19 / 61
空高く、天を仰ぐ
第19話 声は形にして名と成す
しおりを挟む
2017年07月20日(木)09時10分 =萌葱山管理小屋周辺=
日課のジョギングコース。この時間は人もほとんどおらず快適。軽く吹く風も心地よさを感じる。
そして、ジョギングの途中。管理小屋の横を通り過ぎようとしたとき、見覚えのある胴着を着た赤毛交じりの男を見かけた。確か名前は...、だめだ。外見の印象が強すぎて名前が記憶の彼方に吹っ飛んでる。話しかけ...なくてもいいか。別に会話する程度の仲でもないしな。
そういうことでそいつを横目に立ち去ろうとすると、どうやらそいつは誰かに弁明?みたいにことを言っていた。普通、こういうことはスルーするのが安定なんだが今回ばかりは好奇心が聞き耳を立ててみろと言っている。・・・まあ、聞いて減るものでもないよな。
そんなこんなで私は近場の茂みに潜んで聞き耳を立てることにした。
「だからぁ、俺はこの山で籠って修行をしようとしていてだな。そんで、管理人さんに挨拶をしようとしていてだな。」
「はいはい。どんな理由でここに来たのかはよく分かったから。別に山で修行とかは禁止されてはいないけどね、この山で寝泊まりすることは禁止されてるの。それに君、背中に背負っているこれは何?」
「これか?これはうちの師範代だけが持てる薙刀だが。なんだ、持ってみるか?」
「いえ、結構です。それで、登録証はお持ちですか?」
「えっと...。あっ、道場に置いてきちまったかも...。」
・・・よく見えないなぁ。もうちょっと見えやすい位置に移動するか?
そう悩んでいると、パキッと足元にあった枝を踏み折ってしまった。恐る恐る彼らの方を見ると、二人の視線がこちらの方に向けられていた。
流石に怪しまれるよなぁ...。両手を掲げながら茂みから立ち上がって弁明をする。
「あのー、怪しいものではないんです。私、こう見えて記者でして何やらスクープの香りがしてちょっと聞き耳を立てていただけでしてね。あの...、その...。」と、苦し紛れの弁明をしているとあの見覚えのある男が話しかけてくる。
「あ、えーっと確か、そうそう桐藤さんじゃないか。俺だよ俺、狛凪だよ。助けてくれ、ヘルプミー。」
遼太郎...、ああ思い出した。狛凪遼太郎だ。昔、変な事件に巻き込まれた時に鉢合わせた槍使いのよくわかんねぇ奴。正直あれ以降関わりたくなかったがこうやって鉢合わせてしまったのならまあ仕方ない。
「ああ、遼太郎さんですか。・・・ワルイヒトデハナイトオモイマスヨー。」
「なんで片言なんだよ!そこ大事なところ!」
知るかよ、最後に出会ったの4年ぐらい前だぞ?名前でも覚えてもらえてるだけ感謝しろよまったく。
「お知り合いなんですか。それでそちらの、記者の方。あなたはいったいなぜこんなところに?」
「いや、日課のジョギングで来てたら何やら面白...、興味深いものが起きているのを見つけまして。気になったので聞き耳を立てておりました...。」
「そう。それじゃあ、次からはしないようにね。で、狛凪さん。あなたは銃刀法違反なので、今すぐにでも警察署に護送すべきなんだけどね。私、徒歩パトロールをしていたから応援を呼ばせてもらったので私と一緒に少し待っていてもらうね。」
「・・・はい。」
まったく、面倒ごとに巻き込まれてちゃったな。まあ、見た感じこれ以上ネタになりそうなものもないしな。そろそろここを去るか?
