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四十話
しおりを挟む「魔女が誘拐された⁉」そんな話を聞かされれば、あの魔女の本質を知ってる人は、何を馬鹿なと思うだろう。
だがこれは冗談でもネタでもなく、地位の高いおっさん達が顔を付け合わせて真面目な顔で話しているんだから笑えない。
なぜこんな話になっているかと言うと……時は少し戻る。
噴水前でダッジと貴族達に囲まれた跡、商業ギルドマスターと冒険者ギルドマスターがやって来た。
そのまま本店会議室へ連行されて聞かされた話しによると、俺を探せと命令を出した跡、幼女が魔女の魔力車を運転してる姿が目撃された。
その幼女は街を出て草原の方向へと走り去ったそうだ。
その跡、麦畑から草原へと続く途中の緩やかな曲がり道で横転してる魔力車が見つかったらしい。
そこには誰も居なかった様だ。
その日を境に誰も魔女を見掛けた者は居なかったそうだ。
ただ、布に何かを包んで走り去る男と、砂浜に船が止まってた痕跡が残っていたそうだ。
それと、外洋に大きな船を見たと漁師から報告が挙がっており、何かしら関係があるのではないかと疑っているらしい。
その幼女について何か知らないかと問われた。
マスター達が言うには俺以外に弟子が居たのではないかと推測しているようだったので、俺が最後に魔女にあった時の姿を教えてやった。
魔女は如何やったのか分からないが、何度も若返っていた。
俺の予想ではshine Appleを食べる時間をずらし、何回か最初の一口を繰り返したのだと思っている。
現に俺も三十歳から12、3歳まで若返っている。
最初に食べたのが一回目と数えて、次の日に歩き疲れて休んでいた時に食べたのが二回目、そして魔女とアイテムバッグと俺のキャンプジャケットを交換した時食べたのが三回目と数え、一口で若返る年数を6年と推測すると、丁度勘定が合うのだ。
だが、shine Appleの事は秘密にして置いた。
詳しく言えば探しに出る冒険者も出てくるだろうし、見つかった場合には戦争になり兼ねない。
それほど強力な魅力があるので、迂闊に広めるべきではないのだ。
取り敢えずマスター達には何かしらの魔術で若返ったのだろうと言っておいた。
俄には信じられない様だったが、皺くちゃだった魔女が四十代くらいに若返っていたと、巷で噂になっていた様で一応有力な話として記憶に留めておくようだ。
「……それを踏まえた場合、幼女だった魔女はそのまま攫われたか、更に若返った結果赤子にでもなってしまい、魔法を唱えられなかった可能性がありますね……」
と、話すのは商業ギルドのサブマスターだった。
会議に出席していた面々が結論を出そうとしていたので、俺は待ったを掛ける。
あの強かな魔女がそんなアホな事するだろうか……と、俺は思っていた。
若返った結果物欲に塗れて守銭奴になってたが、頭の回転は良かった気がする。
魔法の詠唱が出来ない程若返えり、自由に歩けない赤子になる迄若返るなど……流石に馬鹿すぎる。
何かしら魔力が使えない道具で拘束し、攫われたと考えるのが普通だろうと答えた。
「だがなぁ、魔女の弟子よ。 そんな装置は作られたという報告は我々は聞いた事がないのだよ。 王都の魔導研究でもそこ迄の研究はしておらん」
「では、他の国ではどうですか? この大陸の他にも研究している国はあるのではないですか?」
「うーん……この大陸の裏側にある帝国ならもしかしたら……だが、そんなものを作っていたとしたら自慢気に発表するぞ? あの国なら」
俺には帝国がどの様な人々なのかよく分からないので、想像も出来なかった。
結局正確な結論は出なかったが、何かしらの事件に巻き込まれた可能性があるとした。だが、探しようが無いと言う事も分かった。
この会議で話したことは混乱する元になるので箝口令が敷かれたが、依頼主のマトリカーサス公爵には伝える事を許してもらった。
一応依頼なので冒険者のギルマスにサインを貰う為に依頼書を渡した。
すると、依頼書の裏には手紙があった様で、それをギルマスが読んでいたら急に血相を変えて、商業ギルドへと走っていってしまった。
何が書かれていたか分からなかったので俺も付いていくと、手紙を読んでいた商業ギルドマスターが、手の中から光る鳥を出すと、空へと放った。
その鳥は山裾の街方向に真っ直ぐ飛んで消えた。
「何事ですか?」
と、問えば顔を青褪めさせながらも、丁寧に史実から説明してくれた。
この国【魔森の街】を作った初代国王【正一】は、魔の森を押さえ込むためにとある魔法を編み出した。
その魔法とは精霊結界魔法で、複雑な魔法陣を城の天守閣に描き固定した、そこへ魔力の一番多い【正一】が、無意識下で魔力を注ぎ続ける契約を精霊と交わしたのだそうだ。
その結果、魔の森に魔素は留まり、他国で発生しなくさせた。
お陰で魔獣の脅威から開放された国々は緩やかに回復し、発展していったのだという。
段々歳を取る【正一】は一定期間が過ぎると若返りの魔術を駆使し、約七百年間生き長らえて森を封じ込めていたらしい。
ただ若返る時に一瞬契約が切れるらしく、その時世界の何処かで魔素が漏れて魔獣が生まれるらしい。
ただ、継続的に生まれるのではなく、その都度倒せば新たに生まれる事はないのだそうだ。
そして、今から三百年前に大魔女ヨネへと代替わりされた後、【正一】は行方不明になったのだという。
代替わりをした魔女が押さえた三百年は一度も魔素が漏れる事はなかったそうだ。
つまり魔女は長寿の種族だったと言うことになる。
そして、今現在公爵が予想した最悪の想像が、手紙に書かれていた。
その予想が魔女の若返りが赤子だった場合の話だったそうだ。
若返るたびに精霊の契約者は、その都度新たに契約を結ぶ必要があるのだという。
だが、自由に動けない赤子になっていた場合、契約がされずに魔の森から魔獣と魔素が溢れだす。
山裾の街で起こっている事
魔森の街で起こっている事を照らし合わせた結果、魔森は今結界が消えてる状況なのではないか? そう書かれていたらしい。
もし、赤子と言うキーワードが話し合いで出た場合緊急通信用の鳥を飛ばしてくれと書いてあったので、今しがた飛ばしたのだという。
「魔女の弟子よ、一日立ったら国境に公爵殿が辿り着けるので、共に隣国の王都へ向かってくれ」
そう言うので俺は首を傾げて聞く
「この国の王城に契約する場所があるんですよね? なら、此処から向かった方が速いのでは?」
「いや、隣国の王都からこの国の王城へ行くほうが速いのだよ。 この街から王都へ行く場合、どんなに馬を飛ばしても半月は掛かるのだ、勿論馬の回復をしながらだ」
「そして、国境から隣国の王城は目と鼻の先なのだよ、初代様は各国の城の何処かに王族だけが通れるゲートを作ったのだ。
そのゲートはもし万が一魔獣が溢れるスタンピードが起きたら、直ぐに初代様に声を掛けられるようする為なのだそうだ。
唯一スタンピードを解決出来る魔力を有していたのが初代様だったからだ。
その他外交で国王がこの王都へ来る時に、ゲートを使って先に王が来ていたからな。
部下はゆっくり各地を回って凱旋しながら経済を回すのが決まりだったからな」
その間、俺には魔森から溢れた魔獣の処理を頼まれた。
公爵の許しも得ているのだそうだ。
手紙には俺が三百匹を一瞬で消し去った武勇伝(?)も書かれていて、自由にコキ使ってくれと書いてあるのだそうだ……。
斥候の話では魔森から溢れたのは黒魔森猪と桃魔森猪を餌にしていた魔狼が草原まで出てきてるそうだ。
魔狼に追われた桃魔森猪は麦畑まで来てしまい、麦畑は全滅。
だが、街から生息域が近付いた事で狩りやすくなったと喜ぶ住人も居るらしく、そこは良いらしい。
俺に頼みたいのは草原まで出て来ている魔獣達なのだとさ。
水を嫌う魔獣達は一部を除き川を超えては来ていないらしく、魔獣を森の奥へと何とかして押し返して欲しいと宿屋の組合から依頼が来ているのだそうだ。
草原の宿屋の主人達は溢れてくる魔獣の対処が出来ずに、街まで避難したらしい。
(だから薄汚れたダッジがあそこにいたのか……)
何故か妙に納得してしまった。
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