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第四章 天才魔道騎士の想い
35 巻戻りの魔法
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「ふざけるなっ!」
婚約破棄?
オレは、城のローランの部屋に押しかけ、奴の胸ぐらを掴み怒鳴った。怒りでグラグラ沸騰しそうだった。噛んだ唇から血が滲み、鉄の味がする。
「ローラン、てめぇっ!」
「まぁ、待て。そんなに殺気をだして、君が本気を出したら僕殺されちゃうよ。」
スッキリ整えられた赤毛混じりの金髪頭で、涼しい顔をしたローランは笑顔を見せる余裕さえあった。
(オレがてめぇを殺さねぇとでも思ってるのか? 暴走したオレの魔力が何すっかはオレ自身でも分かンねぇぞ。)
「一度殺されろっ、てめぇっ!」
魔力を抑えるのも限界だった。体の内側から激しくドクッドクッドクッと何かが今にも溢れ出そうだ。現に魔道騎士の腕輪からは今まで見たこともねぇ鮮血のように真っ赤な水泡が吹きこぼれてる。自分の体なのに自分の体じゃないみてぇで、皮膚の表面がピリピリと弾け、全身の毛もブワリッと逆立ってるようだ。
「ひどいな。一度落ち着け。」
胸ぐらを掴む俺の手を奴は掴むと、緑碧の瞳でオレを見た。
「・・・落ち着いてられっかよ。」
低いがなり声だけが何とか喉から搾り出せた。その一言を言うのがもう精一杯だ。意識が飛びかけてる。
(やべぇ、このままじゃ城ごと吹っ飛ばしちまう。)
「リーチェリアのためだと言ってもかい?」
「は?」
リーチェの名前だけハッキリと聞こえた。
(こいつ、何言ってンだ?)
ローランはオレの手を外しシャツの襟元を整えると、声を潜めた。
「ノワールのことは知ってるね? 彼女と彼女の養父が妃の座を狙い、リーチェを殺そうとしている。それだけじゃない。密猟にも手を染めてるらしい。」
静かな怒りが満ちたような声。薄い唇からガリリッと音がして、切れ長の瞳に映るのは揺らめく魔道騎士の耳飾り。
「・・・ッ・!? 妃の座を狙いリーチェを殺す?! ンなバカなッ!! 」
「ただ、一切の証拠がない。だから私は、リーチェの命を守るため婚約破棄をした。そしてノワールたちの尻尾を掴むために、わざと彼女に騙される”囮” に自らがなることにしたんだよ。」
ローランは眉を寄せ難しい顔をしている。スラリと伸びた上品な佇まいに暗い影が落ちた。『冷静』だの『知的』だの言われてるが、こいつがンな簡単に私情を捨てらンねー奴なのは知ってる。
「・・・じゃ、オレがリーチェと結婚する。そうすれば一番近くでリーチェを守れる。文句ねぇな?」
「残念だけどね。君なら彼女を幸せにしてくれるだろ?」
「ったりめーだっ!」
リーチェがこれから先、もし誰か別の奴を好きンなったらオレは耐えられるかっ?
(いや、今は守れればそれでいい。)
「私だってリーチェのことはそれなりに本気だったんだよ。でも親友の君から横取りなんて、後味が悪いしね。」
ローランの部屋を出てくとき、奴が何やらぶつぶつ話してたが、オレの頭はどうすればリーチェを守れるかでいっぱいだった。
◇ ◇ ◇
そう思ってたのに。
『聖女様へリーチェリア様が毒を飲ませたんですって!』
『ローラン王子に惚れ薬を飲ませて裸で迫ったって!』
『夜な夜ないろんな男性と浮き名を流してるらしいわよ!』
ンでこんな根も葉もない噂が出回るようになってんだ?
『お静かに! シエル様に聞かれますわよ。』
『シエル様、お可哀想に。』
『私がお慰めして差し上げたいわ。』
『あなたはただ、シエル様に抱かれたいだけでしょう。』
胸糞わりぃっ!城に行くたび、聞こえてくる数々の噂。ある時から急に増えた。リーチェがローランに婚約破棄されてから一気に噴出した。
(リーチェは今日だって、屋敷で甘いモン作ってるだけだっつーのに。)
オレはリーチェが待つ屋敷へと帰る。見慣れねぇ馬車が入り口にいた。
(誰か来てンのか? リーチェの部屋から話し声がする? なぜだかすごく嫌な予感がした。)
「リーチェ・・・?」
ガチャッ
「あら、シエル! 待ってたのよっ!今、ノワール様が話をしたいとちょうど来てい・・・っ!!」
ゴボッ
オレの方をリーチェが振り向いた瞬間だった。優しげに目元を綻ばせ頬を染めた笑顔が、突然真っ赤な血に染まった。「シ・・エルッ・・。」
リーチェの背後にいたのは、血でまみれたナイフを手に持ち狂気の顔をしたノワール。ナイフの切先はあっという間にドレスを血で滲ませていく。最後に見たオレンジの髪を振り乱したノワールの顔は、引き攣ったような奇妙な笑いで目が完全にイッテいた。
突如銀の竜巻が起こり、まるで紙ペラのようにノワールの体を巻き込んだ。
「ッギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
耳を引き裂くようなノワールの甲高い悲鳴はしばらく止まなかった。ミシッミシッミシッと手、足、胴体とノワールの体が冷たく凍っていく。
ピキンッ
エグい音を最後に、恐怖に引き攣った顔のまま肉の塊は脆い氷の塊となり、そして、、、
カシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッン
竜巻が止んだ時、氷の塊が突然浮力を失ったように急降下で床に叩きつけられ、粉々に砕け散った。
「あぁあああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
男の悲鳴が止んだ時、背中からナイフを刺された銀の髪の女性と重なるように死んでいたのは、まだ若い1人の魔導騎士だった。
◇ ◇ ◇
(オレは禁術を使ってしまった。時を巻き戻す魔法。)
聖女であったノワールが、リーチェを背中から刺して殺していたのを見た時、湧いてくる怒りを、悲しみを止めらンなかった。たとえそれが禁術で自分の命まで失われるモンだったとしても。
許さねぇ。
オレは誓う。
二度とリーチェには指一本触れさせねぇ!
夜も怪しまれずに傍でリーチェを守るために、巻戻った2度目の世界の中で、オレは銀のユニコーンへと姿を変えた。
婚約破棄?
オレは、城のローランの部屋に押しかけ、奴の胸ぐらを掴み怒鳴った。怒りでグラグラ沸騰しそうだった。噛んだ唇から血が滲み、鉄の味がする。
「ローラン、てめぇっ!」
「まぁ、待て。そんなに殺気をだして、君が本気を出したら僕殺されちゃうよ。」
スッキリ整えられた赤毛混じりの金髪頭で、涼しい顔をしたローランは笑顔を見せる余裕さえあった。
(オレがてめぇを殺さねぇとでも思ってるのか? 暴走したオレの魔力が何すっかはオレ自身でも分かンねぇぞ。)
「一度殺されろっ、てめぇっ!」
魔力を抑えるのも限界だった。体の内側から激しくドクッドクッドクッと何かが今にも溢れ出そうだ。現に魔道騎士の腕輪からは今まで見たこともねぇ鮮血のように真っ赤な水泡が吹きこぼれてる。自分の体なのに自分の体じゃないみてぇで、皮膚の表面がピリピリと弾け、全身の毛もブワリッと逆立ってるようだ。
「ひどいな。一度落ち着け。」
胸ぐらを掴む俺の手を奴は掴むと、緑碧の瞳でオレを見た。
「・・・落ち着いてられっかよ。」
低いがなり声だけが何とか喉から搾り出せた。その一言を言うのがもう精一杯だ。意識が飛びかけてる。
(やべぇ、このままじゃ城ごと吹っ飛ばしちまう。)
「リーチェリアのためだと言ってもかい?」
「は?」
リーチェの名前だけハッキリと聞こえた。
(こいつ、何言ってンだ?)
