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わたしの隣の席に、ユーグ。正面にはフィフィちゃんが座っていて、その横にティティくんが座っている。
ユーグと時間が合わなかったら一人ご飯も覚悟してたから、わいわい食事が取れて凄く嬉しい。
「魔術科の先生はね、とっつきやすくて楽しい先生だよ。剣術科はどうだった?」
「こっちは先生が3人いて、今日班分けしたよ。俺の担当は現役の冒険者で、お嫁さんの出産に合わせて休業中らしい優しい人だよ。他の先生より年も近くて、兄貴分って感じかな」
剣術科の生徒は…30人近くいたハズ。そりゃ一人じゃ面倒見きれないよね。
「僕たち皆ばらばらだね。僕のとこは厳しそうな人だったよ」
「フィフィの先生は元騎士のおじさんで真面目そうなの。お髭がちょっと素敵なの」
「シェリーはつきっきりで教えてもらえるし、上達するのが早いだろうな。小さい時からずっと魔法使いになりたがってたし」
そう、わたしは子供の時からずっと魔法にこだわっていた。完全に父の影響だ。
まばゆく輝く魔法陣、息をのむような強烈な光。なんでもできてしまう、素晴らしい奇跡の技だとずっと思っていた。
父に魔法を教えて欲しいと散々ねだったが、小さいうちに大きな力を扱うのはイケナイとずっと突っぱねられてきた。
大体の子が学校に通うけれど、独学…というか、親に鍛えられて冒険者になる人もいないわけではない。
まぁ実力をつけるのも大事だけど、学校ではコミュニケーション能力を磨いたり友達を作ったりといった役割もあるので、独学で学んでいたとしても学校に通う子もいる。
「フィフィも簡単な魔法はお母さんに習ってるの」
「僕も」
「え、何で魔術科に来なかったの!おいでよ!」
ほらやっぱり、エルフに魔法はつきものだった!
「周りが皆魔法使いばっかりで、つまらないの」
「一緒だとつまらないよ」
「でも二人ともそんな細腕で剣を振りまわすだなんて…。わたしは知らないけど、今は魔力を矢にして飛ばす弓があるらしいよ。弓科でもよかったんじゃない?」
可憐な2人は、そんなにパワフルに見えない。エルフは魔力が高いけど体力は低い種族らしいし、魔術科が嫌なら弓科でもよかったはずだ。
「弓だって腕の力いるからな?」
「いや、イメージとしてさ。自分の持ち味を伸ばすのも重要じゃない」
「フィフィは魔法剣士になるの」
「僕も」
「なにそれかっこいい!」
でもそんな職種開発されちゃったら、魔法使いもういらないのでは?あ、だから廃れたのか…。悲しい。
「先に魔法を勉強しようよ、わたし魔術科一人で寂しいな」
勧誘するなら今だと思って、ぶっこむ。横でユーグが呆れてるけど気にしない。
「補助として魔法を使えればいいの。ちょっと剣が使える魔法使いなんて、前衛に立たせられないの。ちょっと魔法が使える剣士なら、サポートもできて役に立つの」
「まずは体の基礎をつくるよ。身体能力を上げる魔法は、もう使えるから」
「もう人生プランは完璧なのね…ふたりとも凄いや」
なるほど、今や時代は歌って踊れるなんですね。わたしは…、わたしも、何か考えた方がいいんだろうか。
****
「おはようシェリー、よく眠れたかしら」
「おはようございます。これからの事考えてて、あんまり眠れなかったです…」
「やだ、まだ授業も始まってないのにもう先の事を考えてるの?しっかりしてるじゃないこのこのー!」
あはは…。いえ、今までの考えが甘かったなって…。反省してたんですけどね。
「さっそくだけど課外授業よ、仮杖をつくりに森に行きましょう」
「仮
・
杖ですか」
「そうよ。一番力を発揮できる杖はね、種から育てないと駄目なの。でもそれには妖精の力が必要だわ。だけど、妖精は杖がないと見えないの」
「…詰みましたね?」
杖の木を育てるには妖精の力が必要なのに、杖がないと妖精が見えない。これ如何に。
「魔力伝達は少ないけれど、まずは妖精が見れればいいのよ。最初は既に成長してる木で杖を作って、妖精とコンタクトをとるの」
「なるほど、だから仮なんですね」
妖精は、契約しないと見えない。だけど、近くにたくさん居る。そんな存在だ。
風や火や水、妖精は自然物に宿る。人はそのサイクルから少し外れているので、そのままだと妖精を見ることはできない。
でも魔力を吸って育った木を自分の手として使うことで、そのサイクルにお邪魔できるのだとか何とか。
父が昔に教えてくれた気がする。
「運が良ければすぐいい木が見つかるけれど、なかなかないからね。昼食は用意してもらってるから、ピクニック気分で行きましょう!」
木から切りだして杖を作るのは大変そうだなぁと思ってたけど、そもそも素材を見つけるのが大変だとは思ってもみなかった。
「魔力が多い木とどうでない普通の木って、見分けがつくんですか?」
「そうね、ようは妖精が住んでいるかどうかってことになるから…他のに比べて成長が早かったり葉がつやつやしていたり、成る実が大きかったりするわ」
「先生の妖精さんが教えてくれたりするんですか?」
「うーん、プライバシーにかかわるから、他人の個人情報は教えてくれないのよね。他人っていうか他妖精?向こうが契約したがってたら話は別なんだけどね」
できれば今日で仮杖を作れたらいいなーと思いつつ。
