奴隷少年の華麗なる逆転人生〜運しかスキルが無いので家を追い出されました〜

あるちゃいる

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生まれは良かったのに➆

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 「この二人の登録を頼みたい」

 噴水の周りにある一角
 西門から真っ直ぐ進むと最初に見えてくるギルドが冒険者ギルドだ。
 文字の読めない者も多いこの世界で見たらすぐ分かるように盾のマークの前に剣と杖が交差して十字の形になっているのがギルドマークだ。
 因みに商業ギルドマークは金貨の前に天秤が描かれている。
 鍛冶ギルドは、炎の前に金槌とやっとこが十字の形で交差している。
 農業ギルドには水滴のマークに麦穂にくわが十字の形で交差している。
 それぞれのギルドに関わる道具が十字の形で交差しているので、文字が読めなくても分かる様になっている。

 冒険者ギルドは何処の国でもそうなのだが、敷地面積だけは一番広い。
 街の主要な門から続いて中央付近にまで伸びている、内部は主に受付だけをしている中央部分。今僕達がいる場所だが、此処では主に依頼を申し込む人が利用する場所で、中に入るとホールがあって中央に掲示板がある。
 この掲示板は重複した依頼を申し込まない様に、今現在申請されてる依頼が貼ってある。
 受理され解決した物何かも貼ってあるので、重ねて同じ様な依頼をさせない様にしてあるようだ。
 それとは別にランクの高いSa級からS級用の依頼も張り出されている。
 これは、中央のお高い家に住むSa級S級が依頼を受けやすい様に貼る場所を変えているらしい。
 そして、掲示板を通り過ぎた先には受付があるが、そこは依頼専用の受付なので、主な利用者は商業関係者や街の人々、貴族や何かもここに来る。
 そして受付の左右に半地下へと続く階段と二階へと上がる階段がある。
 僕達は半地下方向へ向かったが、二階へと続く階段を上がると、貴族用の依頼受付の部屋があるらしい。
 それと、ギルドに待機しているSa、S級の方々だけが利用出来る食事処があるらしい。
 その上へと行くとギルドマスターや職員達の部屋なのだそうだ。

 半地下へと行くと訓練場がドーンとあり、ここには門からも出入り口があって繋がっている。冒険者ギルドはこの訓練場を所持しているから一番広い敷地を利用しているのだ。
 そして、中央の半地下部分はこの訓練場の入り口になっていて、ギルドに登録したい人が最初に訪れる場所なのだという。
 何故訓練場の横なのかと言うと、適性検査をする為だった。
 成人する前の年齢の子も登録は出来るので、検査が必要なのだそうだ。
 中には兵士から転職して冒険者になる人も居るので、同じランクから始めると即戦力を薬草採取や街の雑用に取られてしまいかねない。
 そこで、どんな人が来ても適材適所に送る為に検査するのだという。

 そして、今現在僕とルカンはC級冒険者と戦っていると言うわけだ。

 ルカンは鬼のセダスの地獄の訓練で2ヶ月もしない内に激痩せし、元々資質があったのか素早く動ける様になった。相手を翻弄する動きでフェイクを交えて攻撃し、体制が崩れたスキを狙って攻撃していくスタイルだ。
 訓練中は剣だったが、途中でC級冒険者は検査を中断して武器を変えさせた、両手の短剣を渡すと再び戦う様に命じた。すると、動きが更に増して目で追えなくなった、フェイクも交えて打ち込むスピードも上がり、なんと最後はC級冒険者の首に刃を向けて勝ってしまった。
 これには見ていたセダスも驚いていたし、僕も驚いた。まぁ一番驚いていたのはルカン本人だったが……。

 ルカンの検査が終わると次は僕だ。
 僕は槍を使う。
 ルカンの様に動けない僕は、後ろに体重を傾けて迎え撃つスタイルだったので、撃ってこい!と怒鳴られた。

 それでも打ち込まない僕に苛立ったのか、C級冒険者から打ち込んできた。
 それを僕は受け止めて横に体ごと逸らす。逸らされたC級冒険者は不思議そうな顔をしたあと再び打ち込んできた。今度は僕の前で一旦止まった後上段から連続で打ち込んできた。それをすべて受け切って、剣を上に上げた瞬間、左の脛に打ち込む。
 それが当たって片脚を上げたのを狙ってもう片方の脚に向かって振り下ろす僕の木槍は見事当たってC級冒険者をひっくり返すと、一歩進んで首に槍を向けた。これで一本って事で僕の勝ちが決まる。

 「……ま、まぁ、これは模擬戦だから本番だとここに弓矢とか
魔法攻撃とかレイビア等を持つ素早い相手も出るので、動いた攻撃方法を覚えないと、駄目だ」とC級冒険者に教えられた。

