20 / 61
空高く、天を仰ぐ
第20話 呪い(のろい)転じて呪い(まじない)となる
しおりを挟む
手にはめたグローブを再度、皮膚に接着させるようにきつく締める。
「君たちのこと、資料で見たことがある。確か、鈴埜宮財閥お抱えのボディガードでしょ。少なくとも君たちの現社長に娘は居なかったはずだが。」
「そんなこと言われても何も出ませんよ。我々があなた方に言うことはただ一つ。お嬢をこちらに引き渡してください。」
「それはできない相談だ。それともなんだ、数で勝れば盤面を有利に進めることができるなどと旧時代から進歩していない軍師でも君の脳内に飼っているのかい?」
「ご忠告どうも。でも警察官としてそんな言い方はどうなんですかね。」
彼の後ろのいる数名はどうやら懐に得物があるみたいだ。そして、それに手をかけようとしているのも見えた。
「それを言うのは今更というものさ。それに、後ろの君たち。それを抜いた瞬間、俺は公務執行妨害としてお前らを逮捕する。」
「・・・やれるもんならやってみろってんだ!」
そう言うと彼らは5人がかりで俺に襲ってきた。
まずは正面にいる男。俺と会話していたせいで準備は不十分のようだ。姿勢を低くしタックルをかましながら彼の衣服を掴む。それに合わせて2回銃弾が放たれる音が聞こえる。しかし、それが俺に当たることはなかった。どうやら、仲間に当てるのを恐れて外してしまったようだ。
後ろに居た彼らの様子を一瞬、確認すると狛凪と呼ばれていた男は薙刀を携え、他の奴らを守りながら赤髪の車に避難したようだ。
そして、視線を前に戻した瞬間。一台の警察車両がサイレン音を鳴らさずに、彼らの背後から現れ、後ろ側に居た拳銃持ちの二人を跳ね飛ばした。
これを好機と思った俺はそのまま掴んでいた男を投げ飛ばし、ナイフ持ちの男を倒す。そして、メリケンサックで殴ってこようとした男に対し警棒で側頭部にクリーンヒットを入れて倒した。
警察車両から降りて来た奴は跳ね飛ばした二人を手錠で拘束し、残りの奴らも手際よく拘束していた。
そして、赤髪の車に対して報告を入れようとした瞬間、狛凪やあの少女を含めた4名は車を走らせこの場を去ってしまった。
「狭間潤一参級職員、大丈夫ですか?」
「まあ、俺は問題ないんだが、銃刀法違反の容疑者が逃げちゃってな。ただ、例のアレも多分だが見つかったからね、これがあるから居場所は丸わかりなんだ。」
そう言いながらポケットから一つの端末を取り出す。
「・・・お前の力だったら全員捕縛もすぐにできたんじゃないか?」
「少なくともその場に一般人の人間が居る時点で使えませんよ。穂積伸二弐級職員。」
そう言って穂積さんに端末を渡す。
「そうか。それじゃあ、霞城さんにでも行ってきてもらうか。それじゃあ、このマヌケどもを連れて行きますか。」
そして、俺たち二人は車に詰め込めるだけ詰め込んで警察署へと向かうのだった。
2017年07月20日(木)10時02分 =呪い屋=
現場からあの赤髪の人の車に乗せられて私たち4人は山を下り、街中の一角にある寂れた民家のような建物の中へと連れられていた。
「に...、逃げてきちゃったけどどうしよう...。」
「まあ、いいんじゃないか。それ以上にいろいろ気になることがある。その、赤髪の兄ちゃん。お前はいったい誰なんだ?」
いや、良くないだろ。それもお前、銃刀法違反でパクられそうだったから逃げたんだろ。どう考えてもその方が罪が重くなるでしょ...。
そう思っていると、赤髪の人が話だす。
「ああ、自己紹介をしていなかったな。俺の名は津雲巡。ここで、呪い屋をしている者だ。」
「・・・呪い屋?」
「まーじーなーいーやっ!まあ、お祓いだったりそう言うことを専門にしてるところだ。」
言うなれば呪術師とかそう言う物なのか。情報が支配している現代日本においてもまだそんなもので商売をする人がいるとは...。まあ宗教も同じようなものか。
「それで、君たちの名前は...まあ中から聞こえてたから、一応顔と名前を合わせるために確認するがそっちの女性の方が桐藤さんで、そっちの槍を持っているあなたが狛凪さんですよね?」
「はい、桐藤波留です。こっちのバカが狛凪遼太郎ですね。」
「誰がバカだってぇ?」
やっすい挑発に乗るのは前から変わらないなこいつ。だからあの時弾き飛ばされて死にかけたって言うのにね。
「こらこら、喧嘩しないの。と言うかそれ以上にこの子のこと、誰か知ってる?」
そう言う彼の指さす先に座っている彼女は息も整い、周囲環境に戸惑いながらもある程度落ち着きを取り戻しているようだ。
彼女に目線を合わせるように津雲さんが床に座って話しかける。
「君の名前を教えてくれるかい、それと、何処からあそこまで来ていたのかも教えてくれると嬉しいんだけど、どうかな?」
「わ、私の、名前は...光、です。あそこにいた理由は...、えーっと、その...、ごめんなさい。思い出せません...。」
光ちゃん...、多分あの時来ていたのがあの警官の言う通り鈴埜宮財閥の手先で、それに関連するのなら...。一つだけ、彼女と合致する存在が居る。
鈴埜宮光。先代の鈴埜宮財閥の社長である鈴埜宮海の一人娘であり...、7年前に、既に彼女は死んでいる。
「君たちのこと、資料で見たことがある。確か、鈴埜宮財閥お抱えのボディガードでしょ。少なくとも君たちの現社長に娘は居なかったはずだが。」
「そんなこと言われても何も出ませんよ。我々があなた方に言うことはただ一つ。お嬢をこちらに引き渡してください。」
「それはできない相談だ。それともなんだ、数で勝れば盤面を有利に進めることができるなどと旧時代から進歩していない軍師でも君の脳内に飼っているのかい?」
「ご忠告どうも。でも警察官としてそんな言い方はどうなんですかね。」
彼の後ろのいる数名はどうやら懐に得物があるみたいだ。そして、それに手をかけようとしているのも見えた。
「それを言うのは今更というものさ。それに、後ろの君たち。それを抜いた瞬間、俺は公務執行妨害としてお前らを逮捕する。」
「・・・やれるもんならやってみろってんだ!」
そう言うと彼らは5人がかりで俺に襲ってきた。
まずは正面にいる男。俺と会話していたせいで準備は不十分のようだ。姿勢を低くしタックルをかましながら彼の衣服を掴む。それに合わせて2回銃弾が放たれる音が聞こえる。しかし、それが俺に当たることはなかった。どうやら、仲間に当てるのを恐れて外してしまったようだ。
後ろに居た彼らの様子を一瞬、確認すると狛凪と呼ばれていた男は薙刀を携え、他の奴らを守りながら赤髪の車に避難したようだ。
そして、視線を前に戻した瞬間。一台の警察車両がサイレン音を鳴らさずに、彼らの背後から現れ、後ろ側に居た拳銃持ちの二人を跳ね飛ばした。
これを好機と思った俺はそのまま掴んでいた男を投げ飛ばし、ナイフ持ちの男を倒す。そして、メリケンサックで殴ってこようとした男に対し警棒で側頭部にクリーンヒットを入れて倒した。
警察車両から降りて来た奴は跳ね飛ばした二人を手錠で拘束し、残りの奴らも手際よく拘束していた。
そして、赤髪の車に対して報告を入れようとした瞬間、狛凪やあの少女を含めた4名は車を走らせこの場を去ってしまった。
「狭間潤一参級職員、大丈夫ですか?」
「まあ、俺は問題ないんだが、銃刀法違反の容疑者が逃げちゃってな。ただ、例のアレも多分だが見つかったからね、これがあるから居場所は丸わかりなんだ。」
そう言いながらポケットから一つの端末を取り出す。
「・・・お前の力だったら全員捕縛もすぐにできたんじゃないか?」
「少なくともその場に一般人の人間が居る時点で使えませんよ。穂積伸二弐級職員。」
そう言って穂積さんに端末を渡す。
「そうか。それじゃあ、霞城さんにでも行ってきてもらうか。それじゃあ、このマヌケどもを連れて行きますか。」
そして、俺たち二人は車に詰め込めるだけ詰め込んで警察署へと向かうのだった。
2017年07月20日(木)10時02分 =呪い屋=
現場からあの赤髪の人の車に乗せられて私たち4人は山を下り、街中の一角にある寂れた民家のような建物の中へと連れられていた。
「に...、逃げてきちゃったけどどうしよう...。」
「まあ、いいんじゃないか。それ以上にいろいろ気になることがある。その、赤髪の兄ちゃん。お前はいったい誰なんだ?」
いや、良くないだろ。それもお前、銃刀法違反でパクられそうだったから逃げたんだろ。どう考えてもその方が罪が重くなるでしょ...。
そう思っていると、赤髪の人が話だす。
「ああ、自己紹介をしていなかったな。俺の名は津雲巡。ここで、呪い屋をしている者だ。」
「・・・呪い屋?」
「まーじーなーいーやっ!まあ、お祓いだったりそう言うことを専門にしてるところだ。」
言うなれば呪術師とかそう言う物なのか。情報が支配している現代日本においてもまだそんなもので商売をする人がいるとは...。まあ宗教も同じようなものか。
「それで、君たちの名前は...まあ中から聞こえてたから、一応顔と名前を合わせるために確認するがそっちの女性の方が桐藤さんで、そっちの槍を持っているあなたが狛凪さんですよね?」
「はい、桐藤波留です。こっちのバカが狛凪遼太郎ですね。」
「誰がバカだってぇ?」
やっすい挑発に乗るのは前から変わらないなこいつ。だからあの時弾き飛ばされて死にかけたって言うのにね。
「こらこら、喧嘩しないの。と言うかそれ以上にこの子のこと、誰か知ってる?」
そう言う彼の指さす先に座っている彼女は息も整い、周囲環境に戸惑いながらもある程度落ち着きを取り戻しているようだ。
彼女に目線を合わせるように津雲さんが床に座って話しかける。
「君の名前を教えてくれるかい、それと、何処からあそこまで来ていたのかも教えてくれると嬉しいんだけど、どうかな?」
「わ、私の、名前は...光、です。あそこにいた理由は...、えーっと、その...、ごめんなさい。思い出せません...。」
光ちゃん...、多分あの時来ていたのがあの警官の言う通り鈴埜宮財閥の手先で、それに関連するのなら...。一つだけ、彼女と合致する存在が居る。
鈴埜宮光。先代の鈴埜宮財閥の社長である鈴埜宮海の一人娘であり...、7年前に、既に彼女は死んでいる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる