【完結】犯人にされた落ちこぼれ令嬢ですが、イケメン騎士団長に四六時中監視(プロポーズ)されてます•••!!!

来海ありさ

文字の大きさ
17 / 25

17 川下り

しおりを挟む
ナイールが、両手をラッパのような形にして、大声で私たちを呼ぶ。
「やっほ~~、アネラっ~ーーー!こっち、こっち~~!!!!」

「ナイールっ!今行くわ!」
跳びはねながら呼んでいる姿に、誘われるように足を早めた。シャリシャリと白い小石が音を立てて弾けていく。

小さな小屋には、川に面したテラスがあり、ボートが縄に繋がれ仕舞われていたけれど、縄が一つ外されていた。

「やっぱり、ジェラリアたちが使ったのかなぁ。」
首を捻りボートの中を覗く少年の言葉に、ユオンが頷く。

「その可能性は高い。それにボートに色濃く魔力の痕跡が残っている。」

「魔力??? ••••ジェラリア様は水魔法ですね。」
クレールの言う通り、ジェラリアはかなり高い水の魔力の持ち主だ。でも私は彼女が使うところを、実はあまり見たことがない。自分は魔力が高いと言うことを至る所で自慢していた割に、あまり使ってるところは人に見せなかった。

(今思えば••••何となく、どんな水魔法が使えるかを知られるのを嫌がっていたのかも、とも思う。)

ユオンは、「なるほど。」と頷きつつ、「彼女の客であるジョンは風魔法だ。確かめたいことがあるんだが、乗ってみて、街の方へ下ってみてもいいだろうか?」と、私たちの方へ顔を向けた。ボートを漕ぐ時に、風と水の魔法??? スピードを速めるくらいはできるかもしれないけど、、。

「別に構わないわっ。」
私が肯定の意を示すと、クレールは、ツカツカとテラスまで行き、ボートがいつでも川へ乗り出せるように手すりを開放してくれた。キヌの木の幹から作られた2~3人乗りのボート•••••軽くて丈夫、かつ安定感のあるデザインで、湖に浮かべて景色を楽しんだりと、最近は貴族たちの間で余暇を楽しむ趣味として流行っている。

ユオンは「助かるよ。」と感謝を述べながら、ボートを固定していた縄を外しはじめた。彼は一人で行ってしまうつもりだろうか? でも、城のことならある程度知ってるし、何かヒントを見つけることが出来るかもしれない。



「私も、、ユオンと一緒に乗るわ•••!!」
私が一緒に行ったところで足手まといになるかもしれないけれど、ここまで来た以上、何としても真犯人を見つけたいっ!!

「え~それなら僕もアネラと乗りたい~。」
ガバッと顔を上げ、大げさに拗ねた声を出していじける少年に、クレールは「ナイール様、デートの邪魔をするのは野暮というものですよ。」と注意してるけど、ユオンと初めてのお出かけが、犯人探しとか色気も素っ気もないわよね。

「ちぇっ、僕だってアネラとデートしたいのに••••。」

「ナイール、これは遊びじゃないのよ。コテージに戻ったら、またゆっくりあなたの話を聞かせて欲しいわっ!」
私とデートなんて、冗談とも本気ともつかない口調に、戸惑ってしまう。ナイールってこんなに甘えん坊だったかしら??? 


「ほんとにほんとっ??」
まん丸の目を見開いて、血色の良い頬を染めてる顔は、愛くるしい。弟がいたらこんな感じだったのかなと、チラッと思う。「ええっ!」と、顔が綻び、自然と笑顔になってしまうのを自覚する。結局私もナイールには甘いのだわ。

縄を全て外し終え、いつでも漕ぎ出せるように準備したユオンは、「穏やかな流れとはいえ、全くの危険がないわけじゃない。」私の顔を見て、フッと表情を和らげると、「それでもあなたはきっと行くと言うんでしょう•••?」と、私の方へ手を差し出した。


自分の目で確かめてみたい。だってもしあの日、本当にジェラリアがこのボートに乗ったのなら、それはなぜなのか知りたい。私は一歩前に出て、頷き、ユオンの手を取る。

ユオンがひょいっと片足を掛け、先に乗り込み、安全に私をボートの中へと誘導してくれる。「気をつけて•••。」と言いながら、手だけでなく、腰にも手を当て、万が一にも転倒しないように手助けしてくれる。

