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七十二話
しおりを挟む朝食を食べてリビングでお茶を楽しんでいると、外を見ていたメリヌが
「何か外凄いよ?」
「凄い? 何が?」
と、見てみれば……祭りでもしてるのかそこら中に人で溢れてた。
「げ……何これ……」
「どーなされたんですか?」
と、ソフィーリアも気になったのか見に来て一言
「お父様⁉」
そう言ったが早いか駆け出した。
それを追いかけて気付く。
「なぁアシュ? これどこから出れるの?」
『前あった操縦席部分を改造してありますので、そのまま通路を真っ直ぐ進んだら階段があるので……』
そう言うので見ると、元操縦席へと続いていた扉の部分が階段になっていた。
その階段を降りていくと、左右に別れた階段が見えて来て、その下がホールの様になっていた。
よく貴族とかの家にありそうなダンスホールだ。
階段の下には休憩室なのかいくつかの個室があり、反対側の階段の下には調理室やトイレなどがあるのだそうだ。
(いつの間にこんな物を作ったのよ?)
と、無言で思っていたら脳内通信で
『昨晩作りました、参考にしたのは隣の建物です』
と、アシュから教えてもらった。
(公爵家のホールはこうなってんのか……)
『いえ、あくまで参考にしただけですから、公爵家はもう少し狭かったですよ?』
(ははは………)
どうやらホールも調理場も何もかも広めに設定して作ったらしい……。
取り敢えずソフィーリアを追っているため確認は出来ていないが、その内探索しようと決めた。
玄関らしき扉を開くと座るうさぎの腹の下に出た。
後ろを振り向くとネ○バスみたいに皮が楕円形に広がっていた。
(しかし……見れば見るほど巨大だなぁ……)
『そりゃそうよ、六大精霊の全力よ? 体は予定より大きくなったけど……』
どうやらやっちまった事は内緒にしていたらしい。
つい言ってしまった本音を聞いていた他の精霊達に責められていたラメル。
珍しい光景だったが面白かった。
普段は距離でもあるのか、あまり絡んでないように思われたが、皆に囲まれてシュンとなってるラメルを見ると、そうでもないようで、少し安心する。
そんな精霊達の様子を見ていてすっかりソフィーリアの事を忘れていた。
「ソフィー⁉ やはり聖獣様を使役していたのはお前だったのか‼ 流石は聖女!我が娘よ!」
大きな声を張り上げながら叫ぶおっさんがいた。
振り向くとカイザル髭を蓄えたおっさんがソフィーリアを抱き締めてクルクルと回っている所だった。
なんだ、意外と普通の親子じゃないか。
魔森の街で見かけたソフィーリアの反応からだと仲は悪そうだったのでホッと一安心した。
「仲いいね、お父さんと。 よかった」
そう言ってメリヌも俺を振り返りながらニコリと笑う。
どうやらメリヌも心配していた様だ。
暫くその光景を眺めていると、コチラをチラリと見たのでぺこんと頭だけで礼をする。
すると、鼻で笑われた。
(何故?)
その答えは直ぐに分かる事になった。
「タクミ様、短い間で御座いましたが助けて頂きありがとう御座いました」
ペコリと俺に頭を下げて御礼を言うナトリさんは、メリヌ達にも挨拶したあと公爵家へと向かって歩いていった。
ソフィーリアとは別行動になるらしく、他の侍女達に囲まれながら邸宅へと消えた。
「さて、これから公爵様を説得するんだがソロソロ挨拶しに行こうか」
『あんたから行ってどうするのよ? 若いとはいえ魔導師なのよタクミは……向こうから来るのを待ちなさいよ』
まったく未だに無自覚なんだからとラメルに呆れられた。
そんなもんなのかね~と思い、暫く待ってみるも、一向にこちらへ来る気配は無いばかりか、人だかりはソフィーリア達を中心にしながら遠ざかって行く。
腕を組んで待っていると一人の兵士がやって来た。
「お前らもご苦労だったな、もういいぞソフィー様の護衛はこれより我らが受け持つからな。 ほら報酬とギルドへの証明書だ受け取れ」
金貨を5枚づつ俺とメリヌに渡してその兵士は走って戻って行った。
「何これ? 護衛? なんの話?」
手に金貨を握って俺を見上げるメリヌ
俺も困惑していて首を傾げる。
何なの?と思っていると、司祭と思わしき方々が妙に着飾ったお爺さんを引き連れて恭しくしながらアシュの前に跪き深々と頭を下げると、アシュの足元で遊んでいた精霊達の前で再び跪いた。
「これはこれは六大聖霊様、お初にお目に掛かります、私共は精霊教会の大司祭を努めておりますシザーズ・バルトクルと申します。如何か聖女様を祝福する為に力をお貸しくださいませ」
そう言って教会でお待ちしていますと告げて帰っていった。
俺には特に何も言わず……というか、目すら合わせず去った。
「暇だな……アシュの造ったホールでも探索するか……」
「あ、それいいね! 私も気になってたの」
メリヌと二人でアシュの腹から中へと行く途中、俺の影に入りながらラメルが言う。
『他の精霊達はちょっとソフィーリアを祝福しに行くけど、後で合流するってさ』
「ふーん。 ラメルは行かないのか?」
『行くわけ無いでしょ? 私は闇精霊よ? 聖女の力は聖属性なのよ? 敵なのよ一応』
だから行けないと拗ねていた。
住処の中では仲良くしてたからな二人は。楽しそうにお茶を呑んでいたのは見掛けていた。
「あ、そだアシュー」
『はい、何でしょう』
「室内というか体内?の聖属性を、弱めるか無くせないか? 畑以外でいーから」
『可能です。やっときますね』
そう言うと一瞬だけ体が光る
多分もう変えたのだろう……何気に仕事が早い。
『黒ウサよ、すまんな気を使えなくて』
『いーのよ、ありがとうねアシュ』
俺の影から這い出て来たラメルも気にしてない様でお礼を言っていた。
その日の夜は特になんの音沙汰も無く過ぎ去った。
後日ソフィーリアから何かを聴いたのか、焦った顔で執事が走ってきた。
そして、アシュに何かを叫んで再び帰っていった。
「アシュ、入れてやらないのか?」
『それが、聖女のご帰還パーティをするので暫く邸宅で滞在するので、お戻りに成らないと言われましたので、なんの事か分からず無言で見てたのですが……呼ぶまで邪魔だから寝床で待機しとけと言われました』
「なんそれ?」
『さぁぁ……?』
俺達は何が起こってるのかよく分かっていなかった。
「タクミ~アシュが居るなら聖属性持ちだし、魔森の草原剥がせるんじゃない?」
暇だからソフィー待たずに行こうよと、言い出した。
「まぁ、たしかにそうだな……」
『そうよ!あんな失礼な奴等は放って起きなさいよ!』
なぜかラメルはキレていた。
まぁ、このままここに居ても邪魔何だろう。
さっきから庭師が困った顔で物陰からこちらを伺っていると、マロンが言う。
マロンは畑仕事がしたいからと、皆と祝福には行ってなかった様だ。
庭の手入れが出来ないのは可哀想だからと、マロンも移動には賛成らしい。
「んじゃレッド達には通信で教えってやってくれ」
そうラメルにお願いしてアシュに声を掛けて俺達は魔森の草原へと向かった。
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