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十章 マグダリーナとエリック
205. ハイエルフの入場
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今回、ハイエルフ達の衣装は、エデンとイラナ以外は、新年の儀式のように白で統一され、帯だけが金彩が入っている。エデンだけが黒衣だった。
そんな中、ヴェールを被った二人……イラナが新緑、シャロンがローズピンクの衣装で、婚礼衣装の様にも見えた。
そして皆一様に、大きな……とても大きな卵型の真珠を連ねた首飾りをしている。
目立つ。
言うなれば民族衣装を纏った、暴力的に美しい存在を連れて入場しなければいけないのだ。マグダリーナの居た堪れなさを理解してくれるのは、僅かに頬を染めているシャロン伯母様だけだろう。
「マグダリーナ・ショウネシー子爵とハイエルフ、ルシン様ご入場」
視線が一斉にマグダリーナとルシンに集まった。
ルシンは緊張するマグダリーナの鼻を軽く摘んで、視線ではやく歩けと催促した。
(こ……っ、こんな大勢の人の前で、鼻を摘むなんて……!!)
怒りのパワーで無事入場を果たし、ダーモット達と合流する。
ふと周囲の空気がおかしいことに気づき、振り返ると、シャロン伯母様がイラナに横抱き……所謂お姫様抱っこをされながら、入場してきた。
前代未聞である。
美女が美女を抱いてやってきたとしか見えない風景に、王弟殿下の瞳が一際輝いてるのをマグダリーナは見てしまい、そっと目を逸らすと、逸らした視線の先ではオーズリー公爵が情熱の炎を滾らせて王弟殿下を見ていたので、マグダリーナは入り口に視線を戻した。
安定のアーベルとデボラの美男美女カップルが入場してきてホッとする。
戸惑うデボラを、アーベルがうまくエスコートしているようだ。
だが、あの二人は付き合ってない。
そして最後にエステラが、スンとした表情で両脇に男二人侍らせて入場して来た。
ニレルとエデンだ。
こちらも前代未聞で、三人の関係に皆興味津々なだけでなく、女神教の動画を見た者達から、ぽつりぽつりと「エデン様……」という単語が漏れてくる。
エデンが王座に近づくと、他のハイエルフ達もそれに続く。マグダリーナも挨拶がまだだったので、便乗する。
「我らが善き隣人よ。ショウネシーより、よくぞ参ってくれた」
セドリック王が笑顔で声をかける。
「ご招待感謝する。セドリック王よ。そして次代の王の成人を、心からお祝い申し上げる。女神の慈愛が降り注がんことを」
エデンのこの一言は、エリック王子が世継ぎの王子であることの、何よりの保証となった。
エリック王子もエデンに感謝を述べる。
「創世の女神と精霊エルフェーラ、そしてハイエルフたる貴方がたに感謝申し上げる。これからもこの国を見守ってくださると嬉しく思う」
「ええ、ショウネシーもこの国も住みやすい。しかも善き出会いもあった」
エデンはイラナとシャロンを見る。
「これはささやかながら、祝いの品です」
アーベルが銀の箱を差し出した。
「ありがとう、今日は大いに楽しんで行ってほしい」
一通りの挨拶が済んだ所で、飲み物が配られる。
乾杯し、とうとうダンスが始まる。
エリック王子が、真っ直ぐマグダリーナの所に来た。
その後をバーナード第二王子がやって来て、レベッカにダンスを申し込む。
ライアンとヴェリタスも、それぞれ王女にダンスの申し込みに行った。
エリック王子との二度目のダンスは、初めての時ほどときめかなかった。
お互い化けの皮が剥がれて、相手を理解してきているからだと思いたい。
エリック王子のダンスが上手いのは、きっとダンス好きのドロシー王女の相手をずっとさせられていたからだろう。そういう事がわかるくらいには理解が……そう、マグダリーナの肩の上で、一緒に楽しそうに踊っているタマの影響などはなかったのだと……
「タマ~」
マグダリーナが回転した瞬間、浮かれたタマが肩から落ちた。
スライムのか弱さを思い出し、ヒヤリとしたが、華麗に身を反らせたドロシー王女が嫋やかな手で受け止め、自然な動作でタマをマグダリーナの肩に戻していった。
ドロシー王女とライアンのダンスは、さながら競技ダンスのようだった……
「凄いな彼、姉上が本気出して踊ってる……」
エリック王子が感心して言った。
ライアンもレベッカも体幹がしっかりしていて柔軟性がある。
二人の育ての母親だったパイパーは、踊り子だったらしいので、その影響だろうか……
そういえば、レベッカもライアンも、ショウネシーへ来てから、母親の事を話したことはなかった。
パイパーはヘンリー・オーブリーを騙して、二人を捨てさせた原因なのだから、それもそうかと思い直して、マグダリーナは考えるのをやめた。
意識すると、パイパーが二人を連れ去りに来そうな気になるからだ。
ライアンもレベッカも、もうショウネシーの子なのだから、本人達が望んで選んだ道以外、どこにも行かせたくない。
マグダリーナは、強く願った。
そんな中、ヴェールを被った二人……イラナが新緑、シャロンがローズピンクの衣装で、婚礼衣装の様にも見えた。
そして皆一様に、大きな……とても大きな卵型の真珠を連ねた首飾りをしている。
目立つ。
言うなれば民族衣装を纏った、暴力的に美しい存在を連れて入場しなければいけないのだ。マグダリーナの居た堪れなさを理解してくれるのは、僅かに頬を染めているシャロン伯母様だけだろう。
「マグダリーナ・ショウネシー子爵とハイエルフ、ルシン様ご入場」
視線が一斉にマグダリーナとルシンに集まった。
ルシンは緊張するマグダリーナの鼻を軽く摘んで、視線ではやく歩けと催促した。
(こ……っ、こんな大勢の人の前で、鼻を摘むなんて……!!)
