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三十七話
しおりを挟む「ほんっとうにあんた(お前)って非常識よね(だよな)!」
城壁から数万発の気○斬もどきを放出し、その一撃で三百匹の魔獣を切り刻んだ。
残党刈りとして斥候部隊を残し、重歩兵隊と重戦士隊は下がらせて待機させてる。
俺以外の魔法使い達と弓隊は城壁の上に残し、山から再び魔獣が来るかも知れないからと警戒にあたらせた。
俺は城門付近に建てられた防衛隊本部の隊長を務める、公爵様と各ギルドマスターが居る部屋に呼び出され、部屋に入った瞬間プリムローザとレギンスに常識が無いと吐き捨てる様に言われる。
「いやぁ……あんなに脆いとは思っていなかったもんで……力一杯撃っただけなんですけどね?」
頭を掻きながら言い訳をすると俺の目の前に座り、鋭い目つきで公爵様に睨まれる。
「お主の力は異常なんじゃよ、まさか自覚しておらんのか? 師匠に言われなかったのか?」
「いやぁ師匠には脆弱で覚えの悪い弟子と言われてましたし、二年位で弟子を辞めさせられましたよ?」
そう言うと信じられない様で、溜息を吐かれる。
「そもそも主の師匠は誰なんじゃ? 確か魔森の街から来たんじゃったよな?」
「ああ、言ってませんでしたっけ? ヨネですよヨネ、魔女ヨネ」
「「「は?」」」
何故か目を丸くさせて驚かれた。
そんなに有名人だったのか? あの守銭奴……。あっちの街ではそれなりだったけど……と、不思議に思っていると。
「おまえ……魔森の盟主でもあり、この大陸の守護神でもある、あの大魔導師ヨネ様の弟子だったのか⁉」
「それならあの非常識な威力も頷けるわね!」
何に納得出来たのか分からなかったがプリムローザはウンウンと頷いているし、心なしか頬が紅葉している。
(大魔導師ってなんだろ? 初耳だな……大魔女とは聞いていたが……それにこの大陸の守護神?? 何それ(笑)それにしても、魔女の名前が出た途端プリムローザのあの瞳の輝きはなんだ? まさかファンか何かなのか? 金に汚いあの婆ぁの? 趣味悪いな……)
そんな事を考えていると
「だからあの、変な召喚術使えたのか!」
と、レギンスも心なしか頬を紅葉させて頷いていた。
「そう言うことは早めに言わぬか! 馬鹿者め! 危うく大魔法師見習いを冒険者なんかにするところであったわ! 貴様やはり明日から公爵家につかえよ!」
戦力ゲット! みたいな顔で公爵まで悪ノリし始めたので即答する。
「謹んでお断りさせていただきます!」
「是が非でも連れて行く!」
「無理矢理連れて行くならこの国を出ます!」
「大魔導師ヨネ様の弟子を無下に扱うなどと、そんな不義理は出来る筈が無いだろうが!」
「だから弟子辞めさせられたんですよ! それに魔女ヨネから教わったのは生活魔法と食料しか出せない召喚術だけです!」
そう言うと、キョトンとした顔で俺を見る三人。
「せ、生活魔法だけ?」
信じられないと言う顔でプリムローザが呟くので言い返す。
「そうですって言ってるでしょ!」
「じ、じゃあ装備を出したあの変な召喚術は?」と、レギンスも言うので
「オリジナルです!」
「中庭で大木の中を削ってた変な土魔法は?」と、公爵まで聞いてくるので
「オリジナル!」
「スタンピードを一人で討ち滅ぼした大魔法も?」と、三人揃ってしつこく言うもんだから段々声量が大きくなってしまい
「「オリジナルですってば!」」
と、つい大きな声で怒鳴ってしまった。
実はタクミの魔力は本人でも気付かない間に上がっていた。
何本も木を切ったり、宿屋中のランプどころか竈や暖炉にまで火を灯したり、召喚術で元居た世界の食べ物を何度も出すうちに上がっていたのだ。
当然威力も上がっていたので、できた事だった。
しかしそれを自覚出来るほど自惚れても居なかった。
急に強くなった訳でも無かったため、無自覚のまま過ごしてきた。
そして水晶を買い足す時間が無かったので、普通に召喚術を使えなかったタクミは、少しでも効率良く混ぜようと水晶のパウダー化と混ぜる水を井戸へと取りに行くのを面倒くさがった事で出来た魔力水を用いた触媒方法。
偶然に偶然が重なり出来たのが、新魔法陣だった。
教わった召喚術は野菜等を出すだけの陣で、丸く円を書いて真ん中に三角形を描いた簡単な物だった。
その魔法陣は一度野菜を出してしまうと消えてしまう仕様になっていた。
初日から忙しかったので何度も出しては消えてを繰り返すのにウンザリしたが、他のやり方を知らなかったので、消えそうになってる魔法陣の上から書き足す用になった。
消える前に円を描いたお陰で二重丸になった。
真ん中に描く三角形も重なる事で六芒星が出来た。
そして偶然出来たのが、二重丸の中に六芒星を描き、その六芒星の中が三角形になる様に描く事で中々消えない魔法陣になったのだ。
そのお陰で、一種類しか出せなかった食品がすべての三角形から出てくるようになった。
それでも不安定だった為に、別の場所の三角形から出てくる事もあった為、イライラしたタクミは走り書きのように漢字と英文で二重丸の間の空白に文字を書いたのだ、その文字は
【我の望む全ての物よ此処に集まれPut everything I want here】
だった。
英文を混ぜたのは本当に偶然で、ほぼ無意識だった。
それを召喚術を使うのにいちいち書くのが面倒くさかったし、時間短縮の為に編み出したのが固定魔法だった。
イメージした魔法陣に名称を付けてスタンプの様に地面や机に貼り付けるものだ。
そのお陰で魔転車のタイヤも出せる様になったのだった。
全ては生活魔法しか教わらなかったお陰だったかもしれない。
もしかしたら魔女は、教えない事で自ら作り出す力を付けさせたかったのかも知れない。
魔女と縁を切ってしまったタクミにはもう確かめる事は出来ないが……。
(うーん。 しかし、魔道士様はなぜ手放したのだろうかの……)
捨てられたと言い張るタクミを見ながら公爵は考えた。
(もしかしてじゃが……後継者にするためだったのか? だとするとヨネ様はもう。いや……亡くなったのならこの国にも噂くらいは流れるはずじゃ……確か文献に初代様の後継者になった日、魔素が少し溢れたと書いてあったような……そして、今回の魔素溜まりを考えると……うーん分からんのぅ……これは確認しないと分からんの)
考えても分からない事なら調べれば良いのだと思った公爵は、すくっと立ち上がるとマスター達と団欒してるタクミに声をかけた。
「タクミよ、お主一度魔森の街へと向かい、魔道士様の様子を見てきてくれぬか?」
「は? 嫌ですよ何言ってんですか? あの婆ぁから逃げる為にこの国に来たと今、言ったじゃないですか!」
魔女との今までの話を細かく聞いてきていたプリムローザとレギンスに詳細を言って聞かせ、この国に来た経緯を話して聞かせていたタクミは、即答で断った。
「馬鹿者! これは正式な依頼であり、命令じゃ! 拒否はさせん!」
威圧を込めながら言う公爵の真剣な眼差しに気が付いたタクミは、何かあると感じ渋々頷いた。
頷いたタクミに安堵した公爵は頭によぎった予想が外れる事を祈った。
そして次の日の朝、タクミはメリヌを連れて魔法陣の真ん中に魔力車を置き、タイヤとサスペンションを装備させると、口をポカンと開けて呆れる三人に手を振りながら魔森の街へと走った。
「なぁ……公爵様」
「なんじゃレギンスよ」
「あいつが帰ってこの一件が落ち着いたらアイツに学園へ通わせないか?」
「学園にか? 何故じゃ?」
「常識と歴史と学ばせた方が良くないかと思ってよ……です」
「お主もそう思ったか……ワシもじゃ。 それにどの道一度王城のてっぺんに連れて行く事になるかもしれんしの」
そう言って朝霧に包まれた山々を見る。
「予想が外れるといいんじゃがなぁ……」
「予想?」
と、重ねる様に聞くプリムローザとレギンスの質問には答えずに、昨晩から止まらぬ額の冷や汗を、拭いながら山を眺めるのだった。
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