(ちょっと過保護すぎやしないかしら??? )

幼い時は随分大きなボートだったような印象だけど、今、こうして向かいあって座ると、かなりユオンとの距離が近いわ。私が座ったのを見届け、ゆっくりとボートを漕ぎ始めた。

ボートは、流れに沿い、プカリプカリと進んでいく。

「アネラ様、どうぞお気をつけてっ!ユオン様、アネラ様をお願いしますよっ。」

「二人とも、早く戻っておいでよーー!」

ナイールたちは、姿が見えなくなるまで、ずっと手を振り続けてくれた。


ポチャポチャという水の流れに、鳥の声が混ざり合う、長閑な風景の中、ゆったりとした流れで、ボートはほとんど漕がなくても、ノロノロと進んで行った。暖かな日差しが、エメラルドグリーンの透き通った水に降り注いでいる。綺麗だわ。

「そう言えば、ボートで確かめたいことって?」
出発してからずっと疑問に思っていたことを聞いてみた。

「レホークー川が城下まで流れていることは知っているが、このボートでなら、どれくらいの時間がかかるか確かめたい。」
ユオンが漕ぐ手を休めても、ボートは流れに沿い、プカラプカラとのんびりと進んでいく。

「さすがに城下まで行ったことはないけど、陸を行くよりはかなり近いはずよ。」
陸からだと馬車はどうしても遠回りしなければならないけど、川は森の中をそのまま蛇行しているので、距離的にはかなり短くなってるはずだ。

私の言葉に頷き、その後、ユオンは改まった様子で、「一つ思い出したことがあるんだ••••。」と、少し前に乗り出し、ボートの底をコンコンッと拳で叩いた。


「思い出したこと?」
何かしら?  

「オレの••••義父は、騎士団の元副団長のレオと言うんだが、••••。」

義父?? ユオンはシルヴァダン家の養子だったの!? じゃあ、彼の本当の父親はどうしてるのかしら? そして気づいてしまった。私はユオンのこと、ほとんど何も知らない。


「ケガをして第一線からは退いたが、軍事顧問として今も新兵の採用や訓練などに関わっている。レオは水魔法が得意で、レオが言うには、ボートであれ何であれ、水面と接している部分の水の流れは、魔力で自在にコントロールできるらしい。」


「と言うことは、城下からコテージまで、川の流れが逆だとしても関係ないと言うこと?」

そんな方法があったなんてっ!! 魔力がない私には想像もつかなかった。
これは、城下からは川の流れに逆らうから、ボートで戻ってくることは出来ない、という私たちの思い込みを覆す事実だった。


私の言葉にユオンは頷き、「それに、ジョンの風魔法なら、おそらく速度を速めることと転倒防止が出来るだろう。」と、辺りを見渡す。

風魔法に転倒防止という使い方もあったのね。レホークー川は、流れ自体は緩やかだけれど、向こう岸までかなり遠く川幅も広いから、風魔法が使えたら心強かっただろう。

「じゃあ、その空白の3時間ほどの間に、ジェラリアたちなら、城まで行って戻って来ることが可能なのね•••?」


「おそらく•••。今、何も魔力を使わない状態でどれくらいの時間がかかるか確かめてみれば、それもハッキリするだろう。今の状態で1時間以内で到着するなら十分可能だ。」
心臓がキュッと絞られるかのように息が苦しくなり、肩がこわばってくるのが分かる。

(それじゃあまだ、ジェラリアが犯人という可能性があるということ?)

頭の中にいろんな疑問が次から次へと浮かび、自然と口数が少なくなっていく。ふと気づくと、いつの間にか自分だけの世界に浸ってしまっていたみたいだ。ユオンの「しまった•••!」という声で我にかえると、ユオンは、ギリリッと歯ぎしりをしながら、鋭い眼差しを川岸へ投げかけていた。様子がおかしい?? 気配が険しくなり、急に川岸の方へと漕ぎ始めた。








それは、あっという間だった!!! ボートの底に、みるみるうちに水が溜まり始め、座っているところまで、びちゃびちゃになり始めっ••••!!! 

