スイーツを作りたい悪役令嬢は天才魔道騎士から逃げ出したい〜巻戻りは婚約破棄で始まった!!

来海ありさ

文字の大きさ
46 / 53
第六章 断罪

46 迎え

しおりを挟む
『2人ともこんなとこまで来てたんだね。』
サラサラの水色の髪を肩まで垂らし、女みたいな格好をしたテオがいた。

「テオドールッ、無事だったの?!」
リーチェが安堵したように駆け寄るが、身なりも整ってるし、城で離れ離れになった後、命からがらと言うわけではねぇだろう。綿毛の塊みてぇなもンが頭にくっついてるが、胞子を降らせる花の側でも通ってきたか??

『ローラン王子が、魔鳥の後を追えって逃がしてくれたから。』

リーチェが「胞子がついてるわよ。」と頭についてる綿毛を手ではらうと、気づいてなかったのか少し顔を赤らめながら答える。

「馬はどした?」
ミラリアの街中からここまで徒歩で来るのは、いくら何でも無理な距離だ。

『魔獣に殺されたら可哀想なので、魔女の森に入る前に逃しました。わが屋敷の馬ではありませんでしたから。』

「妥当だな。普通の馬ならビビってそもそも入ってこねぇだろうし。」

リーチェが魔獣という言葉を聞いて、肩を震わせブルッと身震いした。

「オレがついてる。」
華奢なリーチェの肩を抱き、心配そうにフルフルと揺れてるマゼンタの瞳を覗き込む。

(このままオレの腕の中だけに、閉じ込めてしまえたらいいのに。)

『ダメですよ、兄様っ!リーチェリアの鈍感さをいいことに、必要以上の接触はッ!』
テオがクリッとした大きな瞳でキッと睨むと、なぜか赤い耳飾りまでぴょこんと跳ねた。

(あ~こりゃ、リーチェまでテオに懐かれちまったな。)

「え?」
リーチェがテオの言葉に反応し潤んだ瞳でオレの顔を見上げるが、そーいうとこが鈍感と言われてンのに。

「こんなの普通だろ?」
全然足りねぇ。本当はリーチェの全てを奪い尽くしたい。

『兄様を狙う令嬢たちからの嫉妬が、全部リーチェリアに向かうんですからっ!』
テオはプンスカッと眉を吊り上げ、頬を膨らます。

「ったく、テオは小姑みてぇな奴だな。」

「ふふっ、2人とも仲が良いわね!」
リーチェがオレとテオのやり取りを見ながら赤い唇を綻ばせ、ふわりっと楽しそうに笑う。

『もうっ~、あんたってほんと誰かがついてないと危なっかしいよね。』
テオが肩に下げてた袋を、ドサッと地面に置いた。

「何だ、その袋は?」

『用意されてた変装用の服を持ってきたんです。あ、魔鳥が連れてってくれたんです。ローラン王子の知り合いらしいミカエルという商人の店に。もちろん兄様の剣もこの通りちゃんと持ってきましたよ。』

背中に背負っていた両刃のロングソードを目の前にかざしてくれるが、そんなことよりミカエルという名前が気になるんだが。

「嫌な予感がする。」
リーチェにちょっかいかけてた奴だ。よりにもよって、ローランも何でそんな奴に頼むかなぁ。

『大丈夫ですよ。さ、兄様、リーチェリア、着替えてください。』

◇   ◇   ◇


「こんな感じでいいのかしら??? 」

「やっぱり。」

オレは頭を抱えたくなった。ミカエルが寄越したのは、旅芸人の衣装だった。

リーチェが薄紫の薄い衣だけを纏って目の前にいる。胸や腰の曲線を強調するようなデザインに、今にも脱げそうな心許ない留め具。しかも布越しに肌が透けそうだ。

胸元と手首と足首につけた金属の飾りが、リーチェが動くたびにカランッカランッと耳に心地よい音を立てる。

(こんなの今にも襲ってくれって言ってるようなもンじゃねーか。)

『これってローラン王子の趣味???』
テオも耳まで赤くして戸惑ってるが、ローランっつーよりミカエル本人のごりごりの趣味丸出しだろ、これ。あの女好きがッ!

「で、でもこれなら貴族の令嬢には見えないわ。」

「間違いなく、下心つきで男の視線は増えそうなんだが。」
(2人きりの時なら文句ねぇんだけど。)

『それ、着方が違うんじゃ???』
テオが首を捻る視線の先を見ると、確かに首の留め具のとこがだぶついて太ももが露わになっている。リーチェの扇情的な白い太ももを直視すると、理性が壊れそうだったので見ねぇようにしてたが。


(このままだとやばいっ。とにかくオレの理性やら何やらいろいろやばい。)

「リーチェ、これはここだろ。」
オレは今にも外れそうな首のとこについてた金の留め具を髪に引っかからねぇようそっと外し、代わりに腰のところへ巻きつけた。

「後はココとココをこうやって結んで。」少し動いただけでぱらりと落ちてきそうな布を1つ1つ丁寧に留めていく。おかげで太もも部分は隠れたが、これ、へそが見えるデザインか??? 柔肌に食い込んだ布が妙にエロい。

