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一次報告書
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皆さん、いかがでしたでしょうか。ご覧いただいたものは集めた資料の一部分となります。
さて、以下はことの始まりに関する経緯と、これらの資料を読んだ私の感想、それから、私なりに資料を読み解いた考察となります。考察はあくまでも解釈の一つとして受け止めていただけると幸いです。
◆
ことの発端は、某SNS上でのやり取りでした。とあるアカウントから、一通のDMが届きました。
「突然の連絡失礼いたします。私は■■■に住む中学三年生の○○○○○と申します。突然ですが、絢郷さんにお願いがございます。私が通っている■■■中学校にまつわるとある心霊現象について調査をしていただけないでしょうか。詳しい話は、興味をお持ちいただけましたらお話いたします。返信お待ちしております。」
私は以前、怪異譚の募集を同SNS上で行っておりました。現在は行っていませんが、その方はまだ私がそのような活動を続けていると勘違いされたのでしょう。初めは断ろうかと思いました。と言いますのも、私が行っていたのは怪異譚の募集であって、調査ではありませんでしたから。しかし、そこに登場した地名が心に引っ掛かったのです。
その地名は、同SNS上でやり取りを行っていたとある方の失踪に関連していました。
失踪と表現しましたが、正確な所はわかりません。その方は「オルカト田宮」という名前で活動をされておりました。SNS上で私は、オルカト田宮氏と文章でやり取りを交わしたことがあります。その内容はネタの提供でした。
オルカト田宮氏はオカルト関連の動画を上げるYoutuberとして人気を博しており、その動画の内容はフィクション、ノンフィクションを問わなかったのです。彼から依頼を受けた私は、彼の動画のネタとして、頂いたお題に沿った怖い話を作り、提供する代わりに報酬を頂いていたのです。
彼とのやりとりは二、三度ありましたが、私のスケジュールの関係で手が空けられずに一度断ったのを最後に、連絡は途絶えてしまいました。彼からお誘いがない以上、私から連絡を取る理由はありません。
しかし私はその後も、なんとなく気になって彼の動向はチェックしていました。といっても、投稿された動画を確認する程度です。そして、彼が最後に投稿した動画のロケ地が、まさにその土地だったのです──。
何かあると感じた私は、怪しく思いながらもそのDMに返事をしました。
「返信ありがとうございます。まず絢郷さんに見ていただきたいのが、LINEのスクショです。」
添付された画像は、グループLINEのトーク画面を切り取ったものでした。みなさんに紹介した一つ目の資料がまさにそれです。ただし、冒頭で説明した理由により、一部には加工が施されております。
調査を依頼してきたのは、「三和子さん(仮名)」です。三和子さんは意味深に問いかけてきました。
「このやり取りの異変に気付かれましたでしょうか?」
私に調査能力があるのか試されているような気がしましたが、私は素直に答えました。
「写真に謎の黒い人物が写りこんでいる以外ですと、グループの構成人数がおかしいというところですか。」
「そうです。」
彼女たちのグループは、グループ名の横に表示されている数字から11人であるとわかります。しかし、トークしている人数を数えてみると、三和子さんも含めて12人いることがわかります。
「一人多いんです。」
「いったい誰がその紛れ込んだ一人なのですか?」
次の返信には、少し時間が空きました。
「黒石愛美という人物です。」
確認してみると、たしかに少し違和感のある文章でした。黒石愛美に対して、三和子さんは言います。
「ほかのメンバーは誰も知らなかったのですが、実は私は、黒石愛美について以前から知っていました。」
「どういうことですか?」
「私の趣味は、ホラー小説を読んだり、ホラー映画を見たりすることです。絢郷さんの作品も以前読ませていただきました。そうした活動の中で自分でも書いてみたくなって、いろいろと身近なところでネタがないか探してみたんです」
「その時にその名前を知ったと?」
「はい。うちの学校で昔、自殺した女子生徒がいたらしくて、その生徒の名前が黒石愛美でした。」
「なるほど。その霊があなたに憑りついてしまったということですね。」
「たぶん、そうなんだと思います。」
「でもそこまでわかってるなら、なぜ私が調査する必要があるのですか?」
返信までの時間に、躊躇いが感じられました。
「それについて詳しいことはお話しできません。ですがお願いします。一連の現象について調べて報告してください。」