(沈んでいるっ??? )

川岸までとてもじゃないけど、ボートは保ちそうもない。ボートの底を見ると、頭ひとつ分はあろうかと思われるほどの大きな穴が船底に開いていた!!! どうしてこんな穴が急に??? パニックになりながら、漕ぐのを手伝おうとオールに手を伸ばした時、



!?


ユオンが、オールを水面に投げ出し、騎士のマントを脱いだかと思うと、私の方へ腕を伸ばし、手を取った。


「泳いで岸へ向かう。」



えっ!? 泳げないっ!!!それは無理っ!! と、ユオンの手を引く力に対抗するようにして、首を左右に振る。木登りだったら、今でも何とか出来るかもしれない。剣も、やれと言われれば、剣をとって闘えそうな気もする。

(でも、、でもっ、ほんっとーーーに、泳ぐのだけは無理っ!!!)

「大丈夫。オレを信じて。」


ユオンが、片腕を私の背中に回し入れ、大きな手が脇の下をガッツリ掴む。ひぃぇぇっっ~~~、私の心の叫びは虚しく、ユオンはそのまま私を抱いて、水の中へと入っていった。



いゃぁあああああああああああ!!!!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

行き遅れ令嬢の再婚相手は、ダンディな騎士団長 ~息子イケメンの禁断の守護愛~

柴田はつみ
恋愛
貧乏貴族の行き遅れ令嬢リアナは、28歳で社交を苦手とする大人しい性格ゆえに、結婚を諦めかけていた。 そんな彼女に王宮から政略結婚の命令が下る。再婚相手は、妻を亡くしたダンディな騎士団長ギルバート。 クールで頼れる40代のイケメンだが、リアナは「便利な道具として選ばれただけ」と誤解し、切ない想いを抱く。 さらに、ギルバートの息子で爽やかイケメンのエリオット(21歳)が義理の息子となる。

【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります

なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。  忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。  「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」 「白い結婚ですか?」 「実は俺には……他に愛する女性がいる」   それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。 私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた ――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。 ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。 「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」 アロルド、貴方は何を言い出すの? なにを言っているか、分かっているの? 「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」 私の答えは決まっていた。 受け入れられるはずがない。  自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。    ◇◇◇ 設定はゆるめです。 とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。 もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!

悪役令嬢は調理場に左遷されましたが、激ウマご飯で氷の魔公爵様を餌付けしてしまったようです~「もう離さない」って、胃袋の話ですか?~

咲月ねむと
恋愛
「君のような地味な女は、王太子妃にふさわしくない。辺境の『魔公爵』のもとへ嫁げ!」 卒業パーティーで婚約破棄を突きつけられた悪役令嬢レティシア。 しかし、前世で日本人調理師だった彼女にとって、堅苦しい王妃教育から解放されることはご褒美でしかなかった。 ​「これで好きな料理が作れる!」 ウキウキで辺境へ向かった彼女を待っていたのは、荒れ果てた別邸と「氷の魔公爵」と恐れられるジルベール公爵。 冷酷無慈悲と噂される彼だったが――その正体は、ただの「極度の偏食家で、常に空腹で不機嫌なだけ」だった!? ​レティシアが作る『肉汁溢れるハンバーグ』『とろとろオムライス』『伝説のプリン』に公爵の胃袋は即陥落。 「君の料理なしでは生きられない」 「一生そばにいてくれ」 と求愛されるが、色気より食い気のレティシアは「最高の就職先ゲット!」と勘違いして……? ​一方、レティシアを追放した王太子たちは、王宮の食事が不味くなりすぎて絶望の淵に。今さら「戻ってきてくれ」と言われても、もう遅いです! ​美味しいご飯で幸せを掴む、空腹厳禁の異世界クッキング・ファンタジー!

前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます

由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。 だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。 そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。 二度目の人生。 沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。 ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。 「今世は静かに生きられればそれでいい」 そう思っていたのに―― 奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。 さらにある日。 皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。 「沈薬は俺の妃だった」 だが沈薬は微笑んで言う。 「殿下、私は静王妃です」 今の関係は―― 皇叔母様。 前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。 それを静かに守る静王。 宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

処理中です...