11 / 23
物語が動き始める章
第十話 「荻原」
しおりを挟む
「あのさ、この学校内でお前が知ってるショートヘアの女の子って誰かいる?」
「お?……なーんか珍しいこともあるもんだなぁ」
「……別に珍しくないだろ」
「いやいや、普通ありえないって。お前そうゆう話題には一切食い付いてこないじゃん」
「まあな」
「あぁ、とうとうお前も異性への興味が芽生えたのか……。おまけにショートカットがお好み?」
「茶化すなって。今回はそんなのとは別物なんだよ。マジな話なんだ」
「えー?何だよ恋の相談じゃねーの?つまんねーな」
「まあまあ、それはいつか聞かせてやるから。――それより知ってる限り名前挙げてみてくれない?」
「ふぅん……。まっ、いいよ。ショートなら誰でもいいの?」
「誰でも良いけど下級生ってのはナシな。同じ学年で」
「同じ学年かぁ……」
三限が終わり、俺はまず聞き込みから始めた。
何やら制服の内ポケットから手帳を取り出し、それを見てブツブツと自問自答を繰り返しているこの男。
クラス。いや、学年の好色漢として知られる荻原《おぎわら》に聞いてみることにした。
中々の美男子な彼は、その外見に似合わず?各女生徒の特徴などがビッシリと書き込まれているとされるカラフルな手帳を携帯し、毎日チェックと内容の更新を欠かさない。
俺からしてみれば、荻原のその姿勢は大いに評価に値するものではある。
しかし周囲の女子たちには「マメな人なんじゃない?」と評価されている一方で、「ただの変態じゃん」という厳しい見方をされていることを彼だけは知らない。
いや、彼に知らせるのはあまりにも酷だろう――。
だが、彼に聞けば間違いなく目標の「彼女」にたどり着くことが出来るだろう。
「にしてもさぁ。何でお前ショートヘアの女の子が知りたいの?」
ふと気づいたように荻原は俺に尋ねてきた。
「ん?ああ、ちょっと人探してんだよね」
「なるほど。生き別れた妹さん、ショートだったんだ……」
――何言ってんのこの人。
「んなわけないだろ……。そうじゃなくて!たまにあるじゃん?会ったことあるのに名前思い出せないってやつ」
「ああ、あるそれ。実際にそんな状況で相手と出くわすとすげぇ困るよな」
「いや、実はもう会ったんだよ、そんな状況で」
「えっ?マジで?」
「ああ。マジだよ。会ったとき相手は俺のこと知っててさ。でも俺は見覚えが無かったんだ」
「ふぅん。そういうこと。じゃ、お前のことだから「君のことは知らないけど、どこかで会ったことあるような気がするから思い出すまで待っててください」とか言っちゃったんだな?うんうん」
「……何で知ってんの?」
「え?」
――仰天した中にも落ち着きがあり、それでいて呆然としている表情。
この時の荻原の表情は、思わずスナップショットとしてお気に入りフォルダに保存してしまった。
軽い沈黙の後、荻原は元の表情を取り戻すと、肩をすくめながら 「のぞむー。やっぱスゴイよお前」と称賛してくれた。
「何かおかしいか?」
「いや、何でもない。――にしたってお前短髪の子なんてうじゃうじゃいるぜ?うちの学校なんて68.4%がそうだろ」
「68.4%って……。どんだけ詳細になってんの?そのデータ」
そんないらん統計はどうでもいいが、確かにそうだ。
うちのクラスも髪をいじっている女子はそうそう存在せず、普通に短髪が多い。
「なんかさぁ、ないの?」
「何が?」
「特徴だよ特徴!髪型だけだなんて全然絞り込めねーよ。ほら、何か背が高いとか眼鏡かけてるとかあの芸能人に似てるとか……」
「うーん、そうだなぁ……。とりあえずヘアピン使って髪留めてたな」
「ってまたそっち方面かよ……。いや、それ以外にさ、何つーかあの……まあ良いや。じゃあヘアピンはいくつだった?」
「いくつ?確か四つ使ってたよ。左右に四つ」
「四つか。ちょっと待ってろよ……」
こいつヘアピンの個数までチェックしてるのか? 髪色と同化してたらまじまじと見ないと区別出来ないぞあんなの。
――その光景を思い浮かべると、彼が女子たちに何やら噂されてるのも頷ける。
やがて、荻原は数分と経たずに手帳と見比べて取っていたメモを俺に見せてくれた。
「ヘアピンを装着してる子自体が意外と少ない。たまに付けたりして登校してきたりする子もいないしな。ショートでヘアピンを付けている子の中でも、四つ付けてる子はこんだけだな」
――メモには、一組の工藤、荒井、二組の橋本、三組の神川、四組の仁科、桜井。そして、五組の嶋田の名前があった。
「どうだ?」
荻原がしきりにメモと俺の顔を見比べている。
「候補者は七人か」
学年に百五十と存在する女子生徒をすぐさまここまで絞り込むなんて……。
あのカラフルな手帳の中身はどうなっているんだろう?
