Shine Apple

あるちゃいる

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二十八話

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 山の麓に着いた俺は辺りをキョロキョロして鹿か狼が居ないか探す。
 大体獣は警戒心が強いので麓には居ないが、たまに山を降りてくる個体も居るので探してみたが、やはり居ない様だ。

 やっぱり山登ろうかっと思っていると、俺の跡をついてきた五人組の一人が支持を出す。

 「よし! 二人一組で桃魔森猪を探すぞ! 見付けたら二人で対処しようとするな! 必ずもう二人が来るまで待機しろ!」

 そう言うと二人づつに別れてには居ない桃魔森猪を探し始めた。

 黒髪剣士と魔法使いは東側へ
 青髪とリュック女は北側へ
 それぞれキョロキョロしながら歩き去った。
 俺は呆れて首をフリフリしたあと南側にある山道さんどうへ向かう。
 その後ろからガチャガチャ鎧を鳴らしながら付いてくる人に声をかける。

 「離れて歩いてくれない? 仲間じゃないんだから……それにそう音を出されたら獲物に警戒されちゃうでしょ?」

 立ち止まり振り返りながらフルアーマーさんに言うと
 「え……いや……でも……二人一組……」
 と、少し高い声で返答してきた。
 「いやいや、は二人一組だろうけどさ? 俺はソロで狼と鹿を狩りに来てんのよ」
 「え……荷物持ちなのに狩り出来るの?」
 「出来ないなら山になんて来ないだろ?」
 「あ……いや、でも桃魔森猪探しは?」
 「それも君達の仕事だろ? それに山になんて桃魔森猪は居ないぞ? 西側の国境から流れて来るんだから西側にしか棲息してないよ?」
 「えっ! な、なんで黙ってたのよ!」
 「なんで言う必要があんだよ……そもそも、君達も冒険者だろう? 棲息域くらい下調べするべきじゃないのか?」

 咎める様に言うと押し黙るフルアーマー
俺はヤレヤレと両手を上げて外国人の様に呆れてますアピールをすると山の奥を目指して歩き出す。

 その後をガチャガチャ言わせながら尚も付いてくるフルアーマーを振り返り

 「付いてくんなっての!」
 「話があります!」
 「なんの話があんだよ……こっちは仕事したいんですけど?」
 「今から西側を目指しても50匹は狩れないし、明け方まで狩りをしても持って帰れない! だから君のバッグを売ってくれない?」
 「寝言は寝て言うもんだぜ?」

 そう言うと手でシッシッと追い払い無視して歩き出す。

 するとフルアーマーもガチャガチャ言わせながら付いてくる。

 「……あのさぁ……」
 「金なら払う! いや、今は無いが……50匹狩れば金が入り、手持ちと合わせればっ!」

 50匹分売ればアイテムバッグは買えるが一番安い奴だろう。
 それに、容量は一立方メートル有るか無いかくらいだ。
 そこに手持ちが合わさったとしても金貨数枚……手持ちの金額にも寄るが、今現在一番小さい奴も買えないとなると手持ちも少ないのだろうと予測出来る。

 どうもこの五人は相場というか世情に疎い様だ……。

 俺のバッグは魔女から貰った時で6畳部屋くらいの容量だ、一般的な荷物持ちが買えるのでそこそこ高いくらいだ。
 それでも金貨30枚くらいはする。
 中古でも20枚前後だ。

 俺の魔力で今はネズミーシー位の容量になってる俺のバッグは大金貨じゃ買えないし、大陸金貨を使ってようやく交渉のテーブルに付けるくらいだ。
 つまり国宝級のバッグを買い取ろうとしてる訳だ。

 「俺は一応荷物持ちを生業としてるのにバッグを売るわけねーだろ?」
 容量の話をしたところで理解はされないので断ると盾を差し出してきた。

 物々交換でもしよう言うのだろうか……

 「この盾を見て! 盾の表面に紋章があるだろ! よく見て!」

 それ紋章だったのかよ!っと突っ込みたくなるほど目立つ色で描かれた模様。
 てっきりヘイトを稼ぎ易い様に描いてあるのかと思ってた。

 「で? だからなに?」
 そう聞き返すと怒り出した。

 「我々は名門貴族の関係者だ! この紋章も知らぬとは貴様それでもこの国の者なのか‼」
 「隣の国から一昨日くらいに来た。 生まれも育ちも向こうだよ」

 そう言うとまた押し黙った。

 (っていうか関係者って……身内でもねーのかよ……)

 これはあれだ、消火器売りに来た消防署の方から来た人が、身分を問われた時に言うセリフに使うアレだ。

 「関係者です!」

 消防って言っちゃうと名称詐欺になっちゃうからな(笑)普通の人なら関係者って何やねん!って突っ込むところだが騙される人は信じちゃうんだよな……冷静大事。

 フルアーマーが言った言葉に堪え切れず、笑いが顔に出たのかついついニヤニヤしていると

 「何故笑う! 無礼であろう!」
 「無礼はそっちだろ?」
 「なんだと!」
 「それにも気付いてないのか……あんたはまともな人だと思っていたが違ったらしいな……付き合ってられんのでここ迄だ。お仲間のところへ帰りな」

 そう言って山奥を目指して歩き出す。
 その後をカチャカチャ鳴らす音がする

 「おい! 付いてくるなって言ってんだろ?」

 そうきつく言いながら振り返ると、少し様子が違う事に気付く。
 フルアーマーをカチャカチャ言わせながら小刻みに震えて居るようだ。
 「なんだ? どうし……」

 どうした?っと言い切る前に遠吠えが聴こえる。
 かなり近い。

 震えながら側面を指差すフルアーマーに釣られて山道横を見上げると、20頭くらいの狼と一回りでかい一頭のボスらしい奴等が此方を見てた。
 どうやら響いた音に誘われた群れらしい。

 「あわわわ……」と腰をかしたフルアーマーは放っといて、昨日使った風水合成魔法の気○斬もどきをたくさん出して浮かべると、こちらに駆け出して来た狼の首を目掛けて放つ。

 ボスを残して全ての狼の首がスパン!と飛んで、血飛沫が辺りを染める。

 舞いちる血飛沫がフルアーマーにも見えた様で固まったまま動かない。
 っと思ったら此方を見て固まってるようだった。

 フルフェイスのマスクは何処を見てるか分からないから困る。

 群れを一瞬で狩られて怒ったのか最後に残ってたボスがひとっ飛びで俺の前に来ると、ぐるぐると俺達を中心にして廻りながら睨む。

 中々の迫力だがビクビクともしないで睨み返す。

 ふいにガシャッと音がした。
 その音を合図にボス狼が俺に飛び掛って来る。が、サッと避けてその首目掛けて残りの気○斬を全弾放つ。

 スパパっと前後左右から切られた首が飛び、その血がフルアーマーへと降り注ぐ。

 さながらバケツの水をかけられた猫の様に飛び起きると
 「何をする!」
 と、叫んだあと頭から被った赤い血に気付いて再び気を失った。

 「フルアーマー着てるのは怖がりだからとかじゃないよな?」

 話しかけたが返事は無い。どうやら完全に寝ているようだ。

 ふぅと溜息を吐いたあと、血抜きと内臓を出す為、狩った狼を一か所に集めて枝に尻尾を結んでぶら下げる。

 切られた首から血が抜けていく横で、土魔法で開けた穴にはらわたを捨てる。
 持って帰っても良いが、鹿も狩る予定だったので今回は捨てた。腸は足が早いので食っても腹を壊すからだ。

 全頭の腸を捨て終わると日が傾いていた。
 数えながら捌いていたが30頭近く居たようで、完全に報告案件だった。
 普通なら狩猟ギルドや冒険者ギルドに傭兵ギルドへ声を掛けて、レイドパーティで狩りをしなくちゃいけないレベルの群れだった。

 「何処だよ報告義務怠ったの……あ~、もう鹿は狩れねーなこれ……仕方ない、鹿肉で焼肉は諦めるか……」

 頭上を見上げると日は傾き、もう数刻経てば日が落ちるだろう。

 捌くのが速くなったと言っても手動なので、時間が掛かってしまった様だ。

 召喚が使えたら血と内臓を捌かず出せるのにと悔やむ。

 そろそろ結晶を買うか取りに行くかしないとなぁ……と、思いながら捌いた狼を全てバッグに入れると、山道の端っこに横たわらせて寝かせて置いたフルアーマーを起こしに向かった。
 

 
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