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二十五話
しおりを挟む「お待たせしちゃってごめんなさいね」
そう言いながら現れたのは、30歳代くらいで少しふっくらした体型に、黒のゆるりとしたドレスを着て、長い赤髪をエレガントに纏めた感じの落ち着いた雰囲気の女性だった。
俺はすくっと立ち上がると一礼した。
メリヌも俺を真似て立ち上がるとペコリと頭を下げる。
執事はいつの間にか机の横にいて、新しくお茶を入れ直している。
「サリーヌ、ここはもういいので隣の部屋をお願い」
「はい、分かりましたマダム」
「どーぞ」という仕事をしていた女性はサリーヌと言う名前らしい。
扉の前でくるりと振り返り一礼したサリーヌは「どーぞ」というだけの仕事をしに隣の部屋へ……。
あれを一日中やっているのだろうか……。
高飛車なギルド員に加えて緩い仕事をするギルド員……。
商業ギルドというのは本店に来るとみんなあんな感じなのだろうか。
魔森の街のギルド本店も行くべきだったかな……?
などと詰まらない事を考えていたら、いつの間にか目の前のソファーに座っていたマダムに気が付き、急いで意識を現実に戻し俺とメリヌもソファーに腰掛ける。
「ご紹介が遅れましたね、私の名前はキャリー・マトリカーサスと申します。 どうぞ気軽にマダムキャリーとお呼びください。 そして商業ギルドの副ギルドマスターをしております」
そう言うと座ったまま軽く会釈する。
「僕は【お肉食べたい】パーティで荷物持ちをしているタクミと言います、こちらはパーティリーダーのメリヌです、よろしくお願いします」
「まぁ【お肉食べたい】がパーティ名なんですの? ユニークですわねぇオホホホホ」
と、軽く笑われる。
笑い終わった所で本題に入らせてもらおう。
「実は僕達は樵ではないのですが、木を切って材木を大量に集めたいのです、何処か切っても問題にならない様な場所はございませんか?」
「あら? 樵じゃないの? セイバス!あなたちゃんと確認しなかったの? だめじゃないのちゃんと聞かなきゃ!」
そう言って執事のセイバスを軽く叱る。
「申し訳ございませんマダムキャリー」
いつの間にかマダムの後ろに控えていた執事が頭を下げる。
「まぁいいわ」そういうとマダムはため息を一つ吐くとこちらに向き直ると眉根をキリリと上げて少し睨まれた。
「それで? そんな大量の木を切り倒して何をしたいのか聞いてもよろしいかしら?」
「実は僕達は旅をしており、テント代わりに小屋を持ち歩いてるんです。で、その小屋を少し広げたいと思いまして……」
そう説明し始めると、目を大きく開きながらマダムは言う
「あなたそんな大きなアイテムバッグを持ち歩いてるんですの? それとも小さい小屋なのかしら? ちょっとその小屋とやらを見せてくれるかしら?」
そう言うので天井の高さと部屋の広さとチラリと見たあと
「ここでは少し狭いので其方のテラスでも構いませんか?」
そういうと執事がテラスまでの扉を開けて待機していた。
(どんなスキルを持ったらそんなに速く動けるんだろう)と、思った。
そして促されるままテラスへと出て、アイテムバッグから小屋を出した。
高さは2メートルくらいで、部屋の中は四畳半くらいある。
軒下も地面に直接置かない為に四方に脚が付いている。
「まぁまぁ!中々大きい物なのねぇ!」
そういうとグルグルと小屋の周りを歩き回ったり、部屋の中を覗いたりと大はしゃぎだった。
散々見て回ったあと満足したのか部屋へと戻っていくので、小屋をアイテムバッグに仕舞うと執事に軽く会釈して僕達も部屋へと戻る。
「ありがとね~。なかなか楽しかったわ!」
「それで? あの小屋をどう増築する予定なの?」
興味津々といった顔で見てくるので、改造予定の構想をなるべく細かく伝える
「二階を付けたいと思いまして……それと階段と……竈と出窓とそれからー……」
と、15分位だろうか? 延々と理想の小屋造りを語った。
「まぁ凄いのね! 出来上がったら呼びに来てね! 楽しみにしてるわ!」
どうやら快諾してくれた様だ。
「それでですねマダムキャリー? どの辺なら……」
と、言い切る前に被せるようにマダムは喋りだした。
「実は最近人も増えてきたから開拓したい場所はあるのよ、でもそこは樵さんたちにお願いしてるので切らせる訳にはいかないのね? あの方達も生活があるので」
少し雲行きが怪しくなってきた……
「でもね? 一本だけ大きな枯れ木があってね? そこを切るならお願いするわ!」
そういうとセイバスさんを見た。
すると彼の手の中から地図が現れた。
指輪型のアイテムバッグなのかもしれないなぁと、マダムに地図を手渡すセイバスさんを見ると、見ていた事に気付いたのかニコリと笑って頷かれた。
できる執事というのは心も読むらしい……。
マダムが机に地図を広げる。
机にあったティーカップとお茶菓子がいつの間にか消えていた。
もう気にするだけ無駄かと思い直し、地図を見る。
「ほらここがこの街で、開拓してる場所はココね、で……問題の枯れ木がこの山の上にあるのよ」
そう指差した場所は昨日桃魔森猪を狩った場所の川を挟んだ向かい側だった。
なだらかな丘陵地で確かに樵も見た気がする。
「では一度この木を見てから伐採する準備に取り掛かりますね」
「切るところを見たかったけど私も仕事があるのよね……残念だわ」
本当に心底残念そうなマダムはため息を吐くと、それでは切り倒した跡で報告しに来るようにと告げて次の依頼主に会いに隣の部屋へと消えた。
帰りしなお茶菓子は持って帰っても構いませんよ? と、いうセイバスさんに断りの言葉を告げる。
口に合わなかったですか?と、言うので苦笑いで返すと、セイバスさんもあまり好きではなかったらしく、貴族の間ではこれが一番売れているが、何故なのか理解に苦しむと言って笑っていた。
美味しいお菓子は好きなのですが……と言うので、今度来るときに美味しい物を作って持ってきますと伝え、商業ギルド本店を跡にした。
そしてそのまま地図で示された場所へと向かう。
河原を超えて丘陵地を抜け、高台の一番上に鎮座する枯れ木を見付けたが、これがまたやたらデカかった。
中は空洞になっているのか、窪みから中が少し見えた。
まるで熊でも住んでるんじゃないか?
そこまで空洞は広かったが、中の腐った部分を削らないと駄目かもしれない。
枯れ木の周りをぐるっと一周すると8畳くらいありそうで、樵が切ろうとした跡もあったが、諦めたようだ。
高さは五メートルくらいだろうか、枝打ちはされてるので後は幹を切れば……もしかして根っこごと取れるか?とも思ったが、土を召喚するには水晶の粉が足りないので諦める。
さて、どーしたものかと考えていたが、メリヌの腹の虫が鳴り出したので昼飯にしようと昨日作った燻製肉を一頭分取り出す。
サクサクと輪切りにしながら肉を切っていく。
ふと、手を止めて思いついた事があったので出来るかどうか想像し始めた。が、涎を流すメリヌの腹から解決する事にした。
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