「――俺のデータが確実なら、この七人の中に探してる子がいるだろうよ」
「荻原、ありがとう。本当に助かったよ」
「いや、こんなん大したこと無いって。まあ、毎日ちゃんと続けてることが役に立つってのは嬉しいけどね」
俺が感謝の意を述べると、荻原は若干照れているようだった。
「なあ、前から聞きたかったんだけどさ、何でお前は毎日毎日女子のメモなんか取ってんの?今回は助かったけどさ、言っちゃなんだけど……。正直、お前のそれかなり怪しいぞ」
「ハハッ!お前でも俺のことそんな風に思ったりするんだ?」
「いや、俺は別に良いと思ってるんだけどね。たださ、普通そんなことする人なんていないだろ?」
「まあね。少なくとも、この学校では俺みたいなのいないんじゃない?」
荻原は軽く自虐気味に答える。
いや、どこ探してもいないと思うんだけどな……。
「でもこれは俺の日課なんだよ。言ってみれば毎日の楽しみだな。例えば、学校では地味な雰囲気の子が、街でバッタリ会ったらブランド物のバッグに真っ赤なハイヒール。それに毛皮のコート姿だったらどうよ?めちゃくちゃ面白いじゃん」
「まあそんなことがあればだけどな」
「だから毎日、女子の外見とか雰囲気とかをチェックしてるんだよ。そうしておくことで、ちょっとしたその子の変化を察知できる。その上で、女の子の心情ってのを想像するのが俺は好きなんだ。バッサリ髪短くしたんなら、失恋したのかな……とか、イメチェンしたのかな……とか、ただ長いの邪魔だったんだろうな……とかね」
「何かそれってさ……」
――俺が今何か言おうとしたのを察したのか、荻原は両手を頭の後ろで組んで言った。
「いや、今お前が言わんとしてることは大体想像がつく。それに、他のやつらが俺のことをどんな風に思ってるかも知ってる。だって自分でもそんな風に思ってんだから。でも、俺にはそんなの関係ない。どう思われようが、俺の楽しみのためにやってることなんだし、周りの目は気にならないね。そして周りに迷惑かけるつもりもないし」
――思ったよりも荻原は「自分」ってものを持ってるんだな。
他人から見ればくだらないことかもしれない。
変わっていることかもしれない。
でも自分がそれをやりたいがために行っていることなのだから、他人からどう思われようが関係ない。
それはそれで立派なものだと思う。
第一、人の目を気にしてばかりでは何も出来ないしな。
その点、彼は己の体裁を省みず、あえて果敢にも眼前の目的に飛び込んでいくことによって、 自分だけの自由な世界を得ることが出来ているのだ。
「でも一つだけ気になることがある」
荻原が急に口調を重くして聞いてきた。
「何?」
「実のところ……。俺って女子からどう思われてんの?」
――なるほど。
さっきは周りからどう思われてるか知っているんだ。
みたいなことを言っていたが、この機会にはっきりさせとこうってわけか。
「のぞむーなら知ってるっしょ?」
どことなく荻原の表情が、クリスマスプレゼントの中身が自分の頼んだものに違いないと確信している子供のようになっていた。
――だが現実はそう甘くないんだよな。
「ああ、知ってるよ」
「頼む!情報提供してあげたんだし、今度はそっちが情報提供してくれ!」
