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七十九話
しおりを挟む井戸を抜けるとそこは……どこかの路地裏だった。
空を見上げると小さな青空が見えた
どこか薄暗いこの場所は少しかび臭かった。
「ここ何処?」
「うーん、分からないけど少し歩くか……」
路地裏を音がする方へと歩いていくと、数メートル先を都営バスが走り抜けて行った。
「なんか今すごい大きな箱が歩いてた!」
あれを狩りたいから武器を出せと暴れるメリヌを押さえ込んで
「あれは乗り物だから狩ったら駄目だ!」と、言い聞かせる。
どうやら現代に来ちゃったようだ。
そこでふと、メリヌを見ると
頭に羊人族特有の小さな角が生えている。
「マロンすまんがメリヌの帽子の振りして頭に乗ってくれ」
するとマロンはくるくると回ったあと、メリヌの頭に乗りうさぎ型チャイニーズ帽へと変化した。
そのままメリヌの甲羅を外させて、チェリーをリュックに変身してもらってつけさせた。
これでどうにかなるかと安堵したが、自分の格好を思い出した。
足軽兵の格好のままだったので、それを脱いで和服も旅装束へと着替えた。
それでもまぁ、浮いているが和服よりは良いかもしれない。
甲冑をアイテム指輪に入れ直し、路地裏から出る。
周りを確認したが、新橋辺りだと思う。
その辺をウロウロして途中にあったコンビニにより、新聞と適当にジュースを買う。
騒がない様にメリヌの口にジュースを突っ込んで、タクミは新聞を広げた。
日付を確認すると、丁度山へと出掛ける前日らしい事が分かった。
昔の自分の行動範囲を思い出しながら当初の予定通りヤギを買わないとと思い出したが、資金が無いことが判明したので、骨董品店【なんぼですねん】へと向かう。
売り物は甲冑とラメルが持ち出した茶器だ。
幾らになるかなぁと楽しみにしながら店へと入り、影の中で騒ぐラメルを押し戻しながら店主を呼ぶ。
「ほおっ!これは珍しい! この文様は……明智光秀の……おお、これはこれは……」
と、何やら興奮気味に鑑定していた。
そこでもう一つ、ラメルが持ち出した茶器(箱付き)で出して見せると
「な……こ、これは……ま、まさか……いやしかし!」
と、手を震わせながらじっくり調べ始めた。
物は天目茶碗なのだが、箱の名とその横に書かれている名前とを過去の文献と見比べたりと大騒ぎになっていた。
奥から鑑定士を呼び出しては全員に見せ、それでも信じられないのかある所に電話をかけた。
査定は幾らになるのか皆目検討も付かないと店主が言ってお茶だけだして少し待っててくれと頼まれた。
まぁ、それもそのはず。
タクミが出した茶器は、本能寺で失われたと言われている一つで
【紹鷗白天目】という茶碗だった。
そのまま三時間も過ぎたあたりでゾロゾロとやって来て、何処で手に入れたのかを問われた。
そこで昔、仲良かった頃のみっちゃんから貰った書状を出した。
そこには俺と仲良い間柄で、中の良い印に何かを貰った証として書かれた物だった。
その時貰ったのは刀だったのだが、そこは魔法で虫に食われた事に変えて、時間も経った様に古めかしくしてあるので、問題ない。
その書状と合わせて文化遺産がどうたら言い出したので金に困って売りに来たのだから買ってくれとお願いした。
そこでまた話し合いが持たれ、一時間が過ぎ去った後
甲冑が300万円
茶器が一億円
書状が100万円
の計一億四百万円で売れた。
茶器に関してはもう少し調べれば値段はまだまだ上がると言われたが、時間もないと言ってそのままの値段にした。
その金を持ってアイテム指輪にしまったあと、店を後にした。
そこから地方へと電車に乗る前に、自分の会社によって辞職届を書いて渡した。
メリヌも一緒だった事から隠し子やら何やら言われたが
「こいつ一応成人してるんです、なので嫁ですよ」
と、いうと一部から歓声が上がったが、概ねロリコンと捉えられたようだ。
会社をさり際に
「合法ロリおめでとう!」
と、こそりと言われた。
新橋駅から新幹線に乗ったとき
「合法ロリってなぁにタクミ?」
と、メリヌに言われたが、何とか誤魔化しに成功した。が、脳内からラメルにチクチクと言われ続けることになった。
どうやらお気に入りの茶碗を売ったのが気に入らなかったらしい。
とある地方の駅に辿り着いた頃にはすっかり夕方で閉店間際の中古車屋でダンプの出来る軽トラを買った頃にはどっぷりと日が沈んでいた。
取り敢えずその日はラブホテルに泊まり、朝早くに偽造ナンバーを適当に軽トラに貼り付けると、下村へと向かう。
が、地図を間違ったのかコテージのあるキャンプ場に着いてしまった。
「タタミくん⁉」
そんな声に振り向くと其処には会社の先輩の高橋さん家族が居た。
「なによ、アンタも来たの?」
と、その後ろから妹さんも顔を出した。
タクミは苦笑いのまま固まっていると、それをみたメリヌが一言
「黒魔森猪が歩いてる‼」
と、日焼けした妹さんを指差して言ったもんだから思わず吹き出してしまった。
その声がまた大きかったのか周りにいた人も
「クロマンチョ?」
「なにそれ」
と、指をさして妹さんを見ながら笑いだした。
「へ、変なこと言わないでよ!」
そう慌てて高橋姉妹は俺の前から走って逃げていった。
「黒魔森猪も擬人化出来たんだね、私知らなかった」
と、真面目な顔して言うもんで、更に腹を抱えてタクミは笑い転げた。
まぁ、ここには泊まれなくなったのは良かったのか悪かったのか分からないが、道が兎に角分からなかった。
そこへ下村家族がやって来て説明してもらい、ようやく道を知ったタクミ達は懐かしの上村婆ちゃんの家へと、辿り着いた。
そこで軽トラに乗った上村婆ちゃんと鉢合わせになった。
「あれ? タクミ君山に居たんじゃなかったのかい?」
そう声をかけられたのだが、俺もメリヌも動けなかった。
俺の影からラメルが頭をだして問いかける。
『……ヨネ?』
上村婆ちゃんの乗る軽トラは、運転手の婆ちゃんが俺の影をポカンと見ながら玄関を突き破り、そのまま部屋の奥へと消えていった。
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