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六十九話
しおりを挟むソフィーリアとその侍女さんを保護したが、魔獣に襲われた事でショックを受けたらしく暫く混乱している様なので、落ち着くまで客間で休んでもらう事にした。
ブラウンがお茶と茶菓子を持って行ってくれるというのでお任せして、俺は調理場で皆の朝飯兼昼飯を作ろうと思ったら、既にできていた。
ブラウンは中々優秀だなぁと感心していたら、皿を洗う音がしたので振り向くと、レッドが居た。
「あれ? レッド? 山国に居たんじゃないの?」
「あ、タクミ様おはよう御座います。実はですね 店の倉庫とこちらの私の部屋の空間と繋げまして行き来出来るようにしたんですよ」
なので、これからもご飯は私が作りますので安心してくれと言われた。
この新しい魔力車……いや、飛行せ……聖獣? ややこしいな……
まぁ乗り物……かも疑わしいんだが……今度名前を付けよう……
まぁ、置いといて……たしか想像を創造して作るのに全部は無理だからってんで分担して分けた筈なのに、俺の想像した部分が妙に少ない気がする。
部屋割りと屋上の温泉に草原はイメージ通りに近い……が、泉や小川は知らない。
寧ろ泉はソラのイメージというか、願望が混じってる。
調理場から直接魚が捕まえられる様にしたのはレッドかブラウンの願望だろうか……ソラいわく、泉の底と繋がってる様な事を言っていた。
そして、食糧庫の冷凍冷蔵庫は俺の想像通りだったが、燻製室と同じ場所にはしていなかった。
使い勝手は今の方がやりやすいから良いのだけど……狩り獲った獣をそのまま解体出来るようにはしていなかった……。
あれはラメルの願望なのだろうか……?
所々に精霊達の願望がくっついている気がする。
中は任せるような事を言ってたが、俺の想像に混ぜられたお陰で幾つか消えてる部分もあった。
畑は概ね想像通りだったが、2回りほど広かったし……
一番の問題は飛行船じゃ無かった事だった。
確かに操縦も出来てるようだし、一応【船】と言えるのかもしれないが……
俺は何故こうなったのか、考え込んで歩いていた様でレッドと別れた後、いつの間にか草原の小高い丘の木の下に居た。
思えばこの木も想像した覚えはなかったなぁ……と、手で触ってみる。
「タクミ?」
そんな声が上から聞こえたので見上げると、メリヌが枝の上で仰向けに寝転がって顔だけコチラに向けていた。
(器用な奴だな……)
「昼寝か?」
「木の実を食べてたの」
「実がなってるのか?」
「うん、美味しいよ? 食べる?」
「頂くよ」
少し木の枝をつたって登り、一つの実を投げて寄こした。
その実は白っぽい林檎みたいな形だった。
何処かで見た事あるような?
俺は青リンゴを思い出していた。
軽く拭いて”パクリ”と食べてみる。
食感は洋梨だが味はとても美味しかっ……あれ?
「shine Apple⁉」
もう一口食べて見たが、あの泉で食べた実と同じ味がした。
(なんでこんな所に⁉)
と、焦るのと同時に若返ってしまうと思い、泉の縁へと走って向かい水面にうつるだろう自分の顔を覗き混んだ。
だが、若返ってはいなかった。
ホッと胸をなでおろしながら……ふと考えた。
「こんな事出来るのは……アソコの泉を知ってものだけだ!」
そこに気付いた俺は、影で寝てるだろうラメルを呼び出した。
(おい! ラメル! 話がある!)
