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杖造りは時間をかけて徐々に進行していくものなので、午前中は杖の世話、午後からは魔法の勉強というカリキュラムとなった。
基礎として魔方陣の模様、それが意味する力を学ぶ。規則性がない魔法陣は文字というよりも絵だ。
違う属性の魔法陣に同じ模様が使われていたりするので、それが妖精にとって何を意味するのか気になるところである。
わたし達にその法則性は解読できないけれど、それらは妖精にとって分りやすい力の形らしい。
魔方陣の模様を覚えて、それが発揮する力を暗記する。妖精の事を知るこの勉強は大変だけど、わたしは楽しくてしかたがない。
属性を覚えやすいように、イメージカラーで模様をノートに写していく。
また、妖精には言葉がないので、魔法陣を書きながら関連する言葉をつぶやくようにした。
魔法陣は妖精由来。言葉は、妖精に覚えてもらっての人間由来。双方の相互理解を求めてみる。
魔法陣を間違えても臨機応変になんとかしてくれないかなーという思いがないわけでもない。
火の魔法陣を書きながら、火、炎、熱い、焼く、黒焦げ、弱火、強火…っとぶつぶつ呟いていたら、先生に笑われたけど気にしないし。
少しずつだけど妖精とコミュニケーションがとれる事が、何よりも嬉しい。
魔法陣を覚える他には、イメージを育てる為に本を読んだり先生の魔法を見たり、妖精と遊んだりもする。
向こうから返事はないが、態度で返してくれるのでできるだけ話しかけるようにして過ごしている。
「先生、芽がでました!」
一週間もすると、鉢の真ん中に小さな双葉がでてきた。
朝一番。教室に入るなり先生にそう報告すれば
「よーし。それじゃあ、さっそく魔法を使ってみましょうか」
「……はい?」
「うん、いいお返事ね!」
「いえいえ今のは、イエスではなくてですね。…まだ芽ですよ?」
魔法を使う時に必要なのは、わたしと妖精の魔力が混ざり合った杖だ。
まだ双葉の状態では、魔法陣が描けない。
「本当ならペンぐらいの長さが欲しいところだけど、シェリーってば魔法陣全部覚えちゃったでしょう?後はもう実践あるのみよ」
「え?えへへ…もしかしてわたし、覚えるの早かったんでしょうか」
魔法が好きだから、一生懸命勉強したもんね。
「そうじゃなくて、杖の成長が遅いのよねぇ。妖精の得意属性が関係してるのかしら?普通なら2日で芽が出るぐらいなのよ」
「そうなんですか!?」
ショック!一瞬喜んだだけに心に大ダメージだ。
「お水を変えてみた方がいいんですかね」
「構わないけど、妖精を信じるんじゃなかったの?」
「うーん…ルーフ、このまま井戸水でいいと思う?」
目の前を漂うぷるぷるに、ちらりと視線をやる。最近芸達者になってきて、まるを表すようにまんまるな塊になった。因みにノーや否定の場合は手足を伸ばして体全体でバッテンをつくってくれる。
「このままいきます。…成長が遅いってことは、魔力が足りないんでしょうか」
「芽が出るのが遅いからって、悪いわけじゃないのよ。ここからぐんぐん伸びる場合もあるしね。私の杖は早く芽が出たくせに、伸びるのがクラスで一番ゆっくりだったわ」
杖は、魔法使いにとってとても大事なものだ。大人になっても、作った当時の記憶は鮮明なのだろう。
「杖の素材も、与える魔力も皆それぞれ違うから気にしないで。貴女に合った杖であればそれでいいんだから。それにほら、どれだけ時間がかかっても迷惑かける子もいないし気楽でしょ」
「あんまり嬉しくないですけど、まぁその通りですね!」
先生ってば、ぼっちクラスをもうネタにしてくるだなんて!わたしはまだ開き直れてないんですけど!?
「っていうかそれなら実践、少し待ってくださいよ。振れませんよこんなの、鉢ごとぶん回せって言うんですか」
「その双葉、摘まんで抜いてごらんなさい」
「そんな、せっかく芽が出たのに!」
「大丈夫よ、だってこれは植物であって、植物とは違うんだから。その辺の花壇の花とは違うのよ、さあ」
確かに、苺を丸ごと埋めても一週間で芽が出ないだろう。時期でもないし。
これは植物の芽のカタチをした、別の何かだ。別の何かだから、抜いても大丈夫大丈夫…。
覚悟を決めて、恐る恐る摘まむ。大事に水をやってきて、ようやく出た芽を、ゆっくりゆっくりそっと引っ張る。
「…せい!」
土から抜ける時の、一瞬の抵抗を振り切る。土じゃないか、仮杖の粉だったわ。でももう土でいいや。
根っこの代わりに光の糸のようなものが、芽と土を結んでいる。
「うまく魔力は繋がってるみたいね。そんなに離れなければ切れないから心配しないで」
「え、そんなにって、何メートルまでですか?切れたらどうなるんですか」
「3メートルぐらいは平気よ、昔教室でチキンレースをして実験したの。光が徐々に細くなっていくから止めたけど、もうちょっといけるかもしれないわね」
「もうちょっとって何歩ですか!」
「そんなにギリギリを攻めなくてもいいでしょ、落ち着いてちょうだい」
あぁ怖い、超怖い!鉢から絶対に手を放さないでおこう…ずっと抱えてるからね。
「切れたら、芽が枯れてしまうわ。また最初からやり直しだけど、妖精に見放されてもう仮杖がもらえないって文献があるから…気を付けてね」
「うわぁんやりたくない!」
「大丈夫だってば、さぁ実技室に行きましょう」
「え、まだ抜かなくてよかったってことですよね、怖いんで戻していいですか」
