朝起きたら自分が書いた恋愛小説の世界のキャラに転生？！しかも、いつも不遇な目に遭うネタキャラでもう笑うしかない

転生

　俺は小説が好きだ。
特に恋愛小説が。
こんな世界に行ったらどうなるんだろうなぁとも一度は考えたこともある。
もし、この世に神様が居るのだとしたら一言物申すとしよう。

「実際に来てしまうのは違うだろ？！？！？！」

◇◇◇◇

　良い子も眠る丑三つ時、俺は未だに小説を書いていた。
書き始めてから三時間は優に越える。
今日はどうも筆が乗らない。
持っているのは筆じゃあなくパソコンのマウスだが……
俺は軽く嘆息する。

「うーむ……こういう時はアイツを使うか」

アイツというのはスランプに陥った時に無理矢理不遇な目に遭わせて文字数を稼ぐ、所謂ネタキャラだ。
こいつが登場するだけでたちまち面白くなる。
俺からしたら便利なキャラだ。
読者からの人気も割と高いため、半レギュラーのようなものだ。
その後、そいつの登場で筆が乗った俺はぱぱっとそのエピソードを書き終えた。

「やっと終わった～！！」

俺は大きく伸びをする。
刹那、腹部に尋常じゃない程の痛みが走った。
俺は思わずその部分をおさえ、悶える。
手に生温かく、紅い液体が付着したのが判る。
それは紛うことなく血、だった。
そのまま俺の意識は遠くなっていった。

◆◆◆◆

　「起きて、起きて！」

聞き覚えのない女性の声で俺は目を覚ます。
ここは何処だろうか……
寝起きで朧げだった記憶が、徐々に鮮明なものになっていく。
やがて、全てを思い出すと俺は即座に自分の腹部に手を当てた。
しかし、手に血液が付着することはなかった。
それどころか、痛みさえ感じない。
俺は死んだのだろうか……

「どうしたの？　お腹、痛いの？？」

「うわぁ？！　お前は誰だ？！？！」

頭が働き始めた俺は、隣に見知らぬ女の子が居ることに壁を突き破りそうな勢いで驚いた。

「寝惚けてるの？　私は幼馴染の咲姫千景さきひめちかげよ？？」

咲姫千景、その名前が頭の中で反響した。
聞き覚えがある名前だ。
だが、何処で聞いたんだっけな……
っていうか、幼馴染だって？！
俺は成人した大人だぞ？！
彼女はどう見ても成人しているようには見えない。

「あなたは、佐賀京八さがきょうやでしょ？　ほら、巫山戯てないで学校に行きましょ？？」

「佐賀京八？！」

この名前は記憶に新しい。
だからこそ、俺は驚愕した。
だって、佐賀京八は俺が書いている小説の、ネタキャラだからだ。

「おいおいおいおい、待ってくれ……まさか」

小説の世界に行ったらどうなるんだろうなぁとかは考えたはある。
しかし――

「実際に来てしまうのは違うだろ？！？！？！」