わたしは先生と校外の森へ向かった。
ユーグと時間が合わなかったら一人ご飯も覚悟してたから、わいわい食事が取れて凄く嬉しい。
「魔術科の先生はね、とっつきやすくて楽しい先生だよ。剣術科はどうだった?」
「こっちは先生が3人いて、今日班分けしたよ。俺の担当は現役の冒険者で、お嫁さんの出産に合わせて休業中らしい優しい人だよ。他の先生より年も近くて、兄貴分って感じかな」
剣術科の生徒は…30人近くいたハズ。そりゃ一人じゃ面倒見きれないよね。
「僕たち皆ばらばらだね。僕のとこは厳しそうな人だったよ」
「フィフィの先生は元騎士のおじさんで真面目そうなの。お髭がちょっと素敵なの」
「シェリーはつきっきりで教えてもらえるし、上達するのが早いだろうな。小さい時からずっと魔法使いになりたがってたし」
そう、わたしは子供の時からずっと魔法にこだわっていた。完全に父の影響だ。
まばゆく輝く魔法陣、息をのむような強烈な光。なんでもできてしまう、素晴らしい奇跡の技だとずっと思っていた。
父に魔法を教えて欲しいと散々ねだったが、小さいうちに大きな力を扱うのはイケナイとずっと突っぱねられてきた。
大体の子が学校に通うけれど、独学…というか、親に鍛えられて冒険者になる人もいないわけではない。
まぁ実力をつけるのも大事だけど、学校ではコミュニケーション能力を磨いたり友達を作ったりといった役割もあるので、独学で学んでいたとしても学校に通う子もいる。
「フィフィも簡単な魔法はお母さんに習ってるの」
「僕も」
「え、何で魔術科に来なかったの!おいでよ!」
ほらやっぱり、エルフに魔法はつきものだった!
「周りが皆魔法使いばっかりで、つまらないの」
「一緒だとつまらないよ」
「でも二人ともそんな細腕で剣を振りまわすだなんて…。わたしは知らないけど、今は魔力を矢にして飛ばす弓があるらしいよ。弓科でもよかったんじゃない?」
可憐な2人は、そんなにパワフルに見えない。エルフは魔力が高いけど体力は低い種族らしいし、魔術科が嫌なら弓科でもよかったはずだ。
「弓だって腕の力いるからな?」
「いや、イメージとしてさ。自分の持ち味を伸ばすのも重要じゃない」
「フィフィは魔法剣士になるの」
「僕も」
「なにそれかっこいい!」
でもそんな職種開発されちゃったら、魔法使いもういらないのでは?あ、だから廃れたのか…。悲しい。
「先に魔法を勉強しようよ、わたし魔術科一人で寂しいな」
勧誘するなら今だと思って、ぶっこむ。横でユーグが呆れてるけど気にしない。
「補助として魔法を使えればいいの。ちょっと剣が使える魔法使いなんて、前衛に立たせられないの。ちょっと魔法が使える剣士なら、サポートもできて役に立つの」
「まずは体の基礎をつくるよ。身体能力を上げる魔法は、もう使えるから」
「もう人生プランは完璧なのね…ふたりとも凄いや」
なるほど、今や時代は歌って踊れるなんですね。わたしは…、わたしも、何か考えた方がいいんだろうか。
****
「おはようシェリー、よく眠れたかしら」
「おはようございます。これからの事考えてて、あんまり眠れなかったです…」
「やだ、まだ授業も始まってないのにもう先の事を考えてるの?しっかりしてるじゃないこのこのー!」
あはは…。いえ、今までの考えが甘かったなって…。反省してたんですけどね。
「さっそくだけど課外授業よ、仮杖をつくりに森に行きましょう」
「仮
・
杖ですか」
「そうよ。一番力を発揮できる杖はね、種から育てないと駄目なの。でもそれには妖精の力が必要だわ。だけど、妖精は杖がないと見えないの」
「…詰みましたね?」
杖の木を育てるには妖精の力が必要なのに、杖がないと妖精が見えない。これ如何に。
「魔力伝達は少ないけれど、まずは妖精が見れればいいのよ。最初は既に成長してる木で杖を作って、妖精とコンタクトをとるの」
「なるほど、だから仮なんですね」
妖精は、契約しないと見えない。だけど、近くにたくさん居る。そんな存在だ。
風や火や水、妖精は自然物に宿る。人はそのサイクルから少し外れているので、そのままだと妖精を見ることはできない。
でも魔力を吸って育った木を自分の手として使うことで、そのサイクルにお邪魔できるのだとか何とか。
父が昔に教えてくれた気がする。
「運が良ければすぐいい木が見つかるけれど、なかなかないからね。昼食は用意してもらってるから、ピクニック気分で行きましょう!」
木から切りだして杖を作るのは大変そうだなぁと思ってたけど、そもそも素材を見つけるのが大変だとは思ってもみなかった。
「魔力が多い木とどうでない普通の木って、見分けがつくんですか?」
「そうね、ようは妖精が住んでいるかどうかってことになるから…他のに比べて成長が早かったり葉がつやつやしていたり、成る実が大きかったりするわ」
「先生の妖精さんが教えてくれたりするんですか?」
「うーん、プライバシーにかかわるから、他人の個人情報は教えてくれないのよね。他人っていうか他妖精?向こうが契約したがってたら話は別なんだけどね」
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わたしは先生と校外の森へ向かった。
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