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「っというわけで、この子が私の最初の妖精さんです。リナーだよ、見えないだろうけどよろしくね」
寮に帰るなり、早速フィフィちゃんに自慢した。
「フィフィもいつか見てみたいの。どんな子なの?」
「金色の髪が揺れてて、きれいな子だよ。後ね、水みたいにぷるぷるしてるルーフと、林檎みたいに赤い髪のリーグ。最後に黒い靄っぽいダナー」
「最初からそんなにいるの?里で一番契約の多いお母さんでも6体なの」
あ、フィフィちゃんのとこは数え方違うんだ。
「フィフィちゃんのお母さん、凄いね!うちのお父さんも魔法使いなんだけど、4体だったよ」
「だったら、シェリーちゃんはもうお父さんに追いついてるの」
「…言われてみれば!」
妖精とは契約すればするほど、借りれる力が多くなる。まあ契約自体お互いの意思を尊重し合う行為なので、そんなに簡単に結べるものでもない。
…って言われてる。
「まぁ数が一緒でも、お父さんの足元にも及ばないけどね」
一瞬で、視界いっぱいを火の海にしてしまうような。お父さんの魔法は、瞬間火力が半端ない。
爆発的な力を引き出す集中力は、素直に尊敬してる。
「そっちの鉢は何なの?」
「これでわたしの杖を育てるんだ」
床に置いたら蹴っ飛ばしそうだったから、机の上に置いてある鉢。
中には、粉々に砕かれた仮杖が入っている。
そう、自分だけの杖を作る土壌として、仮杖は壊したのだ。中々に躊躇する儀式だったわ…。
「明日、杖を作る授業をするから、それまで私の魔力に慣らしておけって」
できるだけ持ち歩くようにと言われている。
「さーて、晩御飯食べに行こっか」
「それも持っていくの?」
「え、うん。だめかな」
…まぁ確かに、食べる為の場所に持ち込むのは注意されるかもしれない。
「みんながご飯食べる所だもんね…」
「別にいいと思うの。泥だらけで食べにくる男子の方が考え物なの」
非難されたのかと思いきや、フィフィちゃんはただ確かめたかっただけみたい。
「本来なら数日かけてもいいぐらいなの。明日杖にするのなら、できるだけ一緒に行動するべきなの」
フィフィちゃんの理解も得たので、遠慮なく食堂にも持ち込むことにした。
***
「何、その壺」
「おしい、正解は鉢でした」
食堂でティティくんと合流するやいなや、突っ込まれた。朝食はわたしとフィフィちゃんとティティくんとユーグで食べるんだけど、晩御飯にユーグは居ない。
何故かというと、はらぺこユーグが4人揃うのを待ってくれないからだ。授業が終わって解放されると、すぐに食堂へ走っている。
そして暗くなるまでちょっと遊んで、もう一回夜食を食べてるみたい。
バレス学園では、学費に食費も含まれているので食堂は利用し放題なのだ。
そもそも学費もそこまで高くない代わりに、これから先冒険で一定以上の収入を得ると、何パーセントか取られるって仕組みだったはず。
お父さん情報だから適当だけど、多分本格的に冒険者ギルドとかに顔を出し始める3年生になったら詳しく教えてくれると思う。
「シェリーちゃんは凄いの、優秀なの。もう4体の妖精と契約したの」
「僕達は一体だけだもんね」
「待って、2人とも契約してるの?」
「フィフィの妖精は銀色の羽が生えてるの。名前はつけてないの」
「僕の妖精は、金色の毛がもふもふ」
入学前から魔法を教えてもらえてるだなんて、羨ましい。
わたしはいくら頼んだって断られてたのに。
「ふたりともずるいよ、いいなぁ」
ぽろっと、本音がこぼれてしまった。
「違うの、フィフィ達が魔法使いになりたくないって言ったから、無理やりプレゼンの為にやらされただけなの」
即座に、フォローが入る。フィフィちゃん、優しいな…ほんと、一緒に魔法科で学びたかった…!
