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烏帽子氏からの指摘
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件名 ■■■の件について
お久しぶりです。元気ですか? 烏帽子です。
送っていただいた資料、全部読ませていただきました。すいません、返信がだいぶ遅くなってしまって。ちょっと家庭の事情が立て込んでまして、やると言っておきながら情報集めも少ししかできませんでした。代わりと言ってはなんですが、もらった資料をまとめて考察しておきました。かなりの長文になりましたが、読んでください。
まずは窺っていた話を整理しておきましょう。
発端は、とある中学生からの依頼でしたよね。LINEグループの中に「黒石愛美」という謎の女子生徒が紛れ込んでいた。調べてみると、その謎の人物は同じ中学校の元生徒で、在学中に駅で自殺しており、以降その駅では呪いのように次々と人が飛び込み自殺を行ってしまうという。おおよそこんな感じでしたよね。
さて、関連すると思われる怪奇現象は次の通りです。
1,黒い人影の目撃情報。
2,「行きたかった」という、音声や文字でのメッセージ。
3,駅での飛び込み自殺にみえる呪い。
以降での説明を簡単にするために、1の現象を『黒い影』、2・3の現象をまとめて『黒石の怨念』と呼ぶことにしましょう。
まず始めに私が気になったのは、LINEでのやり取りです。グループの中に紛れ込んだ黒石愛美は「私も行きたかった」と言ってます。彼女は修学旅行の直前に死んでますし、会話の流れを考えれば、「修学旅行に行きたかった」という意味での発言でしょう。でもこれって変ですよね。
写真に写りこんでいた黒い人影の正体が黒石愛美だとするならば、彼女は依頼人の中学生に憑りつく形で修学旅行について行っているわけですから、行っているのに行きたかったとは矛盾しています。
ただこれは解釈の仕方次第で、たとえば「当時のクラスメイトと行きたかった」と考えれば、彼女の発言も一応は筋が通ります。でもその解釈で考えてみても、やっぱり違和感が残るんですよ。
黒石は、「クラスメイトからの虐めを苦にして自殺した」って話でしたよね。でも普通、虐めてくる人たちと一緒に旅行に行きたいと思いますか? 私だったら全然思いません。
で、この矛盾が解消される解釈を色々と考えてみたんですけど、なかなか思い浮かびませんでした。そこで、無理矢理にでも解釈をつけようとするのではなく、逆につけられないものだと考えてみたんです。つまりどういうことかというと、『黒い影』と『黒石の怨念』は全く別の原因からなる現象なんじゃないのかって考えてみたんです。
で、確認してみると、どうもこの予想は当たってるようなんです。
たとえば、人身事故の記事についたコメントには、「背後には誰もいなかった」と書かれてます。ラジオの人生相談でも、「被害者は一人で飛び込んでいる」と言ってます。『黒石の怨念』が現れる瞬間には、黒い人影は登場していないんです。
一見するとLINEでの会話では、黒い人影の登場が引き金となって「2の現象」が起きているように見えますが、しかしよく確認すると、「行きたかった」という発言が出てきたのは、黒石愛美の話題が出た直後です。話題にすることが引き金となったのであって、『黒い人影』は無関係であるとわかります。もともと写真が撮られたのはだいぶ前のことですしね。
では『黒い人影』が『黒石の怨念』と別物であるとするならば、黒い人影の正体は何者で、その出現条件はなんなのでしょうか。
その目撃情報は、「修学旅行の写真」「Youtuberの動画」「校内新聞のインタビュー」の中に登場します。これら全員に共通するのは、「黒石愛美の死亡事件について調べていた人物の前に現れている」ってことです。これが出現の条件でしょう。
校内新聞のインタビューでは、「事件について調べようとするものはお母さんに見つかってはならない」と忠告されています。また某Youtuberは、黒い人影を目撃した直後に消息を絶っています。
これらを合わせて考えれば「黒い人影=お母さん」という図式が成り立ちますので、お母さんについて調べればいいということが分かります。
さて、お母さんとは一体誰のことを指しているのでしょうか?
その疑問はいったん脇に置いて、話を『黒石の怨念』に戻してみましょう。そもそもなぜ黒石愛美の死は呪いとなったのでしょうか。彼女は本当に、修学旅行に行きたがっていたのでしょうか?
先ほども言ったように、虐めてくる人たちと一緒に旅行に行きたいとは普通は思いません。じゃあ、その話自体が嘘で、誰かの作り話だったり、推測で話していたことが事実として広まったりしたものなのでしょうか。
私はそのどちらでもないと思っています。「2の現象」がそのいい証拠です。つまり、修学旅行に行きたい気持ちは偽りではなかった──。
もしもどこかに嘘が紛れ込んでいるとするならば、「黒石愛美が虐められていたこと」の方が嘘なのだと私は思います。いや、嘘という言い方はちょっと違いますね。事実が都合よくねじ曲げられて伝わった結果、というべきでしょうか。
そう考える根拠は、卒業アルバムの中にあります。
添付した写真を見てください。それは黒石愛美が亡くなる一月ほど前に撮られた写真です。どうですか。結構髪の毛が短くて、ボーイッシュな印象を受けますよね。
以前のメールの中で絢郷さんは、卒業アルバムの中のとある長髪の女子生徒のことを、黒石愛美として考えていましたよね。ですが彼女の髪の長さを考えると、黒石とは別人であることが分かります。一か月くらいではあそこまで髪は伸びません。
ではその女子生徒は誰かと言えば、とある卒業文集の中にも登場しましたね。そう、この生徒は「尾賀絵美」です。
さきほど私は、虐めに関して「事実が都合よくねじ曲げられて伝わった結果」だと言いましたが、この一連の怪奇現象の発端たる黒石愛美の死には、様々な事実が捻じ曲げられたり、隠されたりしていると思っています。どうしてこの女子生徒が尾賀絵美だと言えるのかはあとで説明します。
先に、端的に結論をいいます。「黒石愛美は虐められてなどいなかった。尾賀絵美こそが黒石によって虐められていた人間だった」。
突拍子もないと思いますか? でも聞いてください。私の想像はこうです。
黒石愛美は尾賀絵未のことを虐めていた。周囲の生徒はそれに加担していた。黒石は修学旅行を楽しみにしており、尾賀が参加することが不快だった。そこで黒石は尾賀に、修学旅行を休むように命令した。しかし、尾賀はそれを拒絶した。その反抗に、黒石は数名のクラスメイトとともに、尾賀を駅で殺害しようとする。ホームで二人はもみ合いになり、逆に黒石の方が線路へと落ちて轢かれてしまう。周囲の人間は、黒石の死を自殺と偽り、そこに至る経緯及び、虐めの存在を隠すことにした。
これが、おおよそ私が想像する経緯です。
もちろん、すべては憶測です。揉み合いになったかどうかはわかりません。もしかしたら突き落とそうとして避けられて、勢い余って落ちたのかもしれませんし、あるいは、殺すつもりまではなかったがだんだんとエスカレートしていった結果、脅しのつもりがつい……なんて感じだったのかもしれません。細部はどうでもいいのです。重要なのは、一つ一つの要素とその流れです。
黒石が死んだとき、現場にクラスメイトが居合わせていたことは新聞の記事に書かれています。彼らは、黒石の死を事故とは説明できません。それを説明するには、自分たちが尾賀を虐めて、あまつさえ殺そうとしていたことを説明しなければならないからです。尾賀一人に罪をなすりつけることもできますが、その場合でも結局説明が必要になります。彼らは口裏を合わせたに違いありません。警察が彼らの説明を本気にしたかどうかはわかりませんが、事故でも事件でも、それを客観的に示す証拠がなければ警察も自殺と処理するしかありません。
そうして自殺として処理され、そのことが周囲に広まれば、次に人々は動機を知りたがろうとします。ぽっかりと空いた疑問の穴に、人々は近くに転がっていた動機としてはわかりやすいキーワードである『虐め』を当てはめましたのでしょう。実際、虐めが行われていた現場で起きたことですから、あながち嘘とも言えません。しかし学校側はそれを認めたくはなかった。絢郷さんの指摘通り、アンケートは捏造されたものでしょう。だが、一度虐めとして噂が広まってしまっては、人々の認識を変えることはなかなか難しいことです。
こうして複雑に思惑が絡み合った結果、「黒石愛美は虐めを苦に自殺した」という歪んだストーリーが完成したのだと思います。
告発を仕込んだ卒業文集を書いた「松澤寛之」という生徒は、現場に居合わせたクラスメイトの内の一人でしょう。改めて文集を読んでみると、責任転嫁が酷いですね。尾賀のせいで呪いが始まったんだ、と言わんばかりです。
