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六十三話
しおりを挟む「ちょっと! タクミ何時まで寝てるのよ? もう着くわよ」
ラメルに起されて目を開ける。
其処にはメリヌもソラも居なかった。
草原の筈なのに何故か山が見えるし日向にいた筈が影に入ってるし
(なんで?)と思ってキョロキョロ辺りを見回すと、黒魔森猪が山と積まれて居た。
全部頭と内臓は無いし皮も剥がされていた。
生肉の山に囲まれながら寝ていたようだ……
その山の上からキラキラ光る粒が降っていた。
何だろうと見上げると、ソラが水魔法で氷の粒を降らせ、肉の山を冷やしていた。
俺が寝ていた場所だけ濡れてないところを見ると、気を使ってくれたようだ。
取り敢えずこんなに肉はあっても食いきれないので、ある程度は燻製にしてしまおう。
残りは街についたら売り払うとして、ソロソロ腹も空いてきたのでレッドに……って、居ないんだっけ。
俺は立ち上がって身近にあった肉を担ぐと一階の調理場へと向かった。
肉を捌いて焼いていると腹を空かせた子供が沸いてカウンター前に座る。
「メリヌ、飯の前に俺のアイテムバッグにある程度の肉を入れて来てくれないか?」
「目の前の肉を我慢して私に仕事を押し付けるのか」
「我慢じゃなくて、まだ焼けないなら仕事をしても同じだろ?どうせ待つんだから」
「む、分かった……」
嫌々だったが仕事を頼み肉を焼いていく。
野菜も切ってサラダを作っていると階段から降りてきたメリヌはカバンをカウンターに乗せる
「焼けた?」
「ああ、あとはサラダ作れば晩飯だよ」
「やった!」
『みんなーご飯だよー』
『『『はぁい!』』』
精霊とは脳内通信で連絡する事ができるので助かる。
メリヌはそうは行かないが、大抵飯時には近くにいるので問題ない。
晩飯を食べて街の手前で一泊する。
ちなみに二階の草原部分にあった肉の山は、ラメルが国境越えた辺りから集まってた群れを3個程潰した時に集めた肉だった。
ざっと60匹居て、一つの大きな群れは30匹も居たらしい。
「おいおい大丈夫なのか?街は……」と心配になる程だ。
飯を食べたあと、見張りをソラとペロンに任せて眠る。
昼間の間はラメルが防衛に務めるというので任せてるが、夜は影に潜るという約束があるので防衛は出来ない。
なので晩飯が終わった跡、交代していた。
結界を張れるのは白ウサ達の光魔法だけなのだそうで、見張りに付くんだそうな。
まぁ、レーダーみたいなペロンと敵が来ても即凍りつかせるソラがいれば問題はなかろう。
マロンはドライブで疲れたのか、すでに眠っている。
さて、いよいよ明日は貴族と会うのか……正直面倒くさいが、仕方ない。
変な人じゃないといいなぁ……と、願いながら寝た。
次の日の朝、朝風呂に入ろうと二階に上がると、氷漬けになってる白銀が居た。
(おいおいおいおい……いくら何でも魔狼まで街を超えて来てるのか?)
森の状態と街の状態が気になった。
風呂は取りやめて急いで街へと向かおうとしたら、風呂場からソラとラメルの話し声が聞こえた。
精霊でも風呂に入るのかと思わず聞き耳を入れてみたら……
「ソラさんきゅ~付き合ってくれて」
「いやいや僕も楽しかったしいいよ~」
「いや~急に夜から謹慎とか言われても暇でさ~本当に助かったよ」
「なになに、僕も楽しかったから何時でも誘ってよ! 森での狩りに」
”ガラリ”
と扉を開けるとソラとラメルの頭を掴む
”ゴツッ”
とぶつけてから俺も湯船に浸かることにした。
「ねぇ……」
「んー?」
「あんたちょっと精霊にもっと気を使いなさいよ!」
「痛いです……」
「やかましいっ!夜は、大人しく影に入ってろ!馬鹿ラメル!」
昨夜は起きて防衛しないで大人しくしてると思ってたら、ソラと森の奥へ出掛けて狩りをして、戦利品に白銀の氷漬けをお土産にするとは何してんだ!と怒ったら、敬えと逆ギレ……先が思いやられる……。
ソラもソラだ、ペロンが攻撃も索敵もやっちゃって暇だからとラメルの口車に乗って喜んで行ったらしいし……
「余計な仕事増やすなよ……」
「ごめ~んタクミ」
素直に謝るソラと不貞腐れるラメル
ラメルに至っては後ろ足で
”タシ!タシ!”とスタンピングしてるし……その辺はウサギのソレと行動は一緒らしい。
しかし精霊でなぜこんなに違うのかねぇ……。
『街に入るよ~』
というマロンの通信を聞いて風呂から上がると着替えてから運転席へと向かう。
因みにメリヌはペロンとチェリーと燻製肉を作って貰ってる、なんせ大量なもんで……俺だけじゃ間に合わない。
「そーいえば王様の従姉妹って何処にいるんだろ?」
と、街のメインストリートを通りながらつぶやく。
「聞いてないんです?」
と、マロン
マロンにどこへ向かいますかという問いに、目的地が分からないという問題に直面した。
「ん~取り敢えずガラス質に成ってる元草原に向かってくれい」
「りょーかーい」
と言いながら巧みに人混みを避けながら魔力車を運転するマロン。
街を突っ切り元麦畑に出ると、緑色の雑草が生え始めていて、すっかり麦は生えてなかった。
至る所に冒険者と黒魔森猪が戦ってる姿が目にうつる。
峠を下って行くとキラキラと光る部分と焦げで黒くなった部分と水溜りが池のように成ってる部分が見えて、廃墟の様に宿屋が連なった場所が見えて来た。
建て直した宿屋も黒魔森猪に再び壊された様だ。
道の代わりの様にウッドデッキが並ぶ道を通りながら少し進むと、ガラス質に成った部分をツルハシみたいな道具で削ってる一団が見えて来た。
見た事のない魔力車だからか関係者っぽい人達が遠巻きにしながら此方を見ていた。
取り敢えず比較的まともな形が残ってる宿屋の前に魔力車を止めると、ラメルとソラとを連れながら車を降りた。
すると、俺に気がついたのかツルハシを持ってた人が動きを止めて手招きしていたので近づいていった。
「君がタクミくん?」
「ああ、はいそうです」
「ふむふむ、私が例の従姉妹でここの責任者のソフィーリアよ!宜しくね♪」
麦わら帽子を被り、額に汗を流しながらツルハシを振るっていた作業員が王族とは誰も思わないだろ。
不意打ちを食らった気持ちになっていると
「爵位は内緒で頼む!」と小声で言われた。
流石に隣の国の人間が勝手にガラス質の地面に価値を見出し買い取りに来てるとは言えないらしい……。
何か思っていた人とは違いすぎて面食らったが、嫌いな人種じゃなかったようでホッとした。
「ま、詳しい話は中で聞こう!」
そう言うと魔力車が止まってる宿屋へと歩いていくので、付いて行った。
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