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24 またね
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冒険者ギルドに着いて、ノクレイドラゴンの鱗を買い取ってもらっている間にピホは戻ってきた。
それから、今回の討伐報酬を受け取る。
Bランクの依頼で三百万ダル。今回殆ど奈々美さんが討伐してくれたのでそのまま渡そうとしたら、百万ダルだけ受け取って、残りは猫の目貯金になってしまった。
「なにっ、あんたらシュベルクランに行くのか?」
「ええ、帰還手続きが済みましたら」
「向こうよりうちの方が買取価格は良い方だから、気軽に売りに来てくれていいぞ」
眼鏡のギルド長さんは、わたしを見て言った。
「シュベルクランは魔族が治めてる国だ。ここより治安は良いが、稼ぐなら絶対ここ、アオリハだ。しっかり覚えておいてくれ」
「あはは。わかりました。ありがとうございます」
まあ確かに、この国で一気に資産が増えちゃったもんね。治安の良いシュベルクランに住んで、時々アオリハに出稼ぎに来るのはありかもしれないわ。
一通りの手続きを終わらせて、冒険者ギルドの建物を出て馬車に向かうと。
うちのキトキト号が。
痛車ならぬ、痛馬車になっていた――!!
「アシャール、リコちゃーん、ナナちゃーん」
犯人が満面の笑顔で手を振っている。
リガルさんだ。
シンプルな黒一色だった馬車に、黄金の光を放つ神獣:猫ちゃんと取り巻く彩雲、色とりどりの鳥に色鮮やかな花達……完全なる宗教画が描かれている。反対側は夜バージョンで天の星に囲まれて眠る猫ちゃんと神秘的な森の風景だ。後ろ側にはライ様とたまごの仲間達が描かれている。
え?! この芸術品、こんな短時間でどうやって描かれたの? やり切った顔してるけど、この馬車アシャールさんのだからリガルさん勝手に描いちゃダメじゃない? というか他の人が触ったら攻撃魔法発動するんじゃなかったっけ?
どこから何をつっこめば良いか、わかんない。
「叔父上……?」
アシャールさんの声が、低い。
「へへっ、アスくんからの依頼さ。帰還手続きが終わったから、あの絶対シュベルクランに入った途端に攻撃される馬車をなんとかしてやってくれってね。おいらの絵は向こうじゃ人気で数億で売れてるらしいから、問答無用でこの絵を傷つけようなんてことは起こらないと思うよ!」
「大神官様の配慮でしたか。ですがこの馬車に触れると魔法が発動するはずですが」
「それって他人がだよね」
リガルさんは絵の具で汚れないよう被っていた手拭いを外すとニカっと笑った。額を差して。
「ほら、おいらピホくんの下僕だから!」
「すみません、それまだ消えて無かったんですね」
「いいよー、消さない方が便利だもん。今だってちゃんと仕事ができたしね!」
奈々美さんは少し嬉しそうにライ様の絵を見てる。
「この絵、雨で消えたり、日光で褪色したりしませんか? お手入れどうすれば良いでしょう」
「特殊な絵の具で描いてるから心配要らないよ。定着薬も吹きかけて保護魔法もかけてあるから、普通に鳥のフンとかかかった時に水洗いとかで大丈夫だよ」
仕事道具を片づけるリガルさんを手伝おうとしたが、取り扱い注意のものもあるらしいのでお断りされました。なのでわたしと奈々美さんは、じっくりと絵を鑑賞させていただきます。
リガルさんはミケ子の美しさと可愛さをこれでもかと描ききってくれている。
馬車の中大好き派だけど、たまに外にテーブル出してこの絵を眺めながらお茶するのも良いかもしれない。
「はいこれ、向こうで必要な書類と職人の紹介状だよ」
「……ありがとうございます」
