Shine Apple

あるちゃいる

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二十六話

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 昼飯の燻製桃肉のペペロンチーノをたっぷり食べたメリヌが昼寝中に先程思い付いた魔法を試す。

 俺の魔力はshine Appleを大量に食べた事もあり、かなり豊富だったお陰で一度の指パッチンで宿屋中のランタンに火を灯す事ができた。
 最終的にはランタンどころか竈から水汲みや薪割りも細かくイメージしてから一発で出来るまでに成っていた。
 問題を上げるなら威力だろうか……。
 火の魔法は使えてもマッチ一本分の火力だったから、竈に火を灯しても燃え上がるまで時間が掛かってしまう。
 水汲みに関しては浮遊魔法と転移魔法の複合だったので、一度に水瓶にためる事は可能だった。水を浮かせて水瓶に転移させるのだ。そうする事で魔力を維持しながら浮遊させることが無くなったので威力が弱くても運べる様に成ったのだ。
 薪割りは風の魔法で風を分子レベルで木の隙間から中に送り込み、火の魔法で温めて膨張させると割れた。

 殆どの魔法が生活魔法を複合させて使ってきた。

 木を切るときも水魔法でコップ一杯分の水を極限まで薄く潰して風魔法で丸鋸の様に回して切っていた。

 と言うことは、一度に丸鋸を木の周りに浮かべて切れば太い幹も切れるんじゃないかと思ったのだ。

 魔法が消えたら直ぐに復活させれば多分継続して切れる筈だ。
 真ん中は空洞になってるので周りだけ切ればイケるような気がした。

 枯れた大木の前に立つと目を瞑り想像する。切れた後のイメージでは無く、切ってる最中のイメージを保つ。
 そのまま維持しながら眼下に流れる川の水を利用してコップ一杯分を大量に浮かべて薄くすると全てを高速回転させて切りたい幹を輪になる様に並べると少しづつ切り始める。

 シュルルルルと木が削れる音と所々でパシャパシャと崩れる水の丸鋸を復元させながら大木の根本を削る。

 大量の魔力がガンガン減っていくが構うことなく削り続け、10分後

 「「「バキバキバキ……」」」っと鈍い音が響くと五メートルくらいあった大木が反対側へと倒れた。

 大木が倒れたと同時に俺の魔力も残り僅かになり、膝を付く。
 大量の汗とハァハァという息遣いとメリヌの寝言だけが辺りに響いた。





 

 メリヌが寝る横で俺も横になって眠っていると、河原で休んでいた樵たちが山の上に響いた重低音といつも見上げていた山の上の大木が無いことに気づき、集まってきた様だ。

 ガヤガヤとうるさいなぁと目を開けると切り倒された大木と切り株に登ったりしてる人達が目に入る。

 起き上がる俺に気が付いた樵の一人が俺の方に来ると

 「アンちゃんがアレを倒したのかい?」

 そう聞くので

 「はいそーですよ……あ、切り倒した大木は貰うことに成ってるので持って行かないで下さいね?」 

 そう言いながら懐から許可書の紙を見せる。

 「ああ、そりゃいーんだけどよ……どうやったら切れるんだ? アンちゃん樵じゃねーんだろ?」

 そう不思議がるので、少し寝たお陰で魔力も少し回復してたので水玉を薄く伸ばした丸鋸タイプのノコギリを再現して見せた。

 「これで切れるのか?」

 と、まだ疑うのですぐ側のそんなに太くない木をサクッと切ってやった。

 いつの間にか放出出来るように成ってた事に今気付き自分でも驚いた。

 (飛ばせるなら今度狩りに行ってみよう!)

