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44 ダイツァー森林
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わたし達は移動中の馬車の中で、行動方針を話し合う。
「魔物の駆除依頼はスケルトン、ファントム、レイエスと、見事にアンデット系の魔物ばかりです。スケルトンは頭蓋骨を粉砕しないと何度も甦ります。他はアンデットの中でもレイス(肉体の無い者)に分類される、物理攻撃の効かない魔物です。おや香子、レイエスになにか気になることでも?」
顔に出てましたか?
「レイエスの人魂、自動採取対象にして良いですか?」
「ええ、構いませんよ」
「あとレイエスさん駆除の前に、写真の撮影をお願いしたいのです。勿論余裕があればですけど」
アシャールさんが、少し剣呑な表情になった。あ、やっぱり危険な所に無理なお願いよね。
「あ、いいえ。自分で撮影しますので、レイエス駆除には着いて行きます」
「失礼。香子の言動自体に不満を感じたわけではないのです。その言動の元になったものを想像してしまっただけです」
「もしかして、お知り合い?」
あの愉快なレイエスさんと。
「恥ずかしながら、我が血筋の祖に繋がる者ですね」
「あっご先祖様でしたか。じゃああのお住まいの神殿とか建て替えた方が良いですか?」
「アレはあの場所に執着するものなので、建て替えるとなったら、それはそれで面倒な事を言いそうなので、相手にせずに素材だけ絞り取って下さい」
「はーい。とりあえず普通のレイエスさんの様子も知りたいので、わたしも一緒に行きますね」
「それはご遠慮下さいね。撮影は私がしておきますので。私と香子が揃ってレイエスの側にいると、向こうが過剰反応して奈々美さんの難易度が上がる可能性がありますので」
わたしは大人しく頷いた。そういう事なら、遠くから素材だけ採取させていただきます。
アシャールさんは説明を続けた。
「一般的に、魔力の多い場所で死んだ者がアンデット系の魔物になると言われています。骨がスケルトンに、残留魔力がファントムに。レイエスは元々魔力の強い者が、強い執着の結果、死後に魔物に転じたものなのでこちらは中々強敵です。駆除しきれないようでしたら、私が対応しますので、安心して下さい。それからマリーシェラはミケ子さんと香子の側から絶対に離れないように。レイエスがいるので、主の加護がないと、ファントムの呪いを受けるかも知れませんからね」
「わかりましたわ」
レイエスはファントムやスケルトンを従えて、それらの力を強めるらしい。つまり群れのボスみたいなものね。
幼輪を持った女性は呪いにはかかり難いのだけども、レイエスの力が強ければその限りでは無いらしい。
主神の加護が一番安心安全。
うちのレイエスさんの周囲にはファントムもスケルトンもいない、真のぼっちだったことを思い出して、わたしは今度行ったら、神殿のツタと雑草と泥は取り除いてこようと思った。
ダイツァー森林に着くと、まず上空からスキルちゃんでららんと全体の様子を確認した。
鑑定結果を猫の目エディションの地図アプリに反映させる。
この森、かなり長い間人の手が入ってないようで、木々の間隔が狭く枝が絡んで日光を遮り暗い。日光入らないから地面に草はなく、水捌けが悪くてジメジメしてる。枯れ葉と菌糸類で足元は滑りやすく、そもそも自由すぎる枯れ枝や倒木も多くて、安全に歩くのも無理そうなのに、その上で魔物の対処するの、どんな苦行? っていうのが、わたしの所感。
さらに残念なことに、人も肉食魔物も食べる人気のお肉、ホーンラビットが居ない。ご飯になる草生えてないからね!
