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八十一話
しおりを挟む竈を作って網を乗せるとクーラーボックスから肉を出して、凍っている肉を常温に戻しながらもう一つ竈を作って其処に米を炊く為の鍋を置いた。
水は魔力でそのまま出して米を軽く濯いだあと、鍋へと入れて炊き始めた。
「……あんたね、幾ら誰も見てないからって魔法使いすぎだよ? 人にバレたら如何するんよ?」
「え? あ、そか。ごめんごめん忘れてたよ」
そう言いながらも指の先から風を熾して火が消えないようにしてるタクミを見てため息を吐くヨネは。
ラメルの上に手を置いて
「もう少しで会えるんだからじっとまってなさいよ?」
と、宥めていた。
メリヌは藪に消えた俺が気になるのかソワソワしながら裏側を見に行きたそうにしていたので、後で行くからと言って横に引き摺って隣で手伝う様に言う。
程なくして昼の時間になり、村の皆が集まって来る頃には米も炊けていた。
完全に常温には戻せなかったが、ソッとチェリーが力を加えてくれたらしく、肉は溶けていた。
それを大皿に取り分けて、三ヶ所に別れながら肉を焼いていった。
上村爺ちゃんと婆ちゃんにタクミとメリヌと四人で網を囲みながら肉を焼いていく中、黒山羊が妙に爺さんに懐くもんで驚いていた。
「この山羊は婆さんには懐いていたが、ワシには全く懐かなかったのにどうしたんだろうな?」
と、笑いながら頭を撫でる。
「心境の変化でもあったんだろうさ」
と、ヨネ婆ちゃんは誤魔化していた。
何かに気が付いたのか爺さんはジッと俺の横で美味そうに肉を食べるメリヌを見て言う。
「そう言えばその子は誰なんだい?」
「ああ、この子は俺の許嫁で婆ちゃんのところに今朝辿り着いたらしく、連れてきてくれたんだよ」
「「「許嫁⁉ 小学生くらいにしか見えなかったぞ⁉」」」
と、周りで飯を食ってた皆が騒ぎ始めた。
「いや、一応成人してるんです(15が成人だけど)」
「よく見ても16くらいにしか見えねーぞおい! 犯罪か⁉」
と、若い兄ちゃんが食い入るようにメリヌを見る。
なので仕方なくリュックだけを外して貰い、俺の着替えの中から大人びた服を探して来て着せてやると、ギリギリ17、8に見えなくも無い容姿になった。
「こんなオッサンに俺より若そうな娘が嫁ぐなんて……」
地団駄踏みながら悔しがっていたが、もうほっといた。
昼飯もあらかた食い終わり、午後からは皆さん自分の仕事があるらしく帰っていった。一人だけ恨みがましい目でずっと俺を睨みながら去ってった……。
俺の家となる予定の場所も燃やすか埋めるかすれば片付く位のゴミしかなかった。
「タクミ君は今夜はどうするね? 嫁さんも居るし、家に泊まるかい?」
といわれたが、断ると黒山羊が頭突きをしてきた。が、今夜はここに泊まるというと
「そうかい? じゃあワシらも帰るか、なぁ婆さん」
と、ヨネ婆ちゃんを連れて軽トラに乗り込むと
「また来るよー」と言い残し山を降りていった。
『ちょっと! 泊まればいーじゃないよ!』
「いや、一応やる事もあるし洞窟の先も気になるしよ?」
『……今行くと、昔の自分と会うことになるかもよ?』
「え……」
自分と会うと如何なるのか分からないのでやはり、コチラの仕事を片付ける事にした。
先に骨組みだけ残ってる家は乾燥がてら放置する事にして、腐った壁材やら床材をチェリーに頼んで消し炭にしてもらった。
序に刈った草も全て灰にしてと頼み、タクミは骨組みがどれくらい頑丈か確かめた。
少し湿っていたが、温風で何とかなりそうだったので家全体を合成魔法で乾かしていた。
「また来たぜい!」
その後ろから突然声がしたので振り向くと、メリヌの腕を後ろにひねって動きを封じた上村爺さんが、口角をあげてニヤリと笑いながらコチラをジロリと睨んでいた。
