらいで私の方が仕事している」と言われ、頭にきたので、
「そんな言い方しなくてもいいんじゃないですか」と返すと、
「貴方、比較優位理論って言葉知ってるかしら??貴方が少しくらい、居なくなったところでそんなに差し支えないわ、だから行って買ってきて、助手の成り損ないさん、それとも7の仕事ができるっていうのかしら」 この発言で流石の俺も完全に戦意喪失し、パンを買いに行かされることになった。
「私チョココロネ2つね」
「はい、はい...」
それから俺は学食に行く途中、冷静になって考えてみると、なんでこんなに話せるんだ、と思った。普段なら異性に話しかけられると動揺し、的外れな返答しかできないのに何故か彼女とはうまく話せる....なぜ話せるのか....答えを出すのにそう時間はかからなかった。彼女には何処か親近感いや、既視感がある、雰囲気というか、話し方というか、なんというか何処か懐かしい感じがする。
「買ってきましたよ.....」
と俺は頼まれたコロネをレジ袋から取り出し彼女の前に出すと
「遅い。それじゃあいつまで経っても助手に昇格できないわよ、あと早く袋開けて。」
「色々注文が多い人だ事....流石に袋は自分でやってくださいよ。」そう言うと、女はムッとして俺からコロネを奪い取り袋を開け、食べ始めた。最初こそはムスッとしながら食べていたが暫くすると、「もぐもぐ」と幸せそうな顔をしながら食べていた。
やはり見れば見るほど既視感を感じる俺は意を決し、直接聞いてみることにした。
「........あの....」
「なに?」
「....なんて言うか、こんな聞き方おかしいかもしれないけど、俺、貴方に会ったことありますか?」
「......はぁ?なに言っているのかしら?貴方みたいな根暗で他人とのコミュニティが皆無な人と会ったことあるわけないじゃない、それに、%*~}*\[*+$%+>~」
パンを口に頬張りながら話していたので最後の方が聞き取れなかった。
「え、最後なんて言ったんですか?」
「同じことは2度言わない」
「そ、そうですか。」
取り敢えずはこの件は保留にした。
それから暫くして、
「....なら、名前は?名前はなんて言うんですか?」
「みこと。「美しい」に「琴」」
俺は吹き出しそうになった。
彼女の名前を馬鹿にするつもりは全く無いけど、彼女の口を開けばの、じゃじゃ馬っぷりは名前と正反対だったからだ。
「美琴さんですか、これから暫くの間だけですけど、よろしくお願いします、俺のことは....」
と言い終える前に、
「誰も貴方のことなんか聞いてないわよ。」遮られてしまった。
「.........」
それから俺たちは1時間ほど作業をして上がる事にした。
図書館の外に出るとすっかり日は陰り、空は綺麗な藍色になっていた。
美琴が「綺麗....」と言っていたので俺が
「ですね」と返すと美琴は少し怪訝そうな顔をし、カバンを俺に軽くぶつけ「貴方に言ってないのよ」と言った。
それから俺たちは暫く空を眺めた後、夕影に照らされながら学校を後にした。
次の日。
俺は1、3限が授業だったので2限にパンを2つ買い、キャンパス内で唯一俺が1人になれる場所である「庭園」昼食を取ろうと思い、向かうと既に誰かがいた。
「普段なら誰もいないのに、誰なんだよ俺の至福の時間を邪魔するのは」
と思い、目を凝らしてみると昨日の女が本を読んで座っていた。
俺は近くに行き、
「あの、何してるんすか?」と言うと、
「遅い。」と本を読みながら手招きし言った。
「何か用ですか?」
庭園には2人座れるくらいのベンチが設置されていたが。
美琴の荷物が置かれていた。
「恋の賞味期限は3年らしいわよ」と本から目を離し言った。
正直、「はいはいそうですかそんなしょうもないことを言いにきたんですか」なんて思っていたが一応建前でこう返した。
「そ、そうなんですか、意外にも短いもんですね。」求めていた答えと違ったのか美琴は暫く黙り込んだ。すると、不意に美琴は口を開いた。
「カイ...貴方はよくここに来るの?」
この時確かに俺のことを名前で呼びかけた。
「来ますね、というか昼飯は毎回ここです、あの、何で俺の...」
と言い終える前に美琴に話を遮られた。
「なんで学食に行かないの?」
「察してくださいよ。」
「そうか、君はボッチ君だ」
「別に誰にも迷惑かけてないしいいじゃないですか。それに好きでなってるんです。」
美琴が次に返してくるであろう言葉は容易に想像できた、どうせまた辛口な評価をしてくるだろうと思っていた。
たが、実際には返ってきた言葉は違った。
「...本当に貴方捻くれてるわね。こんな事言いたくないけど、私とおんなじね。」
「え?」
そう言えば美琴が人と一緒にいるのを見たことがなく、何処か今いる「ここ」に愛着がないようにも見えた。
「1人は周りに気を使わなくて済むから楽で良いのだけどね、時々、喪失感に苛まれることがあるのよね」と言い終わると彼女は話しすぎてしまった、とでも思ったのか急に黙り下を向いた。
「そんなのどうってことないですよ。」
「なんでよ。」
「………収斂進化(しゅうれんしんか)って言葉知ってますか?」
「知ってるわよ。」
「美琴さんも、俺みたいに教室で空気のような存在になればそんな事どうでも良くなれますよ。」
「それって、ちょっと意味が...」
「ん....」
「まぁ、貴方はそういう人だったわよね。
「....(なぜそんな俺をさも知っているような口ぶりなのか)」
「それで、結局なんの用ですか?」
「別に、暇だから来ただけ。」と言い俺の買ってきたパンに手を伸ばす。
「それ俺のです。」
「じゃあ一つで我慢する」
この人は本気で何を言っているのかと、思った。
「まぁ、一つだけですよ。」と言い美琴にメロンパンをあげると、美琴は「アームッ」と目を瞑りメロンパンを口に頬張りモグモグしていた。
「なんであの時俺に声をかけてくれたんですか?」
「....特別な理由はないわよ、ただクラスで孤立してるのは私と貴方だけだったからってだけよ。」
「そうですか。」少しの間俺たち2人の間に沈黙が流れた。
「あのさ、良かったら俺と......友達」言い終える前に美琴の言葉にぶった斬られた。
美琴は「全く軽薄な人...」
とボソッと言った後に
「それは絶対にないわ、貴方とそんな関係になるのはもう御免よ。」と言った。
「で、ですよね....」
「じゃあ私はもう行くわ、パン美味しかった。ご馳走様。」
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