そう考えていると、カタッと小さな音が聞こえる。とても小さな物音。だが、聞き逃さなかった。管理小屋倉庫の中から聞こえた。でも何で、いつもなら鍵がかかってるはず。そう、気になっては居ても立っても居られずに管理小屋倉庫の扉に手をかけ、開く。鍵は、かかっていなかった。
中は真っ暗で、目が慣れるのに少し時間がかかった。後ろからは、「君、何やっているんだ。」と言うように呼び止められるような声が聞こえた気がした。しかし、そんなものは気にもすら留めきれなかった。それ以上に私の目を奪ったもの。
そこには、少女が壁にもたれて息を切らしている姿があった。銀髪で、スタンドカラージャケットを着ており、手足はすぐに折れてしまいそうなほど細い。華奢というにはか弱すぎる生物がそこに居た。そして、床一面にはナメクジが這ったような赤色のシミが付いていた。
後ろから何があったのかを確認しようと警官の人が私を押しのけて管理小屋倉庫の中を見る。すぐさま警官は彼女のことを介抱しようと近づいて、彼女を抱え管理小屋倉庫の外へとでてくる。
それと同時にガラガラと管理小屋の扉を開けて、赤髪の男性が出てきた。男性はこちらを見て、驚きのあまりか身体が硬直する。この人、どこかで見た覚えはあるんだが...どこだったかな。
そうしていると、2台の黒い車体に黄色の剣のマークがあしらわれたいかにも高級車のような車から数名の黒服の男性が出てきて、警官の人が抱えている彼女に向けて言葉を放つ。
「お嬢、こんなところにいたんですかい。みんな大慌てで探しとります。ほら、帰りましょう。」
しかし、彼女は拒絶の意を示すように警官の人の服に顔をうずめる。
「お嬢、そこの人たちにも迷惑ですから。ほら、帰りますよ。」そう言って、黒服のうちの一人がその少女を連れて行こうとする手を赤髪の男性が止める。
「彼女、嫌がっているじゃないですか。いったい何様のつもりなんですか。」
「部外者には関係のないことです。我々だけの問題ですので、お気になさらず。」
そう二名が言い合っていると、
「実はそうとも行かないんだよね。俺、警察だからさ。はいそうですかで帰すことができないんだよね。だからさ、ちょっと署まで同行していただけるかな?」と警官の人が切り込んできた。そして、抱えていた少女を私に渡して、彼らに近づく。
もしかしてですけど、今、私、大スクープの中心にいたりしちゃいます?
日課のジョギングコース。この時間は人もほとんどおらず快適。軽く吹く風も心地よさを感じる。
そして、ジョギングの途中。管理小屋の横を通り過ぎようとしたとき、見覚えのある胴着を着た赤毛交じりの男を見かけた。確か名前は...、だめだ。外見の印象が強すぎて名前が記憶の彼方に吹っ飛んでる。話しかけ...なくてもいいか。別に会話する程度の仲でもないしな。
そういうことでそいつを横目に立ち去ろうとすると、どうやらそいつは誰かに弁明?みたいにことを言っていた。普通、こういうことはスルーするのが安定なんだが今回ばかりは好奇心が聞き耳を立ててみろと言っている。・・・まあ、聞いて減るものでもないよな。
そんなこんなで私は近場の茂みに潜んで聞き耳を立てることにした。
「だからぁ、俺はこの山で籠って修行をしようとしていてだな。そんで、管理人さんに挨拶をしようとしていてだな。」
「はいはい。どんな理由でここに来たのかはよく分かったから。別に山で修行とかは禁止されてはいないけどね、この山で寝泊まりすることは禁止されてるの。それに君、背中に背負っているこれは何?」
「これか?これはうちの師範代だけが持てる薙刀だが。なんだ、持ってみるか?」
「いえ、結構です。それで、登録証はお持ちですか?」
「えっと...。あっ、道場に置いてきちまったかも...。」
・・・よく見えないなぁ。もうちょっと見えやすい位置に移動するか?
そう悩んでいると、パキッと足元にあった枝を踏み折ってしまった。恐る恐る彼らの方を見ると、二人の視線がこちらの方に向けられていた。
流石に怪しまれるよなぁ...。両手を掲げながら茂みから立ち上がって弁明をする。
「あのー、怪しいものではないんです。私、こう見えて記者でして何やらスクープの香りがしてちょっと聞き耳を立てていただけでしてね。あの...、その...。」と、苦し紛れの弁明をしているとあの見覚えのある男が話しかけてくる。
「あ、えーっと確か、そうそう桐藤さんじゃないか。俺だよ俺、狛凪だよ。助けてくれ、ヘルプミー。」
遼太郎...、ああ思い出した。狛凪遼太郎だ。昔、変な事件に巻き込まれた時に鉢合わせた槍使いのよくわかんねぇ奴。正直あれ以降関わりたくなかったがこうやって鉢合わせてしまったのならまあ仕方ない。
「ああ、遼太郎さんですか。・・・ワルイヒトデハナイトオモイマスヨー。」
「なんで片言なんだよ!そこ大事なところ!」
知るかよ、最後に出会ったの4年ぐらい前だぞ?名前でも覚えてもらえてるだけ感謝しろよまったく。
「お知り合いなんですか。それでそちらの、記者の方。あなたはいったいなぜこんなところに?」
「いや、日課のジョギングで来てたら何やら面白...、興味深いものが起きているのを見つけまして。気になったので聞き耳を立てておりました...。」
「そう。それじゃあ、次からはしないようにね。で、狛凪さん。あなたは銃刀法違反なので、今すぐにでも警察署に護送すべきなんだけどね。私、徒歩パトロールをしていたから応援を呼ばせてもらったので私と一緒に少し待っていてもらうね。」
「・・・はい。」
まったく、面倒ごとに巻き込まれてちゃったな。まあ、見た感じこれ以上ネタになりそうなものもないしな。そろそろここを去るか?
そう考えていると、カタッと小さな音が聞こえる。とても小さな物音。だが、聞き逃さなかった。管理小屋倉庫の中から聞こえた。でも何で、いつもなら鍵がかかってるはず。そう、気になっては居ても立っても居られずに管理小屋倉庫の扉に手をかけ、開く。鍵は、かかっていなかった。
中は真っ暗で、目が慣れるのに少し時間がかかった。後ろからは、「君、何やっているんだ。」と言うように呼び止められるような声が聞こえた気がした。しかし、そんなものは気にもすら留めきれなかった。それ以上に私の目を奪ったもの。
そこには、少女が壁にもたれて息を切らしている姿があった。銀髪で、スタンドカラージャケットを着ており、手足はすぐに折れてしまいそうなほど細い。華奢というにはか弱すぎる生物がそこに居た。そして、床一面にはナメクジが這ったような赤色のシミが付いていた。
後ろから何があったのかを確認しようと警官の人が私を押しのけて管理小屋倉庫の中を見る。すぐさま警官は彼女のことを介抱しようと近づいて、彼女を抱え管理小屋倉庫の外へとでてくる。
それと同時にガラガラと管理小屋の扉を開けて、赤髪の男性が出てきた。男性はこちらを見て、驚きのあまりか身体が硬直する。この人、どこかで見た覚えはあるんだが...どこだったかな。
そうしていると、2台の黒い車体に黄色の剣のマークがあしらわれたいかにも高級車のような車から数名の黒服の男性が出てきて、警官の人が抱えている彼女に向けて言葉を放つ。
「お嬢、こんなところにいたんですかい。みんな大慌てで探しとります。ほら、帰りましょう。」
しかし、彼女は拒絶の意を示すように警官の人の服に顔をうずめる。
「お嬢、そこの人たちにも迷惑ですから。ほら、帰りますよ。」そう言って、黒服のうちの一人がその少女を連れて行こうとする手を赤髪の男性が止める。
「彼女、嫌がっているじゃないですか。いったい何様のつもりなんですか。」
「部外者には関係のないことです。我々だけの問題ですので、お気になさらず。」
そう二名が言い合っていると、
「実はそうとも行かないんだよね。俺、警察だからさ。はいそうですかで帰すことができないんだよね。だからさ、ちょっと署まで同行していただけるかな?」と警官の人が切り込んできた。そして、抱えていた少女を私に渡して、彼らに近づく。
もしかしてですけど、今、私、大スクープの中心にいたりしちゃいます?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
女帝の遺志(第二部)-篠崎沙也加と女子プロレスラーたちの物語
kazu106
大衆娯楽
勢いを増す、ブレバリーズ女子部と、直美。
率いる沙也加は、自信の夢であった帝プロマット参戦を直美に託し、本格的に動き出す。
一方、不振にあえぐ男子部にあって唯一、気を吐こうとする修平。
己を見つめ直すために、女子部への入部を決意する。
が、そこでは現実を知らされ、苦難の道を歩むことになる。
志桜里らの励ましを受けつつ、ひたすら練習をつづける。
遂に直美の帝プロ参戦が、現実なものとなる。
その壮行試合、沙也加はなんと、直美の相手に修平を選んだのであった。
しかし同時に、ブレバリーズには暗い影もまた、歩み寄って来ていた。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる