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三十九話
しおりを挟む国境の砦にたどり着くと囲まれた。
珍しい乗り物だったからだろうが、取り調べを受けそうになった。
依頼書を見せて、依頼人が公爵だと知るとペコペコ頭を下げて通してくれたけど……。
どこの世界でも一般の公僕って、権力に弱すぎないか?
なんか普通に不正をしてる人も居そうで怖い……。
それがこの世界の常識なら言うことはないが。
などと考えていると綿飴っぽい鼈甲飴を買った村に近付いていた。
「甘い奴! タクミ! 甘い奴の村だよ!」
と騒ぎ出す。
流石に今は寄ってる暇はないと言うと駄々をこね始めた。
この辺まだまだ子供なんだよな。
「帰りなら寄れるかも知れないから、我慢して?」
まるで子供に行って聞かせる母親の様な口調で話して宥める。
大半の母親は買わずに帰るんだけどな。
二言目には買うお金がないから今度ねっで終わったりする、ある意味魔法の言葉だ、買わないとは言ってないし。
そのくせスーパーに寄ってビール買ったりするんだよ。
理不尽だよな。
「本当に帰りに寄る?」
「ああ、時間あったらな」
「分かった……我慢する」
理不尽だが今はこの戦法を使わせてもらおう。
召喚で出せばって方法もない事はないが、飴如きに砂金は使いたくないってのが正直な理由。
水晶の塊もあるけど、使いたくない。
遥かに媒体のが高いのに……。
暇な時に日本の飴を大量に召喚するのも有りかもな……。
大阪のおばちゃんの如く持ち歩けば、メリヌも他を欲しがったりしないかもしれない。
うん、そうしよう。
ゴムタイヤとサスペンションを装備したお陰でスピードを出せる魔力車は、歩けば数日掛かってた街道もほぼ一日で着いてしまった。
日が傾き夕暮れになる頃には魔森の街の灯りが見える場所まで来れた。
このまま進めば門が閉まる前に辿り着けるだろう。
だが何となく嫌だった。
この気持ちを例えるなら、数日風邪で休んで久し振りに登校出来る体調に戻ったが、病院に行ってからだった為、授業途中に登校する事になってしまった生徒みたいな心境だ。
うん、分かり辛いよね、いーんだいーんだ。
【閑話休題】
「街の中に入らないの?」
そう不思議がるメリヌに曖昧な返事を返すと、魔力車から降りて街道横の草原を土魔法を使ってある慣らす。
平らになったところで小屋を出して、簡易竈を外に作ると火を付けた。
メリヌを呼んで魔力車からおろすと、そのままアイテムバッグに仕舞って、今日は此処で休もうと告げる。
「んーまぁ、ここで休むなら砦前の村で休んでも良かったんじゃない?」
という指摘を頂いた。
全くそのとおりだったが朝一で街に入りたいからと苦しい言い訳をして、何とか誤魔化す事に成功した。
竈の火がいい感じに燃え始めた辺りで、どここら来たのか桃魔森猪が一頭近くを歩いていた。
このとき不思議に思えれば良かったのだが、俺達はラッキーとしか思えなかった。
直ぐにメリヌが動いて一撃で倒し、汚れてる陰部や大腸を慣れた手付きで切取って捨て、そのまま竈の上の網を外し軽く炙って毛を焼くと、俺に渡してくる。
渡された桃魔森猪をサクサクと刻んで一口大にしてから、網を置き直して焼肉にする。
骨もあるが、食べながら取り外して食べるのが桃肉の正しい食べ方だ。
暫く二人でモグモグと無言のまま食べた。
全部食べ終わると骨は捨てずにアイテムバッグに入れる。
これは鶏を飼ってる農家に渡すと卵と交換できるのだ。
骨は砕いて粉にすると麦や粟と混ぜて餌にするのだとさ。
腹も満たされ眠気がして来たので寝袋に入る。
「門前だったのなら宿屋に泊まればよかったのに……」
と、呟くメリヌ。
「この一件が落ち着いたら大木の家をゆっくりと完成させたいと思ってる。
完成すると色々生活用品も揃えたくなるだろ? なので暫くは小屋で寝る事にして、宿賃は浮かして、資金を貯めようと考えてるんだ」
そう言い訳をした。
特にこの街はあまり長居はしたくなかったし、宿屋にも痕跡を残すのも嫌だった。
まぁそれは言わなかった。
「ふーん……まぁいーけどさ? 明日も早いからあたしはもう寝るね」
メリヌは納得したのかしてないのかよく分からない返事をすると、寝袋に潜り込んで寝てしまった。
「うん、おやすみ」
そう挨拶をして、俺も寝袋に入って寝る。
(タクミってば素直に帰りたくないからって言えばいーのに、あたしには弱みを見せたくないのかなぁ……)
『……もっと頼れよ馬鹿!』と小さく呟いて不貞腐れながら寝るメリヌだった。
朝日が登る前に起き出したタクミは竈に火を付けると鍋に乾燥野菜と干し肉を入れてスープを作る、パンは簡単な方の魔法陣で召喚すると、朝食の準備をする。
フライパンを出して燻製桃肉を輪切りにして焼いていると、メリヌも起き出した。
小屋を仕舞って魔力車と入れ替えると
朝食を食べる。
朝食を食べながら今日の予定を決めるのだ。一応パーティだからな、それらしい事もちゃんとするのだよ。
「今日はどーするの?」
モグモグと美味しそうに輪切りの桃肉を噛んでいたメリヌが聞いてくるので
「一応魔女に会いに行くつもりだけど、アイツは宿屋に住んでるのかな? 引っ越したと聞いては居るが、住処までは知らないんだよ」
そう言うとスープを啜る。
味付け塩コショウは流石に優秀だな、乾燥野菜と出汁代わりに干し肉も入れてるが正直薄いのだ。
薄いからと塩を入れると塩っ辛くなってしまい不味くなるのだが、味塩コショウをいれると美味くなる。
この世界に無いものなので、多様するのは控えている。
何故なら……魔森の街で宿屋をやっていた時、多様してしまったお陰で魔女に追われる事になったからだ。
山裾の街で、冒険者一本にしているのはその為だった。
近所の人等と焼肉をやった時、店を出したらと言われた。
危険もなく金も稼げるからと言われたが、冒険者が好きだからと言って誤魔化した。
あの時でさえ焼肉のタレは召喚しているのだ。
直ぐに日本の調味料に頼ってしまう性格を何とかしない限り、商売人にはなれない。
魔女に嗅ぎつけられて追われるのはゴメンだからな。
一応居場所はメリヌの母親を訪ねて聞くって事にして、竈を潰して、火を消す。
(さて行くか……何事も無ければよいが……)
不安に成りながら向かう二人だったが、街の門くぐって驚いた。
街の中に桃魔森猪が侵入していたからだ。
街の人はあまり外には出ていなかったが、逃げ行った訳でも無さそうだった。
避難しながらも逞しく生活してるようだ。
地面には黒魔森猪が歩いたであろう蹄の跡や大型の獣が壊した納屋などもあり、見るからに何かあった感はする。
焦る程の事ではないのか、よく分からない状況だったので、街の中心にある冒険者ギルド本店へと向かった。
本店へと向かった先の道路はバリケードがされていて、傭兵や冒険者が門兵をしていた。
俺の魔力車に気が付くと
「魔女様⁉」そう叫んだかと思うと、その声を聞き付けた周辺の人等が騒ぎ出し、バリケードを退かすと囲まれた。
「違う違う! 山裾の街からの使者だ! 魔女ではない!」
そう叫んだが聞いてるのか居ないのか分からなかった。
中へ入ってすぐにバリケードは閉められ噴水前へと案内された俺達は、見慣れたおっさんに出会った。
心なしか年を取ったような感じがする。疲れているのだろうか? 毎日身ぎれいにしていた服も所々汚れていた。
「久し振りですね? ダッズさん」
その声に力なく振り返り、俺の顔を見た瞬間大声で叫ぶダッズ
「「魔女様の弟子が来たぞ!」」
そう叫ぶと周りの人から歓声が上がった。
何だかよく分からないが、この街にも問題が起きていて、俺達は見事に巻き込まれたようだ。
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