消滅集落見付けて住んでたら異世界に行けた件

あるちゃいる

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魔王復活

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 「お、おまえコージなのか?」

 ワナワナと震えながらアカ服コス男を指差すハルト
その後ろで母みちるは「あらまぁおかえりー」と手を振りながら微笑む。

 「ちょっと!かぁさん彼奴はわざわいの中心たる男だぞ?歓迎してどーするんだ!」

 そう振り向きざまに咎めるが聞く耳持たずと逆に怒られるハルト。

 「我が子に何たる態度なの!?流石は何十年も振ら付いて家族を蔑ろにしてきた男ね!」

 そういうと父親ハルトに背中を向けてこんな男知らないとばかりに扱うと、魔王で村長だが我が子に落ち着いたら帰って来いと慈愛に満ちた顔で伝え、ハルトを置いて帰っていった。コージを一睨みしたあと、慌てて妻の機嫌を治そうと走って追いかける元勇者ハルト。その姿にかつての威厳は無い。

 そんな一幕を目撃した村民は口々に封印されてしまってた魔王であるが自分の村の村長に「おかえりー」とか「また飲もうぜー」と比較的暖かく迎えるのだった。

 最初から村長だった村人達はそれで良かったが、2年前には赤子だった層と封印直後に産まれて、教科書でしか見た事の無い男が珍しいのか、遠巻きで見ていた幼年組。その横で「あ!父様!」と走っていって抱き着いた同級生に驚愕の目を向ける。

 「あの子魔王に飛びついたわよ!」とザワザワ騒ぎ始め、「嘘じゃなかったんだ……本当に魔王の娘だったんだあの子!」と、散々馬鹿にして笑っていた同級生達は恐怖に慄いていた。

 これから始まる復讐劇を勝手に想像してカタカタ震え始めた同級生を見詰めながらマイは言った

 「復讐なんてするかっ!勝手に人を悪者扱いすんな!だいたいアンタ昨日遊んだじゃないよ!」


 そう、確かに遊んでいたかもしれない……マイで……

 だが、当の本人は気にしてなかったので友達と思い込んでいた、毎日連れ回されては高い木から落とされたり、崖から落とされたりとを確認されたり、棒や石をぶつけられてを確認されたりしていた。と、コージの耳元で囁いた。

 それを見た同級生は魔王にイジメを告げ口されたと震え、マイにしてみれば、日常の他愛ない遊びの報告をしただけだった。

 それに気付いたコージはニッコリ微笑み「我が子と仲良くしてくれて有難う、これからも末永く宜しくね?」と、軽く微笑んでから念話で『真実は永遠に闇に葬れ』と脅す事にした。

 その微笑みと心に響いた謎の声を聞いた同級生達は激しく縦に首を振って頷いた。
 この子らの多くは月島と新島の子供達なので、後でさらなる恐怖を味わう事になるのだが、それはまた別の話。

 「後で飲みに向かうからとおやじ殿達に伝えておいてくれよ?」と、微笑みながら伝達を頼んだコージ

 理解はしてないが取り敢えず伝えに回れ右して帰る子供達。それを見送りながら、コージの元へと走り寄る二人の男の子。タケルとカケルだった。

 その後ろから微笑ましい物を見たとニッコリ笑いながら近寄る女性。

 「シノ!」


 そう叫ぶコージと子供達が纏わりついて、首やら腕にぶら下がる様子を見ながら聖女の如く微笑むと


 「おかえなさい、あなた」と目に薄っすら涙をためつつも、暖かく旦那を迎える妻を必死に演じるシノがそこにいた。

 子供の前だからと頑張っていたシノを見て、子供達をやんわり横に置いて、手を広げるコージ。それを見た瞬間その胸に飛び込んでいたシノ。

 生まれて初めて飛び込んだ時は犬の姿だったが、今は犬の様な態度で形振り構わず胸に飛び込むシノだった。

 厚くもない胸板を懐かしそうに頬摺りして感触を楽しむかの様に何時までも繰り返していた。

 そんな姿をまともに見た子供達は引くかと思ったが、ようやく素直になった母を見て安堵した。

 迎えに行こうと誘った時も、目が泳いでいたし行きたそうにソワソワ尻尾も動いていた。それなのに言葉は大丈夫と言っていたのだから素直じゃないなぁと思っていた。

 それが、今は子犬の様に父様に縋りつく姿を見れば、安心もするだろう。

 微笑ましい家族の団欒が一段落すると、恭しく跪いて頭を下げる一団が居た。妖精族の皆々様だ。

 右からウンディーネ、シルフ、オーベロン、ノーム、サラマンダー、ドライアド、草の王、蜂くん、達くん、馬くん、内田と続いて猫又、ぬらりひょん各妖怪と並び各妖精のリーダー的役割の者達が霞みそうな程遠くまで続いていた。

 その姿を見た者達は「うわぁ……」と、一人たりとも微動打にせずまま片膝立ちをしてる妖精族を目撃した。そんな姿は見た事が無かったからだが、そのてっぺんが村長だった事を再認識して更に引いていた。
 

 「……おかえりなさいませっ!」と、オーベロンがビクビクしながら挨拶をすると、「ベロか……息災か?」と、何も威圧するでもなく普通に問いかけた。

 なんの毒気も感じない魔王の言葉に驚いたのかうっかり頭を上げて見つめてしまった精霊王オーベロン

 そして目があって初めて気付く慈愛の目。
長く頭を下げたまま話しかけていたが、もしかして魔王は常にこんな目で見ていたのか?

 そして、コージは魔力を喉に集中させて叫ぶ。
拡声された声は端の端まで響き、何となく跪いていた伝令妖精の耳にもしっかりと届いた。

 「ただいま!」


 たった一言だったがその声が全てだった


 じわりとその声が。その言葉が身体に染み渡るように広がっていくと誰もが叫び、拍手して歓喜に沸いた。

 口々に「おかえりー!」と叫び拍手した。

 先頭で跪く者達も毒気が抜けたのか呆れたのか地べたに座り直し、封印した事を謝るでも無く微笑んでいた。

 ウンディーネもまた、微笑んで
「お帰りコージ」と呟いた


 それを聴いて子供の様に微笑んだ

 

 
    
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