さて、黒石は尾賀を殺そうとして死んだわけですから、『黒石の怨念』とは、尾賀絵美を殺すこと。その強い思いは、なんで自分だけが命を落とす羽目にという憎しみも合わさり、共犯者だった三年一組の生徒へと降りかかります。
そこで、三年一組の生徒はどうにかして呪いを解く方法を考えました。
校内新聞で紹介されていた除霊の方法を思い出してください。あれは、ラジオ番組で教えてもらったやり方を参考に、彼らが独自に考えたものでしょう。「言葉にして」、「何かに移して」、「祈れば」、呪いを鎮めることができる。
絢郷さんにも、覚えがないですか? 虐められている人間に触れられると「○○菌が移った~!」とか言ってばい菌扱いする虐め。構造的にはあれと同じです。三年一組の生徒は、呪いの対象が自分にならないよう、誰かの体に触れながら、この人間こそが尾賀絵美であると主張するかのように、「尾賀絵美」と声にする。それがいつしか音の響きが似ている「お帰り」へと変化したのでしょう。まあ、子供が独自に作ったおまじないですから、実際に効果があったかは微妙な所ですね。
これが、尾賀絵美が虐められていたと考えた根拠です。そして、ここまで説明すれば察しが付くでしょう。
「お母さん」もまた変化して伝わった言葉。もともとの呼び方は「尾賀さん」。つまり、黒い人影の正体は尾賀絵美だったのです。
調べたところ、彼女は夏休み明けから不登校になり、その後転校したそうです。転校した生徒もまた、卒業アルバムには載りません。尾賀絵美が不在だからこそ、黒石の怨念は他の三年一組の生徒へと降りかかったのでしょう。
現在の尾賀の消息は不明です。生きているのかすらわかっていません。素直に考えるなら、黒い人影はこの世ならざるものですから、尾賀はすでにこの世にはいないでしょう。しかし、生霊という可能性も残っています。私の直感では、今もまだ■■■に住んでいる気がします。気を付けてください。尾賀は事件について調べようとするものを襲っています。
最後に、気になったニュース記事を見つけたので送っておきます。それじゃあ、またなにか面白い話があれば連絡ください。今後ともよろしくお願いいたします。
烏帽子
お久しぶりです。元気ですか? 烏帽子です。
送っていただいた資料、全部読ませていただきました。すいません、返信がだいぶ遅くなってしまって。ちょっと家庭の事情が立て込んでまして、やると言っておきながら情報集めも少ししかできませんでした。代わりと言ってはなんですが、もらった資料をまとめて考察しておきました。かなりの長文になりましたが、読んでください。
まずは窺っていた話を整理しておきましょう。
発端は、とある中学生からの依頼でしたよね。LINEグループの中に「黒石愛美」という謎の女子生徒が紛れ込んでいた。調べてみると、その謎の人物は同じ中学校の元生徒で、在学中に駅で自殺しており、以降その駅では呪いのように次々と人が飛び込み自殺を行ってしまうという。おおよそこんな感じでしたよね。
さて、関連すると思われる怪奇現象は次の通りです。
1,黒い人影の目撃情報。
2,「行きたかった」という、音声や文字でのメッセージ。
3,駅での飛び込み自殺にみえる呪い。
以降での説明を簡単にするために、1の現象を『黒い影』、2・3の現象をまとめて『黒石の怨念』と呼ぶことにしましょう。
まず始めに私が気になったのは、LINEでのやり取りです。グループの中に紛れ込んだ黒石愛美は「私も行きたかった」と言ってます。彼女は修学旅行の直前に死んでますし、会話の流れを考えれば、「修学旅行に行きたかった」という意味での発言でしょう。でもこれって変ですよね。
写真に写りこんでいた黒い人影の正体が黒石愛美だとするならば、彼女は依頼人の中学生に憑りつく形で修学旅行について行っているわけですから、行っているのに行きたかったとは矛盾しています。
ただこれは解釈の仕方次第で、たとえば「当時のクラスメイトと行きたかった」と考えれば、彼女の発言も一応は筋が通ります。でもその解釈で考えてみても、やっぱり違和感が残るんですよ。
黒石は、「クラスメイトからの虐めを苦にして自殺した」って話でしたよね。でも普通、虐めてくる人たちと一緒に旅行に行きたいと思いますか? 私だったら全然思いません。