「別にいいけど……」
この際だ、はっきり言っておこうかな。
――いや、これでいいか。
「みんな、影でお前のこと変態って呼んでるぞ。「カッコいい変態」って」
「……ふぅ、んじゃまあ俺はちょっとトイレ行ってくるわ」
数秒の硬直状態のあと、彼はふらりと席を立った。
「荻原、ありがとう!また何か奢ってやるからなー!」
トイレへと出発した荻原の背中に向かって礼を言うと、彼は振り向いて合図した。
――笑顔で涙を流しながら。
なんだかんだ言って、やっぱあいつは頼りになる。
まさしく適任だったな。と、我ながらに思った。
「よし、じゃあ早速こいつらを偵察に行こう」
とその前に、一旦席に戻り、次の授業の準備だ。
――ここで思ったのだが、荻原がくれたメモに書かれた名前で思い浮かぶ顔がない。
つまり一人たりとも知らないということだ。
この俺が学年の人間の名前を全員把握出来てなかったことに軽くあきれてしまった。
一年間、関わることもないだろうという人間だとしても、顔、名前くらいは知っておかないと後々面倒なことになるし、物事もそう簡単には運べなくなる。
どんな情報でも「知っておく必要がある」のだ。
少なくとも俺の場合は。
そう考えてみると、俺も荻原に負けないくらい様々な事柄をチェックしている。
……いや、荻原とはまた違うか。
しかし誰であろうとも好奇心が無くなることはない。
今も後五分しか休み時間が無いが、目的までの手がかりが掴めた今、どうしても早くその姿を見てみたいと思っている。
美術室で会った彼女の姿を見たい。
会って、また話したい……。
柄にも無く、俺の心がはしゃいでいた。
――うん、考えたら即行動だ。
四限が始まる前にさっさと見てこよう。
そう決意し、教室を出ようすると、「ガシャーン!!」というけたたましい破砕音が耳に飛び込んできた。
「お?……なーんか珍しいこともあるもんだなぁ」
「……別に珍しくないだろ」
「いやいや、普通ありえないって。お前そうゆう話題には一切食い付いてこないじゃん」
「まあな」
「あぁ、とうとうお前も異性への興味が芽生えたのか……。おまけにショートカットがお好み?」
「茶化すなって。今回はそんなのとは別物なんだよ。マジな話なんだ」
「えー?何だよ恋の相談じゃねーの?つまんねーな」
「まあまあ、それはいつか聞かせてやるから。――それより知ってる限り名前挙げてみてくれない?」
「ふぅん……。まっ、いいよ。ショートなら誰でもいいの?」
「誰でも良いけど下級生ってのはナシな。同じ学年で」
「同じ学年かぁ……」
三限が終わり、俺はまず聞き込みから始めた。
何やら制服の内ポケットから手帳を取り出し、それを見てブツブツと自問自答を繰り返しているこの男。
クラス。いや、学年の好色漢として知られる荻原《おぎわら》に聞いてみることにした。
中々の美男子な彼は、その外見に似合わず?各女生徒の特徴などがビッシリと書き込まれているとされるカラフルな手帳を携帯し、毎日チェックと内容の更新を欠かさない。
俺からしてみれば、荻原のその姿勢は大いに評価に値するものではある。
しかし周囲の女子たちには「マメな人なんじゃない?」と評価されている一方で、「ただの変態じゃん」という厳しい見方をされていることを彼だけは知らない。
