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三章 女神教
52. バーナードの変化
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濃密な週末を過ごした翌週は、特に変わったこともなく学園生活を送る。
いや、多少変わったことはあった。
午後は学園の図書館で、ヴェリタスと予習復習と宿題を終わらせてから帰ることにした。
そして昼食時に、バーナードが食堂で一緒に食事をするようになったのだ。
彼は今まで王族や高位貴族の子供達が使う、有料のサロンで食事をしていたのだが。
「やった、今日は揚げ芋が入ってる!」
うまみ屋特製日替り弁当を開けたヴェリタスは、好物を見つけて嬉しそうにする。
メインのお菜は特製合挽肉のハンバーグ。何のお肉かは、きっと熊師匠とか色々だろう。
他にも生野菜のサラダ。生野菜サラダがつく時は、お弁当箱が小さなお重形式になる。たっぷり野菜が食べれるようにとの配慮から。
「芋や野菜は平民の食べ物なのに、随分嬉しそうだな」
バーナードが不思議そうに聞いてくる。
「そうだな、食べて見れば分かる」
ヴェリタスがバーナードのお皿に、ほかほかの揚げ芋を一つ乗せた。
マグダリーナは前世のことを抜きにしても、元々貧乏で平民のような食生活をしてきたから抵抗は無かったが、この世界の貴族の食事は基本、肉、川魚、パン、果物、砂糖菓子である。
土に近い野菜類は高貴な人々は食べない……というのが常識らしい。
さらに海のものは、平民すら食べない。
外つ国から船でやってくる人達もだ。
海中は未知の領域で、ハイエルフすら手は出していない。
ショウネシー領の海岸は誰も近づかないので、エステラはカツウォンやらマグロン、シャケンとかいう何処かで聞いたような魔魚を自由に獲っては、鰹節やフレークなど原型がわからないよう加工してうまみ屋で使ったり、バンクロフト領の商人に売り捌いていた。
昆布や海藻なども然りである。
はじめは海の生き物と嫌煙していた領民たちも、お出汁の香りに負け、徐々に受け入れはじめた。
しかし生まれも育ちも高貴な筈の、シャロンとヴェリタスは、ショウネシー領では野菜も海藻も、海の魚すら……ディオンヌ商会で出すものなら、なんでも好んで食べた。
うまみ屋で試食して、野菜の栄養の重要さを聞き、積極的に取り入れているらしい。
バーナードは揚げ芋……これは切ったジャガイモに特製の味がついた薄い衣をつけて、油で揚げたものだ……を口にする。
「これは……外側がカリッとしてるのに、中はほっくりして……美味い」
「だろ? 俺も野菜はショウネシー領で初めて食べたけど、美味いんだよ。バターを付けたり少し醤油を垂らしてもいいんだ」
「醤油とはなんだ?」
バーナードの疑問には、マグダリーナが答えた。
「大豆を醗酵させて作った調味料よ。ディオンヌ商会で販売してるわ」
バーナードは一旦フォークを置いて、ため息を吐いた。
「何でもやっているのだな、ディオンヌ商会」
「まあ、大体そうね」
マグダリーナはエステラを思い浮かべて、笑みを浮かべる。
「父上にな、聞いたのだ。王都の神殿も、辺境伯領のようにディオンヌ商会に建てて貰えばいいのではと」
マグダリーナとヴェリタスは、バーナードの顔を見て、興味を示した。
「何でも出来るからと、彼らに任せてばかりだと、国として力をつけて行くことはできない。彼らには良い見本を見せてもらい、王都の事業はなるべくそこから技術等学びながら、王都の職人達に技術研鑽と仕事を両立させるようにしていきたいと仰られた。民を守るのは王の務め、民を育てるのもまた王の務めだと」
「しっかり国の事を考えていらっしゃる、良い王様だわ」
マグダリーナの言葉に、バーナードは力強く頷いた。
「世の中のことは、つくづく難しい。いずれ父上の跡を継いで王になる兄上は、このように物事を考えて実践できるように、今から努力しておられるのだと思うと、兄上には健やかにお過ごしいただいて、俺に王位など回って来ぬようにせねばいかん。なので、俺は将来神官になろうと思う」
「「へ?」」
予想外の将来の目標が出てきて、マグダリーナとヴェリタスは目を丸くした。
「国教を変えると言うなら、王族が率先して新しい神に仕える方が納得するものも多くなるだろうしな。何より俺がもっと世界のことを、魔獣や精霊や女神のことを知りたい」