 だが、僕は見逃さなかった。
 負けた瞬間悔しそうに口を歪めたのを見た。すぐに戻したけど。

 何はともあれ合格ということで僕達のランクはDからスタートとなった。

 因みにセダス様は執事として転職する前は冒険者もやっていたそうでA級のギルドカードを持っていた。既に失効されていて再発行したらB級になってた。

 冒険者ギルドのランクは上から
 Sa プラチナカード
 S   ゴールドカード
 A   銀に金縁カード
 B   シルバーカード
 C   銅に銀縁カード
 D   銅カード
 E   鉄カード
 F   木カード
 M  紙のカード
 と、なっていて冒険者見習いは紙のカードとなっている。

 このランクはどこのギルドでも同じらしく、カードに記載されてる文字や裏に描かれてるギルドマークで判断されるんだってさ。
 幾つもギルドを持っている人は裏のマークが重なっていくんだと。
 因みにセダスは商業と冒険者のマークが混ざっていて、天秤の絵の前に剣と杖が交差していた。
 商業は初めて受けたらしくEスタートなのだが、カードの色はシルバー何だってさ。
 一番位の高いランクのカードを持つらしいから、僕達もランク上げを頑張ろうとルカンと約束した。

 他のギルドも訓練場は使うらしく、隣では傭兵ギルドが連帯の訓練をしていた。
 そのリーダー的な奴と目があって思い出したけど、僕がまだ屋敷に居た時雇っていた傭兵ギルドだった。

 傭兵ギルドとは、民間の組織で主に護衛が仕事だった。商人の護衛や街の護衛から旅をする貴族の護衛や王族に関わる要人の護衛なんかもするし、戦争にも参加する。
 冒険者でも護衛の依頼は来るけど、だいたい傭兵の管理下に置かれる。
 自由を求める冒険者が多いから、余り旅の護衛はしないのが冒険者だった。
 したとしても、傭兵がやらない小さな護衛くらいだ。

 「失礼ですがセダス様とお見受けいたしますが……」
 「如何にも、久しぶりですな隊長殿」
 「やはり!珍しい所で会うものだから別人かと思いましたが、冒険者にお戻りになられたのですか?」
 「いえいえちょいと事情が有りましてね、行商人として各地を回る事になりまして」
 「おお、そうでしたか! あ、それでは我々がお供しましょうか?丁度手練も空いてますし如何でしょうか?」
 「ははは、申し訳ないが遠慮しておきます。それに既に雇っておりますので……」

 そう言うと僕達を見る。

 「ほぅ冒険者をお雇いに? たかが二人……しかも成り立て……道中危険ですぞ?」
 そう言うと僕達を見て嗤う傭兵。
 僕の顔を見ても思い出さないくらいの記憶力で隊長を名乗れる傭兵なら要らないとセダスは判断したらしく

 「ははは、お構い無く」
 セダスが少し睨んだのか、隊長は怯みながら
 「後悔しますぞ?」と呟いて去っていった。

 ルカンがトイレに行ってる間にパーティ名を決めると言ってセダスは、受付に申請しに行ったのでついて行くと、既に決めていたのかサラサラと申請書にマークを書き込んでいた。

 そのマークは丸い縁で狼を囲って、狼の口に剣が咥えられていた。

 狼のマークはよく使われるのか、昔の僕のマークにも使われていた。
 僕のは狼が肉を咥えている奴で、当時の僕は肉が大好きだったから付けたが、まさかそれが一生そのままだなんて知らなかったんだ。
 母は笑っていたが爺さんは少し怒っていた気がする。
 母の実家も狼のマークで爺さんは斧を咥えていたし、母は薔薇が狼の周りに縁取られていた。
 爺さんの名前はガウ公爵って名前で僕の本名のミドルネームに【G】が付いているのはそういう理由らしい。
 だが、王太子と二番目の兄も狼を使っているけど、父親も他の兄弟にも使われていなかった。別に流行りでは無いのだろうか?よく分からない。


 因みに僕の冒険者名は【マル】になっている。
 ルカンは【ルカス】
 セダスは【ゼダス】と名乗るらしい。

 「えーっと、パーティ名は
 【狼剣の牙】で宜しいですか?」

 そう受付が言うのを聞いて思わず
 「え、老犬⁉ あ、リーダーが爺さんだから?でも犬って……執事だから?」と呟いてしまった。

 すると受付はクスリと笑ってしまうし、セダスは振り返って
 「坊っちゃん酷い……」
 と、涙目で言うし……。

 「す、すいません!」 
 と、謝るしかなかった。

 このときセダスが言った【坊っちゃん】って言葉は聞き流していたので気が付かなかったし、僕が執事と言っても怒られなかった。
 トイレから戻ってきたルカンにもパーティ名を伝えると
 「え?老剣?でもセダス様は魔法使うんだろ?」と言たらゲンコツを貰っていた。

 「はぁ……出発するから馬車に乗れ馬鹿者共!」
 と怒鳴り、僕達は小さくなって馬車に乗る事になった。セダスは次の休憩場所に着くまで機嫌が悪いままだった。
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