9 / 13
九 蒼の札
しおりを挟む
「親父ー。少しいいかぁ?」
「たくみか? どうした?」
居間で本を読んでた親父は、パタンッと本を閉じて顔を上げた。
ーーー言い出しづれぇな。自分からこんな事聞いたこともねぇから、親父がどんな反応するか予想つかねぇ。
「・・・。例えばだけど、人が死ぬ時に憑く『鬼』を祓う方法教えてくれ。」
自然と肩が上がり、声が上擦る。誰に憑いてるとか、追求されたらやべぇし、まさか大事にはならねぇよな。
「珍しいな。たくみの方からそんな事聞いてくるなんて。ーーー誰に憑いてる? お前の知り合いか?」
予想に反して、親父はそれ以上追求する様子でもなく、いつもの冷静な親父だった。
「んっ?まあ、うん。」
親父は『鬼』が見えねぇから信じてないとか?? それとも、仕事柄、こう言う話に慣れてるだけか??
「可哀想だが、人の生き死にをコントロールすることはできない。」
・・・ッ・・・
どっちでもなかった。陰陽師の仕事の範囲外だから、手を出すな、っつってるンだ。
「はぁっ?んじゃ、いったい、オレたちがやってるのは何なんだよ!」
あんなにちっちぇときから、遊ぶ時間も削って、いろいろ学んだのは何のためなんだよッ!
「少しでも良い気を呼び込み、大難を小難に。そして、陰の気を祓うことだ。」
ンなの、知ってらぁ。でも、、
「式神を使えば、身代わりにできんじゃねーのか?」
「・・・。人の生き死にの理は覆えせない。無理にでも干渉しようとするつもりなら、術者の命はないと思え。」
親父は顔に深い皺を刻み、苦しそうに、まるで自分自身に言い聞かせるように言い放った。かーさんが亡くなるっつー時、いつも冷静な親父が取り乱してたのは知ってる。陰陽師の術を使ってたのかどーかは分かんねーけど。
「そんな・・・。何だよ、それッ!! 大切な人、守れねぇなら意味ねぇじゃんッ!!」
ダンッとテーブルを叩いて、立ち上がる。親父にあたるのは八つ当たりだと分かっていても、苛立ちがおさまらなかった。
親父が何か口を開きかけていたが、そのまま居間をでて、自室へ戻った。
オレは机に座り、考えを整理するように目を閉じる。シンとした部屋の中で、窓の外から呑気な鳥の声だけが聞こえてきた。自分の息遣いだけが耳に響くようにまでなった頃、自分の中で心が決まり目を開けた時、いつの間にか一時間ほどが経っていた。
オレは、引き出しの中に大切にしまってあった箱を取り出す。そして和紙でできた式札を一枚取り出し、蒼の筆ペンで、一文字一文字時間をかけ丁寧に文字を書いていった。
【臨・りん
兵・びょう
闘・とう
者・しゃ
皆・かい
陣・じん
列・れつ
在・ざい
前・ぜん】
文字を書いた後、それらを読誦しながら、人差し指と中指の二本を刀に見立て格子を描いていく。これら格子が刃となり、危害を加えようとする『鬼』を、バラバラに切り裂く術をかけていく。
術を吹き込み式神となったこの札を、あいりに渡せば、きっとこの式神が守護の役目を果たしてくれるはずだ。
ーーー術が術者に跳ね返ってくるようなことにさえならなければ、きっとうまくいく。
親父が居ないところで、式神を使うのは初めてだった。だからと言って、別に考えなしにやったわけじゃない。オレだって死ぬのは嫌だしすげぇ怖い・・・。
でも、それ以上に、あいりが危険に晒される方が嫌だった。だからいつでもあいりに渡せるように、オレは守り袋を身につけとくためのポーチに式神を入れ、首から下げといた。
その日の夜はなかなか寝付けなかった。蒸し暑かったのもあるし、あいりのことが頭の中をグルグル回ってたのもある。
ーーー冷蔵庫にミカンジュース入ってたっけ?
ベッドから起き上がり、ジュースを飲もうと台所へ向かう。夜中だからオヤジを起こさねぇように、静かに廊下を歩いた。台所で紙パックに入ったキンキンに冷えたミカンジュースを手に取り、ストローを刺す。口に含むと染み渡るようなほど良い甘さで、身体がシャキッとした。
ーーー部屋に戻ってゆっくり飲むか。
台所の電気を消し廊下に出ると、庭の人影があるのに気づく。
ーーー誰だ?