いや、彼に知らせるのはあまりにも酷だろう――。
だが、彼に聞けば間違いなく目標の「彼女」にたどり着くことが出来るだろう。
「にしてもさぁ。何でお前ショートヘアの女の子が知りたいの?」
ふと気づいたように荻原は俺に尋ねてきた。
「ん?ああ、ちょっと人探してんだよね」
「なるほど。生き別れた妹さん、ショートだったんだ……」
――何言ってんのこの人。
「んなわけないだろ……。そうじゃなくて!たまにあるじゃん?会ったことあるのに名前思い出せないってやつ」
「ああ、あるそれ。実際にそんな状況で相手と出くわすとすげぇ困るよな」
「いや、実はもう会ったんだよ、そんな状況で」
「えっ?マジで?」
「ああ。マジだよ。会ったとき相手は俺のこと知っててさ。でも俺は見覚えが無かったんだ」
「ふぅん。そういうこと。じゃ、お前のことだから「君のことは知らないけど、どこかで会ったことあるような気がするから思い出すまで待っててください」とか言っちゃったんだな?うんうん」
「……何で知ってんの?」
「え?」
――仰天した中にも落ち着きがあり、それでいて呆然としている表情。
この時の荻原の表情は、思わずスナップショットとしてお気に入りフォルダに保存してしまった。
軽い沈黙の後、荻原は元の表情を取り戻すと、肩をすくめながら 「のぞむー。やっぱスゴイよお前」と称賛してくれた。
「何かおかしいか?」
「いや、何でもない。――にしたってお前短髪の子なんてうじゃうじゃいるぜ?うちの学校なんて68.4%がそうだろ」
「68.4%って……。どんだけ詳細になってんの?そのデータ」
そんないらん統計はどうでもいいが、確かにそうだ。
うちのクラスも髪をいじっている女子はそうそう存在せず、普通に短髪が多い。
「なんかさぁ、ないの?」
「何が?」
「特徴だよ特徴!髪型だけだなんて全然絞り込めねーよ。ほら、何か背が高いとか眼鏡かけてるとかあの芸能人に似てるとか……」
「うーん、そうだなぁ……。とりあえずヘアピン使って髪留めてたな」
「ってまたそっち方面かよ……。いや、それ以外にさ、何つーかあの……まあ良いや。じゃあヘアピンはいくつだった?」
「いくつ?確か四つ使ってたよ。左右に四つ」
「四つか。ちょっと待ってろよ……」
こいつヘアピンの個数までチェックしてるのか? 髪色と同化してたらまじまじと見ないと区別出来ないぞあんなの。
――その光景を思い浮かべると、彼が女子たちに何やら噂されてるのも頷ける。
やがて、荻原は数分と経たずに手帳と見比べて取っていたメモを俺に見せてくれた。
「ヘアピンを装着してる子自体が意外と少ない。たまに付けたりして登校してきたりする子もいないしな。ショートでヘアピンを付けている子の中でも、四つ付けてる子はこんだけだな」
――メモには、一組の工藤、荒井、二組の橋本、三組の神川、四組の仁科、桜井。そして、五組の嶋田の名前があった。
「どうだ?」
荻原がしきりにメモと俺の顔を見比べている。
「候補者は七人か」
学年に百五十と存在する女子生徒をすぐさまここまで絞り込むなんて……。
あのカラフルな手帳の中身はどうなっているんだろう?
