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空への旅④
しおりを挟むその日は一日中父様と一緒に生まれて初めて遊んだ三人は、走り回って飛び回って遊びに遊び尽くし夕御飯を食べた後直ぐに寝てしまった。
各々好きな様にソファなどにもたれ掛かって寝ていたので、コージは一人一人大事そうに抱えながら用意していた部屋へ寝かせていった。
最後に一人娘を抱きかかえ部屋のベッドへと寝かせた時に、目が覚めたのかコージの首に抱き着いていてグズり出した。離れたくないと泣く娘を抱きながら背中をポンポン叩き、昔話などをしながら慰めてようやく開放されたコージは、こんな暮らしも悪くないなぁと微笑んだ。
そして、とある計画を決行する為に機関部へと向かった。そこにはコージを縛っている封印術式が書いてあり、あらゆる手段を用いて解除する為に力を溜め込んでいた。
その、破壊するエネルギーの一部を使って動力へと回し、後ろに控えていた暗部に指示を出して空中庭園の無限回廊に侵入し、永遠に偏西風の中を飛び廻る呪いを一部破壊して方向を転換した。
無音で飛んでいた空中庭園に負荷がかかり、一部の大地が消し飛んだ。中央付近は残したまま段々削れていく大地を恐恐と見つめる領民と、自信満々で庭園を操作するコージ。
やがてある一点で空中に留まった空中庭園はゆっくりと降下していった。
朝日が三人の子供達が眠る部屋に差し掛かる頃には、二周りほど小さくなった空中庭園が麹村の湖畔の上空50m付近で浮いていた。
魔王の封印は解けていないので、コージは庭園からは出られないが、上から見下ろす麹村を執務室から眺めるのもまた一興だった。
やがて、三人の子供達は目が醒めて朝食を食べた。自分達がいつの間にか家の近くまで来ている事には気付かずにいた。
村の皆も上空に空中庭園が来ている事には気付かなかったし、ウンディーネやシルフもまた気付かずに、朝の朝食を愛する伴侶と食べていた。
湖畔の上空は40mも浮き上がると霧に囲まれるので尚更下からは視認し辛かったりして、全く誰も気が付いていなかった。
三人の子供達もそろそろ一度帰りなさいとコージに言われるまで居座り続けて、地中に埋まった赤スラを掘り起こし、その労働で心地よく寝てしまった為に、地上に降りた時特に違和感を感じる事無く家へと帰った。
そして、更に半年の月日が流れたある晴れた日に、湖畔の真ん中に世界樹が生えた。世界樹の根は湖底の下から生えた物で、何百mか下の湖底から伸びていたそれは、幹が太く湖畔の水を吸い上げてとんでも無いスピードで成長していった。
最初は特に気にしなかった面々も水面から顔を出した世界樹の成長の速さに、在りし日の魔王の姿を思い出していた。
小、中学の校舎を建てた時の異常な速さで育った世界樹の森が地上何m育ったか思い出そうとしていた。
ズンズン♪ズンズン♪ズンズン♪ドコっと育った世界樹の先端が空中庭園の中央へと差し掛かると、崩れ落ちた筈の大地を補うかの様に枝が四方八方へ伸びて覆い、そのまま編み込むかの様に枝が張っていった。
やがてその重さを支えるかの様に世界樹と空中庭園が繋がったその時、遂に魔王の封印が解けたのだった。
封印は解けたのだが、コージは降りてこなかった
降りてこなかったので、世界樹の上に空中庭園がある事も暫く誰も気が付かなかった。
そして、魔王の封印が解けてることも封印を掛けた奴が既に居ないので分りようもなかった。
そして、12/24の深夜。赤スラのトナカイさんが引いたソリに、前から密かに準備していた赤い服を着たコージが麹村の空を飛び廻り、プレゼントの翅妖精人形(草妖精をテープで固定して、小人みたいな服を着せた物)を各家の子供達の枕元へ置いて行ったのだった。
そこで初めて異常差に気付いた面々が25日の朝、湖畔に集まっていた。
見上げる世界樹と霧にまみれながら薄っすら見える何かの建物……
そして誰かが叫ぶ
「魔王が復活した!」
どよめく様な声が周辺に漂い、やがて大きな波となって辺りを包んでいった。
混乱が混乱を呼び収集が付かなくなった頃誰かの頭に疑問がよぎった。
「何故あれを見ただけで魔王が復活したと思ったんだ?」
その疑問は段々と広がっていき、最初に叫んだ男へと皆の視線が集まった。その男は赤い服を着て白い付け髭を着けたサンタのコスプレをしていた。
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