 などと次の狩りを想像してニヤニヤしていたら、樵のおっちゃんに不気味だから止めろと注意された。

 「すげぇけど人に向かってやるなよ? 盗賊とか獣ならいーけどよ……」

 少し怖変わらせてしまったようで、反省する。

 (ニタリと笑う顔はどうやら師匠譲りの様だ……直さなくては……)

 久し振りに思い出した師匠のニヤ顔を忘れるべく頭を振ると、立上がって大木の回収に向かう。

 人垣を掻き分けてお目当ての大木の前に立つと背中に背負ってるアイテムバッグにスルスルと放り込んだ。

 出入り口が狭いからといっても大きさは関係なく容量が足りれば入るのがアイテムバッグの強みだった。

 かと言って、長さ五メートルで幹の太さが畳8畳以上有りそうな大木がスルスルと入っていく様子を見ていた人々は口を開け目を大きく開きながら静まり返り、全て入ってしまってからどよめいた。

 「どんだけ入んだそのアイテムバッグ!
国宝か⁉」
 とか「アンちゃん荷物持ちだったんか⁉」

 などと、そこら中から声が上がる。

 ザワザワガヤガヤと騒ぐ声で目が覚めたのかメリヌが起きてきた。

 「んむーっ! うるさい!」

 と一声叫ぶと背中の棍棒を手に取り構えだした。

 まだ寝ぼけているのか、騒ぐ樵たちに向かって突っ込んできた。

 ボカボカと叩き付ける音とおっさんたちの悲鳴が上がり、吹き飛ばされていく樵達が宙に舞う。

 「ば、バカやめろやめろ!」

 と、止める俺と止められながらもブンブンと棍棒を振り回すメリヌと倒れふす樵達とその場は騒然となっていった。

 頭をバコッと殴ったら目が覚めたのか
 俺を振り返り「痛い……おはよ……痛い」
と、頭を抑えながらブツブツ言ってるメリヌを放り投げて、倒れた樵達を起こしたり怪我をしてないか調べたり、平謝りを繰り返したりと大変な目にあった。

 樵達は全身が筋肉で出来ていた様で誰も擦り傷さえなかったし

 「元気な嬢ちゃんだなー」などと言って笑っていた。

 それでも暴力は暴力なので昨日作った燻製肉を全て出してお詫びにしてもらった。

 一口噛ってみたオジさんがこんな美味いもの貰ったら貰いすぎだからとさっきまで集めていた丸太を数本置いてった。

 真ん中が開いて輪っかの様になってる根っこは後日取りに来るのかと聞いてみる。
 後日なら手伝いに来ようと思って声を掛けたのだが、それはそのままにして机として使うという。

 ここは高台にあるので、砦みたいな建物を建てるらしい。
 この切り株も会議室の机に丁度よいから残して使うとか言っていた。

 「メリヌ」
 「んー?」
 「帰りに桃魔森猪狩りに行こう」
 「昨日結構獲ったよね? 今から捕るのめんどくさい……」
 「昨日作った燻製肉はお前が暴れたお詫びに全部あげたから作らないと明日の朝飯は野菜だけになるぞ?」
 「う……分かった……頑張る」

 自分の起こした事がいけないことだったと反省してる様なのでホッと胸をなでおろす。
 ここで素直にならないなら晩飯抜きの罰を与えてやろうと思ってたからホッとした。

 泣きそうな顔でお腹を鳴らすメリヌを見るのは嫌だったから……

 「んじゃ日も暮れそうだから急ぐぞ!」
 「うん!」

 山を駆け下り河原に出ると、プヒプヒ鳴く桃魔森猪を親の敵の様に、狩りまくる。

 小一時間程狩っていると小山が2つ出来ていた。軽く昨日の倍は狩った気がする。

 街に帰ると桃魔森猪を商業ギルドの支店に半分売り、残りの半分を昨晩泊まった空き地で燻製にする。

 今夜も野宿だが仕方ない。
 小屋を出して晩飯の準備に取り掛かっていると、昨日の夜に集まってきていた近所の人等も集まってきて、再び始まった宴会。
 メリヌの失敗談を肴に呑んで食べてと楽しい夜はフケていった。
 
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