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06 最初の契約
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川の傍と、丘の上。昨日二つの木から枝を貰ったので、今日目指すのはダンジョンの傍の木だ。
そう、仮杖を作るには木を切るのだとばかり思っていたけど、その必要はなくて枝があれば十分だったみたい。
そりゃ一本の木から一人の仮杖しかできないんじゃぁ、生徒数が多かった時代どうしてたんだって話だよね!
ダンジョンは学園からそんなに離れていなかったので、昼すぎには学園に帰り着いた。
「じゃあ今からお昼休みってことで。シェリーは昼食を食堂で取るのは初めてね。他の科はもうそろそろお昼休憩が終わるし…今日は一緒に食べようか」
「もちろんです!一緒に食べましょう」
先生と、食堂でランチ。…あ、これ。科によって授業時間がズレたりするから、クラスメイトのいないわたしは明日から一人飯ってことなのでは?
はあぁあ…悲しい。
「やだ、どうしたのため息ついちゃって。苦手な物でもはいってた?」
この悩みは、誰とも共有できそうにない。
***
ご飯をお腹いっぱいいただいて、いつもならちょっと眠くなる時間だけど。
今から杖を作るとあっては眠気も吹き飛ぶ。
「まず、枝の魔力と自分の魔力を馴染ませます。枝の先を両手で持って…そう。その枝も自分の体の一部だと思って」
3本の枝を束ねて持つ。しっかり枝同士も触れ合うように、ノーマ先生にもらった白いリボンで真ん中をまとめている。
「自分の中の魔力の流れに、枝も通して」
右手と左手、それぞれしっかり枝の先を握りしめる。頭のてっぺんから、左腕。手のひらから枝を通って、右手。右肩から、右足、つま先、戻って左足。わたしがイメージしやすい、魔力の流れ。
「そう、じょうずよ」
「これで終わりですか?」
「まだ馴染んでないから、後何周かつづけてちょうだい」
ぐるぐると、魔力の流れを意識する。2回、3回、4回…。
「…もういいわね。シェリー、その杖を円を描くように振ってみて」
「こうですか?」
空中で、先生の顔を丸で囲む。
「んー駄目ね。雫みたいになってるわ。綺麗に円を描くコツは、2,3回続けて振る事よ。そしたらいずれかで円が描けてるからね」
「そんなのでいいんですか!?」
「いいのいいの、最初はね。いつまでもそれじゃあ格好悪いし魔法の発動もタイムロスだけど」
アドバイス通り、同じ場所を意識してぐるぐる回す。
キラッ
「あっ」
小さな円が、金色に光って空中に残った。
「先生、これって」
「おめでとう、成功よ。輪の中を覗いてみて」
「え、それ先に言っててくださいよ。目線より上に描いちゃいましたよ…」
仕方なく、行儀悪くも机に登る。金色の輪をのぞき込むと、そこにはつぶらな瞳があった。
「よ、妖精さんですか!?」
「見えたのね。貴女に手を伸ばしている子が居たら、手を取ってあげて。そうすれば契約完了で、いつでも姿が見えるようになるわ。見えていても見えていなくても、その円から見える子達はいつも傍にいるんだけどね」
「顔がいっぱい見えますけど手は出してくれてないですね…」
顔のアップが、3妖精分程。もみくちゃに、小さい窓から顔を覗く権利を取り合っているように見える。
「ふんふん…あらまぁー。どうやらシェリーと一番最初に契約するのは誰かって揉めてるらしいわ」
先生の妖精情報。
「私はね、今3人と契約してるの。私にとっては皆大事なパートナーだけど、妖精には妖精の順序付けがあるらしくって、一番最初の座は名誉だそうよ。一番力を借りるのは最後に来てくれた子なんだけど、最初の子の方が偉そうにしてるわ」
年功序列。能力よりも契約した順番が物を言うらしい。
「そんな事聞いたら選びづらいんですけど!」
「先生の時は取り合いなんてなかったからアドバイスできないなぁー、ピピっと来た子を選べばいいんじゃない?」
「選ぶも何もぎゅうぎゅうで皆見えてない…っていうか妖精って1人2人って数えるんですか」
「改めて言われると、先生も明確には習ってないわね。でも私はそれでいいと思うからそういう事で!」
今、私と契約をしてくれる気がある子が3人も居るってことか。一番最初に目が合った子を選びたい気がするけど、どの子だったかな。
「えーっと…最初に目が合った子はどの子?」
試しに、聞いてみた。可愛いキラキラ光る目が、全部一斉にぱちぱちする。
「妖精と言葉は通じないわよ。長くいると何となく言いたいことが分かってくるだけなの。妖精は言葉がないから、イメージでコミュニケーションをとるの」
「むずかしいんですね…」
「ふんふん…なるほど。シェリーと一番最初に目が合ったって言ってる子が居るわ。貴女の頭の上にね」
あれ?円を覗いた時から見えてる顔は、3つあるままなのに?