そんなわけで、アンデットと虫系の魔物しかいない。
「虫……」
奈々美さんが真っ青になってる。
「とりあえず先に森を整備してからの方が良いかなと思うけれど、ここまでの範囲で良いかしら?」
まっくら森全体を一気に明るくしてしまったら、魔物さん達が森から出て大変なことになるかも知れないからね。
「いえ、もっと範囲を狭めて、この小屋と道の周辺にしておいた方が安全でしょう。そして整備と同時進行で駆除にでることにします。まず馬車を仕舞って、シロとクロで小屋まで降ります。その後、私と奈々美さんはシロとクロを連れて魔物駆除に向かいますので、香子はマリーシェラと一緒に小屋から森の入り口に向かって、アレで移動しながら整備の方をお願いします」
アレ……シロとクロが居るから、使用する機会は来ないかもと思っていたアレを使うのね……。
わたしはミケ子をムウの上に乗せると、馬車の入り口を開けて、空に放つ。
「クロ」
丁度目が合った方を呼ぶと、クロはハーネスを外して馬車の入り口までやって来た。わたし達はまだ空の上。
奈々美さんとマリーシェラさんにクロに乗って貰うと、アシャールさんはわたしを抱えて馬車から飛び降りた。
瞬時に馬車はアシャールさんの空間収納に仕舞われ、シロの背中がわたし達をキャッチする。飛んで来たムウをミケ子ごと抱っこし、わたし達は森の中の小屋を目指して降りていった。
降りながら、わたしは小屋の周囲の木々諸々を採取し地面を均していく。
既にわたしのスキルちゃん達は生き生きと働き始め、自動採取範囲内でせっせと不要な枝葉を採取したり、木を間引いていったり、砕石に良さげな石を採取したり、落ち葉を腐葉土にして石や木を取った場所をそれで埋めたりしている。
こういう作業はネコノメの管理上でも必要なので、わたしも慣れてしまって、パパァとスキルちゃん達の光で周囲を明るくしながら、アシャールさんと奈々美さんを見送った。
「おじゃましまーす」
わたしはマリーシェラさんと、誰もいないはずの小屋に声をかけて、扉を開けた。
予想通り、埃っぽくてカビ臭い。
「キシャャシャシャシャシャッ」
おや、返事がありましたよ。
「シャーッ」
小屋の隅に、見覚えのある魔物がいたわ。
「まあ、アイアンリザードだわ……! カオリコさん、どうしましょう」
マリーシェラさんが、困った様子でわたしを見た。わたし達はせっかく更地にしたこの周辺を舗装する前に、念の為誰も人が居ないか確認の為にここに来たのだけども。
どこから迷いこんだか知らないけれど、この木製の小屋はアイアンリザードの力だと容易く壊せるはず……なのにそうしないのは、何かから隠れているか、ついでに弱っているからよね。でも……
「なんでスキルちゃんの自動採取の対象から外れてたのかしら?」
わたしは首を傾げた。
森のたまごから生まれたばかりなのでー。スキルちゃん達の良心ですー。るるん。
スキルちゃんの返答に、わたしは改めてアイアンリザードを見た。
なるほど確かに周囲にたまごのカケラ、散らばってますことよ?
「森のたまごが発生して、生まれた個体みたい」
「まあ、かわいそうに……こんな鉱山もないところだと飢え死にしてしまいますわね……」
確かに。
以前見たアイアンリザードより小柄なのは、生まれたばかりなのと、飢えてるからなのかな……。
わたしは深さのある木皿を出して、ムウ乳を注いで床に置いた。
「強く生きてね。あと今からここの周りの舗装するから、しばらくはそこでじっとしててね」
そうして小屋の扉をそっ閉じた。
「魔物の駆除依頼はスケルトン、ファントム、レイエスと、見事にアンデット系の魔物ばかりです。スケルトンは頭蓋骨を粉砕しないと何度も甦ります。他はアンデットの中でもレイス(肉体の無い者)に分類される、物理攻撃の効かない魔物です。おや香子、レイエスになにか気になることでも?」
顔に出てましたか?
「レイエスの人魂、自動採取対象にして良いですか?」
「ええ、構いませんよ」
「あとレイエスさん駆除の前に、写真の撮影をお願いしたいのです。勿論余裕があればですけど」
アシャールさんが、少し剣呑な表情になった。あ、やっぱり危険な所に無理なお願いよね。
「あ、いいえ。自分で撮影しますので、レイエス駆除には着いて行きます」
「失礼。香子の言動自体に不満を感じたわけではないのです。その言動の元になったものを想像してしまっただけです」
「もしかして、お知り合い?」
あの愉快なレイエスさんと。
「恥ずかしながら、我が血筋の祖に繋がる者ですね」
「あっご先祖様でしたか。じゃああのお住まいの神殿とか建て替えた方が良いですか?」
「アレはあの場所に執着するものなので、建て替えるとなったら、それはそれで面倒な事を言いそうなので、相手にせずに素材だけ絞り取って下さい」
「はーい。とりあえず普通のレイエスさんの様子も知りたいので、わたしも一緒に行きますね」
「それはご遠慮下さいね。撮影は私がしておきますので。私と香子が揃ってレイエスの側にいると、向こうが過剰反応して奈々美さんの難易度が上がる可能性がありますので」
わたしは大人しく頷いた。そういう事なら、遠くから素材だけ採取させていただきます。
アシャールさんは説明を続けた。
「一般的に、魔力の多い場所で死んだ者がアンデット系の魔物になると言われています。骨がスケルトンに、残留魔力がファントムに。レイエスは元々魔力の強い者が、強い執着の結果、死後に魔物に転じたものなのでこちらは中々強敵です。駆除しきれないようでしたら、私が対応しますので、安心して下さい。それからマリーシェラはミケ子さんと香子の側から絶対に離れないように。レイエスがいるので、主の加護がないと、ファントムの呪いを受けるかも知れませんからね」
「わかりましたわ」
レイエスはファントムやスケルトンを従えて、それらの力を強めるらしい。つまり群れのボスみたいなものね。
幼輪を持った女性は呪いにはかかり難いのだけども、レイエスの力が強ければその限りでは無いらしい。
主神の加護が一番安心安全。
うちのレイエスさんの周囲にはファントムもスケルトンもいない、真のぼっちだったことを思い出して、わたしは今度行ったら、神殿のツタと雑草と泥は取り除いてこようと思った。
ダイツァー森林に着くと、まず上空からスキルちゃんでららんと全体の様子を確認した。
鑑定結果を猫の目エディションの地図アプリに反映させる。
この森、かなり長い間人の手が入ってないようで、木々の間隔が狭く枝が絡んで日光を遮り暗い。日光入らないから地面に草はなく、水捌けが悪くてジメジメしてる。枯れ葉と菌糸類で足元は滑りやすく、そもそも自由すぎる枯れ枝や倒木も多くて、安全に歩くのも無理そうなのに、その上で魔物の対処するの、どんな苦行? っていうのが、わたしの所感。
さらに残念なことに、人も肉食魔物も食べる人気のお肉、ホーンラビットが居ない。ご飯になる草生えてないからね!
そんなわけで、アンデットと虫系の魔物しかいない。
「虫……」
奈々美さんが真っ青になってる。
「とりあえず先に森を整備してからの方が良いかなと思うけれど、ここまでの範囲で良いかしら?」
まっくら森全体を一気に明るくしてしまったら、魔物さん達が森から出て大変なことになるかも知れないからね。
「いえ、もっと範囲を狭めて、この小屋と道の周辺にしておいた方が安全でしょう。そして整備と同時進行で駆除にでることにします。まず馬車を仕舞って、シロとクロで小屋まで降ります。その後、私と奈々美さんはシロとクロを連れて魔物駆除に向かいますので、香子はマリーシェラと一緒に小屋から森の入り口に向かって、アレで移動しながら整備の方をお願いします」
アレ……シロとクロが居るから、使用する機会は来ないかもと思っていたアレを使うのね……。
わたしはミケ子をムウの上に乗せると、馬車の入り口を開けて、空に放つ。
「クロ」
丁度目が合った方を呼ぶと、クロはハーネスを外して馬車の入り口までやって来た。わたし達はまだ空の上。
奈々美さんとマリーシェラさんにクロに乗って貰うと、アシャールさんはわたしを抱えて馬車から飛び降りた。
瞬時に馬車はアシャールさんの空間収納に仕舞われ、シロの背中がわたし達をキャッチする。飛んで来たムウをミケ子ごと抱っこし、わたし達は森の中の小屋を目指して降りていった。
降りながら、わたしは小屋の周囲の木々諸々を採取し地面を均していく。
既にわたしのスキルちゃん達は生き生きと働き始め、自動採取範囲内でせっせと不要な枝葉を採取したり、木を間引いていったり、砕石に良さげな石を採取したり、落ち葉を腐葉土にして石や木を取った場所をそれで埋めたりしている。
こういう作業はネコノメの管理上でも必要なので、わたしも慣れてしまって、パパァとスキルちゃん達の光で周囲を明るくしながら、アシャールさんと奈々美さんを見送った。
「おじゃましまーす」
わたしはマリーシェラさんと、誰もいないはずの小屋に声をかけて、扉を開けた。
予想通り、埃っぽくてカビ臭い。
「キシャャシャシャシャシャッ」
おや、返事がありましたよ。
「シャーッ」
小屋の隅に、見覚えのある魔物がいたわ。
「まあ、アイアンリザードだわ……! カオリコさん、どうしましょう」
マリーシェラさんが、困った様子でわたしを見た。わたし達はせっかく更地にしたこの周辺を舗装する前に、念の為誰も人が居ないか確認の為にここに来たのだけども。
どこから迷いこんだか知らないけれど、この木製の小屋はアイアンリザードの力だと容易く壊せるはず……なのにそうしないのは、何かから隠れているか、ついでに弱っているからよね。でも……
「なんでスキルちゃんの自動採取の対象から外れてたのかしら?」
わたしは首を傾げた。
森のたまごから生まれたばかりなのでー。スキルちゃん達の良心ですー。るるん。
スキルちゃんの返答に、わたしは改めてアイアンリザードを見た。
なるほど確かに周囲にたまごのカケラ、散らばってますことよ?
「森のたまごが発生して、生まれた個体みたい」
「まあ、かわいそうに……こんな鉱山もないところだと飢え死にしてしまいますわね……」
確かに。
以前見たアイアンリザードより小柄なのは、生まれたばかりなのと、飢えてるからなのかな……。
わたしは深さのある木皿を出して、ムウ乳を注いで床に置いた。
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