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Day6
24.もうすぐ
しおりを挟む工場跡の中は激しい乱闘となった。
俺は前の男とルイを連れていた男のふたりと、恵くんは後ろの男と交戦していた。
前の男には一撃を与えることはできたものの、それからは防御することしかできなくなっていた。俺の身体はもうボロボロだった。ふたりの拳と蹴りを何発も耐えていたため体中が悲鳴を上げていた。
ふたりは金を燃やされた怒りからか容赦なく俺を殴り続けた。
前の男はボクシングをしているようで、そいつの拳は速く重かった。しかし、そいつの動きが止まった。さすがに体力が持たないのであろう、呼吸する音が聞こえてくる。俺らは見つめあい、お互いの動向を探っていた。
しかし、俺はこの時、忘れていた。もうひとりの存在を・・・。
俺は後ろから足を誰かに蹴られた。バランスが崩れ、宙に舞った。そして、地面に倒れこむ。起き上がろうにも体中が痛んで動けなかった。すると、目の前に男が見下すように立っていた。
「よくもやってくれたな」
そう言いながら男は俺の顔を踏んづけた。そいつは俺のことを睨んでいた。当たり前か、目の前で手に入るお金が燃やされたんだ。
男はさらに強く俺の顔を踏んだ。視線が恵くんのほうへ向いた。
恵くんは地面にうつぶせにされ、手足をおさえられていた。
最初、恵くんは男に対し、果敢に挑んだ。しかし、力の差は歴然だった。
そうして、俺らはこいつに完敗したのだ。ルイを助けられず、情けなく思った。
「情けないね」
あぁ、情けないよ。
うっとうしかった。しかし、そう言われ、俺は涙が出そうになった。
「でも、あたしが来たからには大丈夫」
俺はその声に振り向いた。入口に誰かいる。
「誰だ?」
そう言われ、こちらに近づいてくる。俺は目を見開いた。新田葵だった。
「こんなやつらにやられるなんて情けないね」
「なんだと」
ひとりの男は葵の挑発に乗り、殴りかかろうとした。しかし、葵はそれを軽やかに避け、背中を叩いた。こちらからは優しくたたいたかのように見えた。しかし、それは男を倒れさせるほどの 「じゃあ、あたしは弟を助けるから、そっちは頼んだよ」「じゃあ、あたしは弟を助けるから、そっちは頼んだよ」そう言い葵は恵くんのほうへ行ってしまった。
相変わらずだな。
俺はフッと笑い、ゆっくりと立ち上がった。リーダーの男は葵のほうを見ていたが、俺が立ち上がったのに気が付いた。男は汗を流していた。それに手が震えているのが見える。
俺の手も震えていた。それを自分で抑えられない中、俺はこぶしを握り締め、男に殴りかかった。
今度は逆に俺が攻めていた。顔、胸、腕、脚、どこを狙うでもなくただ男に向かって拳を振り続けた。そのおかげで男はどこに来るかわからないように一歩ずつ後ろに下がって防御するしかなかったようだった。
俺は体力がなくなっても構わず殴り続けた。暴走列車のようにそれは止まることを知らなかった。どれくらい殴り続けたかわからない。ただ、もう炎の光は届いていなかった。
すると、ドン、という音が聞こえた。男はもう後ろに下がらなかった。それがわかると俺は渾身の一撃を男の腹に食らわせた。男の口からつばが吐かれる。
男は壁にもたれかけるように倒れこんだ。俺は壁に手をつく。殴り続けた疲労、殴られた痛みが今、一気に流れ込んできたのだ。しかし、俺は地面に倒れこまなかった。ルイを助けなければいけないからだ。俺はふらつく足でルイのもとへ向かった。
ルイのもとには葵と恵くんが立っており、水を飲ませていた。俺はふたりのもとへ寄り、ルイの手を掴んだ。それはほんのりと暖かい。ルイは俺の手を掴み、そして、立ち上がった。
「ご、ごめん、迷惑かけて」
ルイはそのように謝った。
「ううん、大丈夫だよ」
俺は体に鞭を打って、無理やり笑った。
「ごめん、こんな傷負わせて」
ルイはそう言うと、俺の腕に触れ、優しくさすった。すると、あちこちにあった傷がきれいさっぱり消えていき、痛みもなくなったのだった。
ルイははにかむように笑った。しかし、葵と恵は目を見開き手で口をおさえていた。俺もそうだった。
やっぱり、ルイは・・・。
「ルイ、君は・・・」
そう言った瞬間だった。天井がバチバチという音を立てたのだ。そして、次の瞬間、それは俺らがいる場所に落ちてきた。俺はルイの手を掴み逃げ出そうとした。しかし・・・、
ルイは俺の身体を押したのだった。
ズドーン。
天井が落ち、ルイはあちらに取り残されてしまった。落ちてきた天井のがれきは炎をまとっていた。天井は穴が開き、雨が中に流れてきた。それでもなお、炎は広がり続けていた。
俺のせいだ。俺が火をつけなければ。
炎は俺の知らないところで静かに燃え広がっていた。それがもろい天井まで伝わり、崩れてしまったのだ。
「ルイ!」
「ルイ君!」
「師匠!」
みんなで名前を呼んだ。すると、
「大丈夫、外で待ってて」
と言う声が聞こえてきた。しかし、ルイはこの工場から出ることが出来なくなってしまった。そのため、俺は炎を恐れず向こう側に行こうとした。
「無茶よ」
葵は裾を引っ張って俺を止めた。
「離せよ」
俺は葵の手を振りはらおうとした。しかし、俺はやはり葵には勝てなかった。
「消防車は?」
俺はそう言うと、もうすでに恵くんが携帯で電話しているのが見えた。俺はもうルイが生きて帰ってくるのを願うしかなかった。
雨と炎が格闘をしている中、電話を終えた恵くんが「あっ」と声を上げ、開いた天井に向かって指をさした。俺もそこを見ると、誰かが空を飛んでいた。
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