反射的に、頭の上を右手で扇ぐ。
「その子達には、悪いけど道を開けてもらわないとね。ふーって、吹いちゃいなさい」
「えっ、そんなことしていいんですか!?」
「大丈夫よ、多少吹き飛んでも妖精は飛べるんだから」
中々手荒な気がするけど、蝋燭の火を消すように、軽く縁に息を吹きかける。
3人の妖精は軽く吹っ飛んで、円の向こうにも教室が見えている事が確認できた。
飛んで行った子以外にも、教室の机に座っている子や、ふわふわ浮いている子や、丸くなってこっちを見ている子もいる。
ふと、円の端っこがゆらゆらと金色に見えた。
懐かしい、コガナ村の麦穂の色。
思わず指を突っ込んで、引っ張る。
釣られるように出てきたのは、金色の髪をした妖精。
ちょっと怒ったような顔をしていたので慌てて指を引っ込めようとしたら、その手に引っ付いて金の輪をくぐって…。
わたしの、最初の妖精になった。
そう、仮杖を作るには木を切るのだとばかり思っていたけど、その必要はなくて枝があれば十分だったみたい。
そりゃ一本の木から一人の仮杖しかできないんじゃぁ、生徒数が多かった時代どうしてたんだって話だよね!
ダンジョンは学園からそんなに離れていなかったので、昼すぎには学園に帰り着いた。
「じゃあ今からお昼休みってことで。シェリーは昼食を食堂で取るのは初めてね。他の科はもうそろそろお昼休憩が終わるし…今日は一緒に食べようか」
「もちろんです!一緒に食べましょう」
先生と、食堂でランチ。…あ、これ。科によって授業時間がズレたりするから、クラスメイトのいないわたしは明日から一人飯ってことなのでは?
