スイーツを作りたい悪役令嬢は天才魔道騎士から逃げ出したい〜巻戻りは婚約破棄で始まった!!

来海ありさ

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第六章 断罪

45 夫婦とは???

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『リーチェリア、騙す形になってごめんね。』
ローラン王子は眉を下げ、緑碧の瞳で私を見た。

「ノワール様との婚約はどうなったのですか?」

『今はね、わざと騙されたフリをして泳がせているんだよ。』


「性格悪ぃな。」
スミレ色の瞳でジトリッと見て、シエルはフンッと鼻を鳴らした。


『城の至る所で、私はそのガラス玉のようなもので監視されていてね。君と2人きりの時にもその事を説明できないまま、あんな事になってしまった。』

「全て演技だったのですか!?」

最初の頃は優しく穏やかだったローラン王子が、いつからかよそよそしく私を遠ざけるようになった。今思えば、ノワール様が神殿から聖女認定されてからだわ。

『ノワールの事に気づいてからはそうだね。王族教育で私情を持ち込まないのにも慣れてたしね。でも、本当は君といる時だけは素の自分でいられたんだよ。』

赤毛混じりの金髪を撫でつけるようにして、ふふっと少しはにかむように笑った表情は、最初に出会った頃のローラン王子だった。

「モーヴェ家の私兵まで城に入り込ませてちゃ、ダメだろ。」

ケッと呆れたような声を出す。”モーヴェ家” という言葉に反応し、シエルのターコイズの腕輪からパチパチッと魔力が弾けた。

いつか不敬罪で捕まりそうでヒヤヒヤしてしまう。

『だが、モーヴェ子爵を捕える時に兵に抵抗されては厄介だからね。彼の私兵は城で囲っておいて、あとでたっぷりお返しをしてあげよう。』

瞳の奥に殺気を滲ませ威圧感たっぷりに言い放つ姿は、王子というより魔王???

「てめぇは昔からそーいう奴だよ。」

『そろそろ仕事に戻らなければ。』とガタッと椅子から立ち上がったローラン王子は、グイッと顔をアップに映し出し妖しい笑みを浮かべた。

『リーチェリア、1つだけ君に伝えておいても良いかな? 
ーーーー君との婚約破棄は本心ではなかった・・・』

(へっ? )

途端、ガラスの玉をサッとシエルの手が覆う。

「堂々と人の妻を口説いてンじゃねぇ。」

『ふふっ、シエルに本気で怒られそうだ。私は失礼しよう。』

「妻・・・。」

「ただの言葉のあやだ。」
耳まで赤くなった顔を隠すようにシエルが俯くと、サラサラした紺碧の髪が長いまつ毛へと落ちていく。

でも本当の意味でシエルと夫婦となった時、どういう風に私たちの関係が変わるんだろう。
シエルと初夜を迎えるのかしら???

想像しただけで、トクンッと胸が鳴った。

(きっと心臓がもたない。)

だって、シエルってすっごく口は悪いのに、私に触れる手つきはまるで壊れ物に触れるかのようにすごく優しい。しかもこんな色気の塊みたいな身体で求められたら!?



全身が熱に侵されたようで、思わず両手で顔を隠してしまう。
(私ったら何を考えているのっ!)

バクバクとする心臓を落ち着かせるように、息を整える。

私とシエルはずっと幼馴染だった。軽口をお互い言い合って、でも困った時はシエルはなんだかんだいいながらも必ず助けてくれた。

それだけは、多分本物の夫婦になってもあまり変わらないような気がする。

もしかしたら顔が真っ赤かもしれないわと思いつつ、顔を上げ、私を愛おしそうに見つめる瞳に微笑みを映す。

「じゃあ・・・シエルは私の旦那様?」

ガラス玉をつけた小鳥がチュンッチュンッとさえずり、シエルの手をすり抜け洞窟の外へと飛び立っていく。

私の言葉にシエルは腕で口元を塞ぐように覆い、「ゆ、夢・・・???」と、フラフラッと上半身を揺らした。



ターコイズの耳飾りの金属音でよく聞こえず、「え?」と、聞き返すと真っ赤な顔で俯いてる。濃紺の髪に隠れてよく見えないけど、歯を食い縛ってこみ上げてくる何かに耐えているようにも見える。怒ってるように見えなくもない。

「シエル?」


呼びかけると腕で目元をサッと拭い、そろそろと顔を上げたシエルの目は真っ赤だった。

(泣いてた???)

心配で顔を近づけると、「何でもねぇ。ーーーー城へ戻るぞ。」と顔をプイッと背けてしまった。


城へ戻る。そうだ、問題は何も解決していないのだわ。

膝の上で固く手を握りしめていると、ガサッゴソッとまたもや何かが洞窟へ入ってくる音がした。


(まさか魔獣!?)


息を潜めて音のする方向を見る。
シエルは立ち上がりもせず「来たな。」と、視線を一べつだけし「ハァ~」とため息を吐いた。
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