上 下
3 / 10
1章 追放

第3話 精霊との契約

しおりを挟む
 驚きながらも目の前にいる精霊を見つめると、話しかけられた。

{君が僕を呼んだの?}
「え?」
{だから君が僕を呼んだの?}

 俺が目の前にいる精霊を呼んだ? いや、そんなことあり得ない。だって、魔眼を使ってみただけなんだから。それに呼ぶってあれだろ? 召喚魔法とかだろ? 俺、召喚魔法を使うことができないし......。

「いや、呼んでいないと思いますよ」
{この文字読める?}

 そう言われて、先程見ていなかった文字を見る。

【文字を解読したら精霊が現れる】

(え?)

 すると、首を傾げながら尋ねてきた。

{読めた?}
「あ、はい」
{だったら君が呼んだってことだね}
「......」

(精霊に言われて、最悪な事態が頭によぎった)

 もし、解読してはいけない精霊であったら? もし、俺に害がある精霊だったら? 
そうだった場合、俺やここにいるエルフらしき女性は......。

{それにしても人間がこの文字を読めるなんて珍しいね}
「......」

 先ほどからほんわかとした雰囲気でしゃべってくれてはいる。だけど、先程頭によぎったを考えてしまい、少し恐怖すら感じていた。

 その時、エルフらしき女性が話しかけてきた。

「ねぇ、さっきから誰と話しているの?」
「え? 見えないの?」

 すると首を傾げながら尋ねてくる。

「何か?」
「......」

 それを聞いて俺は、シルフの方を向く。

{文字を解読した人にしか僕は見えないよ。まあ他の方法で見ることはできるけどね}
「......」

 するとなぜか頷きながら言った。

{......。そう言うことね。隣にいるエルフ。この子がいるってことは君も......。ねぇ、僕と契約しない?}
「え? 契約?」
{うん! 僕と契約しようよ}
{契約してお互いなんのメリットがあるの?}

 契約と聞いてすぐさまそう思った。契約して、俺に害が及ぶなら契約なんてしなくていい。でも、もし......。

{そりゃあ僕の力を君が使えるようになるんだよ!}
「じゃあシフルは?」
{僕は、まあ暇つぶしかな}

(暇つぶしね......)

「へ~。俺に害とか無いの?」
{無いよ。それに君は僕たちと契約する運命だと思うけどな}

 僕たちと? シルフ以外にも居るのか? ふとそう思ったが、今そんなことを考えている余裕はなかった。

「そう......。じゃあお願いしようかな」

 シルフの力が使えるようになって、尚且つ俺に害が無いなら契約したほうがいいよな。

{よかった! じゃあ始めるよ!}
 
 シルフがそう言うと、あたり一面に大きな風が起こった。

「え、え? 何が起きているの?」

 エルフの女性がそう言うが、俺もわからず返答ができなかった。そして風が収まると、手の甲に魔方陣ができていた。すると耳元に囁かれる。

{これで契約完了だよ! 今日から宜しくねリアム}
{え? 俺の名前教えたっけ?}
{契約したら契約者の情報が分かるからね。まあ僕の過去はまだ見れないと思うけど}

 それって、俺にとってデメリットじゃないか! 実家を追放されたことなんか、一番知られたくないのに!

{シフル、俺の過去は誰にも言わないでくれ}
{うん。わかってるよ。それよりも、この子にも僕の姿を見せてあげる?}

 シルフに言われて、俺が隣を見ると、何が起きているかわかっていない様子であったので、頷いた。

(それに、ここにこれたのはこの人のおかげでもあるからな)

 すると、シルフが先程の大きさで目の前に現れた。シルフを見たエルフの女性は驚きながら言った。

「え?」
「初めまして! リアムと契約したシルフだよ。よろしくね!」
「シ、シルフ!?」

 そう言った途端、驚きながら後ずさっていった。

「うん! 信じられない?」
「いえ、それよりも私も自己紹介していませんでしたね。お初にお目にかかります。エルフ第三王女、ミシェル・スチュアートです。よろしくお願いいたします」
「よろしくね」

(え? 第三王女!?)

 名前聞いていなかったことより、王族だってことに驚く。なんで王族がこんな場所に居るんだよ! 俺が驚きながらミシェルを見ていると、視線に気づいたのか、こちらを見てきながら言ってきた。

「ま、まさかあなたが......」
「??」

 何を言っているんだ? その時、シルフがこの場から消えた。

(薄情者!)

「宜しくね。リアム」
「え、あ、うん。それよりも自己紹介しましたか?」
「シルフ様がさっき言ってたよ?」
「あ!」

 そう言えば、ミシェル様が言う通りさっき言っていたな。

「後、さっきみたいに敬語じゃなくていいよ」
「で、でも......」

 流石にそう言われても、「はい、分かりました」なんて言えないよ。

「じゃあ命令! 敬語禁止ね!」
「あ、うん」
「リアムは冒険者としてここに来たんだよね?」
「うん。ミシェルは違うの?」

 こんな場所、冒険者以外に来る人なんていないと思うんだけどな。

「私は違うよ。それは後で話すね。まずは、リアムが受けた冒険者ギルドに向かおっか!」
「うん」

 その後、軽くミシェルと雑談をした後、二人で街へ戻っていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

地球から10億光年離れた恒星でアルバイトを始めた結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

重いと自覚しただけに。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

クラス転移で死んだけど暗殺者としての第二の人生が始まりました

ODK
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:420

社畜、異世界に転移してスローライフを送りたかった?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

正しい風呂の入り方

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:37

奇妙なカフェー

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...