はあぁあ…悲しい。
「やだ、どうしたのため息ついちゃって。苦手な物でもはいってた?」
この悩みは、誰とも共有できそうにない。
***
ご飯をお腹いっぱいいただいて、いつもならちょっと眠くなる時間だけど。
今から杖を作るとあっては眠気も吹き飛ぶ。
「まず、枝の魔力と自分の魔力を馴染ませます。枝の先を両手で持って…そう。その枝も自分の体の一部だと思って」
3本の枝を束ねて持つ。しっかり枝同士も触れ合うように、ノーマ先生にもらった白いリボンで真ん中をまとめている。
「自分の中の魔力の流れに、枝も通して」
右手と左手、それぞれしっかり枝の先を握りしめる。頭のてっぺんから、左腕。手のひらから枝を通って、右手。右肩から、右足、つま先、戻って左足。わたしがイメージしやすい、魔力の流れ。
「そう、じょうずよ」
「これで終わりですか?」
「まだ馴染んでないから、後何周かつづけてちょうだい」
ぐるぐると、魔力の流れを意識する。2回、3回、4回…。
「…もういいわね。シェリー、その杖を円を描くように振ってみて」
「こうですか?」
空中で、先生の顔を丸で囲む。
「んー駄目ね。雫みたいになってるわ。綺麗に円を描くコツは、2,3回続けて振る事よ。そしたらいずれかで円が描けてるからね」
「そんなのでいいんですか!?」
「いいのいいの、最初はね。いつまでもそれじゃあ格好悪いし魔法の発動もタイムロスだけど」
アドバイス通り、同じ場所を意識してぐるぐる回す。
キラッ
「あっ」
小さな円が、金色に光って空中に残った。
「先生、これって」
「おめでとう、成功よ。輪の中を覗いてみて」
「え、それ先に言っててくださいよ。目線より上に描いちゃいましたよ…」
仕方なく、行儀悪くも机に登る。金色の輪をのぞき込むと、そこにはつぶらな瞳があった。
「よ、妖精さんですか!?」
「見えたのね。貴女に手を伸ばしている子が居たら、手を取ってあげて。そうすれば契約完了で、いつでも姿が見えるようになるわ。見えていても見えていなくても、その円から見える子達はいつも傍にいるんだけどね」
「顔がいっぱい見えますけど手は出してくれてないですね…」
顔のアップが、3妖精分程。もみくちゃに、小さい窓から顔を覗く権利を取り合っているように見える。
「ふんふん…あらまぁー。どうやらシェリーと一番最初に契約するのは誰かって揉めてるらしいわ」
先生の妖精情報。
「私はね、今3人と契約してるの。私にとっては皆大事なパートナーだけど、妖精には妖精の順序付けがあるらしくって、一番最初の座は名誉だそうよ。一番力を借りるのは最後に来てくれた子なんだけど、最初の子の方が偉そうにしてるわ」
年功序列。能力よりも契約した順番が物を言うらしい。
「そんな事聞いたら選びづらいんですけど!」
「先生の時は取り合いなんてなかったからアドバイスできないなぁー、ピピっと来た子を選べばいいんじゃない?」
「選ぶも何もぎゅうぎゅうで皆見えてない…っていうか妖精って1人2人って数えるんですか」
「改めて言われると、先生も明確には習ってないわね。でも私はそれでいいと思うからそういう事で!」
今、私と契約をしてくれる気がある子が3人も居るってことか。一番最初に目が合った子を選びたい気がするけど、どの子だったかな。
「えーっと…最初に目が合った子はどの子?」
試しに、聞いてみた。可愛いキラキラ光る目が、全部一斉にぱちぱちする。
「妖精と言葉は通じないわよ。長くいると何となく言いたいことが分かってくるだけなの。妖精は言葉がないから、イメージでコミュニケーションをとるの」
「むずかしいんですね…」
「ふんふん…なるほど。シェリーと一番最初に目が合ったって言ってる子が居るわ。貴女の頭の上にね」
あれ?円を覗いた時から見えてる顔は、3つあるままなのに?
反射的に、頭の上を右手で扇ぐ。
「その子達には、悪いけど道を開けてもらわないとね。ふーって、吹いちゃいなさい」
「えっ、そんなことしていいんですか!?」
「大丈夫よ、多少吹き飛んでも妖精は飛べるんだから」
中々手荒な気がするけど、蝋燭の火を消すように、軽く縁に息を吹きかける。
3人の妖精は軽く吹っ飛んで、円の向こうにも教室が見えている事が確認できた。
飛んで行った子以外にも、教室の机に座っている子や、ふわふわ浮いている子や、丸くなってこっちを見ている子もいる。
ふと、円の端っこがゆらゆらと金色に見えた。
懐かしい、コガナ村の麦穂の色。
思わず指を突っ込んで、引っ張る。
釣られるように出てきたのは、金色の髪をした妖精。
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わたしの、最初の妖精になった。
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