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第五章 シエルとの逃避行
42 夢で見た光景??
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呆気にとられ、「は???」と固まる私に、「ん?リーチェの口元にたくさんクリームがついてっから、美味しそうだなって。」と長いまつ毛を揺らし微笑む。
(え? そんなに口にクリームつけてた???)
慌てて指で自分の口元をなぞる私を、シエルは何とも艶めかしい表情で見ていた。
じゃなくてっ!! 「もうっ!私じゃなくてこっちでしょっ!」と、スプーンをズイッと口元に差し出そうとした時だった。
シエルは急に立ち上がり、「ちょっと待ってろ。」と背中で私を隠すように立ち上がる。
視線の先にいたのは、ヒョコリと木の影から可愛らしい顔を覗かせる希少獣。
「インファントムだわ!!」
ウサギに似た真っ白な毛が高価な価格で取引されている。めったに人前に姿を現さないのに、危険な魔獣もいる魔女の森で出会うなんてっ!
「人の姿を見ても逃げねぇのは珍しいな。」
シエルが一歩足を踏み出すと、シエルを避けるように動きはするが逃げだす気配はない。
「ねぇ、もしかしてお前もこのスイーツ食べたい?」
私は、クリクリとした金目をこちらに向けてるインファントムにスプーンを差し出した。タンッとジャンプしながらすぐ目の前まで来ると、白くてもふもふした長い耳を下に垂らしながら、パクリッとスイーツを口に含んでる。
「ふふっ、かわいいなぁ~。」
結局インファントムは、大量に作ったスイーツの半分ほどをペロリと平らげてしまった。
「ねえ、少しだけお前の体を触らせて。」
あまりの可愛さに我慢できずに手を伸ばしてしまった。逃げないでね、何もしないから。心の中で呼びかけながら背中にゆっくりと手を当てる。
置き物のようにじっと固まってる!!! とりあえず動き出す様子はなさそうだ。指先でフワフワの白い毛を撫でてあげると、気持ちよさそうにビー玉のような金目を瞑る。
(はぁ~のどかだわ。ここが魔獣の棲家がある森なんて忘れてしまいそう。)
撫でる手の動きに合わせるようにどんどん丸まり、しばらくの間ウトウトしていたインファントム。私の方にまで眠気が移ってきそうなほど時間が経った頃、満足気にミュウーミュウーと小さな鳴き声を発しながらどこかへまた去っていった。
インファントムが食べてる間、ずっと無言だッたシエルがポツリと呟いた。
「もしかしてお前の花蜜が、ノワールらが探してる例の『魔力』なんじゃねぇか?」
やっぱり? シエルに言われるまでもなくその可能性は考えた。だって、実際にスイーツを持ち歩いてる時にだけ希少獣によく会うのだもの。
「”瘴気” を発生させない、という点は分からないけれど、花蜜に希少獣が引き寄せられるというのはあり得るわ。どうして私が作る花蜜にそういう効果があるか分からないけど。」
首を捻る私に、「いや、それは分かるだろ。」とシエルは少々呆れた目を向ける。白くて長い指が、サラサラの紺碧の髪をガシッとひっかいた。
「え?」
「単にこれまで、花魔法でスイーツを作ろうという発想をする奴がいなかっただけなんじゃ・・・。」
「あーーーあーーーソウカモ・・・。」
ハハハッと枯れた笑いが出てしまう。
それはそうだ。別に私の花魔法が特別なんじゃなくて、単にこれまで誰も試してこなかったというだけだ。
なるほどねー、と思わぬ発見も、お腹が空いてる私には食べ物ほどの吸引力はない。朝食を再開しようとシエルの方へ振り返った時だったッ!!
!?
(夢で、、、見た光景!?)
「いやっ、やめてっ、シエルッ!」
氷のような冷たい瞳、人間離れした美しさゆえに、そこには恐ろしさだけがある。
(どうして鋭い刃を私に向けているの? 魔道騎士の服は着ていないけど夢の光景と似てる。)
「ごめん、リーチェ。」
魔道具の青いナイフの切先が魔力をまとわせ始めた。無表情な顔で淡々とひどい言葉を吐く。怖いっ!嫌ッ! 信じてたのにっ!
「ごめんって何よ!どうしてッ!」
目から涙が溢れ、震えが止まらない。歯がガクガクと鳴り、体の芯からヒヤリッとした感覚が伝わってくる。
「オレだって、できればこんなことしたくはなかった。仕方ねぇんだ。」
そして死んだような目で、ナイフを突き刺した。
「助けてッ、いゃああああぁあああああああああああああああああ!!!」
大量の血が飛び散る。
(私はやっぱりシエルに殺された? これでゲームオーバーなの・・・?)