怒りのパワーで無事入場を果たし、ダーモット達と合流する。
ふと周囲の空気がおかしいことに気づき、振り返ると、シャロン伯母様がイラナに横抱き……所謂お姫様抱っこをされながら、入場してきた。
前代未聞である。
美女が美女を抱いてやってきたとしか見えない風景に、王弟殿下の瞳が一際輝いてるのをマグダリーナは見てしまい、そっと目を逸らすと、逸らした視線の先ではオーズリー公爵が情熱の炎を滾らせて王弟殿下を見ていたので、マグダリーナは入り口に視線を戻した。
安定のアーベルとデボラの美男美女カップルが入場してきてホッとする。
戸惑うデボラを、アーベルがうまくエスコートしているようだ。
だが、あの二人は付き合ってない。
そして最後にエステラが、スンとした表情で両脇に男二人侍らせて入場して来た。
ニレルとエデンだ。
こちらも前代未聞で、三人の関係に皆興味津々なだけでなく、女神教の動画を見た者達から、ぽつりぽつりと「エデン様……」という単語が漏れてくる。
エデンが王座に近づくと、他のハイエルフ達もそれに続く。マグダリーナも挨拶がまだだったので、便乗する。
「我らが善き隣人よ。ショウネシーより、よくぞ参ってくれた」
セドリック王が笑顔で声をかける。
「ご招待感謝する。セドリック王よ。そして次代の王の成人を、心からお祝い申し上げる。女神の慈愛が降り注がんことを」
エデンのこの一言は、エリック王子が世継ぎの王子であることの、何よりの保証となった。
エリック王子もエデンに感謝を述べる。
「創世の女神と精霊エルフェーラ、そしてハイエルフたる貴方がたに感謝申し上げる。これからもこの国を見守ってくださると嬉しく思う」
「ええ、ショウネシーもこの国も住みやすい。しかも善き出会いもあった」
エデンはイラナとシャロンを見る。
「これはささやかながら、祝いの品です」
アーベルが銀の箱を差し出した。
「ありがとう、今日は大いに楽しんで行ってほしい」
一通りの挨拶が済んだ所で、飲み物が配られる。
乾杯し、とうとうダンスが始まる。
エリック王子が、真っ直ぐマグダリーナの所に来た。
その後をバーナード第二王子がやって来て、レベッカにダンスを申し込む。
ライアンとヴェリタスも、それぞれ王女にダンスの申し込みに行った。
エリック王子との二度目のダンスは、初めての時ほどときめかなかった。
お互い化けの皮が剥がれて、相手を理解してきているからだと思いたい。
エリック王子のダンスが上手いのは、きっとダンス好きのドロシー王女の相手をずっとさせられていたからだろう。そういう事がわかるくらいには理解が……そう、マグダリーナの肩の上で、一緒に楽しそうに踊っているタマの影響などはなかったのだと……
「タマ~」
マグダリーナが回転した瞬間、浮かれたタマが肩から落ちた。
スライムのか弱さを思い出し、ヒヤリとしたが、華麗に身を反らせたドロシー王女が嫋やかな手で受け止め、自然な動作でタマをマグダリーナの肩に戻していった。
ドロシー王女とライアンのダンスは、さながら競技ダンスのようだった……
「凄いな彼、姉上が本気出して踊ってる……」
エリック王子が感心して言った。
ライアンもレベッカも体幹がしっかりしていて柔軟性がある。
二人の育ての母親だったパイパーは、踊り子だったらしいので、その影響だろうか……
そういえば、レベッカもライアンも、ショウネシーへ来てから、母親の事を話したことはなかった。
パイパーはヘンリー・オーブリーを騙して、二人を捨てさせた原因なのだから、それもそうかと思い直して、マグダリーナは考えるのをやめた。
意識すると、パイパーが二人を連れ去りに来そうな気になるからだ。
ライアンもレベッカも、もうショウネシーの子なのだから、本人達が望んで選んだ道以外、どこにも行かせたくない。
マグダリーナは、強く願った。
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