Shine Apple

あるちゃいる

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三十八話

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 魔森の街へと向かってる途中の街道で物々しい集団とすれ違った。

 先頭の馬に乗っていた人に止められたタクミ達は端によって魔力車を止めると窓から顔を出す。

 すると、先頭の騎士と気品が体中から溢れ出ている様な青年が馬に乗って近付いてきて言う。

 「その馬車はお前のか? 随分魔力が強いのだな!我は王国騎士だ、お前は冒険者だろう? 山裾の街で魔素溜まりが発生したのを知っているか? 冒険者なら戦うべきだろう? 我らも魔獣を叩きに行くから、安心してお主も来い!」

 「申し訳ありません、マトリカーサス公爵の依頼で魔森の街へ魔女ヨネを尋ねる様にと仰せつかっておりますので行けません。 これがその依頼書です」

 そう言うと羊皮紙を開いて見せる。

 それを確認した騎士は馬を反対側へ向けて俺達に先に行けと言って全軍に横に避けろと叫びながら馬に乗って駆け出した。

 「すまぬな、我が騎士の無礼を許せ」

 そう言って青年は先頭に戻っていった。
 青年が着ていた鎧に公爵の鎧と似たような紋章があったが、此方から名乗るのも違うと思ってペコリと頭を下げた。

 列を横にずらせと叫ぶ騎馬の直ぐ後ろを走り、兵士達の横を通り過ぎる。

 魔力車は相当珍しいのか、どよめく声や口笛を吹く冒険者っぽい奴から手を振られる。
 気恥ずかしいのか、タクミは顔を赤らめながら少しスピードを上げた。

 通り過ぎる冒険者の一団の横をすり抜けるたびに、メリヌがタクミに話し掛ける。

 「今の赤い鎧を装備してるのは王国のA級冒険者パーティで赤龍の牙だよ、山に行くのかな?」
 とか
 「あっ! あっちの女性達はアマゾネス部隊で王国の遊撃隊だよ! 凄い! 初めて見たよ!」と、大はしゃぎだ。

 魔力車の前を走る騎馬は、最後尾で止まると、敬礼しながらタクミ達を見送った。

 魔力車の窓からメリヌが真似して敬礼して返すと、騎士は踵を返して颯爽と馬を走らせ先頭へと戻っていった。

 「何だか戦争みたいだね」
 「まぁ、この国では魔素溜まりなんて珍しいからだろ? 小さいとはいえまだ消えて無いだろうしな」
 「魔森の街では住処の隣がそうだったから余りピンと来ないけどね」
 「それな。 緊張感とか余り無いしな」
 「うんうん」

 離れていく王国からの援軍の後ろ姿を眺めながらそんな事を話していた。


 魔森の街では日常に魔素の渦巻く森があった為に魔獣は意外と身近な存在だった。
 黒魔森猪と戦いに行く冒険者も多かったので、少しこの国の人達と温度差があるのは仕方ないことだろう。

 だが、余りにも緊張感が無かったのかタクミは顔をパチンと叩き気合を入れ直すと、再び魔森の街へと魔力車を飛ばした。

 「やっぱり魔転車とは違うねぇ♪」

 窓から顔を出して顔を風に当てながら気持ちよさそうにメリヌが言う。

 まぁ移動の間はいっかとタクミも肩の力を抜いて、入ってくる風を楽しみながら走る。
 もうあと半時もしないうちに国境の砦へと着くだろう。

 タクミの緊張は山に発生した魔獣のおかげではなく、魔女ヨネの存在だった。

 「会いたくないけど仕方ないよな~……はぁ……」と呟く。

 (魔女ヨネから逃げて来たのに直ぐに会いに戻る羽目になるとはなぁ)っと、考えるだけで気が重くなっていくタクミだった。





 一方その頃、山裾の街では城壁の上に一部の弓隊を残し、重戦士と遊撃隊と斥候隊に魔法使いの部隊を連れて山へと向かう冒険者ギルドマスターのプリムローザと狩猟ギルドマスターのレギンスに商業ギルドマスターのダイナス・クロスロードを先頭に、山奥の窪地を目指していた。

 重戦士隊隊長はプリムローザ
 斥候と弓隊の遊撃部隊隊長はレギンス
 魔法部隊隊長はダイナス・クロスロードがそれぞれ指揮を取る。

 「しかし大丈夫なのか? ダイナス?」
 「何がだ?」
 「実戦なんてマスター就任以来だろ?」
 「ふん、舐めるなよ?脳筋女 俺を誰だと思ってんだ? 元A級冒険者だぜ?今でもお前より強いわ」
 「なんだとこの野郎!」
 「ヤメロヤメロ! 喧嘩してんな馬鹿タレ! ったくお前らは相変わらずだな……」

 ダイナスとレギンスは昔、冒険者パーティを組んでいた。

 リーダーで盾役のレギンス
 魔法使いのダイナスの二人パーティで、荷物持ち兼助っ人に冒険者ギルドの職員だったプリムローザを連れて依頼を受けていた。

 その時からプリムローザとダイナスは喧嘩ばかりだった。

 王国魔法師を辞めて冒険者になったダイナスはプライドが高かったし、魔法には絶対の自信があった為、狩りの仕方で毎回プリムローザに注意されては怒られていた。

 冒険者としての師匠がプリムローザなのが今でも気に入らないのか、引退して商人に転職した後も顔を合わせるたびに喧嘩している。

 だが、ダイナスがプリムローザに気がある事をレギンスは知っていた。

 今朝もプリムローザが魔素溜まりへ行くことが決まったと聞くやいなや真っ先に手を上げて

「俺も行きます!」

 と、商人の癖に戦場にやって来たのだ。

 プリムローザも満更では無いことを知ってるレギンスとしては

 「素直じゃねーなぁ」とため息しか出ない。

 だが、そう言うと二人は必ず……

 「何言ってんだレギンス?素直なのは俺だけだぞ?こいつは捻くれてんだよ」
 
 「何言ってんのレギンス?素直なのは私だけよ?コイツは捻くれてんのよ」

 と、同時に同じセリフを話だし、喧嘩が終わらなくなるので何も言えなくなるのだが、今回だけは言う。

 「緊張感持って歩け馬鹿共! もう直ぐ窪地につくぞ! イチャイチャは終わってから好きなだけやりやがれ!」

 「イチャイチャなんてしてないわよ!何言ってんのレギンス!」
 「イチャイチャなんてしてないだろ⁉何言ってんだレギンス!」

 (顔赤らめて言う事かよ……早よ一緒になれよったく面倒くせーな……)

 そう呆れながら二人を見て、盾を握り直す。

 獣の気配すらしない山は不気味な程静かだった。

 窪地の有る丘へと辿り着くと木々の影から下を覗く。

 草に隠れて良くは見えないが、確かに黒い沼の様な場所が見えた。
 そこが多分魔素溜まりなのだろう。
 見た事は無かったが、その沼の周りだけ空気が淀んでいる感じがした。

 そこへ数頭の鹿の群れが草を食べながら近づいてきた、その内の一頭の男鹿が1歩黒い沼に足を踏み入れると角が透明になっていくのが見えた。

 「ちっ!」っと、舌打ちをして目配せをしてダイナスに支持を出した。

 するとダイナスはブツブツと呟くと、素早く杖を振って土魔法で透明の角になった鹿の足下を地面に沈めた。

 それを待っていたかの様に大剣を振りかぶったままプリムローザが飛び込んだ。

 「ザシュッ!」

 と、鈍い音と共に魔鹿に成り立ての鹿の体ごと真っ二つに斬る。

 他の鹿は魔素には侵されて居なかった様で散り散りになりながら走り去った。

 「よし! 他にはまだ魔獣は発生してないようだ! 此処で待機する! 各自テントを張って寝床を確保しろ!」

 そう叫ぶとレギンスは副隊長達を呼び出し、この後の動きを確認しに行った。

 「おい、プリム!」
 「何よ!相性で呼ぶなよ!」
 「お前な、むやみに飛び込むな!相手は出来たてとはいえ魔鹿だぞ!」
 「何言ってんの? あなたの魔法で動けなくさせてるんだから飛び込むでしょ?普通」
 「え? ああうん……まぁ普通か」
 「うん、ほら行くよ? またレギンスにどやされるわよ?」
 「あ、ああ……そうだな、急ごう」



 ーーー意外にも自分の魔法がプリムに信用されてた事に驚き、顔がニヤけるのを隠すのに苦労したダイナスだった。
 


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