(え? そんなに口にクリームつけてた???)
慌てて指で自分の口元をなぞる私を、シエルは何とも艶めかしい表情で見ていた。
じゃなくてっ!! 「もうっ!私じゃなくてこっちでしょっ!」と、スプーンをズイッと口元に差し出そうとした時だった。
シエルは急に立ち上がり、「ちょっと待ってろ。」と背中で私を隠すように立ち上がる。
視線の先にいたのは、ヒョコリと木の影から可愛らしい顔を覗かせる希少獣。
「インファントムだわ!!」
ウサギに似た真っ白な毛が高価な価格で取引されている。めったに人前に姿を現さないのに、危険な魔獣もいる魔女の森で出会うなんてっ!
「人の姿を見ても逃げねぇのは珍しいな。」
シエルが一歩足を踏み出すと、シエルを避けるように動きはするが逃げだす気配はない。
「ねぇ、もしかしてお前もこのスイーツ食べたい?」
私は、クリクリとした金目をこちらに向けてるインファントムにスプーンを差し出した。タンッとジャンプしながらすぐ目の前まで来ると、白くてもふもふした長い耳を下に垂らしながら、パクリッとスイーツを口に含んでる。
「ふふっ、かわいいなぁ~。」
結局インファントムは、大量に作ったスイーツの半分ほどをペロリと平らげてしまった。
「ねえ、少しだけお前の体を触らせて。」
あまりの可愛さに我慢できずに手を伸ばしてしまった。逃げないでね、何もしないから。心の中で呼びかけながら背中にゆっくりと手を当てる。
置き物のようにじっと固まってる!!! とりあえず動き出す様子はなさそうだ。指先でフワフワの白い毛を撫でてあげると、気持ちよさそうにビー玉のような金目を瞑る。
(はぁ~のどかだわ。ここが魔獣の棲家がある森なんて忘れてしまいそう。)
撫でる手の動きに合わせるようにどんどん丸まり、しばらくの間ウトウトしていたインファントム。私の方にまで眠気が移ってきそうなほど時間が経った頃、満足気にミュウーミュウーと小さな鳴き声を発しながらどこかへまた去っていった。
インファントムが食べてる間、ずっと無言だッたシエルがポツリと呟いた。
「もしかしてお前の花蜜が、ノワールらが探してる例の『魔力』なんじゃねぇか?」
やっぱり? シエルに言われるまでもなくその可能性は考えた。だって、実際にスイーツを持ち歩いてる時にだけ希少獣によく会うのだもの。
「”瘴気” を発生させない、という点は分からないけれど、花蜜に希少獣が引き寄せられるというのはあり得るわ。どうして私が作る花蜜にそういう効果があるか分からないけど。」
首を捻る私に、「いや、それは分かるだろ。」とシエルは少々呆れた目を向ける。白くて長い指が、サラサラの紺碧の髪をガシッとひっかいた。
「え?」
「単にこれまで、花魔法でスイーツを作ろうという発想をする奴がいなかっただけなんじゃ・・・。」
「あーーーあーーーソウカモ・・・。」
ハハハッと枯れた笑いが出てしまう。
それはそうだ。別に私の花魔法が特別なんじゃなくて、単にこれまで誰も試してこなかったというだけだ。
なるほどねー、と思わぬ発見も、お腹が空いてる私には食べ物ほどの吸引力はない。朝食を再開しようとシエルの方へ振り返った時だったッ!!
!?
(夢で、、、見た光景!?)
「いやっ、やめてっ、シエルッ!」
氷のような冷たい瞳、人間離れした美しさゆえに、そこには恐ろしさだけがある。
(どうして鋭い刃を私に向けているの? 魔道騎士の服は着ていないけど夢の光景と似てる。)
「ごめん、リーチェ。」
魔道具の青いナイフの切先が魔力をまとわせ始めた。無表情な顔で淡々とひどい言葉を吐く。怖いっ!嫌ッ! 信じてたのにっ!
「ごめんって何よ!どうしてッ!」
目から涙が溢れ、震えが止まらない。歯がガクガクと鳴り、体の芯からヒヤリッとした感覚が伝わってくる。
「オレだって、できればこんなことしたくはなかった。仕方ねぇんだ。」
そして死んだような目で、ナイフを突き刺した。
「助けてッ、いゃああああぁあああああああああああああああああ!!!」
大量の血が飛び散る。
(私はやっぱりシエルに殺された? これでゲームオーバーなの・・・?)
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