ピエロのサイコロ

花角瞳

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♦︎第2章

ピエロのトランプ①

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こ・・・ここは・・・。



「ようこそようこそ暗黒所へ。生身の人間いらっしゃい♪」


 かすんだ目を両手でこすり、横たわっている私の目の前で覗き込んでいる何者かを、必死で確認しようとする。


 何者かの口元が真っ赤な色で染まっているのをぼやけた視界からもよく分かる。


 次第に目に住み着いた雲が晴れていき、徐々に姿が浮かび上がる。


 真っ白なふわふわとした体はマシュマロみたいに柔らかく、ちょこんとついた丸い小さな尻尾は、まるで春の中頃にさくたんぽぽのようだった。


「はやく立って自己紹介しようよ」


 二本足でたち、ぴょんぴょんと飛び跳ねるたびに大きな耳が前後に揺れる。


 私は足を曲げ、体を起こし、地面に手をつけてから一気に立ち上がった。



「はじめまして。僕は暗黒所の管理人『ウー』っていうんだ。君は?」



 ウーという人物、いや動物は私の手を握り握手をしながら自己紹介をする。


 握った手のひらにヒヤッと冷たく、気持ちのいい感触が伝わってくる。


 透明に近い綺麗なピンクの肉球がたまらなく気持ちいい。


 手のひらで覆いきれなく、あまりきった私の指先にふわふわの毛が触れる。


 自己紹介をし終えると、ウーという動物はジーッと愛らしい青い瞳で私の目をみつめた。


 ピクッピクッと微動に動くその耳を見ながら



「私の名前は悠」



 というと、さっきまで頻繁に動いていた耳がピタリととまり、にこりと笑みを見せた後



「ユウ。僕についてきて」



 と手を前につき、手と足を器用な動きで交互に交差させながら奥にある、小さな家に走っていった。


ピンク色の屋根にはキラキラと光るダイヤのような光沢が塗られてあり、茶色い小さな入り口にふわふわとした真っ白な壁。


 とてもオシャレなその家に案内され、入り口の前で待たされる。



 数分経つと、自分の鼻息さえも聞こえてしまう静かな空間の中にガチャリと音が鳴り響き、扉が開くと同時にウーが顔をチョコンと出している。


 クイックイッと小さな手で私を招き、家の中に入るとピンク色で広がる空間の中に、ところどころ白い家具で色とりどりに染められていた。


 横幅五十㌢縦幅三十㌢ほどの小さなテーブルの上に花柄の可愛いポットとガラスの取っ手つきカップが置かれている。



 ウーはそのポットの中に紅茶の元を入れると、お湯を注ぎ、私に紅茶を入れてくれた。



 一口紅茶を飲むと、ウーはカップをテーブルの上に戻し、口を開けた。



「ユウは本の中を全部読んだ?」



 真剣な眼差しで、その目は私の中のすべてを見透かしているように思える。



「うん。全部読んだよ。その前にここはどこ?」



 周りを見渡しながら、私は問いかける。


 するとウーは立ち上がり、棚の方へ向かうと、何かを探し始めた。


 素早い動きで棚の中を探しているウーの後姿を見ながら手元にあるカップを口元へ近づけ、再び紅茶を飲み始める。


 すると見つけたのか、ウーの体が三分の二は隠れてしまうそれを両手で持ち、左右にゆらゆらと揺れながら、机の上に一旦置き、私に差し出した。



「これは・・・」



ウーが持ってきたその本は、まさに私がここへくる前まで読んでいた瓜二つの本だった。



 「ユウが読んでいた本と同じ本だよ。

この本を読み終えた後、すぐに君はここにきた。

この本はね、ピエロの本って言って、不思議な力をもった絵本なんだ」



 「不思議な力?」


 

 「うん。どうやってユウがこの本を見つけたのか知らないけど、この本は人の憎しみから生まれた本なんだ。

殺したい。呪ってやりたい。

そんな人達の憎しみが混ざり合って出来た本。

ユウが最後にみたページの内容覚えてる?」



 「えっと、確か『寂しくて、寂しくて、寂しくて・・・。でももう満足した』みたいなことを書いてたような・・・」



 曖昧な記憶を元に、必死で意図をたどっている私に、ウーはこういった。



 「最後に『君もピエロになろう』そう書いてたよね?

それはピエロとなった人が残した最後のメッセージだ」



 その言葉を聞いたとき、私はすぐに目の前にある本を再び開け最後のページに目を通した。


 指で字をなぞると共に、恐る恐るウーに問いかける。



 「この字・・・。身に覚えがあるの。もしかしてこれを書いたピエロって・・・」



 青い大きな目をさらに大きく開いてウーは言った。




 「そのピエロの名前は拓也っていう子だよ」

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