リガルさんは、ニッコニコの顔をしてアシャールさんの頭を撫でた。身長差があるので少し地面から浮いてる。フェイ族、翼を出してなくても飛べるのね。
「それからリコちゃんにはこれ。ナナちゃんはこっちね」
わたしには大きく平べったい木箱、奈々美さんにはスマホより一回り大きい持ち手のある木箱をリガルさんはくれた。
なんだろうと箱を開けると、奈々美さんの箱には白濁した液と透明な液が入った瓶と、それより小さな色とりどりの液体が入った瓶、それに筆が数本。
「ナナちゃんは戦闘職って聞いてたから、爪の保護剤だよ。割れたりしないようにね。白いだけじゃ面白くないから、ナナちゃんに似合いそうな色幾つか選んどいたんだ。重ねて塗ると保護機能も強まるから。こっちは剥がす液体ね」
「……!!! ありがとうございます!!! すっごく嬉しいです!」
そういえば奈々美さん、こっちに来た当初は綺麗なネイルしてたのだわ。長い綺麗な髪で……。
「リコちゃんのは、おかみさんが興味深そうに見てたって言ってたから」
お皿だ。お店にあった、縁にぐるりと絵物語が描かれている、とても豪華な装飾に物騒な絵のあのお皿が五種類もある……あの……敵の首討ち取った戦闘物語のも……鳥を狩って解体して食卓に並ぶまで……のもちゃんとある……。
わたしは内心の動揺を悟られないよう、笑顔をつくった。
「ありがとうございます。でも良いんですか? 工房のお店のものですよね?」
「うん。おいら基本は特注品の絵付けしてるから、お店に出してるのは趣味で描いたものばかりであんまり客ウケしないんだ。だからリコちゃんが気に入ったなら使ってやって」
ウフフ。面白くは思ったけど、使いたいとは思ってないのよ。よし、飾りとして置いておくことにしよう。
「リガルさん、また遊びに来ますね」
わたしはそう言って、ピホの卵を入れた紙袋を渡した。
リガルさんと別れて、そのままわたし達はシュベルクランへ向かった。大神官様に挨拶しなくてよかったのかなと思ったけど、手続きを頑張った若い神官さんの胃に穴が開くからそのまま行けとお手紙に書いてあったので。
アシャールさんが居住地にと狙っている土地は、国有地なので、まず皇都で購入の申請手続きが必要。なので行き先はシュベルクランの皇都になる。キトキト号でおよそ四、五日の旅路だろうとのこと。
わたしはのんびりと、スキルちゃん農園で増やした、イスタリオ原産地上絶滅花ヴァレとパナマ草で淹れたお茶を配る。
このヴァレという花、華やかな甘い良い匂いの上に花蜜がたっぷりで、花自身も食用で甘い。葉や茎は爽やかな辛みがあって、サラダ向きなのね。そしてこの花粉にホルモンバランスを整えたり自律神経を整える作用があるらしく、パナマ草と合わせると女性の身体の不調に効くらしい。特にお茶にすると、頓服薬のようにも使えるらしいので月経前の不調が始まった奈々美さんの為に淹れてみた。
「不思議ですね。いつものパナマ草茶と全然味が違います」
「ほんとだわ。ヴァレの花の自然な甘みと香りで子供でも飲みやすそうね」
別に女性特有の症状がなくても、男性でも、飲んで身体に不都合がでるわけではないので、わたしとアシャールさんも普通に試飲する。
「これはミルクで割っても良さそうかと」
アシャールさんの意見に、早速ムウ乳を入れたピッチャーを用意して、各自好きに入れてもらう。
「あっ、これはやばい。ミルク入りもイケる。ヴァレの甘みとミルクの甘みがいい感じに混ざってる。キンキンに冷やして、ごきゅごきゅ飲みたい!」
「どっちも美味しいです~。頭痛と腹痛が軽くなりました。効果ありです」
アシャールさんもミルク入りを満足そうに飲みながら、わたしの鑑定図鑑を読み込んでいる。わたしのスキルが上がる度に、鑑定図鑑の厚みが増し増しになるので、読み応えがあるらしい。
「アシャールさん、魔族ってどんな人達なんですか?」
アオリハのギルド長さんはシュベルクランは魔族が治めているって言ってたけど、グランヒュームでは、エルフ達のように長命の種族というだけで、詳しいことは教わっていない。
「そうですね、人族より魔力が強い点は他の長命種族とそう変わりませんね。身体的特徴としては、濃い色の髪の方が多く、夜になると目が金に光ることでしょうか。その影響かわかりませんが、夜に活動的で朝は調子がでないという方も多いですね」
「ということは、アオリハみたいな朝市はないの?」
夜に営むお店が多そう。なんだかそれだけで都会のイメージがする。
「そんなことはありませんよ。魔族以外も暮らしていますからね。歴史の古い国なので、王や貴族達は国土や領土に愛着を持ち、軍や法の整備にも力を入れているので、治安が良いのです。ただ……」
「ただ?」
「皇宮では私は望まれない客なので、お二人に嫌な思いをさせてしまうかもしれません」
「「何やったの? アシャールさん?!」」
わたしと奈々美さんの声がハモった。
「香子には以前私に姉がいる話をしたと思います。フェイ族の女性はその生涯で最大五人までしか子を授かることができないのです。そして国が滅んだ時に姉には四人の子供が居ました。上の二人はとっくに自立していましたが、下の二人の娘達はまだ心配な年頃……なにせフェイ族の女性は老いないという特性上、人攫いに大人気でして……」
「でも治安が良い国なんでしょう?!」
「それはここ百数十年の話です。当時は北側に近接する国が積極的に奴隷を集めている時期でしたので、姉上は自身と娘二人を皇帝の後宮に入れることでその身を守ったのです」
「えっと、つまりお姉さんは皇帝のお妃様なんですか? お二人の娘さん達は……?」
奈々美さんは首を傾げた。そうよね、後宮ということは沢山お妃様がいる訳で、そういう制度で連れ子はどういう扱いになるのかしら?
「姉が第四皇妃、姪二人はそれぞれ第五皇妃、第六皇妃ですね。姉は皇位継承を持つ男子も産みましたし、そういう理由で一部の貴族達から酷く嫌われています。自分の娘まで使って皇帝に取り入った毒婦だと……まあその煽りを受けて、私もアオリハに飛ばされていたのですね……」
「お姉さんの味方を無くすために……?」
「まあ、そんな感じです。正妃側の派閥の貴族に煙たがられているだけで、姉と姪達はそれなりに上手く立ち回っていますよ」
それを聞いて、少しほっとした。
しかし奈々美さんは割と冷静に……というか、スンとした顔をして質問した。
「アシャールさんの甥っ子が次の皇帝になるんですか? 後宮の妃って何人いらっしゃるんです?」
「まあまず後宮には二十人の妃がいます。姉ははじめに皇帝と交渉して、娘達は立場上のみの妃であることを約束させました。その方がフェイ族への印象が良いからと。姪二人は『白い皇妃』と呼ばれて……後継を産むのではなく、市井に出て慈善事業など行い、国民と皇宮の緩衝材的な仕事をしております」
あ、奈々美さんがほっとした顔をしたわ。
「ですが、今の皇帝が女好きなのもまた事実……即位前の隠し子を正妃が見つけ出して養子にし、甥が皇帝になるのをわかりやすく邪魔しに来ています」
「ワァ……お姉さん達ご苦労なさってるのね」
これもうドロドロの後継者争いやないけ……。
「まあ私は神に仕えるただの平民ですし、身分の高い彼女たちには簡単に会えないので、皇宮に近づかなければ問題はないでしょう。……ああそうでした。魔族は実力主義者なので、女性でも家督を継いだり戦場に出たりします。シュベルクランでは女性冒険者も珍しくありません。きっとこのヴァレ茶や香子が一生懸命作ったもの達は役にたつでしょうね」