ローランはオレの手を外しシャツの襟元を整えると、声を潜めた。
「ノワールのことは知ってるね? 彼女と彼女の養父が妃の座を狙い、リーチェを殺そうとしている。それだけじゃない。密猟にも手を染めてるらしい。」
静かな怒りが満ちたような声。薄い唇からガリリッと音がして、切れ長の瞳に映るのは揺らめく魔道騎士の耳飾り。
「・・・ッ・!? 妃の座を狙いリーチェを殺す?! ンなバカなッ!! 」
「ただ、一切の証拠がない。だから私は、リーチェの命を守るため婚約破棄をした。そしてノワールたちの尻尾を掴むために、わざと彼女に騙される”囮” に自らがなることにしたんだよ。」
ローランは眉を寄せ難しい顔をしている。スラリと伸びた上品な佇まいに暗い影が落ちた。『冷静』だの『知的』だの言われてるが、こいつがンな簡単に私情を捨てらンねー奴なのは知ってる。
「・・・じゃ、オレがリーチェと結婚する。そうすれば一番近くでリーチェを守れる。文句ねぇな?」
「残念だけどね。君なら彼女を幸せにしてくれるだろ?」
「ったりめーだっ!」
リーチェがこれから先、もし誰か別の奴を好きンなったらオレは耐えられるかっ?
(いや、今は守れればそれでいい。)
「私だってリーチェのことはそれなりに本気だったんだよ。でも親友の君から横取りなんて、後味が悪いしね。」
ローランの部屋を出てくとき、奴が何やらぶつぶつ話してたが、オレの頭はどうすればリーチェを守れるかでいっぱいだった。
◇ ◇ ◇
そう思ってたのに。
『聖女様へリーチェリア様が毒を飲ませたんですって!』
『ローラン王子に惚れ薬を飲ませて裸で迫ったって!』
『夜な夜ないろんな男性と浮き名を流してるらしいわよ!』
ンでこんな根も葉もない噂が出回るようになってんだ?
『お静かに! シエル様に聞かれますわよ。』
『シエル様、お可哀想に。』
『私がお慰めして差し上げたいわ。』
『あなたはただ、シエル様に抱かれたいだけでしょう。』
胸糞わりぃっ!城に行くたび、聞こえてくる数々の噂。ある時から急に増えた。リーチェがローランに婚約破棄されてから一気に噴出した。
(リーチェは今日だって、屋敷で甘いモン作ってるだけだっつーのに。)
オレはリーチェが待つ屋敷へと帰る。見慣れねぇ馬車が入り口にいた。
(誰か来てンのか? リーチェの部屋から話し声がする? なぜだかすごく嫌な予感がした。)
「リーチェ・・・?」
ガチャッ
「あら、シエル! 待ってたのよっ!今、ノワール様が話をしたいとちょうど来てい・・・っ!!」
ゴボッ
オレの方をリーチェが振り向いた瞬間だった。優しげに目元を綻ばせ頬を染めた笑顔が、突然真っ赤な血に染まった。「シ・・エルッ・・。」
リーチェの背後にいたのは、血でまみれたナイフを手に持ち狂気の顔をしたノワール。ナイフの切先はあっという間にドレスを血で滲ませていく。最後に見たオレンジの髪を振り乱したノワールの顔は、引き攣ったような奇妙な笑いで目が完全にイッテいた。
突如銀の竜巻が起こり、まるで紙ペラのようにノワールの体を巻き込んだ。
「ッギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
耳を引き裂くようなノワールの甲高い悲鳴はしばらく止まなかった。ミシッミシッミシッと手、足、胴体とノワールの体が冷たく凍っていく。
ピキンッ
エグい音を最後に、恐怖に引き攣った顔のまま肉の塊は脆い氷の塊となり、そして、、、
カシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッン
竜巻が止んだ時、氷の塊が突然浮力を失ったように急降下で床に叩きつけられ、粉々に砕け散った。
「あぁあああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
男の悲鳴が止んだ時、背中からナイフを刺された銀の髪の女性と重なるように死んでいたのは、まだ若い1人の魔導騎士だった。
◇ ◇ ◇
(オレは禁術を使ってしまった。時を巻き戻す魔法。)
聖女であったノワールが、リーチェを背中から刺して殺していたのを見た時、湧いてくる怒りを、悲しみを止めらンなかった。たとえそれが禁術で自分の命まで失われるモンだったとしても。
許さねぇ。
オレは誓う。
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