その後ろから申し訳無さそうに出てきたヨネ婆ちゃんは
「すまん、速攻バレちゃった」
といって、テヘッとアクビれもせずに謝ってきた。
ここじゃなんだからとサッサと家を作ってしまえと言って、メリヌを開放した爺さんと一緒に床を貼り付け壁を貼り付けして、あっという間に家が完成した。
「細かい所は後でワシがやっておくから」
といってパンパンと床を叩いている。
座れという事だろう。
爺さんの横に婆ちゃんが座り、爺さんの太腿に頭を乗せたラメル(黒山羊)と、その前にタクミとメリヌが座った。
俺の肩にマロンとチェリーがそれぞれ座る。
「火の精霊と土の精霊と契約したお兄さんが何でまたこっちの世界に来てるんだい?」
そう言いながらも懐く黒山羊が可愛いのか撫でながら聞かれたので、今までの事を掻い摘んで話すことになった。
婆ちゃんにも話したのになぁとちらりと見るも、顔を背けさせて逃げられた。
なので、最初から話すことになった。
「するってぇと何かい? コイツはラメルなのか⁉」
話の後半でようやくわかったのか、膝の上に頭を乗せる黒山羊を見る。
『気配は一応消してるからね、それでも力が弱まってるし当然気が付かないって思ってたわよ……なんで何も言わずに去ったのよぉぉ!』
泣きながら膝に噛み付く黒山羊を剥がすことなく頭を撫でる爺さんは、懐かしそうに笑うと。
「何年ぶりだろうな……闇精霊や」
そう言って満面の笑顔で話しかけた。
『三百年は過ぎてるわよぉ~~』
と、泣きながらしがみつく黒山羊を珍しそうに眺めるマロンとチェリー。
『あんな甘えた声で鳴く黒ウサは初めて見るよ』
(今は黒山羊だけどな……)
そう言って目をぱちくりしながらタクミの耳に呟いた。
その後、黒魔森猪の毛皮を布団にして、メリヌと黒山羊は寝た。
メリヌは普段来られない世界に来た事でテンションが上がりっぱなしだったし、疲れたのだろう。
ラメルは初の憑依で慣れない空腹と満腹を繰り返したお陰で疲労が貯まり眠ったようだ。
だが、魔力が足りないのも事実でどうにかしないと困る事になる。
それをどうせなら歴代魔導師達に相談してしまえと思い、聞く事にした。
「そんなの簡単さね、聖域にあるアポルを食べれば解決するだろう?」
若返った時の事を思い出したのか、うっとりしながらヨネ婆ちゃんはいう。
「だけど今現在ラメルは黒山羊なんだよ? 年齢を聞けば三年というじゃないか、消えてなくならないか?」
肉体が黒山羊と言うことは、shine Appleを食べると一口目で若返る。
三年しか生きてないなら食った瞬間若返って肉体が消える。
肉体が消えたら魂だけのラメルは聖域の力によって消滅するかもしれない。
そうなると、魔の森の結界も消えて千年前の状態に戻る危険性もある。
聖域の外で食べれば良いという案もあったが、その場合こちらの世界から免疫も無しで異界の空気に触れる事になり、何が起こるか分からないと爺さんは言う。
「ワシとタクミ君はshine Appleを口にしたろ? 聖域の中は守られとるから何ともなかったけど、アレを食べずに聖域外に出たら如何なってるから分からんのじゃよ」
そう言って結論が出ないまま、夜も更けてきたので、取り敢えず明日の朝は壁を外して骨組みに戻せと言って、上村夫婦は帰っていった。
『せっかく作ったのに外すの?』
なんでと言って首を傾げる精霊に、この世界は魔法がないから、いきなり出来たら不思議に思うだろう?と言って説明した。
ウトウトし始めたので伸びをして休もうというと、メリヌの隣で横になり、直ぐに俺も寝てしまった。
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