お。スキルちゃんが張り切って増産はじめましたよ。
それから、今回の討伐報酬を受け取る。
Bランクの依頼で三百万ダル。今回殆ど奈々美さんが討伐してくれたのでそのまま渡そうとしたら、百万ダルだけ受け取って、残りは猫の目貯金になってしまった。
「なにっ、あんたらシュベルクランに行くのか?」
「ええ、帰還手続きが済みましたら」
「向こうよりうちの方が買取価格は良い方だから、気軽に売りに来てくれていいぞ」
眼鏡のギルド長さんは、わたしを見て言った。
「シュベルクランは魔族が治めてる国だ。ここより治安は良いが、稼ぐなら絶対ここ、アオリハだ。しっかり覚えておいてくれ」
「あはは。わかりました。ありがとうございます」
まあ確かに、この国で一気に資産が増えちゃったもんね。治安の良いシュベルクランに住んで、時々アオリハに出稼ぎに来るのはありかもしれないわ。
一通りの手続きを終わらせて、冒険者ギルドの建物を出て馬車に向かうと。
うちのキトキト号が。
痛車ならぬ、痛馬車になっていた――!!
「アシャール、リコちゃーん、ナナちゃーん」
犯人が満面の笑顔で手を振っている。
リガルさんだ。
シンプルな黒一色だった馬車に、黄金の光を放つ神獣:猫ちゃんと取り巻く彩雲、色とりどりの鳥に色鮮やかな花達……完全なる宗教画が描かれている。反対側は夜バージョンで天の星に囲まれて眠る猫ちゃんと神秘的な森の風景だ。後ろ側にはライ様とたまごの仲間達が描かれている。
え?! この芸術品、こんな短時間でどうやって描かれたの? やり切った顔してるけど、この馬車アシャールさんのだからリガルさん勝手に描いちゃダメじゃない? というか他の人が触ったら攻撃魔法発動するんじゃなかったっけ?
どこから何をつっこめば良いか、わかんない。
「叔父上……?」
アシャールさんの声が、低い。
「へへっ、アスくんからの依頼さ。帰還手続きが終わったから、あの絶対シュベルクランに入った途端に攻撃される馬車をなんとかしてやってくれってね。おいらの絵は向こうじゃ人気で数億で売れてるらしいから、問答無用でこの絵を傷つけようなんてことは起こらないと思うよ!」
「大神官様の配慮でしたか。ですがこの馬車に触れると魔法が発動するはずですが」
「それって他人がだよね」
リガルさんは絵の具で汚れないよう被っていた手拭いを外すとニカっと笑った。額を差して。
「ほら、おいらピホくんの下僕だから!」
「すみません、それまだ消えて無かったんですね」
「いいよー、消さない方が便利だもん。今だってちゃんと仕事ができたしね!」
奈々美さんは少し嬉しそうにライ様の絵を見てる。
「この絵、雨で消えたり、日光で褪色したりしませんか? お手入れどうすれば良いでしょう」
「特殊な絵の具で描いてるから心配要らないよ。定着薬も吹きかけて保護魔法もかけてあるから、普通に鳥のフンとかかかった時に水洗いとかで大丈夫だよ」
仕事道具を片づけるリガルさんを手伝おうとしたが、取り扱い注意のものもあるらしいのでお断りされました。なのでわたしと奈々美さんは、じっくりと絵を鑑賞させていただきます。
リガルさんはミケ子の美しさと可愛さをこれでもかと描ききってくれている。
馬車の中大好き派だけど、たまに外にテーブル出してこの絵を眺めながらお茶するのも良いかもしれない。
「はいこれ、向こうで必要な書類と職人の紹介状だよ」
「……ありがとうございます」
リガルさんは、ニッコニコの顔をしてアシャールさんの頭を撫でた。身長差があるので少し地面から浮いてる。フェイ族、翼を出してなくても飛べるのね。
「それからリコちゃんにはこれ。ナナちゃんはこっちね」
わたしには大きく平べったい木箱、奈々美さんにはスマホより一回り大きい持ち手のある木箱をリガルさんはくれた。
なんだろうと箱を開けると、奈々美さんの箱には白濁した液と透明な液が入った瓶と、それより小さな色とりどりの液体が入った瓶、それに筆が数本。
「ナナちゃんは戦闘職って聞いてたから、爪の保護剤だよ。割れたりしないようにね。白いだけじゃ面白くないから、ナナちゃんに似合いそうな色幾つか選んどいたんだ。重ねて塗ると保護機能も強まるから。こっちは剥がす液体ね」
「……!!! ありがとうございます!!! すっごく嬉しいです!」
そういえば奈々美さん、こっちに来た当初は綺麗なネイルしてたのだわ。長い綺麗な髪で……。
「リコちゃんのは、おかみさんが興味深そうに見てたって言ってたから」
お皿だ。お店にあった、縁にぐるりと絵物語が描かれている、とても豪華な装飾に物騒な絵のあのお皿が五種類もある……あの……敵の首討ち取った戦闘物語のも……鳥を狩って解体して食卓に並ぶまで……のもちゃんとある……。
わたしは内心の動揺を悟られないよう、笑顔をつくった。
「ありがとうございます。でも良いんですか? 工房のお店のものですよね?」
「うん。おいら基本は特注品の絵付けしてるから、お店に出してるのは趣味で描いたものばかりであんまり客ウケしないんだ。だからリコちゃんが気に入ったなら使ってやって」
ウフフ。面白くは思ったけど、使いたいとは思ってないのよ。よし、飾りとして置いておくことにしよう。
「リガルさん、また遊びに来ますね」
わたしはそう言って、ピホの卵を入れた紙袋を渡した。
リガルさんと別れて、そのままわたし達はシュベルクランへ向かった。大神官様に挨拶しなくてよかったのかなと思ったけど、手続きを頑張った若い神官さんの胃に穴が開くからそのまま行けとお手紙に書いてあったので。
アシャールさんが居住地にと狙っている土地は、国有地なので、まず皇都で購入の申請手続きが必要。なので行き先はシュベルクランの皇都になる。キトキト号でおよそ四、五日の旅路だろうとのこと。
わたしはのんびりと、スキルちゃん農園で増やした、イスタリオ原産地上絶滅花ヴァレとパナマ草で淹れたお茶を配る。
このヴァレという花、華やかな甘い良い匂いの上に花蜜がたっぷりで、花自身も食用で甘い。葉や茎は爽やかな辛みがあって、サラダ向きなのね。そしてこの花粉にホルモンバランスを整えたり自律神経を整える作用があるらしく、パナマ草と合わせると女性の身体の不調に効くらしい。特にお茶にすると、頓服薬のようにも使えるらしいので月経前の不調が始まった奈々美さんの為に淹れてみた。
「不思議ですね。いつものパナマ草茶と全然味が違います」
「ほんとだわ。ヴァレの花の自然な甘みと香りで子供でも飲みやすそうね」
別に女性特有の症状がなくても、男性でも、飲んで身体に不都合がでるわけではないので、わたしとアシャールさんも普通に試飲する。
「これはミルクで割っても良さそうかと」
アシャールさんの意見に、早速ムウ乳を入れたピッチャーを用意して、各自好きに入れてもらう。
「あっ、これはやばい。ミルク入りもイケる。ヴァレの甘みとミルクの甘みがいい感じに混ざってる。キンキンに冷やして、ごきゅごきゅ飲みたい!」
「どっちも美味しいです~。頭痛と腹痛が軽くなりました。効果ありです」
アシャールさんもミルク入りを満足そうに飲みながら、わたしの鑑定図鑑を読み込んでいる。わたしのスキルが上がる度に、鑑定図鑑の厚みが増し増しになるので、読み応えがあるらしい。
「アシャールさん、魔族ってどんな人達なんですか?」
アオリハのギルド長さんはシュベルクランは魔族が治めているって言ってたけど、グランヒュームでは、エルフ達のように長命の種族というだけで、詳しいことは教わっていない。
「そうですね、人族より魔力が強い点は他の長命種族とそう変わりませんね。身体的特徴としては、濃い色の髪の方が多く、夜になると目が金に光ることでしょうか。その影響かわかりませんが、夜に活動的で朝は調子がでないという方も多いですね」
「ということは、アオリハみたいな朝市はないの?」
夜に営むお店が多そう。なんだかそれだけで都会のイメージがする。
「そんなことはありませんよ。魔族以外も暮らしていますからね。歴史の古い国なので、王や貴族達は国土や領土に愛着を持ち、軍や法の整備にも力を入れているので、治安が良いのです。ただ……」
「ただ?」
「皇宮では私は望まれない客なので、お二人に嫌な思いをさせてしまうかもしれません」
「「何やったの? アシャールさん?!」」
わたしと奈々美さんの声がハモった。
「香子には以前私に姉がいる話をしたと思います。フェイ族の女性はその生涯で最大五人までしか子を授かることができないのです。そして国が滅んだ時に姉には四人の子供が居ました。上の二人はとっくに自立していましたが、下の二人の娘達はまだ心配な年頃……なにせフェイ族の女性は老いないという特性上、人攫いに大人気でして……」
「でも治安が良い国なんでしょう?!」
「それはここ百数十年の話です。当時は北側に近接する国が積極的に奴隷を集めている時期でしたので、姉上は自身と娘二人を皇帝の後宮に入れることでその身を守ったのです」
「えっと、つまりお姉さんは皇帝のお妃様なんですか? お二人の娘さん達は……?」
奈々美さんは首を傾げた。そうよね、後宮ということは沢山お妃様がいる訳で、そういう制度で連れ子はどういう扱いになるのかしら?
「姉が第四皇妃、姪二人はそれぞれ第五皇妃、第六皇妃ですね。姉は皇位継承を持つ男子も産みましたし、そういう理由で一部の貴族達から酷く嫌われています。自分の娘まで使って皇帝に取り入った毒婦だと……まあその煽りを受けて、私もアオリハに飛ばされていたのですね……」
「お姉さんの味方を無くすために……?」
「まあ、そんな感じです。正妃側の派閥の貴族に煙たがられているだけで、姉と姪達はそれなりに上手く立ち回っていますよ」
それを聞いて、少しほっとした。
しかし奈々美さんは割と冷静に……というか、スンとした顔をして質問した。
「アシャールさんの甥っ子が次の皇帝になるんですか? 後宮の妃って何人いらっしゃるんです?」
「まあまず後宮には二十人の妃がいます。姉ははじめに皇帝と交渉して、娘達は立場上のみの妃であることを約束させました。その方がフェイ族への印象が良いからと。姪二人は『白い皇妃』と呼ばれて……後継を産むのではなく、市井に出て慈善事業など行い、国民と皇宮の緩衝材的な仕事をしております」
あ、奈々美さんがほっとした顔をしたわ。
「ですが、今の皇帝が女好きなのもまた事実……即位前の隠し子を正妃が見つけ出して養子にし、甥が皇帝になるのをわかりやすく邪魔しに来ています」
「ワァ……お姉さん達ご苦労なさってるのね」
これもうドロドロの後継者争いやないけ……。
「まあ私は神に仕えるただの平民ですし、身分の高い彼女たちには簡単に会えないので、皇宮に近づかなければ問題はないでしょう。……ああそうでした。魔族は実力主義者なので、女性でも家督を継いだり戦場に出たりします。シュベルクランでは女性冒険者も珍しくありません。きっとこのヴァレ茶や香子が一生懸命作ったもの達は役にたつでしょうね」
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