びびりすぎだと先生に笑われながら、次のステップへ進むべく実技室へと急いだ。
基礎として魔方陣の模様、それが意味する力を学ぶ。規則性がない魔法陣は文字というよりも絵だ。
違う属性の魔法陣に同じ模様が使われていたりするので、それが妖精にとって何を意味するのか気になるところである。
わたし達にその法則性は解読できないけれど、それらは妖精にとって分りやすい力の形らしい。
魔方陣の模様を覚えて、それが発揮する力を暗記する。妖精の事を知るこの勉強は大変だけど、わたしは楽しくてしかたがない。
属性を覚えやすいように、イメージカラーで模様をノートに写していく。
また、妖精には言葉がないので、魔法陣を書きながら関連する言葉をつぶやくようにした。
魔法陣は妖精由来。言葉は、妖精に覚えてもらっての人間由来。双方の相互理解を求めてみる。
魔法陣を間違えても臨機応変になんとかしてくれないかなーという思いがないわけでもない。
火の魔法陣を書きながら、火、炎、熱い、焼く、黒焦げ、弱火、強火…っとぶつぶつ呟いていたら、先生に笑われたけど気にしないし。
少しずつだけど妖精とコミュニケーションがとれる事が、何よりも嬉しい。
魔法陣を覚える他には、イメージを育てる為に本を読んだり先生の魔法を見たり、妖精と遊んだりもする。
向こうから返事はないが、態度で返してくれるのでできるだけ話しかけるようにして過ごしている。
「先生、芽がでました!」
一週間もすると、鉢の真ん中に小さな双葉がでてきた。
朝一番。教室に入るなり先生にそう報告すれば
「よーし。それじゃあ、さっそく魔法を使ってみましょうか」
「……はい?」
「うん、いいお返事ね!」
「いえいえ今のは、イエスではなくてですね。…まだ芽ですよ?」
魔法を使う時に必要なのは、わたしと妖精の魔力が混ざり合った杖だ。
まだ双葉の状態では、魔法陣が描けない。
「本当ならペンぐらいの長さが欲しいところだけど、シェリーってば魔法陣全部覚えちゃったでしょう?後はもう実践あるのみよ」
「え?えへへ…もしかしてわたし、覚えるの早かったんでしょうか」
魔法が好きだから、一生懸命勉強したもんね。
「そうじゃなくて、杖の成長が遅いのよねぇ。妖精の得意属性が関係してるのかしら?普通なら2日で芽が出るぐらいなのよ」
「そうなんですか!?」
ショック!一瞬喜んだだけに心に大ダメージだ。
「お水を変えてみた方がいいんですかね」
「構わないけど、妖精を信じるんじゃなかったの?」
「うーん…ルーフ、このまま井戸水でいいと思う?」
目の前を漂うぷるぷるに、ちらりと視線をやる。最近芸達者になってきて、まるを表すようにまんまるな塊になった。因みにノーや否定の場合は手足を伸ばして体全体でバッテンをつくってくれる。
「このままいきます。…成長が遅いってことは、魔力が足りないんでしょうか」
「芽が出るのが遅いからって、悪いわけじゃないのよ。ここからぐんぐん伸びる場合もあるしね。私の杖は早く芽が出たくせに、伸びるのがクラスで一番ゆっくりだったわ」
杖は、魔法使いにとってとても大事なものだ。大人になっても、作った当時の記憶は鮮明なのだろう。
「杖の素材も、与える魔力も皆それぞれ違うから気にしないで。貴女に合った杖であればそれでいいんだから。それにほら、どれだけ時間がかかっても迷惑かける子もいないし気楽でしょ」
「あんまり嬉しくないですけど、まぁその通りですね!」
先生ってば、ぼっちクラスをもうネタにしてくるだなんて!わたしはまだ開き直れてないんですけど!?
「っていうかそれなら実践、少し待ってくださいよ。振れませんよこんなの、鉢ごとぶん回せって言うんですか」
「その双葉、摘まんで抜いてごらんなさい」
「そんな、せっかく芽が出たのに!」
「大丈夫よ、だってこれは植物であって、植物とは違うんだから。その辺の花壇の花とは違うのよ、さあ」
確かに、苺を丸ごと埋めても一週間で芽が出ないだろう。時期でもないし。
これは植物の芽のカタチをした、別の何かだ。別の何かだから、抜いても大丈夫大丈夫…。
覚悟を決めて、恐る恐る摘まむ。大事に水をやってきて、ようやく出た芽を、ゆっくりゆっくりそっと引っ張る。
「…せい!」
土から抜ける時の、一瞬の抵抗を振り切る。土じゃないか、仮杖の粉だったわ。でももう土でいいや。
根っこの代わりに光の糸のようなものが、芽と土を結んでいる。
「うまく魔力は繋がってるみたいね。そんなに離れなければ切れないから心配しないで」
「え、そんなにって、何メートルまでですか?切れたらどうなるんですか」
「3メートルぐらいは平気よ、昔教室でチキンレースをして実験したの。光が徐々に細くなっていくから止めたけど、もうちょっといけるかもしれないわね」
「もうちょっとって何歩ですか!」
「そんなにギリギリを攻めなくてもいいでしょ、落ち着いてちょうだい」
あぁ怖い、超怖い!鉢から絶対に手を放さないでおこう…ずっと抱えてるからね。
「切れたら、芽が枯れてしまうわ。また最初からやり直しだけど、妖精に見放されてもう仮杖がもらえないって文献があるから…気を付けてね」
「うわぁんやりたくない!」
「大丈夫だってば、さぁ実技室に行きましょう」
「え、まだ抜かなくてよかったってことですよね、怖いんで戻していいですか」
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