で、この矛盾が解消される解釈を色々と考えてみたんですけど、なかなか思い浮かびませんでした。そこで、無理矢理にでも解釈をつけようとするのではなく、逆につけられないものだと考えてみたんです。つまりどういうことかというと、『黒い影』と『黒石の怨念』は全く別の原因からなる現象なんじゃないのかって考えてみたんです。
で、確認してみると、どうもこの予想は当たってるようなんです。
たとえば、人身事故の記事についたコメントには、「背後には誰もいなかった」と書かれてます。ラジオの人生相談でも、「被害者は一人で飛び込んでいる」と言ってます。『黒石の怨念』が現れる瞬間には、黒い人影は登場していないんです。
一見するとLINEでの会話では、黒い人影の登場が引き金となって「2の現象」が起きているように見えますが、しかしよく確認すると、「行きたかった」という発言が出てきたのは、黒石愛美の話題が出た直後です。話題にすることが引き金となったのであって、『黒い人影』は無関係であるとわかります。もともと写真が撮られたのはだいぶ前のことですしね。
では『黒い人影』が『黒石の怨念』と別物であるとするならば、黒い人影の正体は何者で、その出現条件はなんなのでしょうか。
その目撃情報は、「修学旅行の写真」「Youtuberの動画」「校内新聞のインタビュー」の中に登場します。これら全員に共通するのは、「黒石愛美の死亡事件について調べていた人物の前に現れている」ってことです。これが出現の条件でしょう。
校内新聞のインタビューでは、「事件について調べようとするものはお母さんに見つかってはならない」と忠告されています。また某Youtuberは、黒い人影を目撃した直後に消息を絶っています。
これらを合わせて考えれば「黒い人影=お母さん」という図式が成り立ちますので、お母さんについて調べればいいということが分かります。
さて、お母さんとは一体誰のことを指しているのでしょうか?
その疑問はいったん脇に置いて、話を『黒石の怨念』に戻してみましょう。そもそもなぜ黒石愛美の死は呪いとなったのでしょうか。彼女は本当に、修学旅行に行きたがっていたのでしょうか?
先ほども言ったように、虐めてくる人たちと一緒に旅行に行きたいとは普通は思いません。じゃあ、その話自体が嘘で、誰かの作り話だったり、推測で話していたことが事実として広まったりしたものなのでしょうか。
私はそのどちらでもないと思っています。「2の現象」がそのいい証拠です。つまり、修学旅行に行きたい気持ちは偽りではなかった──。
もしもどこかに嘘が紛れ込んでいるとするならば、「黒石愛美が虐められていたこと」の方が嘘なのだと私は思います。いや、嘘という言い方はちょっと違いますね。事実が都合よくねじ曲げられて伝わった結果、というべきでしょうか。
そう考える根拠は、卒業アルバムの中にあります。
添付した写真を見てください。それは黒石愛美が亡くなる一月ほど前に撮られた写真です。どうですか。結構髪の毛が短くて、ボーイッシュな印象を受けますよね。
以前のメールの中で絢郷さんは、卒業アルバムの中のとある長髪の女子生徒のことを、黒石愛美として考えていましたよね。ですが彼女の髪の長さを考えると、黒石とは別人であることが分かります。一か月くらいではあそこまで髪は伸びません。
ではその女子生徒は誰かと言えば、とある卒業文集の中にも登場しましたね。そう、この生徒は「尾賀絵美」です。
さきほど私は、虐めに関して「事実が都合よくねじ曲げられて伝わった結果」だと言いましたが、この一連の怪奇現象の発端たる黒石愛美の死には、様々な事実が捻じ曲げられたり、隠されたりしていると思っています。どうしてこの女子生徒が尾賀絵美だと言えるのかはあとで説明します。
先に、端的に結論をいいます。「黒石愛美は虐められてなどいなかった。尾賀絵美こそが黒石によって虐められていた人間だった」。
突拍子もないと思いますか? でも聞いてください。私の想像はこうです。
黒石愛美は尾賀絵未のことを虐めていた。周囲の生徒はそれに加担していた。黒石は修学旅行を楽しみにしており、尾賀が参加することが不快だった。そこで黒石は尾賀に、修学旅行を休むように命令した。しかし、尾賀はそれを拒絶した。その反抗に、黒石は数名のクラスメイトとともに、尾賀を駅で殺害しようとする。ホームで二人はもみ合いになり、逆に黒石の方が線路へと落ちて轢かれてしまう。周囲の人間は、黒石の死を自殺と偽り、そこに至る経緯及び、虐めの存在を隠すことにした。
これが、おおよそ私が想像する経緯です。
もちろん、すべては憶測です。揉み合いになったかどうかはわかりません。もしかしたら突き落とそうとして避けられて、勢い余って落ちたのかもしれませんし、あるいは、殺すつもりまではなかったがだんだんとエスカレートしていった結果、脅しのつもりがつい……なんて感じだったのかもしれません。細部はどうでもいいのです。重要なのは、一つ一つの要素とその流れです。
黒石が死んだとき、現場にクラスメイトが居合わせていたことは新聞の記事に書かれています。彼らは、黒石の死を事故とは説明できません。それを説明するには、自分たちが尾賀を虐めて、あまつさえ殺そうとしていたことを説明しなければならないからです。尾賀一人に罪をなすりつけることもできますが、その場合でも結局説明が必要になります。彼らは口裏を合わせたに違いありません。警察が彼らの説明を本気にしたかどうかはわかりませんが、事故でも事件でも、それを客観的に示す証拠がなければ警察も自殺と処理するしかありません。
そうして自殺として処理され、そのことが周囲に広まれば、次に人々は動機を知りたがろうとします。ぽっかりと空いた疑問の穴に、人々は近くに転がっていた動機としてはわかりやすいキーワードである『虐め』を当てはめましたのでしょう。実際、虐めが行われていた現場で起きたことですから、あながち嘘とも言えません。しかし学校側はそれを認めたくはなかった。絢郷さんの指摘通り、アンケートは捏造されたものでしょう。だが、一度虐めとして噂が広まってしまっては、人々の認識を変えることはなかなか難しいことです。
こうして複雑に思惑が絡み合った結果、「黒石愛美は虐めを苦に自殺した」という歪んだストーリーが完成したのだと思います。
告発を仕込んだ卒業文集を書いた「松澤寛之」という生徒は、現場に居合わせたクラスメイトの内の一人でしょう。改めて文集を読んでみると、責任転嫁が酷いですね。尾賀のせいで呪いが始まったんだ、と言わんばかりです。
さて、黒石は尾賀を殺そうとして死んだわけですから、『黒石の怨念』とは、尾賀絵美を殺すこと。その強い思いは、なんで自分だけが命を落とす羽目にという憎しみも合わさり、共犯者だった三年一組の生徒へと降りかかります。
そこで、三年一組の生徒はどうにかして呪いを解く方法を考えました。
校内新聞で紹介されていた除霊の方法を思い出してください。あれは、ラジオ番組で教えてもらったやり方を参考に、彼らが独自に考えたものでしょう。「言葉にして」、「何かに移して」、「祈れば」、呪いを鎮めることができる。
絢郷さんにも、覚えがないですか? 虐められている人間に触れられると「○○菌が移った~!」とか言ってばい菌扱いする虐め。構造的にはあれと同じです。三年一組の生徒は、呪いの対象が自分にならないよう、誰かの体に触れながら、この人間こそが尾賀絵美であると主張するかのように、「尾賀絵美」と声にする。それがいつしか音の響きが似ている「お帰り」へと変化したのでしょう。まあ、子供が独自に作ったおまじないですから、実際に効果があったかは微妙な所ですね。
これが、尾賀絵美が虐められていたと考えた根拠です。そして、ここまで説明すれば察しが付くでしょう。
「お母さん」もまた変化して伝わった言葉。もともとの呼び方は「尾賀さん」。つまり、黒い人影の正体は尾賀絵美だったのです。
調べたところ、彼女は夏休み明けから不登校になり、その後転校したそうです。転校した生徒もまた、卒業アルバムには載りません。尾賀絵美が不在だからこそ、黒石の怨念は他の三年一組の生徒へと降りかかったのでしょう。
現在の尾賀の消息は不明です。生きているのかすらわかっていません。素直に考えるなら、黒い人影はこの世ならざるものですから、尾賀はすでにこの世にはいないでしょう。しかし、生霊という可能性も残っています。私の直感では、今もまだ■■■に住んでいる気がします。気を付けてください。尾賀は事件について調べようとするものを襲っています。
最後に、気になったニュース記事を見つけたので送っておきます。それじゃあ、またなにか面白い話があれば連絡ください。今後ともよろしくお願いいたします。
烏帽子
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