そう言ってバーナードは食事を再開した。
いや、多少変わったことはあった。
午後は学園の図書館で、ヴェリタスと予習復習と宿題を終わらせてから帰ることにした。
そして昼食時に、バーナードが食堂で一緒に食事をするようになったのだ。
彼は今まで王族や高位貴族の子供達が使う、有料のサロンで食事をしていたのだが。
「やった、今日は揚げ芋が入ってる!」
うまみ屋特製日替り弁当を開けたヴェリタスは、好物を見つけて嬉しそうにする。
メインのお菜は特製合挽肉のハンバーグ。何のお肉かは、きっと熊師匠とか色々だろう。
他にも生野菜のサラダ。生野菜サラダがつく時は、お弁当箱が小さなお重形式になる。たっぷり野菜が食べれるようにとの配慮から。
「芋や野菜は平民の食べ物なのに、随分嬉しそうだな」
バーナードが不思議そうに聞いてくる。
「そうだな、食べて見れば分かる」
ヴェリタスがバーナードのお皿に、ほかほかの揚げ芋を一つ乗せた。
マグダリーナは前世のことを抜きにしても、元々貧乏で平民のような食生活をしてきたから抵抗は無かったが、この世界の貴族の食事は基本、肉、川魚、パン、果物、砂糖菓子である。
土に近い野菜類は高貴な人々は食べない……というのが常識らしい。
さらに海のものは、平民すら食べない。
外つ国から船でやってくる人達もだ。
海中は未知の領域で、ハイエルフすら手は出していない。
ショウネシー領の海岸は誰も近づかないので、エステラはカツウォンやらマグロン、シャケンとかいう何処かで聞いたような魔魚を自由に獲っては、鰹節やフレークなど原型がわからないよう加工してうまみ屋で使ったり、バンクロフト領の商人に売り捌いていた。
昆布や海藻なども然りである。
はじめは海の生き物と嫌煙していた領民たちも、お出汁の香りに負け、徐々に受け入れはじめた。
しかし生まれも育ちも高貴な筈の、シャロンとヴェリタスは、ショウネシー領では野菜も海藻も、海の魚すら……ディオンヌ商会で出すものなら、なんでも好んで食べた。
うまみ屋で試食して、野菜の栄養の重要さを聞き、積極的に取り入れているらしい。
バーナードは揚げ芋……これは切ったジャガイモに特製の味がついた薄い衣をつけて、油で揚げたものだ……を口にする。
「これは……外側がカリッとしてるのに、中はほっくりして……美味い」
「だろ? 俺も野菜はショウネシー領で初めて食べたけど、美味いんだよ。バターを付けたり少し醤油を垂らしてもいいんだ」
「醤油とはなんだ?」
バーナードの疑問には、マグダリーナが答えた。
「大豆を醗酵させて作った調味料よ。ディオンヌ商会で販売してるわ」
バーナードは一旦フォークを置いて、ため息を吐いた。
「何でもやっているのだな、ディオンヌ商会」
「まあ、大体そうね」
マグダリーナはエステラを思い浮かべて、笑みを浮かべる。
「父上にな、聞いたのだ。王都の神殿も、辺境伯領のようにディオンヌ商会に建てて貰えばいいのではと」
マグダリーナとヴェリタスは、バーナードの顔を見て、興味を示した。
「何でも出来るからと、彼らに任せてばかりだと、国として力をつけて行くことはできない。彼らには良い見本を見せてもらい、王都の事業はなるべくそこから技術等学びながら、王都の職人達に技術研鑽と仕事を両立させるようにしていきたいと仰られた。民を守るのは王の務め、民を育てるのもまた王の務めだと」
「しっかり国の事を考えていらっしゃる、良い王様だわ」
マグダリーナの言葉に、バーナードは力強く頷いた。
「世の中のことは、つくづく難しい。いずれ父上の跡を継いで王になる兄上は、このように物事を考えて実践できるように、今から努力しておられるのだと思うと、兄上には健やかにお過ごしいただいて、俺に王位など回って来ぬようにせねばいかん。なので、俺は将来神官になろうと思う」
「「へ?」」
予想外の将来の目標が出てきて、マグダリーナとヴェリタスは目を丸くした。
「国教を変えると言うなら、王族が率先して新しい神に仕える方が納得するものも多くなるだろうしな。何より俺がもっと世界のことを、魔獣や精霊や女神のことを知りたい」
そう言ってバーナードは食事を再開した。
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