「シ、シエルッ!」

リーチェが今頃照れて体を隠すように腕をクロスさせるのを見て、テオが子犬みてぇにキャンキャン騒ぐ。

『兄様はリーチェリアに甘すぎますっ!だからいつまで経ってもこんな頼りないんですからっ!』


「オレはもっと甘やかしてぇンだ。」

リーチェが羞恥に潤んだ瞳を見開き「ひゃいっ?」とワナワナと唇を揺らす。

「とりあえず上からローブを羽織れば大丈夫だろ。」

袋の中から、2人分のブラウンのローブを取り出す。なぜかテオだけ、白のゆったりとしたズボンと黒のベストで、エキゾチックな笛吹きのような衣装だ。

『兄様、密猟が横行して、城周辺の瘴気が一気に増えています。』

「だろうな。モーヴェ家の野郎、好き放題やりやがって。」
今やモーヴェ家は、悪徳なやり方で一財産築いたと聞く。金の力で王家に反旗を翻し、寝返った奴もなかにはいるだろう。奴が厄介なのは、隣国や取り引先の国の荒くれ共を金で買い、かなりの軍事力も個人で持ってるってことだ。

前の世界でなぜノワールがリーチェを刺し殺したのかずっと疑問だった。でもそれも、リーチェの魔力が欲しいという馬鹿げた理由だったんだ。

考えるほど怒りでどうにかなりそうだ。そんな冷静さを欠いた気持ちが一瞬で凪ぐ。

「シエル、早く戻りましょう。」

「ああ、、、とりあえずユニコーンの姿で街まで戻る。街に着いたらバレねぇよう旅芸人の姿で城へ近づく。2人とも乗れ。」

風もないのに片耳で藍の色を振りまくように耳飾りが揺れる。自分の体が銀の粉を纏うのを自覚する。ホワイトゴールドの光の中に溶けちまいそうだ。内側の魔力の流れが強い渦を巻き頂点に達したとき、オレはユニコーンへと姿を変えた。

「あんた鈍そうだから、先に乗りなよ。」
テオがリーチェの手を引き、落ちないようにと甲斐甲斐しく世話を焼きながら先に乗せようと悪戦苦闘するが、、。慣れねぇ服でもたもたと乗りづらそうだ。それでも何とかリーチェはたどたどしくユニコーンの背にまたがるように腰を下ろすと、首に腕を巻きつけた。

その様子をハラハラとした様子で見ていたテオがポツリと呟く。



「兄様が人の姿だったら、相当際どい体勢なんだけど。」


~~っ!!! 

わざわざ言わなくていいことを言うところが、まだ子どもだっつーんだ。テオの言葉にリーチェが動揺して動くから、余計に太ももの感触を感じちまうじゃねーか。



リーチェが湖で裸でオレに抱きついてきた時も、衝動を抑えるのにどんなに苦労したかっ!


(オレ、今晩、正気でいられっかな???)
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~

水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」 夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。 王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。 「左様でございますか」 彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

結婚して3年経っても子供ができないという理由で離縁されたエマは、前世の記憶を思い出して幸せになる。周りが勝手に復讐してくれました。

山田 バルス
恋愛
 結婚三年目の春、エマは伯爵家の夫アンドレオから突然、側室を迎える話を告げられる。子をなせなかったことを理由に、彼女は僅かな補償のみで離縁された。妻として過ごした三年間は「無価値だった」と突きつけられ、エマは貴族社会から静かに切り捨てられる。  また実家の父母の墓参りに行くと、当主になっていた兄に離縁金を奪われてしまう。  大ピンチのエマには、秘密があった。なんと彼女は幼少期に前世の記憶を思い出していたのだ。  かつて観光地で石を磨き、アクセサリーを作り、人に喜ばれる仕事をしていた人生。何も持たない今だからこそ、もう一度「自分の手で生きる」ことを選び、あの人が住む商業国家スペイラ帝国へ向かう決意をする。  国境への道中、盗賊に襲われるが、護衛兵ロドリゲスの活躍で難を逃れる。彼の誠実な態度に、エマは「守られる価値のある存在」として扱われたことに胸を打たれた。  スペイラ帝国では身分に縛られず働ける。エマは前世の技術を活かし、石を磨いてアクセサリーを作る小さな露店を始める。石に意味を込めた腕輪やペンダントは人々の心を掴み、体験教室も開かれるようになる。伯爵夫人だった頃よりも、今の方がずっと「生きている」と実感していた。  ある朝、ロドリゲスが市場を訪れ、エマの作ったタイガーアイの腕輪を購入する。ところがその夜、彼は驚いた様子で戻り、腕輪が力を一・五倍に高める魔道具だと判明したと告げる。エマ自身は無意識だったが、彼女の作るアクセサリーには確かな力が宿っていた。  後日二人は食事に出かけ、エマは自分が貴族の妻として離縁された過去を打ち明ける。ロドリゲスは強く憤り、「最悪な貴族だ」と彼女と一緒になって怒ってくれた。その気持ちが、エマにとって何よりの救いだった。彼は次に防御力を高める腕輪を依頼し、冒険者ギルドで正式な鑑定を受けるよう勧める。  翌日、冒険者ギルドで鑑定を行った結果、エマの腕輪は高い防御効果を持つことが判明。さらに彼女自身を鑑定すると、なんと「付与特化型聖女」であることが明らかになる。聖女が付与した魔道具は現実の力として強く発現するのだ。  価値がないと切り捨てられた人生は、ここでは確かな力となった。スペイラ帝国で、聖女エマの新しい人生が、静かに、そして輝かしく始まる。

処理中です...