3 / 7
とある深夜
しおりを挟む「あ、武里さん今晩は、今日もよろしくね!」
「今晩は、此方こそ宜しくお願いしますよ」
この店はアンちゃんの店の次に向かう店で、小料理屋を営んでる飲み屋さん。
この店でもゴミ出しをやらせて貰ってる。ここは40代くらいのママが一人で切り盛りしてる。なので、ゴミが重いと少し大変ってんで手伝う事になった。
その見返りに、晩酌用の酒を偶に貰っていたりする。
通ってた客が急に来なくなって、ボトル毎処分する時には纏まった量の酒をくれる時もある。
そんな日は仲間内で付き合いのある奴らにもお裾分けをしている。この界隈……縦より横の繋がりが意外と大事なんでね、何かを纏めて貰った時はチョクチョク袖の下って訳じゃないが、恩は売っておくものだ。
困った時に助けてくれるのは、警察ではなく仲間だからな。
まぁ、元は無料だしな。惜しくはあるが、一人で楽しんでも詰まらないってのが正直な気持ちだ。
今日は酒は無いようだった、まぁ良いさ。ストックはまだあるしな、一升瓶で二本ほどは確保してあるから当分晩酌は困らない。
因みにいろんな酒が混じった酒だ。味は……気にしなきゃ大丈夫だ。
浮浪者にもグルメは居る、そいつに呑ませても文句は言われなかったから多分不味くはない、美味いとも言わなかったけどオカワリしたくらいだから呑めなくは無いのだろう。
さっきの小料理屋は日本酒がメインだが、焼酎も扱ってる。ビールもあるにはあるが、大体の客がオッサンとか爺さんだから日本酒が多いな。
次の店も呑み屋だけど、この店はテキーラとかヴォッカとか?やたらアルコール度数が高めな酒を提供しているようだ。
客層も若いのが多い
俺はラムが好きだからバカルディとか偶に呑ませてくれる
飯より酒が多く貰える店の一つだ。
毎夕方に晩飯がてらデパ地下廻ってる様なもんだな。この飲み屋街が俺のデパ地下だ
さてさて、いい感じに酔って来たので今夜は帰ることにするよ
俺はフラフラと千鳥足で裏通りを歩いていた
すると俺の前から誰かが歩いて来ていた。
小走り気味に歩いてくる人を避けるようにしたんだが、酔っ払いだったもんでよろけて肩と肩がぶつかってしまった
「おおっ悪い、怪我ないかい?」
「馬鹿野郎!気を付けな!」
そう言うとソイツは慌てる様に罵倒してから走り去った。
「人と人がぶつかるには相手も俺側に寄って来ないとぶつからないもんだ、気を付けるならお前も気を付けないとぶつかるんだよ」っとは言わないで置いた。
俺は喧嘩はからきし弱いからな、仲間内ですら賄賂を渡してるくらいだからな?争いごとは苦手なのさ。
そんな事よりだ……ぶつかった拍子にアイツナニかを落としていきやがった。それを目の前では拾わずに、アイツが居なくなってからヒョイッと素早く掴んでササッと懐に入れて持ち帰る。
中身は確認しない、こーいうものは住処に帰ってからコッソリじっくり調べるのが俺流だ。
落とし物だからと警察なんかにゃ持っていかねーよ?そりゃまともに生きてる奴等に任せる事にしてる、俺みたいなはみ出し者がする事じゃねーよ。
真っ当に生きてる奴がする事だ。
日本の治安を悪くしてる自覚はあるぞ?まぁ、殺しはしないから、ネコババくらいは許せよ。
許されなくても持ち帰るけどな。
(あれ、そういえばさっきの奴……トイレ君じゃなかったか?)
朝にトイレに入って消えちまう男をトイレ君と命名した(さっき)
声は聞いたこと無かったが……するってぇと今拾ったコイツの中身である程度奴の謎が解けるかも?
俺はほくそ笑んで跡をつける奴が居ないかキョロキョロしたあと、植え込みへと潜っていき暫くマンホールには入らないで誰かが来るのを待った。
だが一向に誰も来ないので、安心してマンホールの蓋を開けて中へと入った。
小さいランタンに火を灯して手元を明るく照らすとトイレ君が落とした巾着の紐を解く、中から出て来たのは
現金50万円
赤黒い染みの着いた白い手袋
タオル
アルコール消毒液
何処かのロッカーの鍵
あー、これはヤバイ……
俺の顔見らてなかったよな?
ちょっと今更巾着を現場に置いてくる事も出来ないなぁ……今頃トイレ君躍起になって探してる頃だなぁ……
中身を全部巾着袋に戻した俺は、その巾着袋をどうするか頭を悩ますことになった
取り敢えず何処かのロッカーの鍵だ、これの中身が予想通りの代物なら……面倒くさい奴の観察を始めちゃったなぁ……
このロッカーの鍵が何処の鍵か探すことにしよう
トイレ君はバス停から真っ直ぐトイレに入って、出て行くときも真っ直ぐバス停に向かっている事からいって、このロッカーの鍵はこの駅構内のロッカーではない事は分かる。
だが、多分バス停に並ぶ場所が毎回違うだろうと予想。
(あれ?すれ違ってぶつかった場所は飲み屋街だったはず……って事は、この鍵は駅構内か?)
ツルンとした脳みそをフル回転させながら通ってきたルートを予想すると……あ、あったわ。1箇所駅じゃないけどロッカー……飲み屋街の駐車場横に1箇所……
うーん……多分トイレ君はそこで待機してそうだなぁ
だが中身が気になった俺は朝になるのを一応待って、トイレ君がバス停から来るかどうかを待つことにした。
次の日の朝、暗いうちからマンホールを出た俺は一張羅の作業着に着替えると、業者を装ってトイレのある北口では無く、南口のとある場所に立つ
ここは日雇いが待機する場所だ、人数は決まっているので間に合わなかった風を装ってトイレ君が来るだろうと予想した場所で待つことにしたのだ
多分昨晩は明るくなるまで落とした巾着袋を探したはずだ、そうなると、ソロソロ眠くなって飲み屋街方面から現れる筈なのだ。
多分だが、トイレ君の寝床があのトイレなんだと思う。そして、ロッカーに入っているのは仕事道具。
なんのとはまだ予想の範囲なので言わないでおく
肌寒い中なるべくひと目に付かない場所で待っていると、フラフラしながら中肉中背の男が歩いてきた。
トイレ君だ!やはりこちら側から来たか。あそこからロッカーも通るから開いてない事も確認して来たのだろう。俺が潜む場所を通り過ぎて、駅の中通路を端っこを歩くトイレ君。
その背を見失わない距離で此方を振り返っても誰の視線か分からない程度離れて追った。
そして、北口トイレへと入ったのを確認したら踵を返して足早にロッカーを目指す。
目当ての番号を見附けたら、何か仕掛けがされてないか調べる。
開けられたら分かる様な仕掛けをしているはずだ。
細かく注意して見てみると、案の定あったわ。
それを折らない様にそっと取り出し、素早くロッカーを開けて中身を取り出し、懐にしまうとまたロッカーの鍵を空のまま閉める。
そして、開けたら折れる様にセットしてあったシャーペンの芯を元の位置に戻して周りを確認後その場を去った。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
王族に婚約破棄させたらそりゃそうなるよね? ……って話
ノ木瀬 優
恋愛
ぽっと出のヒロインが王族に婚約破棄させたらこうなるんじゃないかなって話を書いてみました。
完全に勢いで書いた話ですので、お気軽に読んで頂けたらなと思います。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる