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村にダンジョンが出来た④
しおりを挟む「どったの?なんか眉間に皺寄ってるけど、大丈夫?」
思い出していた内容が内容だけに言えなかった私はとりあえず怖い夢を観た事にして、その怖さが尋常じゃなく、未だに覚えていたって事にした。
「あー、俺にもありますよそれ……たいてい夜寝る前にお義父さんから酒の席で聞かされた村長絡みの話をされた日の夜に観ますね……」
村長は居てもいなくても迷惑な男だった。だが憎めないというから更に質が悪いとお互い言い合って暫く経ち、腹も空いたからと場所をスパゲティ屋さんに移して昼飯食いがてら話を聞く事になった。
当然怪我人の中村くんに私が奢る形だ。
「疲れてるところをひっぱり出したんですから、ここは奢らせてください!」
「怪我する前からの約束なんですから気を使わなくていーのに!」
お互いがお互いで譲らず……ってなりそうな所へ
「そんなら俺が二人に奢りますよー好きなだけ食べて下さいねー」
そう言って村長が口の周りにケチャップを付けたまま帰っていった。
「二人共!好きなだけ食ってけ!一番高い飯と飲みモン用意すっから!」
そうカウンターの中から内田さんもいうので、二人で見つめ合ったあと喜んで飯を食うことになった。
内田さんは嬉々としてメニューに無い素材を使ってトリュフ餡掛けのA五牛のスパゲティとかを山程作っては村長支払ノートに値段を水増しして書き込んでいた。
まるで日頃の恨みを晴らすかの様に少し黒い霧を背中に背負ってる様にも見えたが、気のせいだろう。
そして、吐くほど食った俺達は一歩も動けなくなり、内田さんに運ばれながら宿へと送ってもらった。
当然中村君は住まいが別なのでインタビューは後日ということで話を付けて
「申し訳なーい!」
と、叫びながら内田さんと空を飛んで山の向こうへ消えていった。
俺はそのまま女将さんに今夜の飯は入りませんと断って、ベッドに転がると幸せな顔で眠りにつくのだった。
村長が憎めないのはこーいう所なのだ。
◇◇
奢る!いえいえこちらが支払います!っていう伝説(?)のネタをリアルで見れた感謝を込めて昼飯代は俺のツケにしてもらった
その翌日の昼に内田の飯屋に行くと早速内田が俺用帳簿を恭しく持ってきた。
「珍しいな、いつもは月の終わりで持ってくるのに」
そういって帳簿を受取りパラパラと捲ると昨日の分の箇所に
特性スパゲティ✕15
特性スープ✕10
お土産✕20
合計67万円税込
っと書かれていた。
「……おい、特性スパゲティってどれ?俺も食ってみたいんだけど?あと、スープも……それと、お土産?んー……1000人分用意して!持って帰るから!今日中ね♡」
そう言うと内田は青褪めて口をパクパクし始めたが特に何も言えず、涙目に成りながらも部下である翅妖精達を総動員してカウンターは息子のシシフィーに任せると、素材を取りに異世界へと飛んでいった。
その後ろ姿を見送りながら村長は
「クフフまだまだよのぉ♪」
っと、クスクス笑いカウンター席に座ってシシフィーの作る特性トリュフ餡掛けのA五牛肉のスパゲティを作る様子を涎を抑えながら待つのだった。
ようやく完成してカウンター越しに受け取ったスパゲティを食べていると
「あまりお父さんを虐めないでよ?魔王様」
「虐められたの俺だよー?昼飯代が67万円て鬼畜だからね!?俺だから払えるってだけだからね?」
空中庭園で見付けた宝石などで荒稼ぎしたので資産は既に記憶に残らない程沢山ある魔王は、咎める様な口調でいうシシフィーに言い訳をした。
「それにしたってお土産千人分は酷いよぅ?コカトリスの焼き鳥セットなんだから、用意するだけでも日が暮れちゃうよ?」
「何だよその高級焼き鳥セットは……まぁ、仕返し出来たからいーけどさ。あんまり無茶しないように妖精電話で伝えておいてね?」
「無茶させたの魔王様なのにー?……お土産は後日届けるけどさぁ……空中庭園の方でいーよね?」
そう言うと、空中に漂ってた翅妖精を掴んで伝言を頼み「お願いね?」と、飴玉を口に放り込んで窓から放りなげた。
「あれ?魔王様ここにいらしたんですか?探しましたよ。あ、シシフィー私にも魔王様と同じ奴お願いね?支払いは魔王様にツケといて」
扉をカランコロンと開けて入って来たのはギルド職員のシルフルだった。迷い無くカウンターの俺の横に座って食べてる物を見てからの流れる様に自然な感じで俺にツケてる所は、内田の娘だなぁと思わせる程図々しかった。まぁそこが意外と好きだったので、特に何も言わないし、いつもの事だった。
「何か問題でもあった?」
「6階層の事なんですけど、ちょっと5階層と魔物の強さに差がありすぎませんか?昨日だって危うく死ぬところだったんですよ?妖精王の水で何とかなりましたけど、あれを飲みすぎるのは良くないの知ってるでしょうに」
そういって俺を睨むシルフル
俺は肩を竦めながら
「弱いと味噌っカスが調子に乗って突撃カマしてくるからさぁ?ある程度は強くしないと……」
「ある程度の幅が広すぎなんですってば!中村くん死んじゃったら月島さんに刺されますよ?魔王様」
怖いことを言うシルフルを横目に残りの肉を食べていると
「あいよーおまちどー」
と、シルフルのご飯がやって来た
「何これ……こんなん食べてたの!?贅沢ぅ~頂きまぁす♡……っんまぁ♡」
「はぁ……ゆっくり食ってけ。6階層は要検討しとくよ」
シルフルの頭を撫でながら先に行くなぁっと告げて、シシフィーにご馳走さんと一声掛けてから外に出た。
校庭の6階層から行けばいーのになぁ……多少校庭の方が魔物は弱くしてあるのだが、あまり人気が無い。
校庭の5階層から8階層はゾンビエリアにしたのが人気薄になってるとは思ってない魔王はギルドへ向けて歩いていた。
ソンビエリアは兎に角腐った匂いが酷く、パーティーを組んでる獣人達が兎に角嫌がった。人より鼻が効くおかげで途中から鼻が馬鹿になり、その後3日は匂いが分からなくなるほど臭かったのである。
なので、新人の味噌っカスと学生冒険者以外は利用していなかったりもする。
湖のダンジョンは5階層と6階層の強さが全く違う。誰も暫く来ないだろうと高をくくって、適当に放り込んでいたのが悪かったのだが、そこは言わなかった。多分絶対怒られるから……
「さて、どうやって誤魔化すかなぁ……」と強さの差を付けた言い訳を考えながらのんびりギルドへ向かうのであった
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