「ごめんごめん、わたしは小さい時からお父さんに何度もお願いしてたんだけど、魔法教えて貰えなかったからさ。でもお父さんに習うより、ここでちゃんと先生から学んだ方が100倍よかったと思うから、大丈夫!」
「いい先生みたいで、よかったの。フィフィの先生も、頼もしくって素敵なの。この学園はいい所なの」
いい先生で、いいルームメイトで。クラスメイトが居ない事だけが、ほんと悔やまれるけど、わたしもこの学園で満足してる。
フィフィちゃんと会えて、本当に良かった。
ちょっと照れるけど、フィフィちゃんにそう伝えようかと口を開いたけど
「まだ話してるなら、料理とってくるけど」
とても気を使ってくれた、空気を読めない発言に押しとどめられた。
「シェリー何食べる?」
「…まだ見てないから、一緒に行くよ。ありがとうティティくん」
ティティくんのちょっと天然な行動に脱力させられつつ。
今日もお互いの授業内容を報告したりする、賑やかな食卓となった。
寮に帰るなり、早速フィフィちゃんに自慢した。
「フィフィもいつか見てみたいの。どんな子なの?」
「金色の髪が揺れてて、きれいな子だよ。後ね、水みたいにぷるぷるしてるルーフと、林檎みたいに赤い髪のリーグ。最後に黒い靄っぽいダナー」
「最初からそんなにいるの?里で一番契約の多いお母さんでも6体なの」
あ、フィフィちゃんのとこは数え方違うんだ。
「フィフィちゃんのお母さん、凄いね!うちのお父さんも魔法使いなんだけど、4体だったよ」
「だったら、シェリーちゃんはもうお父さんに追いついてるの」
「…言われてみれば!」
妖精とは契約すればするほど、借りれる力が多くなる。まあ契約自体お互いの意思を尊重し合う行為なので、そんなに簡単に結べるものでもない。
…って言われてる。
「まぁ数が一緒でも、お父さんの足元にも及ばないけどね」
一瞬で、視界いっぱいを火の海にしてしまうような。お父さんの魔法は、瞬間火力が半端ない。
爆発的な力を引き出す集中力は、素直に尊敬してる。
「そっちの鉢は何なの?」
「これでわたしの杖を育てるんだ」
床に置いたら蹴っ飛ばしそうだったから、机の上に置いてある鉢。
中には、粉々に砕かれた仮杖が入っている。
そう、自分だけの杖を作る土壌として、仮杖は壊したのだ。中々に躊躇する儀式だったわ…。
「明日、杖を作る授業をするから、それまで私の魔力に慣らしておけって」
できるだけ持ち歩くようにと言われている。
「さーて、晩御飯食べに行こっか」
「それも持っていくの?」
「え、うん。だめかな」
…まぁ確かに、食べる為の場所に持ち込むのは注意されるかもしれない。
「みんながご飯食べる所だもんね…」
「別にいいと思うの。泥だらけで食べにくる男子の方が考え物なの」
非難されたのかと思いきや、フィフィちゃんはただ確かめたかっただけみたい。
「本来なら数日かけてもいいぐらいなの。明日杖にするのなら、できるだけ一緒に行動するべきなの」
フィフィちゃんの理解も得たので、遠慮なく食堂にも持ち込むことにした。
***
「何、その壺」
「おしい、正解は鉢でした」
食堂でティティくんと合流するやいなや、突っ込まれた。朝食はわたしとフィフィちゃんとティティくんとユーグで食べるんだけど、晩御飯にユーグは居ない。
何故かというと、はらぺこユーグが4人揃うのを待ってくれないからだ。授業が終わって解放されると、すぐに食堂へ走っている。
そして暗くなるまでちょっと遊んで、もう一回夜食を食べてるみたい。
バレス学園では、学費に食費も含まれているので食堂は利用し放題なのだ。
そもそも学費もそこまで高くない代わりに、これから先冒険で一定以上の収入を得ると、何パーセントか取られるって仕組みだったはず。
お父さん情報だから適当だけど、多分本格的に冒険者ギルドとかに顔を出し始める3年生になったら詳しく教えてくれると思う。
「シェリーちゃんは凄いの、優秀なの。もう4体の妖精と契約したの」
「僕達は一体だけだもんね」
「待って、2人とも契約してるの?」
「フィフィの妖精は銀色の羽が生えてるの。名前はつけてないの」
「僕の妖精は、金色の毛がもふもふ」
入学前から魔法を教えてもらえてるだなんて、羨ましい。
わたしはいくら頼んだって断られてたのに。
「ふたりともずるいよ、いいなぁ」
ぽろっと、本音がこぼれてしまった。
「違うの、フィフィ達が魔法使いになりたくないって言ったから、無理やりプレゼンの為にやらされただけなの」
即座に、フォローが入る。フィフィちゃん、優しいな…ほんと、一緒に魔法科で学びたかった…!
「ごめんごめん、わたしは小さい時からお父さんに何度もお願いしてたんだけど、魔法教えて貰えなかったからさ。でもお父さんに習うより、ここでちゃんと先生から学んだ方が100倍よかったと思うから、大丈夫!」
「いい先生みたいで、よかったの。フィフィの先生も、頼もしくって素敵なの。この学園はいい所なの」
いい先生で、いいルームメイトで。クラスメイトが居ない事だけが、ほんと悔やまれるけど、わたしもこの学園で満足してる。
フィフィちゃんと会えて、本当に良かった。
ちょっと照れるけど、フィフィちゃんにそう伝えようかと口を開いたけど
「まだ話してるなら、料理とってくるけど」
とても気を使ってくれた、空気を読めない発言に押しとどめられた。
「シェリー何食べる?」
「…まだ見てないから、一緒に行くよ。ありがとうティティくん」
ティティくんのちょっと天然な行動に脱力させられつつ。
今日もお互いの授業内容を報告したりする、賑やかな食卓となった。
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