そう言うとラメルが可愛い寝間着を着ながら眠そうな目を擦り現れた。
『むにゅ……何よー……』
「あの木の実は何だ!」
『あの木の実?』
「コレだよこれ!」
手に持ってる食べかけの実を見せる
『あ~アポルね』
「アポル?」
『そそ、美味しいでしょ?精霊の棲家に生えてる木でね? 精霊達の好物なのよね』
「shine Appleじゃないのか?」
『元は同じ物ね。あっちは肥料が邪神の肉だから、栄養成分が違うのよ』
『あ、もしかして間違えて焦った?』
そういうと笑いだした。
取り敢えず泉から離れて小高い丘の上に戻ると、木の上からメリヌが降りてきた。
両手にアポルの実を幾つか持っていた。
どうやら気に入ったようだ。
その笑い声を聞き付けて他の精霊達も集まってきた。
『何やら楽しげですな!』
と、ペロンとチェリーが駆け寄り
『ご飯はコチラで召し上がりましょう!』
と、レッドとブラウンが食事と飲み物を運んで来た。
『飛行が安定したから自動にしてきたよー』
と、マロンが戻って来た。
『泉に海の生き物も泳げる様に変えてみたー!』
と、ソラがマグロみたいな魚を掲げながら走ってくる。
皆が集まったのならこのまま昼飯にしよっかとなり、丘の上で皆で座って食べることにした。
「ブラウン、ソフィーリア達の様子はどうだった?」
ソフィーリア達も気が付いたのなら呼んで来ようかと思ったので、変わりは無いかと尋ねると
『まだ眠っています、時折魘される様で……よっぽど怖かったみたいですね』
「そっか、まぁ起きたら風呂に入って貰って何か食べさせてやってくれ」
『畏まりました!』
ワイワイと楽しく飯を食べていた時に、謎の一つを皆に聞くことにした。
「なぁなぁ、俺は飛行船の形を頼んだのになんで聖獣になったんだ?」
『『『あ……』』』
そう聞くと何故か皆の動きが止まる
別に怒ってる訳じゃないと言うとラメルが教えてくれたのは
『飛行する物って鳥しか想像できなかったのよ……でね?他に何か居たかな?って、考えたときに……』
『袋ウサギを思い出したのです!』
と、マロンが楽しげに続ける
精霊達は考えてる事を共有出来るらしく、マロンが思い出し頭に浮かんだ生き物を共有したのだそうだ。
精霊達の棲家に棲息しているウサギは聖獣で、袋ウサギというのが確か飛んでいたと皆の頭に浮かんだ瞬間固定化されたらしい。
「……じゃあやっぱり聖獣なのか……」
『そうなるわね』
(そうかぁ……って事は名前あった方がいいなぁ……んー、袋ウサギか……)
(袋ウサギと聞いたので、俺は古来から伝わる守り袋という物を思い出していた。
兎はぴょんぴょん跳上る事から「飛躍跳躍」を意味し、また脚の構造上、上り坂が得意な事から「逆境に負けずに突き進む」動物とされる他、古来より「火災除けの獣神」として信仰されてきた。
なので、聖獣の中に住むので折角なら守って貰おうと思って阿修羅を思い浮かべながら……)
「……あしゅ」
と、命名した。
『ん? 何突然?』
「この聖獣の名前だよ、不便だろ?名前がないとさ? 飛行船とは言えないし?」
そう俺が言うと、一瞬全体が揺れた気がした。
『ば、馬鹿なの⁉』
「何がよ?」
『そ、そんな事したら……またアンタ契約を……』
呼びやすい様に名前を付けたらラメルが焦りだした。
契約が何だというのだろう?
俺は聖獣と契約した事になるのか?と思っていたが、ラメルの焦り様が白うさ達と契約した時よりも激しかったので、不思議に思っていると
『あー……タクミ様……えっとですね……』
他の精霊達が言いにくそうに言葉を繋げる
『我々の魔力で生み出した聖獣は……そのぉ……かなりの魔力を保有してまして……そこに魔導師様の魔力が重なるとですねぇ……えーと……聖獣が進化して……』
そうチェリーが言いかけた時、頭上から
【我の名は阿修!
大魔導師の契約者にして守りを司る神獣なり!】
と、威厳のある声が響いた。
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