どうしようか、私はほとほと困りました。嘘ではないような気がします。少なくとも本人は本気であると私は感じました。彼女は本当に困っているようです。困っている人間が助けを求めていて、それを無碍に扱うことはしたくありません。
そこで私は、一つの条件を与えました。
「わかりました。調査の依頼を引き受けます。ただし、調査で得られた情報や資料は、なんらかの形で、たとえば小説やドキュメンタリーとして発表しても構わないと約束してください。もちろん、プライバシーなどできる限りの配慮は致します。」
「ありがとうございます。それで大丈夫です。よろしくお願いいたします。」
◆
これが、私がこの一連の怪奇現象について調べるに至った経緯です。
資料をまとめますと、いくつかに登場する「黒い影」あるいは「黒い人影」の正体は、■■■中学校に通っていた女子生徒「黒石愛美」のことでしょう。彼女は、クラスメイトから虐めに遭っており、それに耐えられなくなった彼女は、ホームから線路へと飛び込んで自殺を図った。それが修学旅行に行く前であったことから、彼女の強い未練が霊という形になって現れ、かつて自分も所属していた三年一組に現在進行形で所属している生徒(三和子さん)に憑りついたといったところでしょう。
読み解く中で気になった点──懸念点は、事件について調査すると何か良からぬことが起きそうだということです。Youtuberの失踪、「調べないでください」という警告、自分で調べようとしない依頼主。このあたりで手を引くのが得策でしょう。しかし、一度やると決めた以上は私にも意地があります。それに私自身、何が起きたのか知りたい欲求が強くなっていました。
もう少しだけ調べてみよう。そう決意し、まずは私はある人物に連絡を取りました。その人物とは、執筆仲間であり、怪異譚の収集仲間でもある、「烏帽子」氏です。彼──あるいは彼女である氏に事情を説明しますと、
「わかりました。面白そうなのでこっちでも調べてみます。何かわかったら連絡します。逆に何か掴んだら教えてください。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
烏帽子氏を巻き込んだのは、もしかしたらという私の中の直感が理由です。それがいい意味でなのか、悪い意味でなのかはまだわかりませんが、きっとそうしたほうがいいだろうと思ったのです。烏帽子氏は、情報収集能力もさることながら、その情報をまとめあげ考察する能力は傑出しています。きっと力になってくれるはずです。
そうして私は、怪奇現象について調べてみることにしました。
さて、以下はことの始まりに関する経緯と、これらの資料を読んだ私の感想、それから、私なりに資料を読み解いた考察となります。考察はあくまでも解釈の一つとして受け止めていただけると幸いです。
◆
ことの発端は、某SNS上でのやり取りでした。とあるアカウントから、一通のDMが届きました。
「突然の連絡失礼いたします。私は■■■に住む中学三年生の○○○○○と申します。突然ですが、絢郷さんにお願いがございます。私が通っている■■■中学校にまつわるとある心霊現象について調査をしていただけないでしょうか。詳しい話は、興味をお持ちいただけましたらお話いたします。返信お待ちしております。」
私は以前、怪異譚の募集を同SNS上で行っておりました。現在は行っていませんが、その方はまだ私がそのような活動を続けていると勘違いされたのでしょう。初めは断ろうかと思いました。と言いますのも、私が行っていたのは怪異譚の募集であって、調査ではありませんでしたから。しかし、そこに登場した地名が心に引っ掛かったのです。
その地名は、同SNS上でやり取りを行っていたとある方の失踪に関連していました。
失踪と表現しましたが、正確な所はわかりません。その方は「オルカト田宮」という名前で活動をされておりました。SNS上で私は、オルカト田宮氏と文章でやり取りを交わしたことがあります。その内容はネタの提供でした。
オルカト田宮氏はオカルト関連の動画を上げるYoutuberとして人気を博しており、その動画の内容はフィクション、ノンフィクションを問わなかったのです。彼から依頼を受けた私は、彼の動画のネタとして、頂いたお題に沿った怖い話を作り、提供する代わりに報酬を頂いていたのです。
彼とのやりとりは二、三度ありましたが、私のスケジュールの関係で手が空けられずに一度断ったのを最後に、連絡は途絶えてしまいました。彼からお誘いがない以上、私から連絡を取る理由はありません。
しかし私はその後も、なんとなく気になって彼の動向はチェックしていました。といっても、投稿された動画を確認する程度です。そして、彼が最後に投稿した動画のロケ地が、まさにその土地だったのです──。
何かあると感じた私は、怪しく思いながらもそのDMに返事をしました。
