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Day3
13.やばい
しおりを挟む俺は呆然としていた。画面越しに親父がそこに立っているのだ。玄関からはこちらの様子はわからないだろう。だが、俺はこの後のことを想像してしまう。隣にも響きそうな叱る声が頭の中で響き渡る。中2の時に10時を回っても遊んでいた時があるが、家に帰ってくると耳鳴りがするほど怒られたのを覚えている。それに恐怖心を抱いているわけではないが隣の家から苦情を言われるのが面倒くさかった。それに今はルイがいる。
親父は昔から礼儀を大事にする人だった。近所に住む人を見かけると「おはようございます」と丁寧に頭を下げていた。それが社長になれたひとつの理由だろう。俺はそういう教育を小さいころから受けていたが思春期になると聞き流していた。そのため、近所の人らにはあまり話したことはなく、周りから冷たい目で見られていた。
俺が動けないでいるともう一度ピンポーン、という音が部屋に鳴り響く。俺はそれにハッとし思考を巡らせた。この部屋には缶ビールと酔っぱらったルイがいる。とりあえずこのふたつをどうにかしないと。俺は缶ビールをできるだけ持ち、俺の部屋に隠した。何回か往復しテーブルの上にあった缶ビールを片付けた。
次に椅子で寝ているルイを起こそうとしたがゆすっても起きる気配はなかった。ここで寝かせても見つかるので俺の部屋までおんぶした。ルイの体温が背中につたわってきた。ルイの寝息が近くで聞こえてくる。このままずっとおんぶしておきたいがそういうわけにもいかないので急いで部屋に運び、手入れのしていないベッドに寝かせておいた。
一階に下りて玄関に向かった。息を荒げてカギを開ける。
「遅かったな」
「ごめん」
扉を開けると姿勢よく立っている親父の姿があった。髪型はパンチパーマでがっしりとした体格だ。サングラスをかければ反社会勢力の人と間違えられそうだ。しかし、そんな見た目とは裏腹にスーツをしっかりと着こなしていた。
親父は履いていた革靴をそろえ、ついでに俺の靴もきれいにそろえてくれた。そして、親父は3組目の靴に目を向ける。
3組目?
3組目の靴はルイのものだった。急いでいたため隠すのを忘れていた。
「お客か?」
俺は答えに迷っていた。「うん」と答えれば親父はおそらく「挨拶させてくれ」と言ってくるだろう。だから俺は、
「ううん、新しく買った」
親父は「そうか」とだけつぶやく。そして、スーツのまま2階に上がろうとした。俺はそれについていく。俺の部屋に入られたら困るからだ。
「今日、帰ってきたのは取引先との会議が偶然このちかくだからもあるが、あるものを取りに来たからでもあるんだ」
親父は階段をのぼりながらそう言った。だが、俺にはそんな話はどうでもよかった。俺が気になるのは俺が20歳未満にも関わらず酒を飲んでいたことがばれるかどうかだ。親父はおそらく寝室に向かっているのだろう。取りに来るものがあるとすればこの部屋しか思いつかない。
親父は階段を登り終えるとそこで一度、立ち止まった。
「そういえば、お前の部屋、ちゃんと掃除しているのか?」
親父はそう言い俺の部屋の扉のドアノブに手をかけようとした。しかし、俺はそれにいち早く反応し扉の前で両手を広げた。
「何の真似だ」
親父は厳格な顔で問い詰める。
「い、いや、ちゃんと掃除してるよ」
親父はまっすぐこちらを見ていた。いや、睨んでいたというほうが正しいだろうか。親父の目は動物からも恐れられ、なつかれていることなど見たことがなかった。
親父は一度、眼光の鋭い目を閉じ、「そうか」とつぶやいた。俺は安堵のため息をついた。これで大丈夫、そう思っていた。しかし、扉の向こう側からゴン、ゴン、という音が聞こえてきた。ルイが扉を叩いているのだろう。
「やはり誰かいるのか?」
親父は再びこちらを睨みつける。
「い、いや、誰も、いないけど」
俺のその言葉とは裏腹に扉をたたく音も大きくなっていき、扉を押し始めていた。すると、扉の向こうから声が聞こえてきた。
「ねぇ、また遊ぼうよ。寝て元気になったからさー」
親父がさらに眉をひそめる。もう隠すことはできなそうだ。すると、扉を抑える力が限界を迎え、勢いよく扉が開いた。部屋から出てきたのはルイだ。まだ頬が赤い。親父はルイに鋭い視線を向ける。
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