終わりなき理想郷

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空高く、天を仰ぐ

第45話 答え求めて深淵に迫る

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2017年07月20日(木)15時29分 =旧文野ふみの宅=

「それで、結局ひかりちゃんはどうするのさ。」
 約1時間もの間俺たちは言葉を交わし合い、離合集散しながら語り合いはしたが結局のところ答えは出なかった。
「どうするもこうするも、どっちに行ってもひかりちゃんには毒だ。だから、ひかりちゃんは俺らで守り抜くべきだ。」
「いや、少なくとも今の鈴埜宮すずのみやひかりちゃんのことを育てていた。鈴埜宮すずのみやに帰すべきだ。」
「正直僕としては烏丸からすまが怪しすぎるからどちらでもいいんだが、個人的には鈴埜宮すずのみやに帰してもいいんじゃないかな。もしひかりちゃんが問題ごとを起こしたとき僕たちには対応できない。」
「でも、最初私たちがひかりちゃんを見つけた時、あの子倉庫の隅で縮こまっていたのよ。そんな子を元の場所に返せと?」
「じゃあ何故鈴埜宮すずのみやの家から遠く、離れなかったんだ?別に道路の反対方向に逃げれば街中に入ってより離れた場所まで行けるはずだ。」
「貴方は幼女ロリを分かっていないのです!幼女ロリの世界は狭いのです!遠くへ遠くへと逃げようと考えても大人アダルト幼女ロリの距離感は大きく異なるのです!それ自体をちゃんと理解してくださいなのです!」
「黙れロリコン。いくらお前の言い分が正しくてもキモイぞ。というか論点はそこじゃないでしょ、ひかりちゃんの今後を決めるんだよ。」
「私はレイちゃんと同じかな。烏丸からすま家はちょっと、信用できないかも。」
「そうね、少なくともあそこは選択肢から外れるかしらね。」
 遼太郎りょうたろうさん、燈樫ひがしさん、れいさん、波留はるさん、ひのきさん、彩花あやかおおとりさん、桃花ももかさん、そしてあゆみさん。みんなそれぞれの考えを持ち、意見を出す。
 少なくとも、聞いている分には最初にひかりちゃんを保護した二人以外は鈴埜宮すずのみやへ帰すべきと言う意見でまとまったようだ。
 俺としては正直、何とも言えない。鈴埜宮すずのみやりく近衛このえさん自体は悪い人ではなさそうだが、それで奈穂なほさんたちと対立してしまっては元も子もない。
 それに、ひかりちゃんをこの目でまじまじと見たのは聖夜前災せいやぜんさい以来だが、あの時に感じた威圧感などは微塵も感じられない。はっきり言って当時の存在とは姿以外何もかもが違う。
 俺たちはまだ、ひかりちゃんについて知らなさすぎる。

 話は長引きに長引き、さらに数十分が経過しただろうか。急に、ピンポーンとこの部屋の呼び鈴が鳴る。
 遼太郎りょうたろうさんと波留はるさんはその音にいち早く反応し、玄関の扉へ注意を向ける。

 しかし、それを邪魔そうに避けながら文野ふみのが玄関の方へ向かおうとする。
「おい、行って大丈夫なのか?もしかしたら追っ手かも...。」
「うるさいなぁ、お前ら今何時だと思ってるの?4時半!私、何も食べてないの!宅配ピザ頼んだから、受け取るの!」
「ああ、確かに私たちも朝から何も食べてませんでしたもんね。」
「でも僕は空腹ではないから君たちで食べてもいいよ。」
「んー。私もレイちゃんと同じで要らないかな。」
「俺は...一切れだけもらおうか。」
「なんでお前らの分も頼んでると思ってんだよ、まあ少し多めに頼んでおいたけどさ。」
 ぶつくさ言いながら文野ふみのは3枚のピザを受け取る。そして、何も置かれていない広めのローテーブルの上にピザの箱を開封して広げる。そこから一切れをとって一口をほおばってからこちらに問いかけてくる。
「それで、これからの方針はどうするか決まったの?」
「とりあえずひかりちゃんを鈴埜宮すずのみやのもとに返すかこのまま保護するかの二択で平行線のままだよ。」
 そうれいさんが言うと、文野ふみのはつまらなそうな表情をする。
「ふぅん。ま、どっちでもいいんじゃない。まあ、もし決まらないっていうのであれば...。」
 その続きの言葉を口にする前に、食いかけのピザを食べきって、一拍開けて文野ふみのは、
聖夜前災せいやぜんさいの爆心地に行ってみればいいんじゃない?」と言った。
「爆心地...って、もうすでに復興してるから埋め立てられているでしょう?」と反論すると、
「ああ、そうだね。」とあっけなく肯定される。しかし、文野ふみのはそれにさらに言葉を繋げる。
「でも、地下にある研究施設はまだだよ。」
「えっ、でも立ち入り調査をしたのであれば稼働なんでできないはずじゃ...。」
「それがね、別に会社自体は問題がないから書類送検された奴ら以外特に摘発ができてないんだよね。だから、その研究所もそのままだよ。それに、そのひかりちゃんが居ること自体が何よりもの証明だと思うけど?」
 確かにそうだ。聖夜前災せいやぜんさいの時も元をたどればあの研究所で生み出された存在、であればその第二研究所があるか、研究所を復興したかの二択になるのは必然ではある。だが、どうやって侵入するか...。結局のところ地中にあるわけで、修復されているから穴という穴もない。どうしたものかと考えながらピザに手を伸ばす。
 少し早いがこれを夕食とすることにしよう。
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