「返信ありがとうございます。まず絢郷さんに見ていただきたいのが、LINEのスクショです。」
添付された画像は、グループLINEのトーク画面を切り取ったものでした。みなさんに紹介した一つ目の資料がまさにそれです。ただし、冒頭で説明した理由により、一部には加工が施されております。
調査を依頼してきたのは、「三和子さん(仮名)」です。三和子さんは意味深に問いかけてきました。
「このやり取りの異変に気付かれましたでしょうか?」
私に調査能力があるのか試されているような気がしましたが、私は素直に答えました。
「写真に謎の黒い人物が写りこんでいる以外ですと、グループの構成人数がおかしいというところですか。」
「そうです。」
彼女たちのグループは、グループ名の横に表示されている数字から11人であるとわかります。しかし、トークしている人数を数えてみると、三和子さんも含めて12人いることがわかります。
「一人多いんです。」
「いったい誰がその紛れ込んだ一人なのですか?」
次の返信には、少し時間が空きました。
「黒石愛美という人物です。」
確認してみると、たしかに少し違和感のある文章でした。黒石愛美に対して、三和子さんは言います。
「ほかのメンバーは誰も知らなかったのですが、実は私は、黒石愛美について以前から知っていました。」
「どういうことですか?」
「私の趣味は、ホラー小説を読んだり、ホラー映画を見たりすることです。絢郷さんの作品も以前読ませていただきました。そうした活動の中で自分でも書いてみたくなって、いろいろと身近なところでネタがないか探してみたんです」
「その時にその名前を知ったと?」
「はい。うちの学校で昔、自殺した女子生徒がいたらしくて、その生徒の名前が黒石愛美でした。」
「なるほど。その霊があなたに憑りついてしまったということですね。」
「たぶん、そうなんだと思います。」
「でもそこまでわかってるなら、なぜ私が調査する必要があるのですか?」
返信までの時間に、躊躇いが感じられました。
「それについて詳しいことはお話しできません。ですがお願いします。一連の現象について調べて報告してください。」
どうしようか、私はほとほと困りました。嘘ではないような気がします。少なくとも本人は本気であると私は感じました。彼女は本当に困っているようです。困っている人間が助けを求めていて、それを無碍に扱うことはしたくありません。
そこで私は、一つの条件を与えました。
「わかりました。調査の依頼を引き受けます。ただし、調査で得られた情報や資料は、なんらかの形で、たとえば小説やドキュメンタリーとして発表しても構わないと約束してください。もちろん、プライバシーなどできる限りの配慮は致します。」
「ありがとうございます。それで大丈夫です。よろしくお願いいたします。」
◆
これが、私がこの一連の怪奇現象について調べるに至った経緯です。
資料をまとめますと、いくつかに登場する「黒い影」あるいは「黒い人影」の正体は、■■■中学校に通っていた女子生徒「黒石愛美」のことでしょう。彼女は、クラスメイトから虐めに遭っており、それに耐えられなくなった彼女は、ホームから線路へと飛び込んで自殺を図った。それが修学旅行に行く前であったことから、彼女の強い未練が霊という形になって現れ、かつて自分も所属していた三年一組に現在進行形で所属している生徒(三和子さん)に憑りついたといったところでしょう。
読み解く中で気になった点──懸念点は、事件について調査すると何か良からぬことが起きそうだということです。Youtuberの失踪、「調べないでください」という警告、自分で調べようとしない依頼主。このあたりで手を引くのが得策でしょう。しかし、一度やると決めた以上は私にも意地があります。それに私自身、何が起きたのか知りたい欲求が強くなっていました。
もう少しだけ調べてみよう。そう決意し、まずは私はある人物に連絡を取りました。その人物とは、執筆仲間であり、怪異譚の収集仲間でもある、「烏帽子」氏です。彼──あるいは彼女である氏に事情を説明しますと、
「わかりました。面白そうなのでこっちでも調べてみます。何かわかったら連絡します。逆に何か掴んだら教えてください。」
「ありがとうございます。よろしくお願いします。」
烏帽子氏を巻き込んだのは、もしかしたらという私の中の直感が理由です。それがいい意味でなのか、悪い意味でなのかはまだわかりませんが、きっとそうしたほうがいいだろうと思ったのです。烏帽子氏は、情報収集能力もさることながら、その情報をまとめあげ考察する能力は傑出しています。きっと力になってくれるはずです。
そうして私は、怪奇現象について調べてみることにしました。
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