Shine Apple

あるちゃいる

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七十一話

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 「国王様! 大変で御座います! 空から……空から巨大な聖獣様が御降臨あそばされました‼」

 ガーディアン王国の見張り台から報告を聞いた宰相は、慌てて国王が寝ている寝室の扉を叩く。

 兵士の話しでは高速で飛行する物体が近付いてあっという間に通り過ぎ、王弟である将軍の屋敷へと降りたと言う。

 王弟の末娘は聖女と噂されていた。
 もしやその関係なのかもしれないと踏んだ宰相は王に伝えねばと思いたち、失礼とは思ったが叩き起こした。

 「……なんだ騒々しいぞ!」

 余りにもドンドンドンドン叩くもので少し苛立ちながら部屋から出てきたアーリントン・グロス・ガーディアン王。

 「国王様!大変なのですよ! 王弟様のお屋敷に巨大な聖獣様が降り立ったというのです!」

 「ガンダルフの所にだと?」
 そう言うと着替えると一言言って部屋へと戻り、直ぐに出て来て命令する。

 「馬車を! ガンダルフの屋敷へ行くぞ! それから大司祭も呼び出せ!  ぐずる様なら引っ張ってでも連れてまいれ!」

 そういうが早いか馬を取り付けているうまやへと走っていく。

 それを見て宰相もついて行きながら叫ぶ

 「近衛も来い! 聖獣様を刺激させない為装備は置いていけ!」

 そう言ってから馬車へと近づき御者席へと乗ると、馬にムチを放ち王城を飛び出した。

 (ガンダルフの娘ソフィーが契約でも結んだか……魔獣が再び王都へと向かってるとも聞くし、精霊との契約はもしかしたらうまく行かなかったのかも知れんな……と、なると……聖女が新たな契約者になるやも知れん……王太子は既に婚約者が居るし……第二……うーん。婚約者を早々に決めて取り込まなくては……)

 色々勘違いしてる王は馬車に揺られながら思考の海に落ちていった。






 一方公爵家では、日が昇る前に起き出した侍女が、中庭の井戸へと寝ぼけながら歩いて来て顔を洗っていた。

 布で顔を拭ったあと、何となく視線を感じてふと見上げると、体毛が薄っすらと光っている大きなウサギが目に入った。

 まだ寝ぼけてるのかと目を擦り、もう一度顔を洗って見上げるが、やはり目の前には大きなウサギが居た。

 侍女は後ずさりしながらその場を離れ、すぐ様侍女長代理の部屋へと向かった。

 人間驚きすぎると声が出ないのだと、この時知った侍女だった。

 その後、叩き起こされた侍女長代理は窓から中庭を確認し、慌てて執事を叩き起こし旦那様へ取り次ぐ様に頼んだ、執事もそれを確認すると、司祭に連絡しろと言い残しガンダルフを起こしに寝室へと走った。

 公爵家の屋敷はあっと言う間に蜂の巣を突いた様な状況になり、武器を持たずに兵士達が遠巻きにしながらアシュを囲み、屋敷に備え付けの教会から司祭が慌てて祭壇を作り始めた。

 屋敷の外からも空飛ぶウサギを見た者からその話を聞き付けた精霊信仰の者達が、門兵の制止を振り切って門を壊して突入し、祭壇前に跪くと祈りだした、じわじわと屋敷の中も外も人で溢れていった。  
 収集が付かない状態の中、王の乗る馬車も、群がる群衆を掻き分けながら突入してきたもんだから大混乱になった。

 そんな様子を上から見下ろしていたアシュは、日が昇るまでもう少し時間があるからと、騒音が部屋に届かない様に遮音の魔法を自身に掛ける。

 精霊達ですら気が付かない程の魔法は最早結界と言っても過言ではない程強力で、体内の中で眠る者達は誰も起きては来なかった。










 『皆様、朝で御座います! さぁ、顔を洗って今日も一日頑張りましょう!』

 そんな声がすべての部屋で響いた。

 「何だこの館内放送……」

 次からは音楽でも流させようと思ったタクミは、ソフィーリアが来てから朝まで横で寝る様になったメリヌを起こす。

 「朝だよメリヌ」
 「ん……」
 と、言ったところで起きる筈のないメリヌの髪を撫でると、そ~と顔を寄せて

 ”……チュ”

 と、キスをした。
 最近ようやくメリヌに恋心を抱いていると気付いたタクミは、告白も出来ないままコッソリやらかす様になっていた。が、たった2日程度の期間でタクミの横で寝続ける事など慣れるはずも無かったメリヌは当然起きていたし、何なら髪を撫でられて混乱もしていたし、キスまでされてジッとなど出来るはずもなく。

 結果、飛び起きた事でタクミの頭に頭突きを食らわす事になり、再びタクミは夢の中へと落ちていった。

 顔を赤くしながらタクミを起こしたが、気絶しているので、目を覚まさなかった。

 仕方なく一人起きて顔と緊張で全身汗だくだったので風呂へ入りに温泉へと向かった。

 メリヌは大の風呂嫌いだったが、打たせ湯が出来た事で浴びる程度で入る様になっていた。

 「もう! タクミの奴! 急にするなよ! 焦るじゃん!」

 などとブツブツ言いながらカラカラと扉を開けると先客が居た。

 「あ、メリヌさんおはよう御座います」
 腰まである金色の髪を片側に纏め、しゃがんで体にかけ湯をしていたソフィーリア。
 十二歳とは思えない程成長している胸を”たゆん”と揺らしながら微笑むとメリヌを見て言う。

 「あ……ああうん。おはよ!ソフィーリア、早いね」

 タクミが好きそうな体型だなぁ……と、思いながらソフィーリアの前を通り過ぎ、打たせ湯の下へと入る。

 「あ、メリヌ様おはよう御座います」

 湯船に浮いて居た侍女長が姿勢を正して挨拶した。

 「おはよー! ナトリさんも居たんだ、気が付かなかったよ」

 挨拶を交わし頭にシャンプーを付けてゴシゴシと洗うメリヌを見て、ソフィーリアが尋ねる。

 「その泡は何ですの? 何やら良い香りがするのですが……」
 「ん? これはタクミのオリジナル魔法で生み出したしゃんぷーとかいう頭用の洗剤だよ これを流した後に、こんでしょな?とか言うやつを付けると髪がサラサラになるんだ」

 そう言うと続きを洗おうと手を頭に戻そうとしたら、何かに当たって振り向くと、すぐ横にナトリが居て、その泡を触っていた。

 「⁉」

 湯船にいた筈のナトリが自分のすぐ横にいた事に驚愕し、固まるメリヌ。

 「まぁ! 何ですのこれ! 花の様な香りですわね! ちょっとこれ使わせて貰っても構いませんよね⁉」

 そう言うとナトリはソフィーリアを呼び、打たせ湯に当たらせる。

 ソフィーリアもまた音もなく打たせ湯に当たっていた事で、益々彼女達を警戒することになったが、美容に関しては、どんな女性であれ戦闘種族を凌駕するのだと後に知ることになるメリヌだった。
 

 

 

 
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