「――俺のデータが確実なら、この七人の中に探してる子がいるだろうよ」
「荻原、ありがとう。本当に助かったよ」
「いや、こんなん大したこと無いって。まあ、毎日ちゃんと続けてることが役に立つってのは嬉しいけどね」
俺が感謝の意を述べると、荻原は若干照れているようだった。
「なあ、前から聞きたかったんだけどさ、何でお前は毎日毎日女子のメモなんか取ってんの?今回は助かったけどさ、言っちゃなんだけど……。正直、お前のそれかなり怪しいぞ」
「ハハッ!お前でも俺のことそんな風に思ったりするんだ?」
「いや、俺は別に良いと思ってるんだけどね。たださ、普通そんなことする人なんていないだろ?」
「まあね。少なくとも、この学校では俺みたいなのいないんじゃない?」
荻原は軽く自虐気味に答える。
いや、どこ探してもいないと思うんだけどな……。
「でもこれは俺の日課なんだよ。言ってみれば毎日の楽しみだな。例えば、学校では地味な雰囲気の子が、街でバッタリ会ったらブランド物のバッグに真っ赤なハイヒール。それに毛皮のコート姿だったらどうよ?めちゃくちゃ面白いじゃん」
「まあそんなことがあればだけどな」
「だから毎日、女子の外見とか雰囲気とかをチェックしてるんだよ。そうしておくことで、ちょっとしたその子の変化を察知できる。その上で、女の子の心情ってのを想像するのが俺は好きなんだ。バッサリ髪短くしたんなら、失恋したのかな……とか、イメチェンしたのかな……とか、ただ長いの邪魔だったんだろうな……とかね」
「何かそれってさ……」
――俺が今何か言おうとしたのを察したのか、荻原は両手を頭の後ろで組んで言った。
「いや、今お前が言わんとしてることは大体想像がつく。それに、他のやつらが俺のことをどんな風に思ってるかも知ってる。だって自分でもそんな風に思ってんだから。でも、俺にはそんなの関係ない。どう思われようが、俺の楽しみのためにやってることなんだし、周りの目は気にならないね。そして周りに迷惑かけるつもりもないし」
――思ったよりも荻原は「自分」ってものを持ってるんだな。
他人から見ればくだらないことかもしれない。
変わっていることかもしれない。
でも自分がそれをやりたいがために行っていることなのだから、他人からどう思われようが関係ない。
それはそれで立派なものだと思う。
第一、人の目を気にしてばかりでは何も出来ないしな。
その点、彼は己の体裁を省みず、あえて果敢にも眼前の目的に飛び込んでいくことによって、 自分だけの自由な世界を得ることが出来ているのだ。
「でも一つだけ気になることがある」
荻原が急に口調を重くして聞いてきた。
「何?」
「実のところ……。俺って女子からどう思われてんの?」
――なるほど。
さっきは周りからどう思われてるか知っているんだ。
みたいなことを言っていたが、この機会にはっきりさせとこうってわけか。
「のぞむーなら知ってるっしょ?」
どことなく荻原の表情が、クリスマスプレゼントの中身が自分の頼んだものに違いないと確信している子供のようになっていた。
――だが現実はそう甘くないんだよな。
「ああ、知ってるよ」
「頼む!情報提供してあげたんだし、今度はそっちが情報提供してくれ!」
「別にいいけど……」
この際だ、はっきり言っておこうかな。
――いや、これでいいか。
「みんな、影でお前のこと変態って呼んでるぞ。「カッコいい変態」って」
「……ふぅ、んじゃまあ俺はちょっとトイレ行ってくるわ」
数秒の硬直状態のあと、彼はふらりと席を立った。
「荻原、ありがとう!また何か奢ってやるからなー!」
トイレへと出発した荻原の背中に向かって礼を言うと、彼は振り向いて合図した。
――笑顔で涙を流しながら。
なんだかんだ言って、やっぱあいつは頼りになる。
まさしく適任だったな。と、我ながらに思った。
「よし、じゃあ早速こいつらを偵察に行こう」
とその前に、一旦席に戻り、次の授業の準備だ。
――ここで思ったのだが、荻原がくれたメモに書かれた名前で思い浮かぶ顔がない。
つまり一人たりとも知らないということだ。
この俺が学年の人間の名前を全員把握出来てなかったことに軽くあきれてしまった。
一年間、関わることもないだろうという人間だとしても、顔、名前くらいは知っておかないと後々面倒なことになるし、物事もそう簡単には運べなくなる。
どんな情報でも「知っておく必要がある」のだ。
少なくとも俺の場合は。
そう考えてみると、俺も荻原に負けないくらい様々な事柄をチェックしている。
……いや、荻原とはまた違うか。
しかし誰であろうとも好奇心が無くなることはない。
今も後五分しか休み時間が無いが、目的までの手がかりが掴めた今、どうしても早くその姿を見てみたいと思っている。
美術室で会った彼女の姿を見たい。
会って、また話したい……。
柄にも無く、俺の心がはしゃいでいた。
――うん、考えたら即行動だ。
四限が始まる前にさっさと見てこよう。
そう決意し、教室を出ようすると、「ガシャーン!!」というけたたましい破砕音が耳に飛び込んできた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる