Shine Apple

あるちゃいる

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六十二話

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 正一が残した固定魔法を調べ終えて城を跡にした俺達は大木の家へと戻っていた。

 一階ではナタリーさんとメリーユさんがレッドからケバブの作り方やハンバーガーの作り方を真剣に憶えようと必死になってる姿が見て取れた。
 きっと今まで以上に美味しい物を作ってくれるに違いない。
 ブラウンは二人の息子たちにお茶の入れ方や挨拶の仕方などを教えている。此方も必要なことなのでとても真剣に取り組んでいる。
 サジンさんはトリーユの店でパンを焼く事にしたそうで、そちらも一生懸命に作業している。

 大木の家の地下に新しく倉庫を作り、其処に固定魔法陣を置く事にした。

 跡は持続出来る様にするだけだ。
 魔力を込めた水に水晶のパウダーを混ぜて魔法陣を書くのだが、そのパウダーの量を増やし粘土状にする。
 其処に全魔力を注ぎながら魔法陣を描き固定する。
 地面に張り付くように粘土状の媒介を描くのに少し手こずったが、途中でラメルに魔力を分けてもらいながらどうにか固定する事に成功した。

 ラメルが言うには、正一が固定魔法陣を描いた時はラメルの魔力提供でも一回では完成せずに10日程掛かったらしい

 「タクミの魔力量は多いとは思ってたけど……桁違いだったわ」

 そう言って呆れていた。
 俺もまさか初日で固定に成功するとは思っていなかったので、驚いていた。

 お陰でレッドを呼んで使い方を説明する時間も出来た。
 その日の夜はナタリーさん達が作ったケバブの試食も兼ねてメニュー通りの物と、ナポリタンなどの料理を堪能して、次の日の朝には再び魔森の街へと向かう事になった。

 レッドとブラウンとナタリー家一同が見守る中、マロンの運転で王都を出ようとした所を遮る者達が現れた。

 誰だと思ってみてみれば魔道士学科へと進み、大会当日に半身を埋められた生徒達だった。
 
 この生徒たちは退学になったと聞いていた。

 講師が誘導したというのもあるが、既に成人しているので善悪は分かるはず、それなのに後先を考えもせずに行動にうつした事は許されないという事らしい。

 講師の処分は魔道士副長官という地位からの降格処分と講師としての免許を剥奪されている。

 学校を退学させられた事への恨みでもあるのかと思っていたが、そうではないらしい。

 気になった俺はラメルの静止を無視して魔力車から降りて彼らに声を掛けた。

 「こんにちは、何か用かな?」
 「あ、あの……この前はごめんなさい……誘導されていたとはいえ、殺そうとしてた……謝って許される事じゃないけど……どうしても一言謝罪したくて……」
 
 そう言うと、他の四人も口々に謝罪の言葉を吐き出した。
 中には本気で泣いて居る子も居た。

 更に聞くと学園を退学になった事で、家からも見放され、家の名前を捨てさせられたそうだ。
 修道院にすら送られることなく、庶民に成れと家を着の身着のまま追い出されたそうだ。
 貴族の子息子女というのは贅沢に慣れている為、質素な一般庶民として生きる事は意外と難しい。
 ほぼ死刑宣告のようなものだった。
 よく見れば服の生地は庶民と同じになってるし、所々破けていたり薄汚れていたりしていた。

 結構苦労しているようなので俺は一つ提案してみた。

 「よかったら家で働くかい? 寮になるけど一人一部屋で三食出すし、休みも付けるけど……どう?」
 「え……私達はあなたの命を狙ったのに⁉」
 「罰は既に受けてるみたいだし、その格好から察すると食事も禄に食べていないんだろ?」
 「は、はぁそーですね……私達は働いた事など無かったので……どう言えば雇ってくれるのかさえ分からなくて途方に暮れていました、でも良いんですか? 私達はお茶の一杯も淹れられませんよ?」
 「そこは大丈夫、きっちり仕込むから」

 そう言うと脳内通信で白ウサ達を呼び出そうとしたら、既に横に居た。

 突然現れた白ウサに驚き声を上げるが、直ぐに精霊と気付いたのか片膝を付いて頭を下げ最敬礼し始めた。

 国民が王様に向けて礼をする感じだ。

 すると、チラリと頭を上げた男性が俺を見て慌てて言った

 「タ、タクミくん! 精霊様の前で立ち尽くすなんて失礼だよ⁉ その方々は光の精霊様だよ! は、早く頭を下げて!」

 多分ただのウサギと俺が認識してると思って好意で教えてくれているんだろう、なので……

 「ああ、大丈夫ですよ? 俺の契約精霊なので」

 そう言うと全員固まった。

 取り敢えず立ってもらって説明する

 「こっちの赤い目がレッドで茶色い目がブラウンね、調理補助はレッドに教わってね、それとブラウンは売り方や品物の渡し方を教えるから、まぁ客には貴族も多いから多分そっちを任すと思うからお願いね!」

 一気に捲し立てると、精霊に教わるとか恐れ多いのか青ざめ始めた。
 
 「ちょっと! まだ話し終わらないの⁉」っと、痺れを切らしたラメルが飛んできた。
 「タクミ~まだ出ないの~?」っと、マロンも窓から顔を出して叫ぶ。

 「タクミ殿!国境から少し離れた場所に黒魔森猪の群れが多数見えました!今からすぐに出ないと囲まれますよ!」っと、ペロンが助手先から顔を出して叫ぶ。

 それを見た五人は立ったまま気絶したようだ。
 気を失う直前に「や、闇精霊⁉」っと、誰かが呟いたのは聞こえたが……

 「なぁ、ラメル……」
 「ん、何かしら?」
 「黒ウサの姿って有名なのか?」
 「そうね……絵本にも出てくるわね。最悪の化身として」
 「黒うさの絵で?」
 「うん、黒うさの絵ね」

 なる程……。
 気絶したのは恐怖からと分かった。

 取り敢えず彼らの事は白ウサ達に任せた。
 寮も取り敢えず近所の宿屋を借りて住まわせる事になった。
 その内新しく敷地内に建てる事になるだろう。
 借りてる土地だけど買ってしまおうかと考えていると。

 「話は終わったんでしょ? なら早く行こ?」
 と、ラメルが手を引くのでそのまま付いて行く。

 依頼を終えて帰ってくる頃には、使える様になってて欲しいなぁと思いながら魔力車へと乗ると

 「ホイじゃあシュッパーツ!」
 と楽しそうにマロンが走り出す。

 そういえばメリヌは? と、思い出し少し探すと。

 屋上の草原地帯でソラと寝ていた。
 何とも平和そうな寝顔を見てクスリと笑い、俺も少し寝る為にメリヌの隣で横になった。

 
 
 
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