「たくみか? どうした?」
居間で本を読んでた親父は、パタンッと本を閉じて顔を上げた。
ーーー言い出しづれぇな。自分からこんな事聞いたこともねぇから、親父がどんな反応するか予想つかねぇ。
「・・・。例えばだけど、人が死ぬ時に憑く『鬼』を祓う方法教えてくれ。」
自然と肩が上がり、声が上擦る。誰に憑いてるとか、追求されたらやべぇし、まさか大事にはならねぇよな。
「珍しいな。たくみの方からそんな事聞いてくるなんて。ーーー誰に憑いてる? お前の知り合いか?」
予想に反して、親父はそれ以上追求する様子でもなく、いつもの冷静な親父だった。
「んっ?まあ、うん。」
親父は『鬼』が見えねぇから信じてないとか?? それとも、仕事柄、こう言う話に慣れてるだけか??
「可哀想だが、人の生き死にをコントロールすることはできない。」
・・・ッ・・・
どっちでもなかった。陰陽師の仕事の範囲外だから、手を出すな、っつってるンだ。
「はぁっ?んじゃ、いったい、オレたちがやってるのは何なんだよ!」
あんなにちっちぇときから、遊ぶ時間も削って、いろいろ学んだのは何のためなんだよッ!
「少しでも良い気を呼び込み、大難を小難に。そして、陰の気を祓うことだ。」
ンなの、知ってらぁ。でも、、
「式神を使えば、身代わりにできんじゃねーのか?」
「・・・。人の生き死にの理は覆えせない。無理にでも干渉しようとするつもりなら、術者の命はないと思え。」
親父は顔に深い皺を刻み、苦しそうに、まるで自分自身に言い聞かせるように言い放った。かーさんが亡くなるっつー時、いつも冷静な親父が取り乱してたのは知ってる。陰陽師の術を使ってたのかどーかは分かんねーけど。
「そんな・・・。何だよ、それッ!! 大切な人、守れねぇなら意味ねぇじゃんッ!!」
ダンッとテーブルを叩いて、立ち上がる。親父にあたるのは八つ当たりだと分かっていても、苛立ちがおさまらなかった。
親父が何か口を開きかけていたが、そのまま居間をでて、自室へ戻った。
オレは机に座り、考えを整理するように目を閉じる。シンとした部屋の中で、窓の外から呑気な鳥の声だけが聞こえてきた。自分の息遣いだけが耳に響くようにまでなった頃、自分の中で心が決まり目を開けた時、いつの間にか一時間ほどが経っていた。
オレは、引き出しの中に大切にしまってあった箱を取り出す。そして和紙でできた式札を一枚取り出し、蒼の筆ペンで、一文字一文字時間をかけ丁寧に文字を書いていった。
【臨・りん
兵・びょう
闘・とう
者・しゃ
皆・かい
陣・じん
列・れつ
在・ざい
前・ぜん】
文字を書いた後、それらを読誦しながら、人差し指と中指の二本を刀に見立て格子を描いていく。これら格子が刃となり、危害を加えようとする『鬼』を、バラバラに切り裂く術をかけていく。
術を吹き込み式神となったこの札を、あいりに渡せば、きっとこの式神が守護の役目を果たしてくれるはずだ。
ーーー術が術者に跳ね返ってくるようなことにさえならなければ、きっとうまくいく。
親父が居ないところで、式神を使うのは初めてだった。だからと言って、別に考えなしにやったわけじゃない。オレだって死ぬのは嫌だしすげぇ怖い・・・。
でも、それ以上に、あいりが危険に晒される方が嫌だった。だからいつでもあいりに渡せるように、オレは守り袋を身につけとくためのポーチに式神を入れ、首から下げといた。
その日の夜はなかなか寝付けなかった。蒸し暑かったのもあるし、あいりのことが頭の中をグルグル回ってたのもある。
ーーー冷蔵庫にミカンジュース入ってたっけ?
ベッドから起き上がり、ジュースを飲もうと台所へ向かう。夜中だからオヤジを起こさねぇように、静かに廊下を歩いた。台所で紙パックに入ったキンキンに冷えたミカンジュースを手に取り、ストローを刺す。口に含むと染み渡るようなほど良い甘さで、身体がシャキッとした。
ーーー部屋に戻ってゆっくり飲むか。
台所の電気を消し廊下に出ると、庭の人影があるのに気づく。
ーーー誰だ?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる